「PR」という言葉を聞くと「宣伝すること」を連想する方が多いのではないでしょうか。

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PRとはPublic Relationsの略で、社会(パブリック)とのRelations(関係性)を維持・構築することが本来の意味です。「企業PR」であれば、消費者や顧客、従業員、取引先、株主、地域と良好なコミュニケーションを行い、信頼関係を構築する活動を指します。

今回は、世間的に高い評価を得たPR活動の事例をご紹介します。そのPRが生まれた背景やターゲット、メッセージ、実際の施策なども合わせて解説するので、ぜひ参考にしてみてください。

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PRの基礎と必須ツールがわかるPR活動完全ガイド

〜PR活動の設計から効果測定までを徹底解説〜

国内のPR成功事例

国内の企業PR成功事例5選

PRの第1の目的は、PRを通じてターゲットとの間に信頼関係を構築することにあります。ここで紹介したPRの事例は、いずれも大きな話題となったもので、メッセージ性やストーリーなど、いずれも興味深いものです。しかしPRの内容で重要なのは、誰と、どのような信頼関係を構築したのかということです。

ここでは以下の2点に焦点を当てていきます。

  • PRのターゲット
  • ターゲットの反応と評価
     

事例1. 地方自治体による観光誘致のPR動画

「PR動画」と検索すると、地方自治体のPR動画がいくつもヒットするほど、地方自治体のPR動画作成が盛況です。その引き金になったのが、2017年9月に配信された佐賀市のPR動画でした。YouTubeで配信した動画は、世界中で2,060万回視聴(2019年時点)、Like率98.5%と大きな成功を収め、後に「佐賀モデル」という言葉が生まれたほどです。
 

PR動画のターゲット

佐賀市は2008年頃から増えつつあった外国人旅行客をさらに増やしていくために、動画制作・配信を企画しました。3,600万円という多額の資金を「製作費 : 広告配信費 : 分析費」=「3:6:1」の割合で配分し、YouTube配信に多くの費用を割きました。

主なターゲットとしたのは、閲覧履歴からわかった日本に関心を持つ人の多い国(台湾、香港、韓国、タイ、アメリカ、オランダ)の人々です。その6か国を中心に配信したところ、公開後6日間で200万回も再生されることになりました。

さらに動画に登場する熱気球や伝統産業、佐賀城などの詳しい情報が得られるリンクをまとめた視聴者の受け皿として、ランディングサイトも作成しています。
 

ターゲットの反応と効果

「佐賀インターナショナルバルーンフェスタ」での気球や、伝統産業を紹介した動画は、多くの人の興味を引いただけでなく、実際の観光客誘致にもつながりました。外国人宿泊数は2011年には2,017人だったのが、2018 年は79,868人と約40倍にも跳ねあがったのです。

YouTubeのコメント欄には、外国人から以下のような声が書き込まれています。

「スキップしないで最後まで見た初めての動画だ」
「音楽と映像がとても美しい」
「バルーンフェスタに行ってみたい」
 

事例2. BtoC企業による消費者への問題提起PR動画

中学や高校では、髪型に関する校則が定められている学校が数多くあります。なかでも染髪を禁止する学校は多く、髪の毛の色が生まれつき黒くない生徒に対しては「地毛証明書」の提出を求める学校があります。また「地毛証明書」を提出した上で、髪を黒く染めるよう強制する学校さえあります。

P&Gは「学生の個性が尊重される社会になることを応援する」全国の中高生・卒業生・先生の男女合計1,000人にアンケート調査を行い、対話するきっかけを作ることが大切だと考え、パンテーンブランドのPRとして動画を作成しました。 

PR動画のターゲット

P&Gは「学生の個性が尊重される社会になることを応援する」という観点から、「#この髪どうしてダメですか」プロジェクトを開始しました。コピーに「どうして」という文言が入っているのも、PR動画の直接の対象である中高生の思いに寄り添おうとする姿勢の現れです。
 

ターゲットの反応と効果

この動画は中高生ばかりでなく、かつて中高生だった大人をも広く巻き込んで、拡散していきました。SNSを通じて18万件の反響があり、地毛の黒染めを強制する指導に対する反対署名を展開する人も登場しました。

学校関係者からも「時代に合わせて髪型校則は変えていくべき」という声が、キャンペーンWebサイトにも寄せられ、時代にそぐわない校則を見直すきっかけになりつつあります。
 

事例3. BtoB企業による次世代に向けた事業内容啓発イベント

パナソニックグループのインダストリアルソリューションズ社は、前身の松下電池工業時代の1995年から「出張電池教室」を開催しています。

パナソニックグループは、社名がまだ「ナショナル」だった1960年代半ばから「ナショナルのファン」の生成を目的として、積極的に工場見学を受け入れていました。ところが1990年代に入って、生徒数の減少とともに、工場見学を希望する学校が減ってきたのです。

そこで「工場見学の希望者が減ったのであれば、こちらから出かけていこう」と1995年から出張事業を始めました。その出張事業の目玉となるのが「手作り乾電池キット」を使った電池の作成です。

授業の質を維持するために推進マニュアルが用意されており、マニュアルには小学生から出そうな400項目の質問が想定されていました。また、マニュアルでは誰もがかならずマンガン電池を作成できるよう、うまくできない子どもに対するフォローも用意されていました。
 

PRのターゲット

ターゲットは次の社会を担う小学生です。ものづくりや化学に対する興味を養い、なおかつ自社のファンになってもらうことを目的に、関西だけでなく、全国にひろげて出張授業を行っています。また、ICTを活用して遠隔地授業も行っており、1996年からは海外でも展開されています。
 

ターゲットの反応と効果

2020年3月で19万1千人を超える小中学生が、出張授業担当者の指導の下、自分の手で電池を作成しています。子どもたちからは「難しかったけれども楽しかった」「電池の仕組みがわかった」という感想が寄せられており、希望する学校も年々増加しています。
 

事例4. 大学から女子高校生へ向けた問題提起のポスター

日本私立学校新興・共済事業団の統計によると、2019年には少子化の影響で私大の約1/3が定員割れを起こしているようです。多くの大学は受験生確保に向けて、他大学との差別化を図る工夫を続けています。

そのような中で注目を集めたのが、2017年の神戸女学院大学のポスターでした。「大学が提供する価値は受験生の想定外にあることを言語化する」というコンセプトで作成された「私はまだ、私を知らない」シリーズのポスターは全3種類あります。

ポスターは関西圏を走るJRと阪急電車のドア横という非常に目立つ場所に掲示され、多くの注目を集めました。なかでも話題になったのは「女は大学に行くな」という刺激的な言葉が目立つ1枚です。
 

PRのターゲット

PRのターゲットは受験生です。「私はまだ、私を知らない」というキーコンセプトは、社会通念に流されず、主体的に生きたいという受験生の潜在的なニーズを掘り起こし、それに対して主体的に学ぼうとする受験生を支援するという大学の姿勢を明らかにしています。
 

ターゲットの反応と効果

Googleで「神戸女学院」を検索すると「ポスター」がサジェストワードにでてくるほど、受験応募者の増加対策に作成されたポスターは話題になり、SNSで拡散されたほか、Webニュースや新聞、TVでも取り上げられました。
 

事例5. 日本漢字能力検定協会による漢字検定試験認知向上のイベント

1995年に日本漢字能力検定協会が「漢字検定試験」の認知向上を図るためにスタートしたのが、「今年の漢字」というPR活動です。毎年、年の暮れも押し迫ってくると、京都の清水寺で貫主(かんじゅ)が大きな紙一杯に「今年の漢字」を書く姿がニュースでも取り上げられます。
 

PRのターゲット

大学受験や就職に有利な資格として、日本漢字能力検定協会が主催する漢字検定試験は、1992年ごろから志願者が増えてきました。しかし、世間の漢字への関心は、さほど高くなかったのです。

そこで漢字検定協会は、世間の漢字への関心を高めるために、PR戦略を検討しました。その結果「年の暮れには、誰もが1年を振り返るだろう。その年の世相を表す漢字を公募したらどうか」という発想が生まれたのです。

こうして広く1年を象徴する漢字を公募し、日本文化の象徴ともいえる京都の清水寺で、貫主が縦1.5メートル、横1.3メートルの大きな和紙さらに漢字に対する社会の受検者がいます。漢検の普及と認知に大きな効果をもたらしたのが、1995年から始められた「今年の漢字」でした。
 

ターゲットの反応と効果

漢検の志願者は、第1回はわずか670人でした。そこから年々志願者が増え、1991年には9万3千人、文部省の認定を受けた1992年には12万人を突破しました。そして「今年の漢字」のキャンペーンが始まった2年後の1997年には、一気に百万人台の大台にのっています。「今年の漢字」が漢検の知名度アップに大きく効果を挙げたといえます。
 

海外のPR成功事例

高い評価を得た海外のPR事例を見ていきましょう。国内版と同様に以下の2点に注目します。

  • PRのターゲット
  • ターゲットの反応と評価
     

事例1. BtoC企業による、消費者に向けた問題提起PR動画

ダヴは日本でも展開しているパーソナルケア商品のブランドです。2004年から「本物の美のためのキャンペーン」を展開しており、2013年に「リアルビューティスケッチ」キャンペーンを実施しました。

動画内に登場するのは本物の捜査官で、目撃者証言を元に容疑者の似顔絵を描く専門家です。動画では捜査官がひとりの女性の顔を「本人の説明で描いた似顔絵」と「他人の説明で描いた似顔絵」をそれぞれ作成して、本人に見比べてもらう構成です。
 

PRのターゲット

メインターゲットは女性です。登場するのはいずれもモデルではない、アジア系やアフリカ系も含めた普通の女性たちです。PR動画の視聴者は「まるで自分が動画内にいる」と感じられるように、セリフやカメラアングルが工夫されています。
 

ターゲットの反応と効果

PR動画は公開12日間で5,000万回以上の再生回数を記録しました。「ほとんどの女性は自分の容貌を歪めて見ている」という動画のメッセージは、多くの人に届き、心を動かしたことがわかります。
 

事例2. BtoB企業のユーザーに向けた教育的PR動画とテスト

Dropboxは2017年にビジネス部門、特にマーケティング部門でのさらなる自社サービスの浸透を目指していました。そこで、マーケターの性格タイプを分類し、異なるタイプが組み合わさることで、チームは一層ダイナミックに展開できる、というキャンペーンを行いました。

2分間のビデオで概要を説明し、Webサイトのテストのページに誘導されます。そこでテストに答え、8つのタイプに分けます。自分のタイプを知り、自分とは異なるタイプの同僚を理解しよう、と伝えています。
 

PRのターゲット

チームで働くマーケターを対象にしています。自分の内面を言語化したい、チームメンバーをもっと理解したいと考える人にとって、このキャンペーンが提供する性格診断テストは非常に興味深かいでしょう。
 

ターゲットの反応と効果

ソーシャルバズアワード2018で賞を受賞し、Dropboxの名をより一層高める結果となりました。このキャンペーンを通じてDropboxは目標としていた2倍の見込み客を獲得しました。
 

国内外の成功事例から見えてくる、成功のコツとは?

国内外の成功事例から見えてくる、成功のコツとは?

これまで見てきた事例を次の2つの点で整理します。

  • PR事例に共通する要素
  • 成功したPRが達成したビジネス成果
     

成功したPR事例に共通する要素

成功しているPRは以下の6点の特徴を持っていることがわかります。

  • PRの目的が明確
    誰の眼にも「何のPRか」「何が言いたいのか」が伝わるものばかりです。
     
  • 特定のターゲットが絞られている
    誰を対象にしているのかも、はっきりわかります。さらに対象とされている人が「これは自分の問題だ」と思えるようなつくりになっています。
     
  • ターゲットがリーチしやすいツールが用いられている
    PRで活用されているのは動画ばかりではありません。対象が子どもであれば、出張授業、社会全体の注目を引きたい場合は大規模なイベントなど、さまざまな対象によってさまざまなツールが選択されています。
     
  • 社会的課題を取り上げ、ストーリーで伝えて視聴者の共感が得られる
    ブランドジャーナリズムという考え方が、近年注目されています。特に若い世代を中心に、少しぐらい価格が高くても、環境に配慮した商品や、共感できる思想を打ち出しているブランドを好む消費者が増えています。キャンペーンでも、ブランドジャーナリズムを取り入れたものは、多くの消費者の賛同を集めています。
     
  • ターゲットの意識変革や行動変容に向けたメッセージ
    成功したPRは「おもしろいな」「きれいだな」にとどまらない、呼びかけが含まれています。メッセージを受け取った視聴者は「自分はどう思うのか?」と考え、次の行動を自発的に起こしたいと考えます。
     
  • 効果が計測されている
    成功したPRはかならず成果が計測されています。
     

成功したPRはどのような成果に繋がっているのか

PRが視聴者の激しい拒否感を買って、炎上する場合があります。炎上したPRは、成功したPRと同じくらいかそれ以上に話題になることはありますが、自分が好きになれないものに、誰もお金を払いたくはありません。話題になるだけで、ビジネス成果にはならないのです。

成功したPRは、いずれも視聴者の好意的な反応を引き出しています。PRを見て「ファンになり、もっと知りたい」「PR元の組織と深く関わりたい」と感じ、「商品やサービスを購入したい」「他の人にも薦めたい」と思うようになります。それが結局のところ、ビジネス上での成果となって現れるのです。
 

PRを、世の中にとってより価値あるものに

《結論》企業PRを、世の中にとって価値あるものに

SNSの登場によって、誰もが情報発信できるようになった結果、情報量が爆発的に増大しました。2001年と比べると、SNSの情報発信量は2021年には1,400倍にもなるという試算もあります。

情報が氾濫し、情報の99%が誰にも振り向かれずに流されている時代に、確実にユーザーに届き、受け留めてもらうためには、PRの成功事例がかならず役に立つはずです。

  • PRの目的が明確
  • 特定のターゲットが絞られている
  • ターゲットがリーチしやすいツールが用いられている
  • 社会的課題を取り上げ、ストーリーで伝えて視聴者の共感が得られる
  • ターゲットの意識変革や行動変容に向けたメッセージ
  • 効果が計測されている

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PRの基礎と必須ツールがわかるPR活動完全ガイド

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元記事発行日: 2020年10月27日、最終更新日: 2020年10月27日

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