私がHubSpotで仕事を始めて間もなく、オレンジ色の、ノイズキャンセリング付きヘッドフォンが入社のお祝いとしてプレゼントされました。その時点ではまだ、このヘッドフォンを使って夜遅くまで何日も仕事をしたり、ひどいスランプに陥って文章がまったく書けなくなり、音楽を聴きながら仕事中に泣きたくなったりするとは、夢にも思っていませんでした。
あれから2年以上が経ち、そのヘッドフォンは今でも私を励まし続けてくれています。
音楽を聴きながら仕事をすることは、私にとって生産性を高めるための、なくてはならない大切な秘訣です。ビヨンセの強烈な一曲を聞くだけで、私はアイドリング状態から一気にアクセル全開まで自分を上げることができます。
問題は、完璧と思えるプレイリストがなかなか見つからないことです。近ごろは音楽をインターネットで無数に聴くことができるので、自分のワークスタイルにぴったりな音楽を選ぶのが、逆に難しくなっているのかもしれません。そこで私は、これに対する最善策は何かを考え、完璧なプレイリストを選ぶために、音楽の種類と作業効率の関係について調査することにしました。
すると、音楽の種類の違いが生産性に与える影響について、すでに非常に多くの研究がなされていることがわかりました。そこでこの記事では、それらの研究によって明らかになった結果を基に、Spotifyプレイリストから7つのリストを選んで、皆さんにご紹介したいと思います。モーツァルトの曲でも、あるいはチャンス・ザ・ラッパーの曲であっても、それぞれに何らかの効果があることを説明していきますので、皆さんにとってベストなプレイリストを見つけるための参考にしていただければと思います。
注意: この記事のプレイリストの曲名に、職場での閲覧に適さないものが含まれていますのでご注意ください。
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科学的根拠を基に選んだ生産性を高めるための音楽プレイリスト7選
1)クラシック音楽
音楽が仕事の生産性に与える影響に関する研究では、モーツァルトの効果について取り上げた報告書が最も多く引用されています。これらの報告によると、1日にたとえ短い時間でもモーツァルトの音楽を聴くと、抽象的な論理を展開する能力が高まるそうです。
たとえば、Gordon Shaw氏、Frances Rauscher氏、Katherine Ky氏の3名が行った研究では、カリフォルニア大学アーバイン校から36名の学生を集め、彼らを3つのグループに分けて、グループ1の学生にはモーツァルトの音楽を、グループ2の学生にはリラクゼーションの音楽を、それぞれ聴かせました。
グループ3の学生は10分間無音で過ごしました。その後、36名全員が同じテストを受けたところ、モーツァルトを聴いたグループは、他の2つのグループと比較して、IQが平均で8から9ポイント高くなったことがわかりました。
それ以降、この「モーツァルト効果」に関して、さまざまな異論が噴出しました。にもかかわらず多くの研究者が、クラッシック音楽を学び、聴くことによる精神的な利点について、報告を行っています。たとえば、小学校の児童数名に対して、作曲をするための教育を受けさせた場合、そのグループの読解力が、他の児童よりも高くなったなどの研究結果もあります。
クラッシック音楽が仕事の効率化に役立つと思いますか?このプレイリストを聴いて試してみてくださいね。
2)ビデオゲームのサウンドトラック
かつてビデオゲームのマーケティングコンサルタントをしていた、HubSpot(ハブスポット)のEmmy Jonassenは、「ビデオゲームのサウンドトラックから仕事の効率が上がる曲を選ぶには、集中したいときにどの種類の音楽が自分のモチベーションを高め、どの種類で集中力が下がるかを必ず理解する必要がある」と言います。
彼女は続けて次のように説明しています。「テンションの高い音楽で気分が高揚し、集中できる人なら、ThumperやKlangのようなゲームの曲がよいかもしれません。逆に、穏やかな曲でなければ集中できないという人には、ABZÛやJourneyなどの探検ゲームの、穏やかな曲が効くと思います。毎年何千というゲームがリリースされ、新作も数多く登場していますので、自分の好みにぴったり合う曲が、誰でも必ず見つかるはずです」
ビデオゲームで遊ぶにも、実際かなりの集中力が要求されます。次のレベルに進むために、プレーヤーは罠から逃れたり、障害物を避けたり、秘密の道具を見つけて敵をかわしたりしなくてはなりません、そう考えれば、最近のビデオゲームのサウンドトラックに、ごく簡単な音響効果だけではなく、英雄的で壮大な映画を思わせるような、実に巧妙に作られた曲が増えているのも納得がいきます。
ゲーム音楽に関して、さまざまな研究結果が報告されていますが、根拠を証明できるものを例として挙げるなら、スピーカーをオンにしてゲームを行うと、無音で行うよりもパフォーマンスが高くなることがわかっています。
心理学教授であるSiu-Lan Tan氏が、同僚のJohn Baxa氏、およびMatt Spackman氏と一緒に「ゼルダの伝説 トワイライトプリンセス」を使用して行った調査によると、音楽とサウンド効果の両方をオフにして戦った被験者は、オンにして戦った被験者に勝てなかったそうです。
本当かどうか試してみたい方は、こちらのプレイリストをどうぞ。
3)自然音
精神物理学のデータや、音場解析の調査結果を数多く紹介するThe Journal of the Acoustical Society of Americaによれば、自然から発せられる音を聴くと、認知機能が改善し、集中力が高まり、満足度が向上するそうです。
さざ波の音や、小鳥がさえずる声、小川のせせらぎの音などを聞きながら仕事をすることを想像してみてください。
このような理由からか、Google Homeや、(新しいところでは)Noisliといった、消費者に近い製品を開発するブランドも、ユーザーをリラックスさせたり集中を高めたりするために、自然環境音楽を導入することが多くなっています。Spotifyでも自然をテーマとしたプレイリストがいくつか提供されています。その一つをお聴きください。
4)気分が上がる曲
ケロッグ経営大学院の教授である Derek Rucker氏は、スタジアムに到着するアスリートの多くが、ヘッドフォンを付けているのを見て、「人は目的に合った音楽を聴くと、力がみなぎったり、冷静になれたりするのだろうか」と疑問に思ったそうです。そして、その答えを見つけるために、3名の同僚(Loran Nordgren氏、Li Huang氏、Adam Galinsky氏)と一緒に調査を行うことにしました。
彼らは、音楽が人のモチベーションやその後の行動に与える影響について調べるために、調査グループを結成します。最初に、被験者を研究室に集めていくつも曲を聴かせ、それぞれの曲について、「力強く感じた」、「勢いを感じた」、「揺るぎなく感じた」、の各度合いを、1から7の値で答えてもらいました。
そして、これらの値が最も高かった曲として、クイーンの「We Will Rock You」、2アンリミテッドの「Get Ready for This」、50セントの「In Da Club」の3つが選ばれました。
続いて調査グループは、音楽が人の行動に与える影響について調べるため、被験者に先ほど選んだ3曲を聴かせたのち、ある議論に対して最初に意見を述べたいかどうかを決めてもらいました。すると、その3曲を聴いた人たちのなかで「はい」と答えた人の数が、あまり力強くない曲を聴いた人たちと比較して、2倍近く多かったそうです。
この結果から、調査グループは次のようにアドバイスしています。「競技レベルの高いアスリートが、パワフルな音楽を聴くことで、精神力を高めてから戦いに挑むように、私たちも何かモチベーションを上げたいときにこれを試してみるとよい。」(Derek Rucker氏)
皆さんも次回、大事なプレゼンの前や、給与査定の面談などの際に、このプレイリストを聴いて気分を上げてみてはいかがでしょうか。
もう一つ、私の同僚が選んだこちらのプレイリストも、気分を上げるにはぴったりです。
5)歌のない曲
2015年に、ミドルテネシー州立大学のCarol A. Smith氏とLarry W. Morris氏は、試験の最中に気持ちを落ち着かせる音楽を聴いた学生の点数が、叙情的な音楽を聴いた学生よりも高くなったという調査結果を発表しました。(ただしこの結果は、彼らが39年前に行った調査で、音楽が試験の点数に影響を与えることはなかったが、刺激的な音楽を聴いた学生が大きな不安を訴え、非常に感情的な反応を示した、と報告した結果とは一致しません。)
だからと言って、歌の入った曲を聴いていると仕事にならないというわけではありません。実際、私は歌がある方が好きです。しかし、同僚のAmanda Zantal-Wienerなどは、歌のある曲を聴いていると、ヒップホップ調の文章が記事になぜか紛れ込んでしまうと冗談交じりに言います。彼女のように、仕事中に歌のある曲を聴くのが苦手な方は、楽器の演奏だけの曲を試してみてください。
たとえばこのプレイリストはいかがですか。歌はありませんが、眠けを誘うような曲では決してありません。
6)気分爽快な曲
締め切りに追われている、メールが山のように届いてパソコンの前から逃げ出したくなる、出勤しなければよかったと後悔する、などなど、ストレスの種が尽きない方には、生産性を改善する最高の処方薬として、爽快な曲を聴いて気分転換することをお勧めします。思わずペンをマイクに歌いだしたくなるような、ノリの良い曲を聴いてください。
科学的に説明しましょう。美味しいものを食べる、といった身体的な喜びを得るときと、好きな音楽を聴いたときで、人は脳の同じ場所に刺激を受けるのだそうです。
たとえばマギル大学が行った調査では、被験者がオピオイドの生成を阻害するナルトレキソンを投与された後で、彼らの好きな曲を聴いたところ、通常ほどポジティブな反応を示さなかったという結果が報告されています。
つまり、私たちは好きな曲を聴いたとき、オピオイドなどの(鎮痛、陶酔作用がある)化合物を自然に生成するよう、脳が訓練されているのです。
もちろん、どの曲が気分爽快かは聴く人によってさまざまですが、「Feel Good(気分爽快)」というキーワードでSpotifyのプレイリストを検索すると、結果がいくつも表示されます。たとえば私の大好きなこちらをご覧ください。
もっと聴きたい方は、同僚のAmandaが選んだこちらをどうぞ。
7)ホワイトノイズ
BBCの調査によると、私たちのおよそ7割はオープンな(個室ではない)空間で仕事をしているそうです。私もその一人です。同僚にすぐ話しかけて、「これってほかにどんな言い方がある?」などと聞けて便利ではあるものの、周りの話し声が気になって集中できないという人も多いようです。
山口大学が行った調査でも、次のような結果が報告されています。「何かを記憶したり、計算するといった知的活動を行っているとき、騒音が多くの場合に苛立ちの心理的印象を強くし、その結果パフォーマンスが低下する。」
ですが、記事を書いたり計算をしたりなどの細かい作業を、騒音のなかでせざるを得ない人はどうすればよいでしょう。ホワイトノイズのように何の印象も与えない、背景音だけの曲を聴いてみてください。背景音は自然音とは異なり、周りの騒音を遮断する効果があります。そのため、レストランやショッピングモール、電動のファン、洗濯機などの騒音が気にならなくなります。
「そんなものまでSpotifyに?」と思ったかもしれませんね。はい、そのようなプレイリストも確かにあります。
以上、プレイリストで集中を高めて、気分を上げて、気分爽快で頑張りましょう。
編集メモ:この記事は、2017年6月に投稿した内容に加筆・訂正したものです。Carly Stecによる元の記事はこちらからご覧いただけます。