商談ほど楽しくて恐ろしいものはありません。お客さまがあなたの製品に興味を示してくれれば最高ですが、不安とプレッシャーで胃が痛くなるようなこともあります。
突き詰めて言えば、商談の目標は、成約を勝ち取ること、もしくは商談を進捗させることでしかありません。ただし、みなさんが話しかけている相手は、無機質な企業ではなく、人間であり、自社とソリューションについての紹介をいつどのようにするかを理解することは大切です。
もちろん、営業のプロフェッショナルなら、売り込みをかけるタイミングを知らなければなりません。では、どうやってベストなタイミングを判断すればよいでしょうか? この記事では、成約を勝ち取るための「秘訣」をご紹介します。業界や製品に関係なく、どんな状況でも効果的な方法です。その方法とは、自分だけの商談シナリオを作ることです。
商談シナリオとは
この記事で紹介する商談シナリオは、潜在見込み客(プロスペクト)と共有するものではありません。基本方針からぶれずに、計画どおりパーフェクトなタイミングで商談を進めるための、自分のためのシナリオです。シナリオには、商談の流れに合わせて臨機応変に対応できるような柔軟性と、ゴールに向かって話を進めることのできる確実性が必要です。
初めに、商談のなかで売り込みをかける最適なタイミングを決めましょう。このタイミングを前もって決めておくことが重要です。そうすれば、先を急ぎすぎて、成約のチャンスを失うリスクもなくなります。それでは、商談シナリオを作成するためのヒントをご紹介しましょう。
商談シナリオ作成のヒント
- 「ベストタイミング」を待つことをやめる:売り込みをかけるタイミングは自分で決め、そのタイミングを堅持します。
- 潜在見込み客を良い意味で不安にさせる:商談のなかで一貫して、潜在見込み客が商談をしたいと思うきっかけになった課題を強調します。
- ニーズとペインポイントをあぶり出す:潜在見込み客のニーズとペインポイントを明らかにするための質問を決めます。
- 話の切り替えをおろそかにしない:次の話題に移るときは、無理なく自然な流れを意識します。
- 提案する製品やサービスの必要性を認識させる :貴社の製品やサービスが必要であると潜在見込み客が自ら気付くような質問をします。
- 製品の提案を聞きたいと思わせる質問をする:通常、これが最後の質問になります。潜在見込み客が断りたくなくなるような決め手となる質問をします。
- 売り込みをかける:ここまで時間をかけて、商談を組み立ててきました。自然な営業トークで成約を勝ち取ります。
何をいつ質問するかを決めましょう。基本の商談シナリオを作成し、都度、商談に合わせて微調整します。このシナリオがあれば、いつでも準備周到で計画どおりに商談を前に進めることができます。
ステップ1:「ベストタイミング」を待つことをやめる
現在の営業担当者が抱える大きな問題の1つは、潜在見込み客との信頼関係に頼りすぎている点です。信頼関係を築くことは確かに重要ですが、それだけで成約を獲得することはできません。
営業マンとして友人を作ることが目的なら、それでも良いでしょう。しかし、顧客を増やしたいのであれば、製品のプレゼンテーションを正しい方向へ導くシナリオを作成する必要があります。
タイミングに頼った営業戦略を脱して、自ら戦略を組み立てましょう。
売り込みをかけるタイミングが決まっていれば、それをうまく活かせるように残りのシナリオを作成できます。
ステップ2:潜在見込み客を良い意味で不安にさせる
スマーケティングのプロセス全体が重視しているのは、顧客のニーズと目標です。それなのに、潜在見込み客を不安にさせるなんてとんでもないと思われるかもしれません。しかし、これは完全に理にかなった方法なのです。
何かを買うということは、感情的な判断ですが、その裏には論理があります。何かが欲しくて必要だから買うというのが普通の考え方ですが、そうとは限らないのです。
その良い例が運動です。何十年もの間、科学的な見地から運動のメリットが説かれてきました。しかし、見た目が良く健康になりたいと思っていても、実際に運動をする人はほとんどいません。
健康的な生活を送るためには運動が必要だとわかっていても、私たちの多くは現状に満足し、運動なんてお金や時間の無駄だと思っています。何か現状を変えるきっかけがない限り、その考えを改めることはありません。
そのきっかけは、健康面の問題かもしれませんし、魅力的な外見になりたいという願望かもしれません。理由はどうあれ、考えが急に変わり、何かを始める必要があると感じるのです。
このときが、スポーツジムの経営者にとって最高のチャンスです。ジムの会員割引や早く入会することのメリットを説明して、入会を勧めることができます。
営業担当者の仕事の一つは、変化が必要であると潜在見込み客に気付かせ、そのためにあなたの製品が最適であると納得してもらうことです。
ステップ3:ニーズとペインポイントをあぶり出す
事前の準備が十分であれば、商談の相手とその企業について多くの情報を手にしているはずです。
ですから、商談の最初の段階で必要なことは、潜在見込み客のニーズとペインポイントを見極めることです。
下調べの段階で、ある程度見当がついているかもしれませんが、潜在見込み客は、別の理由で商談を求めてきたのかもしれません。
多くの場合、商談の相手は、営業担当にプレッシャーを与える術に長けた経営者や経営幹部です。プレッシャーに負けて、すぐに自分自身や自社について話し始めてはいけません。まずは向こうの情報を集めることです。たとえば、次のような質問をしてみます。
- 「このプロジェクトで御社が目指しているゴールは何ですか?」
- 「弊社のサービスや製品によって、御社の業務にどのような効果が生まれることを期待していますか?」
- 「プライベートとビジネスでどのような目標を達成したいとお考えですか?」
- 「御社はマーケットでどのような状況に置かれていますか?」
- 「5年後には、どのような目標を達成していたいと思われますか?」
「はい」や「いいえ」で答えられるような質問は避けてください。質問の意図は、相手が抱えている問題について詳しく話してもらうことです。「つまりそれが今の優先課題ですね?」というような問いかけは、商談の始まりとしてあまり良いとはいえません。
私のお気に入りの方法は、サービスや製品を購入した状況を潜在見込み客に想像してもらうことです。具体的には、このような質問をします。「このソフトウェアをもう買ったと考えてみてください。導入から実際の利用を始めるまでの理想的なシナリオはどのようなものになりますか?」
このシンプルな質問で、潜在見込み客がどのようにあなたの会社のエンジニアと協力し、何を製品に期待しているかを引き出すことができます。
うまくできれば、潜在見込み客のペインポイントとニーズの両方を正確に知ることができます。潜在見込み客の痛みがわかったら、そこに手を添えましょう。
ステップ4:話の切り替えをおろそかにしない
情報を収集する段階から、潜在見込み客のニーズを意識させる段階へと急に話を進めるのは禁物です。相手にあなたが営業マンだということを思い出させる軽率なやり方です。その結果、せっかく打ち解けた雰囲気を作って下げた相手のガードが再び上がり、商談を進めることが難しくなってしまいます。
そのような失敗を避けるためには、前の段階で収集した情報をまとめることで、商談を展開させます。たとえば、次のような言葉で語りかけます。
「わかりました。コストを下げて、事業の収益性を高めたい、また、製造プロセスを最適化したいというお考えですね」
このように発言することで、あなたが潜在見込み客の状況を理解し、親身になっているということを示すことができます。また、潜在見込み客が言い忘れていたことを思い出すきっかけにもなります。
ステップ5:提案する製品やサービスの必要性を認識させる
この段階になると、あなたの製品のどの機能が潜在見込み客の問題を完全に解決できるかがわかっているはずです。しかし、そのことについて話すのは、まだ早すぎます。情報の収集を続けてください。この段階では、次のような質問を投げかけてみましょう。
- 「目標を達成するために、克服しなければならない課題は何ですか?」
- 「平均的な1日の業務のなかで最も嫌なことは何ですか?」
- 「業務のなかで何かを変えられるとしたら、何を変えますか?」
- 「弊社の製品を購入されるとしたら、どの機能が決め手になりますか?」
- 「どんな製品があったら良いと思われますか?」
- 「このプロジェクトは、いつ始めたいとお考えですか?」
こういった質問を投げかけることで、どの程度真剣に変化を必要としているのか、どの程度急いで変化する必要があるのかを潜在見込み客に気づいてもらうことができます。また、この商談を求めるきっかけになったプライベートやビジネス上の理由を再認識してもらうことになります。
ステップ6:製品の提案を聞きたいと思わせる質問をする
この段階になると、潜在見込み客は、あなたの製品がどのように問題を解決できるのかを聞きたくなっています。そろそろ、製品の素晴らしいメリットの説明を始めるときだと思われるかもしれません。ところが、まだそのタイミングではないのです。
ここで、入念にワンクッションをはさむことで、潜在見込み客にあなたのソリューションを知りたいと思わせるための最後のひと押しを加えることができます。たとえば、このように問いかけます。
「弊社のソフトウェアが[潜在見込み客の課題]を解決し、[推測した期間]以内に[潜在見込み客の目標]を達成できるとしたら、どう思われますか?ご興味はありませんか?」
さあ、これであなたの製品を紹介して、潜在見込み客の心をつかむ準備が整いました。優れた品質、手頃な価格、実用性を大いにアピールしましょう。
ステップ7:売り込みをかける
ここまで、最後の売り込み文句の効果を高めるために、商談の各段階を念入りに計画してきました。自然に商談を終え、潜在見込み客から簡単に良い返事を引き出すことができるはずです。
ご覧のとおり、このシンプルな方法はどんな商談にも応用でき、成約の確率をぐんと高めることができます。
自分の言葉で質問と話の切り替えを作り、あなただけのシナリオを作成して、自然なトーンで話せるようになるまで練習を重ねましょう。この方法で、会話の一つひとつに意味を持たせ、商談を効果的に前に進めることができるようになります。