顧客の信頼を醸成する「ソリューション営業」実践ガイド

無料ダウンロード: 日本の営業に関する意識・実態調査2022
水落 絵理香(みずおち えりか)
水落 絵理香(みずおち えりか)

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「商品の魅力を伝えているつもりなのに受注されない」

顧客の信頼を勝ち取る「ソリューション営業」実践ガイド

「最後にはディスカウントを要求されてしまう」

このように営業で壁にぶつかっている時は、顧客の課題や問題点を把握できていない可能性があります。

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そんな中で注目されているのが「ソリューション営業」です。

ソリューション営業とは、顧客の抱える課題や問題点を把握し、それをどのように解決するかの提案をする営業スタイルをいいます。顧客の課題の把握から解決策の提案は、営業の基本とも言える流れですが、ソリューション営業は既に顕在化している課題ではなく、「潜在的な課題」を顧客へのヒアリングを元に浮き彫りにし、根本的な問題解決を図ろうとする点が大きく異なります。

特に、BtoB商材や不動産などの高額なBtoC商材の場合、顧客はなんとなく解決したいことは知っていても、何が課題なのか、どんな解決策があるのかまで言語化できていないケースが少なくありません。その中で、ヒアリングから潜在的な課題を言語化するソリューション営業は高い効果を発揮します。

この記事では、ソリューション営業が必要となる背景から、実際に導入するためのステップや必要なスキルを解説します。

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    営業スタイルには、ソリューション営業以外のほか「プル型営業」や「プッシュ型営業」があります。

    プル型営業とは、セミナーやWEBサイトを通じた顧客側からの問い合わせなどの顧客側からの働きかけをもとに進める営業スタイルです。また、プッシュ型営業とは「テレアポ営業」や「飛び込み営業」が主な営業手法であり、営業からの働きかけによって顧客のニーズを喚起するという営業スタイルのことを指します。

    どちらも顕在化している課題に対して自社の商品を解決策として提案する営業方法ですが、ソリューション営業とは「潜在的な課題を顧客とともに形成し解決する」という点が異なります。
     

    なぜソリューション営業が必要とされるのか

    まずは、ソリューション営業が必要とされる理由や背景についてお伝えしましょう。
     

    顧客が求めているのは商品ではなく課題解決だから

    なぜソリューション営業が必要とされるのか

    参考: 無敗営業「3つの質問」と「4つの力」|高橋浩一

    ソリューション営業は顧客を理解し顧客とともにニーズを形成し、商品ではなく課題に対する解決方法を提案する営業方法です。ソリューション営業が必要とされている背景は、以下の2つの特徴があります。

    • 人は第三者の話を「聞くこと」より第三者に「話すこと」を好む
    • 人は「他人」よりも「自分の言葉」に説得されやすい

    実際に顧客が営業担当に求めることを調査したデータでは、「顧客のことを理解し、営業しようという姿勢がある」「押し付けではなく、要件に合った提案をしてくれる」「知識や引き出しが豊富である」の3つが重視されています。上位3つを見ると、商品そのものの魅力よりも、営業担当者の顧客理解の深さが重視されます。

    そのため、ソリューション営業では、単なる商品紹介ではなく、顧客の抱えている課題の定義から始まります。ソリューション営業では顧客を理解したうえで、商品ではなく課題の解決策を提案するため、成約につながりやすくなります。
     

    ディスカウントや差異化が難しくなるから

    ソリューション営業が必要となる背景の1つに、現代ではあらゆる商品やサービスには競合や代替案が溢れており、差異化が難しくなっているという点があります。

    しかし、ソリューション営業では顧客も気づいていない課題を発見し、提案を行うため、独自の価値を感じてもらうことができます。提案そのものに自社商材を結びつけることで、差異化ができ、値下げなども求められにくくなるのです。
     

    ソリューション営業の4つのステップ

    ソリューション営業の4つのステップ1

    ソリューション営業には、4つのステップがあります。ここからはそれぞれのステップでのポイントについて解説します。

    • Step1:現状把握
    • Step2:問題抽出
    • Step3:課題形成
    • Step4:課題解決
       

    Step1:現状把握

    現状把握は「提案や課題形成に必要な顧客の客観的な事実を確認すること」をゴールとして実施します。この段階では「状況質問」と呼ばれるクローズドな質問をメインに行います。

    状況質問は相手の知っていることをこちらが聞く質問であり、かつ「売り手にとってメリットがある問い」です。そのため、顧客側の負担を減らすために質問の数を絞り、事前に調べられることは先に調べておく必要があります。
     

    Step2:問題抽出

    ソリューション営業の4つのステップ2

    参考: 無敗営業「3つの質問」と「4つの力」|高橋浩一

    問題抽出では、買い手の感じている不完全な状況や現状の不満を聞きます。この問題抽出を行うためにする質問を「問題質問」といい、顧客にとって顕在化されている課題や問題点を明らかにします。

    課題をヒアリングで明らかにする際には、「担当者自身が困っていること」よりも、「会社が抱える課題」に関するヒアリングが不十分なことが多いです。

    営業担当者からすると、課題を聞く質問はしづらいと感じる場合があるでしょう。しかし、顧客からすれば「会社が困っている課題や悩んでいること」に関するヒアリングはアンケート回答者の半数以上が不十分と感じており、提案や課題感の不満足感につながっています。

    問題質問をして答えてもらったときには、営業担当者は商品を紹介し、クロージングしたくなるかもしれません。しかし、問題点を改善したいという強い顕在ニーズにはなっていないため、商談が成立しなくなります。
     

    Step3:課題形成

    課題形成では、問題抽出で得た潜在ニーズを顕在ニーズに引き上げます。

    課題形成で行う質問を「示唆質問」といいます。示唆質問の効果は、「商談の大型化」「無関心な買い手のニーズの顕在化」「不利な商談でも有利に展開できる」などが挙げられます。

    課題が明確になっても、顧客にとっては課題の重要度や解決する必要性までは判断できません。そのため、課題形成では「この問題を放置しておくと将来大変な問題点に発展してしまう」という認識を顧客に持たせることが重要です。

    示唆質問をするためには、より課題を自分ごととして認識してもらう必要があるため、顧客の仕事の流れや手順への理解が必要です。
     

    Step4:課題解決

    課題解決とは、顧客が気づいた問題が解決したときに得られる、望ましい状態とはどのような状態かを確認することです。そこで、課題解決では「問題解決への強い欲望」を顧客に感じてもらうことが重要です。

    課題解決で行う質問を「解決質問」といいます。解決質問には「顧客により大きな付加価値に気づいてもらう」「買い手の顕在ニーズを繰り返し、その内容を確認する」「自らニーズを表明してもらい、その内容や重要性を明確化する」というステップがあります。

    課題解決では、営業側が自社にとっての利益を伝えてしまうと、営業トークになってしまいます。そのため、課題解決の段階では、顧客側に課題を解決した際に得られる利益を語ってもらうことが重要です。
     

    ソリューション営業に求められる4つのスキル

    ソリューション営業は、商品説明やカタログのプレゼン能力だけではなく様々なスキルが必要です。ここからは、ソリューション営業で必要は4つのスキルについて解説します。
     

    1. 課題を把握する「ヒアリング力」

    マクロミルパネルのインターネット調査によると、「営業担当者に失望して発注を控えるとしたら何が不満なのか」というアンケートに対して「営業担当者として要件のヒアリングが不十分、課題の把握ができていない」という点が、失望理由として最も多く挙げられています。

    ソリューション営業に求められる4つのスキル

    参考: 無敗営業「3つの質問」と「4つの力」|高橋浩一

    ソリューション営業の基本はヒアリングであり、流れも全て質問によって構成されています。質問力を高めるためには、枕詞の活用や質問の役割を分けるなど、不快感を与えないよう配慮しつつ顧客の課題へ踏み込む勇気を持つことが重要です。
     

    2. 顧客の信頼を勝ち取る「価値訴求力」

    売り手側からのヒアリングの際には「情報を出すだけの価値がある」と、顧客側に信頼される必要があります。価値訴求力には、四象限のグラフで表現した場合、縦軸に情緒的価値と横軸に機能的価値があります。そこで顧客には両軸から価値を感じてもらうことが重要です。

    情緒的価値とは、人柄や話やすさ、人当たりのよさといった営業マンの属人的な能力が求められます。一方で、機能的価値とは、課題に対する知見やレスポンスの速さなどの営業マンとしての機能的な価値があげられます。情緒的価値は慣れや経験が必要ですが、機能的価値は身につけやすく、習得しやすいでしょう。

    価値訴求力がないと、ヒアリングで質問がうまくいかなかったり、担当者からキーマンを紹介してもらうこともできません。提案構築だけではなく、顧客に価値があると感じてもらうための価値訴求力を高めておきましょう。
     

    3. 選ばれるための提案構築力

    ソリューション営業のよくある失敗例の1つに、顧客の解決したい課題と提案がずれてしまうことがあげられます。

    提案がずれてしまう原因は、「営業担当者と顧客の要件が噛み合わない」「顧客の考えがまとまる前に提案を出してしまう」などです。提案構築をするには、要件を整理する必要があり、網羅性と具体化、優先順位を意識してまとめることが重要です。

    また、ソリューション営業の対象となる商材の場合「他社に頼む」「あとでもよい」「内製化できる」など、売り手にとってマイナス要因になりうる回答も念頭に置くことでより効果的な提案を構築できます。
     

    4. 提案を実行する提案行動力

    ソリューション営業の対象となる商材は、担当者と決済者が異なることや決済までのリード期間が長いことが多いです。そのため、意思決定までの段取りを効率良く進める提案行動力が必要です。

    提案行動力を高めるためには、「商談の前後のコミュニケーション量」「社内を巻き込むタイミングが早く、提案の完成度を顧客とともに高めること」の2点が重要です。

    提案行動力はメール返信や定期的な打ち合わせ、進捗確認などの地道なアクションが多いです。しかし、より精度の高い提案を構築するには、提案行動力が必要不可欠となります。
     

    ソリューション営業の実践例(HubSpot)

    ソリューション営業の実践例(HubSpot)

    HubSpotはCRM(顧客管理システム)プラットフォームを提供する企業です。HubSpotは「営業全員がインサイドセールス」の組織でソリューション営業力を強みとした結果、2020年の顧客数は前年比85%と大幅に成長しています。

    HubSpotでは、インバウンドという営業活動全体の中で先にお客様へ価値を届けて信頼関係を構築して、お互いが成長できる状態を目指す思想を重要視しています。そのため、お客様を知ることや情報を惜しまず提供すること、「Give」の精神を徹底できるような営業活動の全体設計をしています。

    例えば、顧客の検討度合いや情報量によって知りたい情報は異なります。そのため、顧客が見ているコンテンツや市場の動向、必要であれば競合の情報など必要な情報を必要なタイミングで提案できる状態にしているのです。

    また、商談前には「どんな情報を求めているのか」「何を質問しておきたいのか」という期待値を調整することが重要です。例えば、情報収集段階の顧客に対しては無料ツールの紹介や情報提供のみで商談を終えることもあります。

    インバウンドの思想を実現するために、HubSpotではマーケティング、営業、CSなどが一貫したKPI(重要業績評価指標)管理や情報提供を行っています。自社の商材を売ることよりも顧客にとって最良の提案をすることを第一に考えているため、信頼関係を構築しやすく営業成績にも結びつけることが実現できているのです。
     

    ソリューション営業の鍵は「顧客目線の提案」

    ソリューション営業は、「売る側」「売られる側」という関係ではなく、顧客にとって課題を解決する「パートナー」になれるのが大きな特徴です。

    ソリューション営業のプロセスには、先ほども紹介したとおり「現状把握」「問題抽出」「課題形成」「課題解決」の4つのステップがあります。顕在化している課題ではなく潜在化している課題を扱うため難易度は高いですが、実践できれば顧客にとってなくてはならない存在になるでしょう。

    ソリューション営業を成功させるためには、「セールストークの上手さ」「価格の安さ」などの売り手側の視点よりも「顧客の問題は何か」「顧客が解決したいことは何か」という顧客側の視点を持ち「解決策として自社の情報を提供する」という顧客起点のコミュニケーションが求められるのです。

    HubSpotではこの他にもマーケティングやセールスに役立つ資料を無料で公開していますので、ぜひこちらからご覧ください。

     

    HubSpot年次調査:日本の営業に関する意識・実態調査2022

    トピック: 営業戦略

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