請求書は取引先(企業や顧客)へ提供した商品やサービスの対価を要求し、お互い納得した形で支払ってもらうために発行します。請求書に「何に対する支払いなのか」「いつまでにいくら支払うのか」など、支払いに必要な情報を記載することにより、企業間のトラブルを未然に防ぐことができます。
取引に欠かせない請求書ですが、フォーマットを自作したり、テンプレートを利用したりして都度工数をかけている企業は多いでしょう。請求書を発行する際は、専用ツールを利用すると「業務効率化できる」「記載ミスが防げる」などのメリットがあります。さらに一部の請求書では、マーケティングや営業、カスタマーサービス部門との連携ができる機能も登場しています。
本稿では請求書の役割や関連制度、作成事例、専用ツールについて説明します。改めて請求書を発行する意味を整理しておきましょう。
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請求書の基礎知識
請求書は目にする機会の多い書類ですが、請求書の書き方や制度上での意味合いまで理解されている人は少ないのではないでしょうか。ここで改めて、担当者として知っておくべき基礎知識を解説します。
請求書とは
請求書とは「商品やサービスの代金などの支払いを請求する書類」を指します。発行の目的は「ビジネス上の取引の証明」であり、請求元、請求先双方の内容確認によりトラブル発生を防ぐ効果があります。また備考欄や特記事項の欄に項目や金額に関する補足を行えるため、支払内容の認識齟齬の防止が図れます。
なお、金額によらず収入印紙を貼る必要はありません。請求元、請求先が合意していれば電子ファイル(PDFファイルなど)でも正式な請求書となります。税務調査でも電子データ、紙両方の請求書が認められています。
インボイス制度と適格請求書
請求書を作成する際、消費税は正確に記載しなければなりません。2020年現在の消費税制度では、10%を基本に軽減税率(8%)の複数税率が施行されています。請求書を発行するときには項目別に対象税率を明記します。
請求元から請求先へ正確な適用税率や消費税額などを明確に伝えるため、適格請求書等保存方式(インボイス制度)が2023年に導入される予定です。現在は暫定期間として、区分記載請求書等保存方式が導入されています。
- 請求書等保存方式:~2019年9月30日
- 区分記載請求書等保存方式:2019年10月1日~2023年9月30日
- 適格請求書等保存方式:2023年10月1日~
適格請求書等保存方式の導入後は、適格請求書発行事業者の登録を行った課税事業者が適格請求書を発行できます。仕入税額控除(売上にかかる消費税から仕入にかかる消費税を控除)の際に適格請求書が必要となります。
請求書の基本的な書き方
請求書発行時には、必要項目を漏れなく正確に記載する必要があります。「ビジネス上の取引の証明」ですので、事前に相互確認した上で記載ミスのないように作成しましょう。国税庁のホームページに、記載事項や発行の仕方の説明がありますので参考にしてみてください。
ここから、請求書の各項目の記載内容を簡単に説明します。
・書類名
書類の先頭に「請求書」と明記します。
・請求先
企業の場合は会社名を記載します。可能であれば、会社名に加えて所属部署名と担当者名も記載する方がよいでしょう。
【記載例】
〇〇〇 株式会社 御中
〇〇〇 株式会社 営業部 △△△ 様
・件名
品名が複数ある場合、請求書の件名を記載すると何の請求か分かりやすくなります。
【記載例】
〇〇〇キャンペーン販促ツール一式
〇〇年△△月度 業務委託費のご請求
・請求元(発行者)の氏名又は名称
企業の場合は会社名を記載します。合わせて住所と電話番号、FAX番号などを記載します。担当者も記載する方がよいでしょう。なお社印は押さなくても構いません。
・発行年月日
基本的に事前に請求先と合意を得た日付を記載します。
・発行番号
発行番号の記載は必須ではありませんが、請求書の内容の相互確認を行う場合やツールでの管理の際に紐付けするときに役立ちます。
・取引内容
商品名、サービス料、作業費用など、請求元と請求先で相互確認した名称を記載します。
・請求金額(消費税や源泉徴収金額も記載)
商品ごとの単価と数量、税抜きの小計、消費税を合算した金額を記載します。合計は大きく目立つように記載します。金額は3桁ごとにカンマ(,)を入れて容易に確認できるようにしましょう。なお、請求先で源泉徴収を実施している場合は源泉徴収額をマイナス表記で記載します。
・支払い方法(振込先など)
支払い方法が銀行振込の場合は、振込に必要な情報(銀行名、支店名、口座番号、口座名義)を記載します。振込手数料の負担については、事前に相互確認をしておきましょう。
・支払期限
会社事前に相互確認をした上で支払い期限を記載します。
・備考、特記事項
必要に応じて補足情報を記載します。
業界別:請求書の作成事例
請求書に記載する項目の中で、取引内容(商品名、サービス料、作業費用など)の記載は業界や業種によって異なります。記載の仕方が一般的でない業界をピックアップして説明します。
ソフトウェア業界
出典:エンジニアの請求書の書き方について | 請求書の書き方|マネーフォワード クラウド請求書
ソフトウェア開発を請け負う場合には、納品物はシステムです。よって商品名(品名)は「システム設計」や「システム構築」などの記載が一般的です。合わせて費用の算出式(作業時間×時間単価)も記載して根拠を示します。
より親切な対応として、「システム構築」を「システム設計」、「データベース構築」、「コーディング」、「取扱説明書作成」、「テスト作業」などに細分化して、個別に費用を記載することもあります。
デザイン業界
出典:デザイナーの請求書の書き方について | 請求書の書き方|マネーフォワード クラウド請求書
デザイナーは、雑誌などの紙媒体、Webサイトなどのデジタル媒体向けにデザインを創作して納める仕事を請け負います。デザイナーの仕事の納品物はデザインです。
品名の記載では、媒体を記載します。例えば「カタログデザイン」、「パンフレットデザイン」などになります。なおフリーランス(個人事業主)にデザインを依頼する場合は、所得税法により源泉徴収の対象となるため、請求書にも正しく記載します。
請求書作成ソフトの紹介
請求書はエクセルやワードで作成できます。無料で使用できるテンプレートも多数あるので、うまく活用すればすぐに請求書が作成できます。
しかし、請求書発行と会計・経理作業の連携効果を得るなら、作成支援ツールを活用しましょう。使い勝手の良さ、管理工数を削減するためにツールを導入する企業が増えています。
会計freee
会計freeeで作成した請求書の情報は、自動的に売掛金として登録されます。請求書の郵送代行も1クリックで行えます。また振込銀行と会計freeeを同期させることにより、入金確認作業も楽になります。
会計freeeであれば、外出中などすぐにパソコンを開いての対応が難しいときでも、スマートフォンで請求書の発行が可能です。
《料金プラン》
ミニマム | ベーシック | プロフェッショナル | |
---|---|---|---|
月額料金 | 1,980円/月 | 3,980円/月 | 39,800円/月 |
ユーザー数 | 3名まで | 3名まで (有料で追加可能) |
10名まで (有料で追加可能) |
※2020年8月時点の法人向け、年払いプランでの月額料金(税抜)
マネーフォワード クラウド請求書
誰でも簡単に作成が可能なクラウドの採用により、場所を選ばないスピーディーな発行作業を実現しています。
メールによる電子送付の他、郵送代行サービスがあり、ワンクリックで請求先への送付が可能です。納品書を請求書に、請求書を領収書に変換できるため、作業時間の短縮、および転記ミスをなくすことができます。さらにマネークラウド会計・確定申告とのデータ連携により、請求書作成と同時に支出データが記帳され、会計作業を軽減することができます。
《料金プラン》
スモールビジネス | ビジネス | エンタープライズ | |
---|---|---|---|
月額料金 | 2,980円/月 | 4,980円/月 | 問い合わせ |
ユーザー数 | 3名まで | 無制限 | 無制限 |
部門登録 | 2部門まで | 無制限 | 無制限 |
※2020年8月時点の法人向け、年額プランでの月額料金(税抜)
Misoca
請求書の他、納品書、見積書を「1分で作成」が売りのツールです。
見積書から請求書を作成する機能があるため、作業時間の短縮、転記ミス防止を実現します。豊富なデザインテンプレートが用意されており、ビジネスにあったフォーマットを選択できます。
パソコンだけでなく、タブレットやスマートフォンによる操作も可能なため、お客様からの急な依頼にもその場で対応できます。なお、AWS(Amazon Web Services)を利用しており、通信の暗号化や自動バックアップにより安全なシステム運用を実現しています。
《料金プラン》
個人向け | 小規模の法人向け | 複数人で管理したい法人向け | |
---|---|---|---|
料金 | 期限なしで無料 | 1年間無料 (8,000円/年) |
1年間無料 (30,000円/年) |
請求書作成可能数 | 5通まで/月 | 15通まで/月 16~1,000通(1通につき70円) |
100通まで/月 101~1,000通(1通につき70円) |
ユーザー数 | 1名 | 同時利用2名 | 同時利用5名 |
※2020年8月時点の年間料金(税抜)
BtoBプラットフォーム請求書
請求書の発行だけでなく、受け取りも含めた企業間の請求書処理を電子化したクラウドツールです。利用企業数が多いため(453,783社、2020年8月時点)取引先が導入していれば大きな業務効率化が期待できます。
請求書の発行側・受け取り側のデジタル化により、印刷や押印、封入作業などの手作業の削減だけでなく、請求書の受け取り側の手間も減らせます。また自動仕分け機能により経理業務を軽減し、ファイリング業務も不要になります。
《料金プラン》
フリープラン | シルバープラン | ゴールドプラン | |
---|---|---|---|
月額固定費 | 無料 | 10,000円/月 | 30,000円/月 |
ユーザー数 | 無制限 | 無制限 | 無制限 |
電子契約 (契約締結) |
フリープラン同士なら5件まで | 電子契約1通につき50円 | 電子契約100通まで無料 101通以上(1通につき50円) |
※2020年8月時点の月額プランでの月額料金(税抜)
MakeLeaps
請求書をクラウド上で作成するツールで、区分記載請求書等保存方式とセキュア送信に対応しています。また印刷や封入、投函の郵便代行機能もサポートしています。
銀行口座と連携することにより、銀行側からの入金日・入金額・振込名義の情報をMakeLeapsに取り込むことができます。この機能により、対応する請求書を自動的に呼び出して入金消込を簡単に行うことができます。クラウド化によりWeb上での承認や確認を実現しており、部門間の連携が容易になっています。販売管理システムと連携した請求書送付も可能です。
《料金プラン》
無料プラン | 個人プラン | 法人プラン | |
---|---|---|---|
月額料金 | 0円 | 500円/月 | 800円/月 |
ユーザー数 | 1名 | 3名まで | 無制限 (ユーザーが増えるごとに月額+800円) |
取引先 | 3社まで | 10社まで | 無制限 (取引先が増えるごとに月額上乗せ) |
※2020年8月時点の月額プランでの月額料金(税抜)
当社HubSpotでは、すぐに使える無料の請求書テンプレート(Googleスプレッドシート)を公開しています。詳しくはテンプレート内の「使い方」シートに使用方法が記載されていますが、ここで簡単に使い方を説明します。
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請求書発行時の注意点
請求書発行の主な目的は、請求項目と請求金額を取引相手に合意していただくことです。請求書発行前に行われている商品の納品やサービスの提供に新たな問題が発生してなければ、相互の事前確認に変更がないため、請求書発行時に問題が起こることは少ないでしょう。
もし、問題や変更点があれば、改めて相互の確認作業を行い、変更点を請求書に反映する必要があります。
請求書発行という顧客と企業との接点において、納品物に対する評価や新たなニーズのヒアリングなどフォローアップの機会として活用すべきです。顧客とのコミュニケーションをしっかり行い、適切なタイミングで請求書を発行しましょう。よきビジネスパートナーとして信頼関係の構築につながります。
まとめ
請求書の記載項目の説明と業界別の請求書の事例、テンプレートを通じて請求書の基本を理解していただけたと思います。取引先ににとってタイミングよく請求書を交付するため、また記載ミスをなくしつつ、経理・会計業務の負担を軽減するために専用ツールの活用は欠かせません。
「HubSpot」と「会計freee」のデータ連携により、請求書を作成する際にはCRM(顧客関係管理)、商品マスタなどを参照して請求書が作成できます。つまり、効率的で属人化しない請求書を発行できます。詳しくはHubSpotのWebサイトをご確認ください。