営業担当者がどんなに優秀かつ仕事熱心で粘り強い人物だったとしても、時間の制約がある以上、達成できる収益には限界があります。中には1日の限られた時間を利用して平均の2倍もの売上を達成できる優れた営業担当者もいるかもしれませんが、1 人の力ではそれが限界です。

しかし、これが営業部門のマネージャーであればどうでしょうか? メンバーの潜在能力を引き出せば、収益を大きく伸ばせる可能性があります。仮に10人の部下がいるとして、営業成績を1人あたり20%伸ばすことができれば、新しい営業担当者を2人採用したのと同じだけの成果を得られます。それだけに、営業部門のマネージャーの仕事は非常にやりがいがあると同時に困難なものでもあります。

このガイドでは営業部門のマネージャーの皆様を対象に、マネジメントに必要な知識を解説します。内容は以下のとおりです。

営業部門のマネージャーの役割

営業部門のマネージャーにとって何より重要なKPI(重要業績評価指標)は売上です。自分の部下である営業担当者が部署の売上目標を達成すれば、マネージャーとしての評価は上がり、目標を達成できなければマネージャーとしての評価は下がります。

もちろん、マネージャーの役割は売上目標を達成することだけではありません。どんな役職にも当てはまることですが、会社の規模や扱う製品、ビジネス戦略、部下となる営業担当者の人数などによって役割は変わってくるものです。とはいえ、一般的には次のような役割を担うことになります。

  1. チームメンバーに対する、行動やスキル、営業手法についてのコーチング提供
  2. 新たに採用した営業担当者のトレーニングと研修
  3. 新しい営業担当者の採用
  4. 営業部門と経営陣の橋渡し
  5. 月別、四半期別、年度別の営業成績の予測
  6. 営業レポートや売上レポートの作成
  7. 営業プロセスの評価と改善
  8. 必要に応じたチームメンバーの支援

営業部門のマネージャーにふさわしい人物とは

営業部門のマネージャーのほとんどは、一般の営業担当者として優れた営業成績を収めた後、マネージャーに昇進した人です。昇進してマネージャーになることにはメリットもデメリットもありますが、営業担当者としての経験があり、チームメンバーの業務への理解を示すことができれば、メンバーからの信頼を得やすくなります。

その一方、マネージャーに求められるスキルは一般の営業担当者とは大きく異なります。一般の営業担当者が対人スキルやコミュニケーション能力、時間管理能力やガッツを求められるのに対し、マネージャーに求められるのは組織管理能力やリーダーシップ、そしてデータ分析の能力です。

最近では、大卒以上の学歴がなければ営業部門のマネージャーになるのは困難になってきています(ただし、10年以上の実務経験があれば、学歴不問となる場合もあります)。

営業部門のマネージャーの日常業務

では、営業部門のマネージャーは日々どんな業務を担当しているのでしょうか? ここでは主な業務を取り上げていきます。

チームメンバーのコーチング:これはマネージャーの業務の中でも特に重要なものと言えるでしょう。メンバーが自分の能力を最大限に発揮できるよう、具体的には改善点の特定、新たなスキルの指導、実際の業務でよくある状況を想定したロールプレイによる研修、関連リソースの提供、メンターとなる先輩担当者とのマッチングなどを行います。近年では定期的な「1on1ミーティング」を設定して、このようなコーチングを行っている営業組織も多いでしょう。

人材の採用:優秀なマネージャーは、部署の新しいメンバーになりそうな人材を常に探しているものです。優秀な人材が揃わなければ目標達成はどうしても難しくなります。採用活動をコンスタントに行うことで常に候補者のパイプラインを持ち、メンバーの入れ替えや増員のタイミングを乗り切れるようになります。SNSのチェックや採用候補者との面談などの採用活動に、毎日1時間は充てるようにしましょう。

チームメンバーの観察:部下の状況をよく観察することで、問題の芽を早期に摘み取ったり、成果につながる手法や新たな戦略を発見して部署内で共有したり、メンバーが対応している案件についての重要な情報を手に入れたりすることができます。実際の営業プロセスにもよりますが、チームメンバーの電話の内容にそれとなく注意を向けたり、ミーティングに同席したりするとよいでしょう。

他の部署とのミーティングや連携:営業部門の活動は事業運営に関するほぼすべての側面に影響を与えるものなので、マーケティングや製品開発、カスタマーサービスなどの関連部門と常に意思統一を図ることが必要です。また、営業を統括する経営陣との打ち合わせを定期的に行い、部署の業務状況について情報を共有することも重要になります。

レポートの作成:マネージャーの業務の中でも重要な位置付けを占めるのが、レポートの作成とデータの分析です。目標の達成状況や、週別、月別、四半期別の売上の見通し、取引が失注になった時期、新規の案件数の減少、平均成約率の推移など、さまざまなデータの分析が必要になります。部署全体の成績だけでなく、担当者別の営業成績も分析の対象に含めた方がよいでしょう。各担当者のノルマの達成状況や、現在の業務量と状況をチェックすると共に、取引の成約ペースが通常時と比べて速かったり遅かったりしないかにも注意します。

時間管理のコツ

チームメンバーのフォローに追われていると、あっという間に1日が過ぎてしまいます。営業部門のマネージャーとして成果を出すには、時間管理をマスターする必要があります。

私の知り合いで営業部門のマネージャーを務めている人の中には、Slackのようなチャットツールを使わず、代わりにEメールを使って、業務時間中にのみ部下の質問に答えている人が少なくありません。このようなアプローチについて、営業コンサルタントのJeffrey Hoffman氏は高い評価を寄せたうえで、次のように説明しています。「チャット等のインスタントメッセージツールは『後入れ先出し』、つまり新しいメッセージほど返信を得るのが早くなる傾向があります。これでは非生産的かつ不公平です」

またチームメンバーに対して、自分と相談したいことがあるときはスケジュール管理ツールで時間を予約するか、業務時間中に自分のデスクに来るように依頼することで、メンバーは自力で問題を解決できない場合にのみ相談に来るようになります。その結果、メンバーが自律的に動くようになるだけでなく、自分の時間の節約にもなります。

たとえ取引の成約を逃すことになったとしても、メンバーの成長のチャンスを奪うようなことは避けましょう。メンバーを手助けすれば取引は成約するかもしれませんが、長い目で見れば、それはメンバー自身のために(も自分のためにも)なりません。このような状況では、「魚を与えればその日の糧となるが、魚の採り方を教えれば一生の糧となる」という格言を思い出しましょう。考えもなく手出しをすれば、メンバーの学びのチャンスを奪うだけでなく、また同じことが起きた場合に手助けが必要になってしまいます。効率が悪いことはもちろん、メンバーが「自分は期待されていない」と感じるという意味でも悪影響になりかねません。

そして、業務の優先度の設定を忘れないようにしましょう。いくつもの業務が並行して進んでいると、目に付きやすいタスクや締め切りの近いタスクから取りかかってしまいがちですが、そのようなタスクの重要度が必ずしも高いとは限りません。毎日の始業時に、業務の重要度や緊急度に応じてTo-Doリストを整理しましょう。最も優先すべき事項は、重要度も緊急度も高いタスクです。その後に重要度が高く緊急度が低いタスク、緊急度が高く重要度が低いタスクが続き、最後に重要度も緊急度も低いタスク(その日の終わりに時間があれば対応する業務)が来ます。

営業マネジメントに関する参考書籍

最後に、英語書籍になりますが、営業マネジメントに関する参考文献をご紹介します。

Coaching Salespeople into Sales Champions: A Tactical Playbook for Managers and Executives

Keith Rosen著

コーチングを通じて優秀な営業担当者を早いスピードで育て上げる方法を解説した書籍です。各種ケーススタディーや、営業成績の上がらないチームメンバーを1か月で「改造」するための戦略が紹介されているほか、コーチングに活用できる台本やテンプレート、想定問答集などが掲載されています。

Amazon.comのレビュー(抜粋・翻訳):「営業部門のコーチングに関する最高の1冊です。あまりにも気に入って20回以上も購入しており、成功のコツを質問してきた人たちにプレゼントしています。この本のおかげで私の生活は公私共に変わりました。この本を読んで著者が提唱しているコーチング法を実践するようになってから、部下の退職がなくなり売上も伸び続けています」

The Accidental Sales Manager: How to Take Control and Lead Your Sales Team to Record Profits

Chris Lytle著

営業部門の一般社員から管理職に昇進したのに、十分なサポートを得られず、新しい業務に右往左往していませんか? 本書では、一担当者から管理者に昇格した人が、マネージャーとしての新しい業務をこなしながら、昇進前の業務に追われる状態から抜け出す方法を解説します。自分が営業の先陣を切るのではなく、チームメンバーが自力で営業活動を進められるようにする方法を身につけることができます。

Amazon.comのレビュー(抜粋・翻訳):「著者の語り口は親しみやすく、読者の悩みに対する理解が感じられます。変に腰が低かったり、説教くさかったりするところは一切ありません。この本を読むとモチベーションが高まり、新しい物事を始めようとするときの不安が解消されます。また、説明が明快でひらめきを与えてくれます」

Cracking the Sales Management Code: The Secrets to Measuring and Managing Sales Performance

Jason Jordan、Michelle Vazzana著

営業部門のマネジメントについて、追うべき指標や最適化すべき業務プロセスの説明、複数の営業目標に優先順位を設定する方法まですべてをカバーした実践的なガイドです。著者の提供する参考リソースを活用することで、日々の業務の成果だけでなく年間の売上も改善できるでしょう。

Amazon.comのレビュー(抜粋・翻訳):「この本には営業マネジメントの核心が書かれており、必ずしも読みやすくはありません。営業に関する手軽なビジネス書とは一線を画したプロセス指向の本で、1回読んだだけでは理解しきれないでしょう。私は数週間後にまた読み返す予定ですが、この本の知見は時間とお金をかけるのにふさわしいものです。営業マネジメントの知識を深めようとしている中級者や上級者にお勧めします」

Sales Management. Simplified.: The Straight Truth About Getting Exceptional Results from Your Sales Team

Mike Weinberg著

本書は、営業部門が目標を達成できない場合の原因を明らかにすると共に、マネジメントのスタイルと戦術が目標達成に与える影響について説明しています。言葉を飾らない率直なアドバイスと興味深い逸話を織り交ぜた、面白くてためになる1冊です。

Amazon.comのレビュー(抜粋・翻訳):「表面的な対策や間に合わせの戦術でよければ、この本は不要かもしれません。一方、現実から目を背けたくない人や、営業活動を成功に導く習慣を身に着けるための細かいガイドラインを必要とする人には、この本が最適です」

営業部門のマネージャーの仕事は簡単ではありません。不確定な要素や困難な状況に直面し、事態の収拾に当たらなければならないことも少なくありません。それでも、適切な戦略とプロセスが確立されていれば、自信を持ってマネージャーとしての役割を果たしていくことができます。 

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元記事発行日: 2019年6月25日、最終更新日: 2019年6月25日

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