「チームの営業目標を適切に設定する方法にはどうしたら良いのだろうか」
これは、管理職になって自分のチームを持つようになると、誰もが抱える悩みです。
営業目標は、過去の成績をベースに期待値としての成長率を盛り込むだけでは、十分とはいえません。チームメンバーが心から目標を達成したいと感じ、チーム全体が活性化するような目標を立案するには、いくつかのポイントがあります。
本記事では、営業目標の立て方や注意すべきポイント、営業目標の管理法などをご紹介します。チームの営業目標設定に悩んでいる管理職の方は、ぜひ参考にしてください。
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適切な営業目標が営業チームにもたらす効果
適切な営業目標を立てることができれば、チームに次のような効果を生み出すことが期待できます。
1. メンバーが目標達成に意欲的になり、チームが活性化する
現状維持では達成できない目標でありながらも、アイデア次第では達成できると思えることで、メンバー自身が何をするべきか、アクションプランのアイデアを主体的に考えられるようになります。
個々のメンバーが意欲的になると、チーム内でも目標達成に向けてサポートし合うようになり、チーム全体が活性化します。
また、営業目標は、適度にチャレンジングではあるものの、達成見込みのあるラインであることが大切です。
2. 数的根拠をもってマネジメントできる
営業目標を考えると売上に意識が向きがちですが、売上が高い、低いだけでは適切にメンバーをマネジメントできません。
営業目標を立てる際は、新規顧客へのアプローチ数・既存顧客への訪問数・契約率・粗利など、営業プロセスを細かく分類し数値化することが大切です。そうすると、何が足りていないのかを明確に把握できるため、メンバーに対して数的根拠のある適切な営業指導ができるようになります。
仮に売上が上がっていなくても、新規顧客へのアプローチ数が目標を上回っていれば、いずれ結果は付いてくるでしょう。マネジメント層は、目標を上回った点を適切に評価することが大切です。
営業目標の立て方|目標設定に役立つフレームワーク
ここでは、目標設定に役立つフレームワークを3つご紹介します。フレームワークに当てはめて考えていくことで、適切な営業目標を設定できます。
- SMARTの法則
- ベーシック法
- 三点セット法
SMARTの法則
SMARTの法則とは、次の5つの頭文字を取った目標設定方法です。
- Specific(具体的である)
- Measurable(測定可能である)
- Attainable(達成可能である)
- Relevant(経営目標との適合)
- Time-bound(期限がある)
SMARTの法則を活用して営業目標を立てる際のポイントをまとめました。特に、Relevant(経営目標との適合)は、営業目標を大きく左右する要素になるため、部署に期待されている数値と役割はしっかりと握っておきましょう。
ベーシック法
ベーシック法とは、目標項目、達成基準、期限設定、達成計画の4つのステップで構成される基礎的な目標設定のフレームワークです。
■目標項目
「4,000万円」などの数値目標を設定
■達成基準
何をもって目標達成といえるのかを設定
■期限設定
達成期限を設定
■達成計画
達成までの具体的なプランを設定
達成計画は、目標項目をブレイクダウンして具体的に考えることが大切です。例えば、1件あたりの成約単価が80万円とすると、50件の契約で4,000万円です。1年間は約52週なので週に1件の契約を目指し、そのために必要な新規顧客へのアプローチ数や既存顧客への訪問数を逆算します。
3点セット法
3点セット法とは、テーマ、達成基準、達成手段の3つの項目を具体的に掘り下げていく目標設定のフレームワークです。
■テーマ
達成したい目標を決める。この段階では抽象的な目標で良い。
■達成基準
設定したテーマを具体的にしたもの。数値を用いると達成したかどうか確認しやすくなる。
■達成手段
具体的にした目標を達成するための行動。達成基準に到達するために、明日から何をすれば良いかがわかるまで具体的にすることが重要です。
3点セット法は、ベーシック法で取り上げられている4つの項目を深掘りしたものです。テーマから達成手段までを考えていく間に、目標が具体的になっていきます。
テーマを設定する際は、次の3つがヒントになります。
- 安正早楽(あん・せい・そう・らく)
- 安:その業務のコストを今よりも安くできないか
- 正:その業務を今よりも正確に行うにはどうしたら良いか
- 早:その業務を今よりも早く行うにはどうしたら良いか
- 楽:その業務を今よりも楽に行うにはどうしたら良いか
- 自己否定
「もし○○がうまくいかなかったらどうなるか」と、あえて否定的に考えてみます。例えば、「今期の営業目標が達成できなかったらどうなるか」と考えると、「業績給が下がるかもしれない」「部内の評価が下がるかもしれない」「モチベーションが下がるかもしれない」など、シチュエーションが具体的に浮かぶでしょう。
すると、「そうならないためには営業スキルを向上させなければ」とモチベーションが高まります。 - プロセスチェック
自分の希望を1つ設定し、それを達成するために日々の行動の中から改善点を探します。例えば、「今期は過去最大の売上を達成したい」と思ったら、営業プロセスの中から自分の希望につながるような改善点を探し出し、目標として設定します。
【具体例】〜10名の営業組織で営業目標を振り分けるときの考え方
チーム全体での営業目標を設定したら、その目標を達成するために各メンバーに割り振っていきます。どのように割り振っていくのかを具体例をもとにご紹介します。
自身が課長であり、営業メンバー全10名の部署で3,600万円の目標が会社から割り当てられている場合を例にあげてみましょう。
構成員:課長(自分)、主任2人、一般6人、新人1人
チームの割り振り:
- 主任1人+一般2人
- 主任1人+一般3人
- 課長(自分)+一般1人+新人1人
数値の割り振り方:
まず、課長(自分)の数字は考えず、主任と一般と新人の9人で数字を均等に割り振ります(1人あたり400万円)。
次に、各チームへ数字を割り当てます。
- 400万円×3人 = 1,200万円
- 400万円×4人 = 1,600万円
- 400万円×2人 = 800万円
主任と一般と新人の目標数値をチーム内でならします。
- 主任600万円、一般300万円、一般300万円
- 主任700万円、一般300万円、一般300万円、一般300万円
- 課長(自分)350万円、一般300万円、新人150万円
過去の業績や現状を加味して、割当が適切であるか、現実的であるかを踏まえて調整していきます。
企業の方針や業種によって数値の設定方法は変わりますが、会社から割り当てられた目標に対して、チーム内で割り振っていく流れは、よくある考え方です。
営業目標を立てるときに注意すべき3つのポイント
管理職がチームの営業目標を設定する際に気をつけるべきは各メンバーの「納得感」です。いかに、「こうすれば目標が達成できる」とメンバーがイメージを持てるかどうかが、目標達成に影響します。
納得感を生み出す営業目標を設定するポイントは、大きく分けて3つあります。
1. 会社の状況を理解したうえで設定する
営業目標は、会社の売上目標から逆算するのが一般的です。一方、売上目標は前年度の実績や成長率、市場の景況感を考慮して決定されます。競合他社の動向や、自社が取り組む予定の事業・商品の売上予測も影響するでしょう。
営業目標は、会社の売上目標や、その背景(なぜこのような売上目標が設定されたのか、なぜこれだけ売上を上げなければいけないのか)も理解したうえで設定しましょう。メンバーに対して目標設定の根拠を十分に説明するためには、管理職側が会社の目標を深く理解していることが不可欠だからです。
2. 同時に行動目標も設定する
営業目標が決まったら、次は行動目標に落とし込んでみましょう。まず、目標達成のために必要な受注件数を算出します。前年度のデータがあれば過去の受注実績を参考にしましょう。そこから、仮定した受注件数を達成するための営業プロセスごとの行動量を決めます。
例えば、「電話」「訪問」「提案」「見積り」「受注」というプロセスであれば、最後の受注件数から逆算することで、何件電話をかけるべきか具体的な数字が導き出されます。行動目標の数字を、月別・週別で区切ることも大切です。
3. 営業担当の経験・能力をもとに設定する
営業目標や行動目標はメンバーの経験、能力を考慮して設定しましょう。 まずチーム全体での目標を設定した後、各メンバーの能力に合わせて振り分けていきます。
目標を振り分ける際、人によっては行動目標を細かく設定した方が良い場合もあります。実績があるメンバーはそれほど細かくする必要はないかもしれませんが、経験値が浅い場合は細かく設定し、早く達成感を得られるようにした方が成果につながることもあります。
個別に目標設定したら、日次や週次で個別面談を設定し、進捗状況を確認しましょう。うまくいっていない場合はその原因を明確にしたうえで一緒に改善策を考えます。
営業目標はリアルタイム管理を徹底しよう
営業目標をメンバーのモチベーション向上やマネジメント効率化に役立てるには、常に進捗率が確認できている状態が理想です。現状把握が遅れると、フィードバックが後出しになってしまいます。
リアルタイムで進捗管理ができれば、仮にうまくいっていないメンバーがいたときに、すぐにフォローできます。うまくいっていないメンバーほど、上司に相談するのをためらうものです。マネジメント側からチームメンバーが抱える問題や悩みに気づくことで早期に課題が解決でき、信頼関係の構築にもつながります。
目標の進捗管理をする方法は次の2つがあります。
- エクセルのテンプレートを使う
- 営業支援ツール(SFA)を使う
エクセルのテンプレートを使う
エクセルのテンプレートとは、営業目標に対する進捗状況を管理するために必要な項目が、あらかじめセットされているものです。テンプレートを利用すれば、管理表をイチから作成することなく、すぐにチームの進捗管理が開始できます。
HubSpotで無料配布しているテンプレートを例に、エクセルによる管理のメリット、デメリットを見ていきましょう。
営業プロセスがどこまで進んでいるのか、進捗状況を一元管理できるのがエクセルを活用するメリットのひとつです。アポイントメント・商談・クロージング・受注までの進捗状況を管理することによって、ボトルネックの特定が可能です。営業担当者別の目標管理を同時に行うこともできます。
一方で、情報共有が難しいのがエクセルのデメリットです。誰かが編集していると情報の更新が後回しになり、最新の情報が反映されていないこともあるため、情報管理の手間がかかります。有効なセキュリティ対策がパスワード設定のみになる点も、エクセルのデメリットといえるでしょう。
営業支援ツール(SFA)を使う
SFAは「Sales Force Automation(セールス フォース オートメーション)」の略で、「営業支援システム」と呼ばれます。営業活動の可視化および効率化により見込客から顧客への醸成を支援するツールです。
受注率の向上、業務の効率化、営業プロセスの可視化など、さまざまなメリットがあります。他にもタスク管理やレポーティングなど幅広い機能が充実しており、拡張性が高く、カスタマイズが容易なのもSFAの特長です。
エクセルとSFAの一番の違いは、管理の手間が大幅に減る点です。営業メンバーが多数いる場合、エクセルに最新の進捗状況に反映させるだけでもかなりの手間がかかります。他の人が編集中だからといって別ファイルに保存してしまうと、最新ファイルの判別が困難になります。
SFAであれば、営業メンバーがそれぞれのタイミングでデータを入力できるため、管理の手間も少なく、常に最新の状態を保つことができます。
営業目標を正しく設定し、チームをマネジメントしよう
営業目標は、過去の成績や成長率を加味した適切な目標であることが重要です。適切な営業目標を設定できれば、メンバーが目標達成に意欲的になり、チームが活性化し、数的根拠をもってマネジメントできるようになります。
営業目標は立てて終わりではありません。管理職はチームをマネジメントするためにも個々のメンバーの達成状況をリアルタイムで管理することが重要です。
目標の進捗を管理する方法としては、エクセルとSFAがあります。手軽に始めたいのでしたら、エクセルがおすすめですが、営業活動の可視化、効率化によってチーム全体の底上げを目指したい方は、SFAの活用も検討してみてください。