現在、多くの企業にとって、顧客満足度の向上は避けられない課題の一つとなっています。 顧客満足度を把握するためには調査が必要ですが、正しく質問し、最適な分析を行わなければ、求める成果にはつながらないことでしょう。ただコストを浪費するだけで終わってしまうかもしれません。
顧客満足度調査は、単にデータを集めれば良いというものではなく、目的をもって分析し、求める成果につなげる必要があります。今回は、顧客満足度調査の確度を上げ、ROIを高めるために知っておきたい顧客満足度調査の方法と、分析における7つのポイントを解説します。
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顧客満足度調査を実施するとどんなメリットがある?
顧客満足度の調査で得た結果はあらゆる部署で活用できるため、各方面でメリットを享受できます。どのようなメリットが生まれるのか、代表的なものを挙げていきます。
1. 商品・サービスの改善課題を把握できる
顧客満足度の調査では、顧客が抱える不満材料を可視化できます。商品、サービスそのもの課題をはじめ、購入プロセスにおける課題など、直接的な要因が特定しやすくなります。同時に、潜在的な顧客のニーズを知ることで、商品、サービス開発やカスタマーサービスの見直しにも役立ちます。
2. 競合優位性を抽出できる
顧客層の特徴を把握し、ミクロレベルのエクスペリエンスを理解するのにも効果的です。課題に対処しながら「市場はどこに向かっているのか」といったマクロ視点で市場を見ることができ、差別化要因の特定につながるでしょう。
3. リテンション向上につなげられる
顧客満足度向上に向けた施策は、既存顧客の維持にもつながるものです。解約や離脱に関する課題を把握することで、さらなる顧客維持への取り組みが可能です。
4. 優良顧客を確認できる
満足度の高い顧客へのさらなるアプローチなど、ファネルごとのマーケティングにも役立ちます。優良顧客は第三者への商品紹介や情報拡散を行う傾向にあり、結果として新規顧客の獲得にもつながるでしょう。Harvard Business Reviewによると、口コミ客は、そうでない顧客と比べてLTVが16%高いという結果も出ています。
5. 営業や接客を最適化できる
調査結果からアプローチ手法の課題を把握することで、営業、接客などの育成方針にも影響します。セールスパーソンを効果的に育成できるでしょう。
6. 業務効率化を向上させられる
顧客満足度の向上は、組織全体で取り組む課題です。顧客目線で内部PDCAを回すことで、明確な指針が見え、業務効率化の向上が期待できます。
顧客満足度調査の基本の7ステップ
では実際に、顧客満足度調査はどのように実施すればいいのでしょうか。基本的な流れを7つのステップに分けて解説します。
1:目的や対象を明確にする
調査を行う理由が「顧客満足度の確認」では、ゴールが見えず、次のアクションにもつなげにくいでしょう。「リテンションを○%向上する」「優良顧客を○%増やす」など、調査を行うことでどのようなアクションにつなげて行きたいのかを明確にし、KGIを設定してみましょう。同時に、どのプロセスで、どんな対象に評価してもらうのかを明確にする必要があります。特定の対象を調査するのか、もしくは大まかなデモフラフィックとして、年齢、所在地、性別、雇用形態、家族構成などまで入力してもらうのか、目的に合わせて検討しましょう。
2:指標、分析方法を決めておく
アンケートの項目を決める前に、指標と分析方法を事前に決めておく必要があります。先にアンケート内容だけを組み立ててしまうと、指標や分析方法が定まらず、何のために調査を行ったのかわからなくなる可能性があります。(どのような指標があるのかは後述します)
指標や分析方法を決定したうえで、どのような調査が効果的なのかを検討してみましょう。また、分析のプロセスまでを踏まえて、必要なサンプル数を決めておくことも大切です。加えて、分析するデータの条件を定め、分析対象外となる回答を設定しておくとよいでしょう。例えば、半分以上「わからない」とする回答は削除するなど、条件を事前に決めておくことで効果的な分析が可能になります。
3:調査方法を決定する
顧客満足度調査は、企業にとっては必要なものであっても、顧客にとっては手間のかかる作業でしかありません。できるだけ負担をかけないよう、効果的な調査媒体と告知方法を決める必要があります。
データ収集の基盤としては優秀な媒体でも、「対象とマッチしていない」、「分析時に手間がかかる」などの課題が潜んでいる可能性もあります。媒体ごとの特徴を理解し、ユーザビリティに配慮しましょう。調査方法によっては、モバイルに向けた最適化が必要になるケースもあります。
4:アンケートの項目を組み立てる
指標や分析方法に合わせて、アンケート項目を組み立てます。効果的な分析を行うためには、単に多くのデータを集めれば良いというものではありません。余分な項目は省き、回答を得られやすい工夫を取り入れましょう。アンケートの内容が複雑すぎたり、質問数が多すぎたりする場合には注意が必要です。質問数とサンプル数は反比例しやすく、質問が多いと得られる回答数が減る可能性が高いでしょう。
5:調査のタイミングを考える
どれだけ調査方法を工夫しても、調査のタイミングによっては求める回答が得られないかもしれません。対象となる商品やサービス、業種などによっても、最適なタイミングが異なります。カスタマージャーニーを考慮し、予約時、利用時、カスタマーサービス利用時、利用から6か月後、いつでも受け取れるフィードバックフォームなど、どのタイミングで、調査を行うかを考える必要があります。
6:調査期間を決める
調査期間を明確に定めておくことも大切です。継続的な調査を行う場合でも、一定の期限で分析し、施策実施後の経過を確認する必要があります。ただし、期間内に求める回答数が集まらないケースもあるでしょう。
確実にサンプル数を集めたい場合には、謝礼の有無を検討するのも一案です。この方法では、謝礼を目的に回答数が増えることが予想されますが、コストがかかってしまうという難点もあります。また、謝礼を出す場合、モニタリングなのか、単純なお礼として渡すのかによっても、条件が変わることを覚えておきましょう。
7:定期的な調査と分析を繰り返す
顧客満足度調査は「一度実施したら終わり」ではありません。目的達成に向けた施策の実施と、その成果測定までがワンセットです。成果達成まで、調査項目や実施方法などを見直し、成果が見えない場合には視点を変えて調査を行うなど、定期的に調査と分析を繰り返すことが大切です。
効果的な施策を立案するためにも、調査そのもののPDCAを回す必要があります。また、得られた結果は、組織全体で共有し、マーケティング全体の指標として活用しましょう。
顧客満足度調査における代表的な指標
上述したように、アンケート作成のためには、事前に指標を決めておく必要があります。ここでは、広く使われる代表的な指標をご紹介します。
1. NPS(推奨者の正味比率)
近年、もっとも注目されているのがNPS(Net Promoter Score)です。顧客ロイヤルティと他者への推奨度合いを測る指標で、スコアに基づいて顧客をセグメント化する場合にも役立ちます。 Bain&Companyによって開発され、商標登録されています。
通常は、「商品やサービス、もしくはブランド、企業を友人に推薦する可能性はどのくらいありますか」といった質問をおこない、「推薦する可能性がない=0」として、0から10までのスケールで回答を得ます。
回答者を批判者(0-6)、中立者(7-8)、推奨者(9-10)の3つに分類し、推奨者が多いほど、顧客満足度が高いと判断します。
2. CSAT(顧客満足度)
顧客満足度調査において、よく使われるのがCSAT(Customer Satisfaction)です。購入したものや利用したサービス、カスタマーサポートに対して「どれだけ満足しているか」といった、視覚的で簡単な調査であることが特徴です。
具体的には「商品やサービス、もしくはブランド、企業に対しての満足度は?」とリッカート尺度で質問することが多いでしょう。容易に実施できるうえ、顧客自体もこうしたアンケートに慣れているため、回答を得やすいと考えられます。
3. CES(顧客努力指標)
CES(Customer Effort Score)は、CSATとは逆に、不便さや利用におけるストレスを測る指標として使われます。購入までのプロセスや利用方法、サポート手順などが、顧客にとってどの程度大変だったかを確認します。
CESでは、「商品やサービスを購入・利用するうえで、もしくは、サポート手順はどれほど簡単でしたか?」といった質問であることが一般的です。主に、カスタマーサービスまたはサポートチームとのやり取り後に実施し、短期的な調査として活用されます。
その他の指標について、詳しくは「顧客満足度の測定に活用できる、8つの指標とは?」記事で解説しています。
顧客満足度調査の分析方法
指標を立てると同時に、分析方法も決定しておきましょう。分析方法は調査設計に大きく関わるため、事前の検討が必要です。分析方法と調査項目が連動していなければ、効果的な分析はできません。ここでは、代表的な分析方法について解説します。
1. 単純集計
単純集計は、集めた回答を単純に加算したり平均値を取ったり、グループごとの分布・比率をチェックしたりするなど、最も簡単に実施できる分析方法です。自由形式の回答を除き、数値が取れる質問すべてに活用できます。
2. クロス集計
「地域+満足度」「年齢+購入理由」など2つの項目を絡めて集計をおこなうのがクロス集計です。マトリックス表にすると比較しやすく、施策実施後の成果がわかりやすくなります。ただし、クロス集計を行う場合には、アンケート項目を2つ以上に設定する必要があります。またクロスさせたい項目を事前に明確にし、もれなく入力してもらえる工夫を取り入れることが大切です。
3. CSポートフォリオ分析
縦軸を「重要度」、横軸を「満足度」として評価項目を座標軸で分布させるのが、CSポートフォリオ分析です。アンケートでは「総合満足度」という評価を設け、その関連性の強さを示す相関係数に基づいて分布させます。視覚的に把握できるため、課題の優先度がわかりやすいという特長があります。
顧客満足度調査アンケートの手法とタイプ
続けて、顧客満足度調査のアンケートに用いられる手法と、質問方式のタイプを解説しましょう。
アンケート調査の手法
アンケート調査には大きく2つの視点があります。数値で表せる「定量調査」と、数値では表現できない「定性調査」です。定量調査は、CSATやNPSのように「満足したか」「紹介するか」といった数値で回答を得るような形式になり、定性調査では自由回答欄やインタビューによって回答を得ます。
質問のタイプ
質問形式には複数のタイプがあり、内容に合わせて選択します。それぞれの特徴は以下のとおりです。
- 単一選択式(シングルアンサー)
「はい・いいえ」で答えるという単純な形式になるのが単一選択式です。回答者にとって選択が容易であるため回答を集めやすく、分析、計算も簡単に済むというメリットがあります。
- 多肢選択式(マルチアンサー)
多選択肢式の質問は、3つ以上から選ぶ形式です。「当てはまるものすべてを選択できる」という形式も多肢選択式に含まれます。カテゴリ変数を収集するために使われる傾向があります。複雑になりがちなため、実施する目的と、データをどう分析するかを事前に確認しておく必要があります。
- スケール式
スケール形式の質問は、1~5から選ぶ、星の数やスマイルマークなどを使うといった視覚的な要素の強い形式です。分析、計算が容易で、回答者側にとっても選択しやすいのが利点です。
- ランキング形式
好みのものを、優先順に選んでもらうのがランキング形式です。単一選択式では見えてこないニーズや傾向が、一度に把握し分析できるという利点があります。
- SD法
1~5といったスケールではなく、一本の線のなかで、グラデーションで記入してもらうのがSD法です。ただし、あいまいな回答は数値として見えにくく、回答者側も極端な選択肢を選ぶ傾向にあります。結果として、単一選択式とよく似た答えになりやすいでしょう。
- 自由形式(フリーアンサー)
定性調査に役立つのが自由形式の質問です。ただし、自由形式の質問は分析が難しいため、定量調査と同時に行う必要があります。また、自由形式のみのアンケートは、回答が得にくい傾向にあります。分析には時間がかかりますが、自由に回答してもらえるからこその発見も多いのが利点です。
アンケート調査方法
アンケートを実施する際には、対象に合わせた媒体やユーザビリティを考える必要があります。主な調査方法としては、インターネット調査、郵送、電話、モニター調査、インタビュー、モニタリング、リスト調査、店頭調査などがあります。
多くの調査方法がありますが、満足度調査の6割がインターネットを活用し、自社でのオンライン調査を行っています。調査方法よりも実施することへのコスト、特に時間的コストが課題になるでしょう(Freeasy)。
顧客満足度調査に使えるアンケートテンプレート
顧客満足度調査を行ううえで、分析を念頭に置いた質問の洗い出しが欠かせません。目的や対象によって異なるものの、顧客満足度調査に活用できる簡易版アンケートのテンプレートをまとめました。
質問の具体例
- 商品、サービス内容をどう評価するか(CSAT)
- どの程度満足しているか(マイルストーン)
- 周囲に勧める可能性は(NPS)
- 利用方法、コンタクト方法はどれくらい簡単だったか(CES)
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顧客満足度調査の質問作成における注意点
何度もお伝えしているとおり、指標や分析方法に合わせて質問内容を設計する必要があります。しかし、それだけでは不十分です。回答を得られやすい環境を作るための注意点を解説します。
1. 質問内容を中立に保つ
企業側の視点で質問内容を検討すると、主観的になりがちです。中立性のない質問は、回答にバイアスをかけてしまうことがあります。
例えば、「このゼリーがおいしい理由は? 味、食感、色……」といったように、そもそも「ゼリーがおいしい」という前提のもとに成り立つ質問は好ましくありません。
この場合は、代わりにセグメントするための質問を加え、スケール形式で確認するとよいでしょう。たとえば、「このゼリーを評価してください。最も好き、やや好き、普通……」といった質問の後に、好きと答えた人に対して「どこが好きですか?」と発展させながら効果的な回答を得るように工夫します。
2. 選択肢の数に配慮する
できるだけ効果的な回答を得るために、選択肢を増やしすぎないことも大切です。目安としては、多くても5~7個以下に収めるとよいでしょう。
ただし、数を減らしすぎるのも問題です。たとえば、「最近、ゼリーを買う量が増えましたか?」という質問に対して、「増えた」「減った」という選択のみでは不足しています。もう少し詳しく「増えた」「変わらない」「減った」「よくわからない」といった選択肢を加えます。
このように、該当しにくい回答のみになっていないか確認するようにしましょう。 また、調査全体が長くなりすぎないように考慮することも大切です。どうしても調査が長くなる場合は、回答者に現在のセクションを伝えるようにしましょう。残りの質問数がわかるようにすることで、回答者の離脱を予防できます。
3. 質問は明確かつ簡潔に
質問は、シンプルに短く、関連性のある内容でまとめるようにしましょう。重要なことに焦点を当て、目的に合った質問に絞りこみます。無関係な質問が増えると、焦点がぶれてしまいます。自由形式における質問の意図が伝わりづらいと感じたら、回答例を記載しておくとよいでしょう。
加えて、専門用語の使用も避ける必要があります。正確な回答が得られませんし、「よくわからない」と思われて離脱されてしまう可能性もあります。また、「二重否定」の表現は難解になりがちなため、使用は避けましょう。たとえば、「ゼリーは好きではないですか?」といった質問ではなく、「ゼリーは好きですか?」と置き換えます。さらに、複数のことを一度に回答させるのも好ましくありません。「ゼリーのパッケージと味に満足しているか?」という問いでは、明確な回答を得ることができません。
4. 最後まで回答してもらえる調査設計に
調査を実施し、多くの対象者にアプローチできても、回答を得られなければ意味がありません。できるだけ必要な情報を得るためには、あらゆる可能性を考慮した回答オプションを設計しましょう。場合によっては、「この質問に答えたくない」といった選択肢が必要になるかもしれません。A/Bテストで「調査設計の調査」を行うのも良いでしょう。空欄が多い、離脱されてしまうといった課題があれば、改善する必要があります。
顧客満足度調査の成功は事前準備がカギを握る
顧客満足度調査は、目的や対象はもちろん、指標や分析方法まで決めたうえで実施することが大切です。また、目的を明確にするためにも、KPI設定が欠かせません。「調査をしたら終わり」ではなく、調査そのものについても常にPDCAを回しながら、成果につなげるように取り組みましょう。