なぜアンケート調査で「回収率」が重要なのか?調査を成功させるポイントも合わせて解説

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水落 絵理香(みずおち えりか)
水落 絵理香(みずおち えりか)

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あなたの会社では、アンケートを活用できているでしょうか。 自社商品やサービスの改善、サイトのリニューアル、見込み客との関係性強化など、顧客とのあらゆる接点で活用できるアンケートは積極的に利用していきたいところです。

なぜアンケート調査で「回収率」が重要なのか?最適なサンプル数の算出法や調査を成功させる5つのポイントを解説

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アンケート調査で得られた情報を分析し、活用するためには、一定の有効回答数を集める必要があります。有効回答数をある程度確保するためには、アンケートの配布数、回収数に加えて、「回収率」も確認しましょう。

回収率が低いと、未回収の対象者の声が反映されずデータに偏りが生じる可能性があります。偏りが生じてしまうと、そもそもの調査データの信頼性が損なわれてしまいます。

また、ユーザー体験を考慮する上でも回収率を重視するべきです。

回答してもらえなかった理由は様々ですが、「項目が多くて回答するのが面倒」と思われ、アンケート自体がユーザー体験を損ねてしまっている可能性もあります。対象者に負担なく回答してもらいつつ、有効なデータを集めていくために、回収率を確認しながらアンケート施策を進めていきましょう。

この記事では回収率の重要性や、向上させる対策についても解説します。

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アンケート調査の回収率が高いと「信頼性向上」と「コスト削減」が可能に

アンケート調査の回収率が高いと「信頼性向上」と「コスト削減」が可能に

最初に、回収率の定義とその重要性について説明しましょう。

アンケートの回収率とは、アンケート調査を依頼し配布した数に対して、回答が集められた数の割合 です。例えば3,000名にアンケートを配布して、回答を得られたのが300名であれば、回収率は10%となります。

一般的に、回収率が高いほどデータの信頼度が高まるため、アンケート調査では、回収「数」だけではなく、回収「率」も重視しましょう。

なぜ回収率が高いほど信頼性が高まるのでしょうか。例えば、以下の2つの調査を比較してみましょう。

【調査①】

配布数が10,000人、回答者数が1,000人=回収率は10%

【調査②】

配布数が1,000人、回答者数が900人=回収率90%

この場合、調査①の方が回収数は多いものの、仮に未回収だった9,000人が回答した場合、結果が大きく変わる可能性があります。調査②は、①に比べ回収数が少ないものの、配布した9割の回答が得られているため、より正確なデータを把握できていると言えます。

アンケート調査には、対象となる全ての集まりである母集団全員に調査を行う「全数調査」と、その一部を抽出して全体の傾向を知る「サンプリング調査」があります。もちろん完全に正確なデータを取得するには全数調査が望ましいのですが、対象者が多数になり、労力・時間・コストがかかることから、サンプリング調査が一般的によく利用されています。

サンプリング調査では、上記でも説明したように、回収率が高いほどアンケート結果と対象者客全体の意見との誤差が少なくなります。さらに、全数調査に比べて予算をかけずに済みます。結果、信頼度の高いデータを得られ、アンケート実施の目的を果たすだけでなく、調査コストの削減も可能です。
 

最適なアンケート配布数を導く方法は?

回収率を上げると、アンケートの配布数を減らすことも可能です。しかし、減らしすぎると、そもそもアンケートの信頼性が損なわれてしまいます。

アンケートの信頼性を担保する、最適なサンプル数はどのように算出すればいいのでしょうか。
 

必要サンプル数の算出に欠かせない「許容誤差」と「信頼水準」

サンプリング調査で全数調査と遜色ないデータを得るには、母集団のほかに「許容誤差」「信頼水準」を決める必要があります。

許容誤差とは、調査上許容範囲と認められる誤差のことです。信頼水準は、抽出したサンプルが許容誤差の範囲内にどれだけ存在するか示す指標です。

一般的には、許容誤差5%、信頼水準95%で、統計学的に全数調査に近似する意味のあるデータを取得できるとされています。例えば、YESと答えた人が90%で許容誤差が5%の場合、90%±5%の85%~95%の人がYESとなります。また、信頼度95%とは、「100回中95回は許容誤差内の結果に収まる」ことを示します。

許容誤差と信頼水準を決めたら、サンプリング調査で必要なサンプル数を計算します。
 

必要サンプル数を割り出す計算式

必要なサンプル数は、下記の計算式で求められます。

【必要サンプル数の計算方法】

最適なアンケート配布数を導く方法は?1

n:必要なサンプル数(人)

N:母集団の規模(人)

z:信頼レベル(信頼水準95%の場合はz=1.96)

p:回答比率(%)

e:許容誤差(%)(許容誤差5%の場合はe=0.05)

この計算式を用いて、許容誤差が5%の場合の必要なサンプル数を、母集団の人数別に計算したのが下記の表です。一般的に母集団が大きくなるほど、必要なサンプル数は多くなります。

【母集団数と必要なサンプル数(許容誤差5%の場合)】

最適なアンケート配布数を導く方法は?2

ただし、母集団が10,000人を超えるあたりから、必要サンプル数はほぼ横ばいになります。

【母集団と必要なサンプル数の関係】

最適なアンケート配布数を導く方法は?3

このことから、母集団が10,000人以上の調査では、約400サンプルあれば正確性の高いデータを得られることがわかります。

しかし、計算式を用いて必要なサンプル数を都度求めるのは手間がかかります。そこで、活用したいのが「早見表」です。
 

早見表で確認する

下記のような早見表を使うと、必要サンプル数を簡単に把握できます。

【サンプリング誤差早見表】

最適なアンケート配布数を導く方法は?4

この表の縦軸(p)は回答比率、横軸が標本(サンプル)数、表の中の数値が許容誤差となっています。

仮に回答率が50%で、表の中の許容誤差を5%と設定すると、正確なデータを把握するのに必要なサンプル数が400であることがわかります。
 

予測回収率から配布数を計算する

必要なサンプル数がわかれば、今度は回収率を予測して、アンケートの配布枚数を決めます。

例えば、回収率を20%とした場合、必要な400サンプルを回収するためには、2,000人に配布する必要があるとわかります。この回収率を50%とすると、配布数は800枚で済むのです。

つまり、回収数を上げると配布数を減らすことになり、コストや労力の軽減につながります。
 

アンケート調査回収率の目安と目標

では、アンケートの回収率はどのくらいに設定するのが望ましいのでしょうか。調査の種類によっても変わりますが、 回収率は4~5割程度を目安とするのがよいでしょう。

少ないと思われるかもしれませんが、例えば、内閣府が毎年行っている「企業行動に関するアンケート調査」の令和2年1月実施の調査では、上場企業1,131社の回答率が41.9%、中堅・中小企業の回答率は39.1%となっています。

また、厚生労働省では、省内の統計調査の仕訳において目標回収率に満たなければ回収率60%未満の調査を「回収率が低い調査」としてリスト化していますが、なかには40~50%台の調査も散見されます。さらに、回収率が50%にも満たない調査でも、代替調査が無ければ、行政施策に必要不可欠な統計情報として利用しているのです。これらを踏まえても、回収率は4~5割で設定するのが妥当と言えます。
 

高い回収率が期待できる調査

調査の中でも、告知や回収方法が徹底しており、重要度の高い国や県が行う統計調査などの調査は、高い回収率を見込めます。このほか、事前に募集した消費者に対する調査など回答者が決まっている場合も、高い回収率が期待できます。

B2Bにおけるクライアントからのアンケート依頼や、消費者に対する顧客満足度調査などもここに含まれます。
 

アンケートの回収率が低くなる理由

一方、低い回収率しか期待できない調査としては、返送の手間がかかる郵送アンケートなどが挙げられます。

なお、回答を鈍化させる原因は「回答者側が必要性を感じない」「依頼者に対して不信感がある」などです。回答者の負担も、アンケート実施の際に十分考慮する必要があります。
 

アンケート調査回収率をアップする5つのポイント

アンケート調査回収率をアップする5つのポイント

アンケートの回収率を上げるには、以下のような回答者の負担や不信感を軽減するための5つのポイントを考慮しましょう。
 

1, 回答者からの信頼を得る

アンケート依頼者の身元や調査の目的がわからないと、回答者は不信感が募り、回答をためらいます。

アンケートを実施する際は、会社情報や調査の目的、どのように利用されるのかを明記するほか、個人情報の取り扱い方針などもしっかりと提示するようにしましょう。

例えば、自分の意見が普段使っている商品の改善に反映されるとわかれば、回答率も高まります。自分の回答がいろいろなシーンで役に立ち、必要とされていると認識すると、協力度も向上します。調査結果でリニューアルした商品のサンプルなどをインセンティブとすれば、一層の回収率アップが期待できるでしょう。
 

2, アンケート回答者の負担を最小限にする

設問数が多い、質問が長文でわかりづらい、書き込みが必要なフリーアンサーが多いアンケートは、回答者に負担がかかり、アンケートへの回答をやめてしまう可能性が高まります。

設問はシンプルでわかりやすく、選択肢を多く活用し、スムーズに回答できるよう意識して作成しましょう。
 

3, 設問数と目安時間を記載

設問がいくつあって、いつ終わるかわからないのも、回答者のストレスが溜まる原因のひとつです。

あらかじめ「設問数」と「回答にかかる目安時間」を記載しておくと、回答へのハードルが下がります。インターネットアンケートの場合、回答中に「今●●%達成」「あと●問」などが表示されると、達成率が向上します。
 

4, 最適なタイミングでの実施を意識する

最近はウェビナーでの商品説明会やセミナーなどが増え、質問や相談などもその場ですぐチャット形式で行うことも増えてきました。

アンケートも同様に、ウェビナー開催後すぐに画面を切り替え回答できるようにすると、回収率が高まる傾向にあります。

時間を置かずに行うため、セミナーの内容も記憶に残っており、フリーアンサーなども精度の高い回答が期待できます。こうして得られたその場のホットな声は、以降のフォローアップ活動にも役立ちます。
 

5, 自社商品・サービスのファンを増やす

HubSpotで実施してきたウェビナーでは、満足度の高いものほどアンケートの回収率も高まる傾向にあります。

自社が顧客に対して有益なコンテンツを提供し続けると商品やサービスのファンが増え、エンゲージメントが高まることから、自ずと自社への関与意向や協力度などが向上します。結果、アンケートなどを依頼しても回収率が向上するのです。

ウェビナーに限ったことではありませんが、ユーザーが満足する価値をいかに提供し続けて、ユーザー自らが自社に対して好意的な行動を起こすように仕向ける。インバウンド・マーケティングの理想の形と言えるのではないでしょうか。
 

結論》アンケートは「回収率」を上げて、顧客体験向上に役立てよう

アンケート調査は、回収数よりも回収率を上げることによって、信頼度の高いデータを得られます。この 精度の高いリソースを活用することで、自社商品やサービスの改善、顧客とのコミュニケーション強化などが実現し、効率的なマーケティングや営業活動が可能になります

目標とすべき回収率は調査によって異なりますが、 回収率を上げるには、回答者の負担をできるだけ軽減し、答えたくなるような内容やインセンティブを提供するのが効果的 です。自分の意見が誰かの役に立つ有用性を伝え、参加意識を喚起することも、回収率アップの一助となります。

また、日頃から自社や商品・サービスの有益な価値を提供してファンを増やしておくことも、アンケート依頼などを快く引き受けてくれる基盤となります。

上記を意識して、回収率の高いアンケート調査を実施することで、自社の業務改善や顧客満足度向上を効率よく実現していきましょう。

HubSpotではこの他にもマーケティングやセールスに役立つ資料を無料で公開していますので、ぜひこちらからご覧ください。

 

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トピック: アンケート

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