2014年にリリースされたMusical.lyは、さまざまな音楽クリップに合わせ、リップシンク(口パク)をするショートビデオを共有できるアプリで、2年連続でダウンロード数の上位100位にランクインし、1日に1,300万件もの動画が投稿(英語)されていました。
2018年、Musical.lyは中国のテクノロジー企業ByteDanceに買収され、同社が新たに提供するTikTokアプリに統合されました。TikTokはMusical.lyと同じように動画を共有できるSNSアプリで、流行の音楽に合わせ、リップシンクやダンスをするショートビデオを投稿できます。アプリ統合後は、短いお笑いのネタ動画や自宅のDIYに関するハウツー動画など、バラエティー豊かな動画が投稿されるようになりました。
買収後、TikTokのアクティブユーザー数はほぼ800%(英語)増加しました。ユーザーのアクティビティーが拡大したことを受け、各社のマーケティング担当者は、TikTokへの広告出稿に大きな可能性が潜んでいることに気付きました。TikTokのクリエイターたちも同じ点に注目するようになり、2020年、TikTok For Businessと呼ばれる新しいプラットフォームがリリースされました。
TikTok For Businessとは?
TikTok For Businessとは、マーケティング担当者がTikTokに広告を出稿するためのオールインワンツールです。マーケティング担当者は自社の戦略をゼロから立てなくても、広告の作成から予算の設定、ターゲットオーディエンスへのリーチ、キャンペーンデータの分析まで、一連のプロセスをこのプラットフォーム上で完結できます。
このプラットフォームは、企業がクリエイティブな能力を発揮できるよう支援することを目標に掲げており、アプリの使い方を学べるeラーニングサービスや、広告を作成できる広告マネージャープラットフォームも提供されています。
TikTok for Businessマーケティングガイド
TikTokでのマーケティング、広告、コンテンツ作成の方法をぜひ学んでみてください。
- TikTokとは?
- TikTok for Businessとは?
- TikTokで広告を活用する方法
- TikTokをビジネスに活用した成功例
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TikTok For Businessで使える広告形態
TikTokでのマーケティング活動に使えるのは基本的に動画広告だけです。TikTok For Businessの広告マネージャープラットフォームで広告を作成し、5種類の形式から選んで出稿できます。
TopView広告
TopView広告は、ユーザーがその日初めてTikTokアプリを起動した直後に1回のみ表示される動画広告です。チョコレートブランドのM&M's(英語)が作成したTopView広告を見てみましょう。この広告では、ハロウィンをオンラインで楽しめるキャンペーンアプリのダウンロードを呼びかけています。
インフィード広告
インフィード広告は「おすすめ」ページに表示される動画広告です。ユーザーがアプリを起動すると、既定でこのページが開きます。「おすすめ」ページには、TikTokのアルゴリズムによって、ユーザーのアプリ上でのアクティビティーを基にユーザーの関心に合致していると判断された動画が並びます。
インフィード広告は、ユーザーがフィードをスクロールすると、4番目の動画として表示されます。Instagramのフィードに表示される広告のようなものと考えると、イメージしやすいかもしません。例として、フード デリバリー サービスを展開するGrubhub(英語)が作成したインフィード広告をお見せします。
インフィード広告にはCTA(Call-To-Action)を配置できるため、TikTokからの顧客転換を図りたい企業に特におすすめです。例えば、金融サービスを提供するAcornsは、このインフィード広告のCTA機能を使用して、自社のアプリのダウンロードを促しています。
中には、インフルエンサーと直接タイアップし、独自のインフィード広告を作成しているブランドもあります。ファースト フード チェーンのRaising Cane's(英語)は、TikTokの有名インフルエンサーであるチェイス・ハドソンと提携して自社のメニューを宣伝しています(以下で実際の動画をご覧いただけます)。
@lilhuddy this my way eating @raising.canes what's yours #CaniacAmbassador #raisingcanes
♬ Stuntin' On You - Tyla Yaweh
ハッシュタグチャレンジ
ハッシュタグチャレンジは、ブランドに関するハッシュタグ(英語)を企業自身が選び、TikTokユーザーにコンテンツの作成を呼びかける宣伝方法です。この広告形態を選択すると、企業は対象のハッシュタグを独占的に使用できます。これは、他のSNSサイトには見られない特徴です。この独占使用権は非常に高額で、調査によれば6日間で平均15万ドル(英語)ほどのコストが発生します。
例えば、スポーツウェアメーカーが「Blue Shirt」というランニングシャツを新しく発売する場合、「#InMyBlueShirt」というブランドの独自ハッシュタグを作成して、このシャツを購入したTikTokユーザーに対し、着用して運動している様子を動画投稿するように働きかけることができます。
歌手のジェニファー・ロペスは、このハッシュタグチャレンジ機能を使用して、自身の楽曲『Pa Ti』の宣伝を行いました。ジェニファー・ロペスは#PaTiChallengeというハッシュタグを付けて自分のダンス動画を投稿し、そのダンスをまねてチャレンジに参加するように他のTikTokユーザーに呼びかけています。
@jlo Let’s goooo! ✨🚨✨ Can’t wait to see and share some of your best #PaTiChallenge dances!Thanks for kicking it off @charlidamelio! @papijuancho
♬ Pa Ti - Jennifer Lopez & Maluma
ハッシュタグチャレンジはTikTokの「トレンド」ページで見ることができます。トレンドページは、新しいクリエイターを発見したり、注目のハッシュタグをチェックしたりできる、Instagramの発見タブのようなページです。
下図の「トレンド」ページに表示されている#WorldSeriesというハッシュタグチャレンジは、米国のメジャーリーグ(MLB、英語)が作成したもので、野球ファンにワールドシリーズを盛り上げる動画を投稿するように呼びかけています。このハッシュタグをクリックするとTikTok内のランディングページに誘導され、広告主のロゴとチャレンジの説明、このハッシュタグを付けた他の動画が表示されます。
Brand Takeover広告
Brand Takeoverは、TopView、インフィード、ハッシュタグチャレンジの全てを含めることのできる広告形態です。さらに、動画だけでなく、GIFアニメーションや静止画も素材として活用できます。名称にある「Takeover」とは「買い占め」を意味し、この広告形態は1日1社限定で、1日当たり約5万ドル(英語)から利用できます。
アパレルブランドのGuessは、ジーンズの宣伝のため、TikTokにBrand Takeover広告を出稿しました。同社のTikTokアカウントは6日間で12,000人を超える新規フォロワーを集め、全体で14.3%のエンゲージメント率を達成しました。このBrand Takeover広告では、以下のようにTopView、ハッシュタグチャレンジ、インフィードの各広告が使用されています。
ブランドエフェクト
ブランドエフェクトは、2D、3D、AR(拡張現実)のいずれかを使用し、TikTokの動画内に自社製品の画像を追加できる広告サービスです。一般的には、ブランドが自社の製品のステッカーや独自のフィルターを作成し、TikTokユーザーが動画作成に使用できるようにします。こうしたフィルターやステッカーは、ブランド主催のゲームに参加するときに使われることが多く、ユーザーのエンゲージメントとブランド認知度の向上に効果的です。
スポーツ用品ブランドのPUMAはブランドエフェクト機能を使用して、新しいサッカーシューズの宣伝を行いました。その方法は、3Dステッカーを作成して、サッカーボールを使用したVR(仮想現実)ゲームのプレイを促すというものです。同社はブランドエフェクトのステッカーとハッシュタグチャレンジを組み合わせることで、ユーザーから10万件を超える動画を投稿してもらうという大きな成果を収めました。
TikTok For Businessをどうマーケに活用すべきか?
TikTok For Businessの有効性は証明されつつあり、多くの企業がTikTokに広告を出稿して成功を収めています。
その一例がDunkin’(英語)です。ドーナツやコーヒーを販売する米国企業Dunkin’(旧称Dunkin’ Donuts)は、Dunkin’はTikTokの広告機能を活用し、動画の中でよく同社のコーヒーを飲んでいる人気インフルエンサーのチャーリー・ダメリオと提携しました。
チャーリー・ダメリオはわずか16歳にして、TikTok上で700万人を超えるフォロワーを獲得しています。主にダンス動画を投稿していますが、Dunkin’とのパートナーシップについてTikTokの動画内で発表したところ、2か月足らずで5,900万回以上も再生されました。Dunkin’は、その発表の翌日に売上高が45%アップ(英語)したと公表しています。
@charlidamelio is this real life!!!?? my fave drink is now on the menu at @dunkin. order ‘The Charli’ on the Dunkin’ app!!! link in bio. #CharliRunsOnDunkin #ad
♬ original sound - charli d’amelio
マーケティング戦略にTikTok For Businessを使用するべきかどうかは、最終的には全社的な事業目標とキャンペーンに期待する成果に左右されます。その判断材料となるよう、メリットとデメリットを一覧にまとめました。
TikTok For Businessのメリットとデメリット
メリット |
デメリット |
TikTok広告マネージャーを使用すると、新たなオーディエンスにコンテンツを見てもらいやすくなる 「類似オーディエンス」機能により、ターゲットとする視聴者像に近いユーザーを広告の表示対象に指定できます。 TikTokの月間アクティブユーザー数は6億人(英語)を超え、155の国と地域でサービスが提供されています。小規模なブランドや知名度の低いブランドは、新たなオーディエンスにリーチし、認知度を大幅に向上できる可能性があります。 米国のTikTokユーザーの25%は10~19歳(英語)で、22.4%は20~29歳です。現在、これ以外の年齢層をターゲットにしている場合、これまでとは違う顧客層へのリーチが可能になります。 |
TikTokのユーザーには、デモグラフィック(人口統計学的)属性の面で大きな偏りがある 若い世代がユーザー層の中心を占めているので、このプラットフォーム上でマーケティング活動を展開した場合、意図したターゲットよりも大幅に若いオーディエンスにしかリーチできないことが考えられます。 TikTokに広告を出稿する場合、自社の製品やサービスの必要性を感じていないユーザーを対象としなければならない恐れがあります。 |
TikTokでは、カジュアルで「舞台裏」を見せる動画が人気 Z世代が重視するのは真実味であり、あからさまなマーケティング広告(英語)は敬遠されがちです。 現時点で販売促進を目的としたフォーマルなコンテンツを中心に作成している場合は、このプラットフォームを活用することで、コンテンツの多様化を図り、自社のクリエイティブな新しい側面をアピールできるようになります。 |
TikTokではニッチなコンテンツが求められる TikTokに適したコンテンツが、自社のブランドミッションと合致しているとは限りません。 売上獲得を真剣に追求している企業にとって、単に顧客化の促進を目指すのではなく、TikTokで求められる遊び心のある面白いコンテンツを作成するスキルを身に付けるのは難しい場合があります。 |
世界の人口の44.81%(英語)がスマートフォンを所有している モバイルユーザーの数は世界的に増加を続けているため、モバイルファーストのマーケティング戦略について検討する価値は十分にあります。 TikTok for Businessを使用すれば、出稿する広告を自分のスマートフォンで作成できるだけでなく、マーケティング戦略の一部をモバイルから実施することも可能です。 |
自社のウェブサイトとTikTokの動画を簡単にリンクできない 主にウェブサイト経由でリードを転換している場合には、工夫を凝らしてリード創出を促進する手段を考え出す必要があります。 |
InstagramやTwitterと比べて、TikTokはエンゲージメント率が高い 2019年のTikTokの平均エンゲージメント率は、全フォロワーレベルで、InstagramとTwitterの両方を上回っていました。フォロワー数が1,000人程度の小規模なアカウントでも、平均エンゲージメント率は9.38%(英語)です。 TikTokに参入したばかりの小規模なブランドでも、一定数のエンゲージメントを確実に獲得できるでしょう。 |
TikTok For Businessのレポートツールは他のプラットフォームと連携できない マーケティングキャンペーンの成果を把握するためにはデータが欠かせません。しかし現時点では、マーケティング担当者に人気の分析ツールをTikTok For Businessと連携させることはできないようです。 TikTokの広告マネージャーは便利ですが、キャンペーンのエンゲージメント率やROI(投資収益率)の確認に必要なデータを収集するにはさらに手間がかかります。 |
TikTok For Businessの価値を活かそう
このTikTokの企業向けサービスをマーケティング戦略に取り入れると、ビジネス成長への効果が期待できます。TikTokを利用するにはニッチな種類のコンテンツが必要になりますが、ブランドや企業が戦略の多様化を図り、新たなオーディエンスにリーチするチャンスです。
最終的にどのような決断を下すにしても、TikTok For Businessは、TikTok広告の可能性を活かしたいと考える皆さんにとって強力なツールになります。