企業から発信される「お客様の声」ではなく、ユーザーによる自発的な体験談や感想を簡単に目にできるようになったのは、個人ブログやSNSが登場して以降のことです。こうした、ユーザーが生成したコンテンツをUGC(User Generated Content)と呼びます。
私たちが商品やサービスを購入する前に、他のユーザーの意見を参考にするのは珍しいことではなくなり、企業にとってUGCは消費者の購買行動に大きな影響力を与える存在です。
このUGCを活用したものが、CGMマーケティングです。ユーザーが自発的に生み出すコンテンツをどうしたらうまく活用できるのか、本記事ではUGCの基礎から成功事例、おすすめのツールをご紹介します。
コンテンツマーケティング入門ガイド
〜効果的なコンテンツ戦略の立て方を大公開〜
- コンテンツマーケティングの基本
- マーケティング戦略の立案方法
- ブログ作成のポイント
- 成功事例と書籍のご紹介
今すぐダウンロードする
全てのフィールドが必須です。
UGCとは?なぜマーケティングで注目されるのか
冒頭でもお伝えした通り、UGC(User Generated Content)とは、ユーザーが発信したコンテンツ全般を指します。
例えば、SNS上で自社商品に言及してる投稿や、レビューサイトに寄せられた口コミなどが該当します。
UGCは、近年、マーケティング領域での重要性が見直されています。特に、ユーザーにとって価値あるコンテンツを継続的に発信し、エンゲージメントを醸成するコンテンツマーケティングに自社で作成したコンテンツだけでなく、UGCの活用も注目されています。
なぜ、UGCの重要性が増しているのか。理由は以下の3点にまとめられます。
- UGCの影響力の増大
- Web広告に対する規制強化
- Google 検索からハッシュタグ検索への移行
UGCの影響力の増大
ユーザーは商品やサービスを検討する時、自分と同じユーザーの率直な感想や意見を知りたいと感じています。
アメリカのUGCプラットフォームStacklaの調査によると、購買決定に際して最も影響を受けているコンテンツにUGCを挙げた消費者が79%に上りました。それに対し、ブランドが制作したコンテンツに「最も強く影響を受けている」と答えた消費者は13%に留まっています。またインフルエンサーを挙げた消費者は8%でした。
Instagramでも、UGCは影響力を持っています。
BWRITE社の統計では、20代の女性の約半数がInstagramを使用しており、60.3%のユーザーが「有名人をフォローしている」と答えています。しかし「有名人がInstagramに投稿した商品を購入したことがある」と答えたユーザーは19.5%だったのに対し、ユーザーの22.1%が「一般の人が投稿した商品を購入したことがある」と上回っており、インフルエンサーの影響力が強い層に対しても、UGCは影響力を持っていることがわかります。
Web広告に対する規制強化
Web広告の中でも、Webサイト来訪時のユーザーのデータを蓄積し、そのユーザーに再度広告を配信するリターゲティング広告への規制が強化されています。
iPhoneでは、iOS14のアップデートに伴い、ユーザーに割り振られる広告用の端末識別IDが、ユーザーの許可制(オプトイン)になりました。Google Chrome でもCookie規制などの今後の強化が予想されます。
また、オプト社・グローバー社による「スマートデバイス時代の情報・広告意識調査」によると、スマートフォンなどのモバイルデバイスを利用するユーザーの間で、Web広告に対して「わずらわしい」「実際よりもよい面だけを強調している広告は不快だ」などの声があります。
インターネット広告に対する意見:「スマートデバイス時代の情報・広告意識調査」のデータを元に作成
Web広告に対する規制が強化され、ユーザー側もWeb広告を好んでいない状況の中で、商品やサービスの情報を消費者の視点から伝えるUGCは、ユーザーに受け入れやすいコンテンツになっています。
Google 検索からハッシュタグ検索への移行
若年層のユーザーを中心に、Google 検索よりもハッシュタグ検索の活用が一般的になりつつあります。
LIDDELL社の調査によると、10代~20代ではわからない言葉を検索する際にはGoogle、速報などを知りたい時はTwitter、ファッションや飲食店、観光地などの情報を知りたい時はInstagramと使い分けていることがわかりました。
特にInstagramやTwitterではハッシュタグ検索が主な検索手法となっており、他の投稿をハッシュタグ検索し、口コミを調べるユーザーが増加しています。
UGCが増えると生まれる、3つのメリット
UGCが増えていくと、企業にはどのようなメリットがあるのでしょうか。代表的なものとしては、以下の3点が挙げられます。
- 信頼獲得の土壌を構築できる
- 自社では生み出せない、多様な視点をもったコンテンツが生まれる
- 顧客満足度や改善点を把握するチャンスがある
信頼獲得の土壌を構築できる
ユーザーのレビューや口コミは、購買を検討するユーザーの判断に影響を与えます。
先にも紹介した「スマートデバイス時代の情報・広告意識調査 」にも、Web広告を不快に感じる理由として、「どちらかといえばそう思う」まで含めると回答者の81%が企業広告を「実際よりもよい面だけを強調している」と感じています。
一方、ユーザーによる口コミは、実際に利用したユーザーの経験として受けとめられます。友人知人の判断が購買決定を左右するように、共感でつながるSNSでのレビューや口コミは、ユーザー同士で大きな影響力を持ちます。
広告であることを隠して発信されたSNS投稿は、ステルスマーケティングと呼ばれ、内容によっては景品表示法に抵触するケースもあります。
自社では生み出せない、共感を呼ぶ顧客視点のコンテンツが生まれる
アライドアーキテクツ社の調査 によると、UGCを活用している企業のうち、76.6%の企業が施策のパフォーマンスが「とても向上した」または「少し向上した」と答えています。SNSでのエンゲージメントが増えただけでなく、22.9%の企業で売上向上に寄与しています。
理由の1つには、ユーザーの生活や体験の中から作成したUGCは、プロの手による洗練された広告表現にはない視点があり、他のユーザーの共感を呼んでいることがあります。
実際の使い方や使用感など、企業視点では出てこないユーザーならではの視点が盛り込まれたUGCは、他のユーザーの共感を生みやすいといえます。
顧客満足度や改善点を把握するチャンスがある
UGCにはユーザーの顧客体験が蓄積されます。企業側は、ユーザーによる「新しい使い方」や「こうすればもっと良くなる」などの改善点を把握でき、UGCを製品開発・改良に活かせます。UGCをうまく活用することで、顧客満足度も測ることができるでしょう。
UGCにはどのような種類がある?
SNSが発達し、様々なレビューサイトが台頭した今、UGCは様々な形で流通しています。以下に一部の例を挙げてみましょう。
- SNSの写真、テキスト
- 動画プラットフォームの投稿動画
- ECサイトのカスタマーレビュー
- 料理レシピ
音楽・動画配信サービスのプレイリストetc...
また、ユーザーが生み出したコンテンツという枠組みであれば、クローズドな空間で生み出されているものも該当します。メッセンジャーアプリやSNSのダイレクトメッセージでやり取りされる際にも、「あの商品が良かった」「あのサービスは合わなかった」というような言及はUGCといえます。
企業としては感知できない領域ではありますが、個人間でのレビューのやり取りは購入への影響力が高いという点も念頭に入れながらUGC施策に取り組みましょう。
UGCと混同しやすい「CGM」とは
UGCと混同しやすい用語としてCGM(Consumer Generated Media)があります。
CGMとは?
CGM(Consumer Generated Media)は消費者が作ったコンテンツによって成立するメディアを指します。つまり、個人ユーザーが作ったUGCが集まったメディアがCGMです。
CGMにも様々な種類がありますが、以下の2つを満たしているのがCGMと呼ばれています。
- ユーザーによって価値が生み出されていること
- 受け手に情報が届くメディアとして、仕組み化されていること
UGCを統合し、ユーザーに届ける仕組みがCGMです。具体例としてはSNSそのものがCGMですし、その他にもQ&AサイトやWikipediaなどのナレッジコミュニティ、口コミサイトや掲示板などもCGMといえます。
UGCをマーケティング活動に組み込むには?
UGCマーケティングは、UGCを自社サイトやSNS、広告などで活用し、ブランディングに役立てたり、コンバージョン、売上に結びつけたりする手法です。
顧客に質の高いUGCを自発的に作成してもらうために「購買」だけでなく、「他のユーザーに商品やサービスを紹介する」ことを期待したマーケティング手法です。ユーザーがコンテンツを作成したいというモチベーションを持てるように、商品やサービスだけでなく、顧客体験を通じた「感動」や「驚き」を盛り込むことが重要です。
CGMマーケティングを実践するには、以下のような手法があります。
- 購入後に自動的に口コミを投稿したり、利用している写真を投稿できるようにする
- 購入後も顧客とのコミュニケーションを継続し、支援する体制を整える
- ユーザー同士の助け合いの場としてのオンラインコミュニティを構築する
- UGCの作成者にはロイヤルカスタマープログラムなどのインセンティブを用意する
UGCが生まれやすい商品・サービス
商品やサービスによっては、自然にUGCが生まれるものもあります。エンタメ(本、映画、ゲーム)・グルメ・ファッション・美容/コスメ・ガジェット機器・レジャー施設・観光地のサービスなどはUGCが発生しやすい商品です。
その理由として以下の3つがあります。
- 自分の体験をシェアしたくなるような感動や楽しさがある
- 自己表現の手段となる
- 商品や使用しているところを簡単に紹介できる
UGCが生まれにくい商品・サービス
ユーザーが「何を選んでも同じ」「安ければいい」と感じているような商品(コモディティ商品)は、UGCも生まれにくく、ユーザーが口コミを探す機会は少ないでしょう。
コモディティ商品であってもSNSでの企画などを通じて、ユーザーの思いがけない使い方などを掘り起こすことは可能です。
また、利用していることを知られたくない商材も、口コミにはなりにくい商品です。
このようなお悩み解決型商材の広告は劣等感を助長するとして規制が強化される一方で、その商材を切実に求めているユーザーも存在します。劣等感をあおることのない表現で訴求したコンテンツや、ユーザーのプライバシーへの配慮が求められています。
UGC施策に取り組む前に必要な準備
UGCをビジネスに活用する場合、実施する前に以下3つのプロセスをおさえておきましょう。
- UGCを活用する目的を明確化する
- UGCを通じて何を提供したいかを明確にする
- UGCを収集するシステムを構築する
1.UGCを活用する目的を明確化する
UGCを活用する主な目的には以下の4点があります。
- ブランドや商品認知を高める
- 自社に対するエンゲージメントを高める
- Webサイトへの遷移や商品動画などへのコンバージョン率を高める
- 商品に対するフィードバックを収集する
目的を明確化することで、収集するUGCの方向性も明確になります。
2.UGCを通じて、企業として何を伝えたいのかを明確にする
目的が決まったら、次はその目的を達成するためにユーザーに何を提供するかを決定します。
- 商品に関する情報
- 商品の使い方などのノウハウ
- 視聴して楽しいコンテンツ
提供する内容が決まったら、その内容にふさわしいハッシュタグを検討します。ハッシュタグを決定することで、ハッシュタグ検索を通じて適切なUGCが見つけられます。
3.UGCを収集するシステムを構築する
自動でハッシュタグ検索を収集するツールもありますが、事業規模も小さく、UGCもそれほど多くない場合は、ソーシャルメディアの検索機能を使用して収集できます。
ユーザーが自主的に作成したUGCを使用する場合には、ユーザーに使用許可を取り、クレジットの表記をすることが必要になります。
B2BでもUGCは活かせる?
顧客が限定され、購入までの期間が長く高単価な傾向にあるB2Bの場合でも、UGCは十分活用できます。自社製品について言及している投稿を見つけた場合にコミュニケーションを取るほか、オンラインコミュニティなどのユーザーとの接触機会を高める施策も有効です。
- ユーザーの困りごとを解決するようなノウハウをコンテンツで提供する
- SNSを通じてユーザーと交流し、オンラインコミュニティを形成する
オンラインコミュニティの代表的なものとして、Google ヘルプコミュニティやMicrodoftコミュニティなどがあります。オンラインコミュニティではユーザーの困りごとにユーザーが答えたり、ユーザーが交流することを通じて、ブランドに対するロイヤリティを高める効果があります。
UGC施策を推進するうえで活用できるツール
UGCマーケティングに活用できる主要ツールを紹介します。
YOTPO
SNSに投稿された写真やレビューが収集できる他、ユーザーの写真や動画をあらゆるマーケティングチャネルで活用できるコンテンツに加工します。またレビューや紹介を促進するためのポップアップが表示され、クーポンなどのインセンティブを提供します。
上記の機能は有料プランですが、無料プランでは購入者にレビューを依頼するメールの自動配信を行う機能が利用できます。(有料プランは問い合わせ)
Letro
自社商品についてInstagramに投稿された写真やレビューを収集し、投稿者に許可を取るまで自動で行ってくれるツールです。導入することで自社のInstagramやFacebookなどの投稿にそのまま利用できます。また、UGCの効果測定を自動で行う機能も搭載されています。
UGC収集からサイト掲載・最適化まで行ってくれる基本プラン、UGC投稿を依頼し新たにUGCを生成するUGC生成プラン、広告運用まで行うソリューションプランの3タイプがあります。
OWNLY
写真や投稿を抽出しUGC創出を行い、CGMマーケティングを支援するツールです。投票や総選挙、クイズなどのさまざまな機能が搭載されています。
初期費用ゼロで月額制10万円、30万円のサブスクリプションとなっています。
HubSpot Marketing Hub
マーケティングに関するあらゆる機能を搭載したHubSpotのMarketing Hubでは、SNSマーケティングを円滑に進める機能も備わっています。Marketing Hubでは、自社が発信するメディアについての反応を確認できる他、設定したキーワードの追跡機能などもあります。
ソーシャルメディアの機能が利用できるのは、月額96,000円からのProfessionalプランからとなっています。
UGC活用の成功事例
UGCをビジネスに活用した成功事例を紹介します。
Tasty Japan
Tasty Japanは作りやすい料理動画を提供することで、Instagramで国内企業最大のフォロワーを獲得しているアカウントです。
Tasty Japanの動画はいずれも2~3分でシンプルでわかりやすく、飽きずに最後まで見ることができます。
Tasty Japanでは投稿のたびにユーザーに作ることを呼びかけ、作ったら#tastyjapanをつけて投稿し、UGCの作成を促しています。料理を作りたいという気持ちだけでなく、自分も参加したいという気持ちを起こさせるきっかけ作りに成功しています。
UNIQLO
ユニクロではユーザーがUGCを作成し、投稿したくなるような仕組みが構築されています。
- 企業側が採用したい投稿のイメージを紹介する
- ユーザーが作成したUGCが取り上げられ、公式アカウントで紹介される
- 公式アカウントで紹介された投稿を理想として、多くのユーザーが新たにUGCを作成する
#uniqloginzaのハッシュタグには、この仕組みによって生成された質の高いコンテンツが蓄積されています。質の維持が問題となるUGCですが、ユニクロは特定のハッシュタグを作成することで、コンテンツの高い質を維持しています。
The UPS Store
上記で紹介した大企業とは異なるスモールビジネスのUGCも紹介します。
UPSストアは、中小企業向けに印刷や配送サービスなどを行うアメリカの企業です。Instagramでは #theupsstorecustomer (UPSのお客様)というハッシュタグを作成し、自社の顧客企業の日常の投稿を収集しています。B2B企業が扱う商品がどのような人にどのように使われているかを紹介する内容になっています。
UGCを活用し、ユーザーとの信頼関係を構築しよう
ユーザーにコンテンツを作ってもらうためには、あらかじめユーザーに価値を提供することが重要です。例えば、最初に投稿例となるようなコンテンツを作成し、ユーザーの「やってみたい」「おもしろそう」という気持ちを喚起します。
このようにユーザーがUGCを作成したくなるような価値を提供し、ユーザーとの信頼関係を構築していくことがUCG活用のベースとなってきます。B2Cだけでなく、B2Bビジネスでも、ユーザーとの信頼関係を構築し、自社のコンテンツマーケティングと連動させることで潜在層への認知を広げることが期待できるでしょう。これからUGC活用を検討する企業は、ぜひコンテンツマーケティングを運用するところから始めてみてはいかがでしょうか。