年齢や経験によって信頼を勝ち取れる時代は終わりました。これから重視されるのは、独自のアイデア、相手のためになる行動、リスクを恐れず失敗から学ぶ姿勢です。こういったものを備えた人の意見が、大勢の中でも尊重されるのです。
ブログの登場は、この15年間で社会を大きく変えてきました。これまで無名だった個人が、たった1ページの記事によって人々の共感や話題を集められるようになったのです。近年の言論界をリードする著名人の中には、ブログをきっかけに注目されるようになった人も少なくありません。しかし、書き手が増えるにつれてブログコンテンツの質が重視される傾向が強まっています。特に、インターネット上での知名度アップにブログを活用している企業は、その質が厳しく問われる時代になりました。
単に「ブログを公開している」だけでは十分ではありません。これからも持続的に高い成果を上げるには、高品質のコンテンツを作り出し、その分野のエキスパートとしての評判を着実に積み重ねていくためのブログ戦略を、じっくりと練り上げることが必要です。
多くのビジネスがつまずきがちなのがこの戦略ステージです。さまざまな企業の事例から、ブログ戦略は具体的な文書の形に記録しておくことが有効であることがわかっています。これからブログ戦略を策定したいという企業のために、9段階の効果的な進め方をご紹介します。各段階の内容は短い質問にまとめました。ビジネスニーズや経験に応じ、カスタマイズしてご活用ください。
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ブログ運営のヒント:ブログ戦略の立て方
1) 目的
ブログを開設した目的は?
記録する事柄:ブログの目的を明確に定義
ブログ戦略の立案を始める前に、まずはブログを書くことの目的を明確にする必要があります。以下の質問について考えてみましょう。
- あなたの会社が達成しようとしている大きな目的は何ですか?
- この目的はどんなストーリーで説明できますか?
- この目的への思いはどんな人たちに共有されていますか?
- この目的の意味はチームの中にも浸透していますか?
これらの質問に対する答えが明確になったら、それを集めて1つの定義文を作りましょう。これが今後のブログ制作(さらにはマーケティング)の方向性を決める基礎になります。
2) バイヤーペルソナ
想定する顧客はどんな人々ですか?
記録する事柄:想定顧客の明確で詳細な定義
ブログは、読者を有望見込み客(リード)に転換する効果的なツールです。買い手となる可能性のある読者に合わせてブログのコンテンツを最適化するのが理想的です。では、想定する顧客はどのような人たちでしょうか?この質問への答えが明確になると、ターゲット層の関心を的確に捉えたブログ記事が書けるようになります。(ここから、バイヤーペルソナを作成するのに便利なテンプレートをダウンロードいただけます。)
想定する顧客の人物像が明確に定まったら、ブログコンテンツをこのターゲット層が抱えている問題、関心、興味に合わせて制作できるよう、その行動パターンをリサーチします。顧客調査には多くの費用がかかるのではないかと思われるかもしれません。そのような場合もありますが、以下のような場所をはじめとして、予算をかけなくても一定のヒントが得られる情報源も活用できます。
- Q&Aフォーラム:Quora、Yahoo!知恵袋など
- SNS:LinkedInグループや Twitterの高度な検索は情報源としても優れています。
- 自社ビジネスに関連する最新コンテンツの動向や、潜在顧客の間での話題性(SNSでのシェア回数に基づく)について知ることができるツール(例:BuzzSumoなど)
- ブログのコメント:潜在顧客が読んでいると思われる他所のブログで、読者が関心を持つコンテンツの傾向を知ることができます。
インバウンドマーケティングの主な目標の1つは、対象層との信頼関係を築くことです。顧客が求めている情報をつかみ、それがわかる情報源としてブログが認知されれば、会社への信頼もついてきます。ブログを続けるにしたがって信頼も深まり、いつしかリピーターが増えて知人にも広がっていくでしょう。
3) 競合
競合相手の中で、ブログを運営しているのはどの会社ですか?
記録する事柄:自社と直接競合し、ブログを運営している企業(5~10社)と、それぞれの内容
自社の顧客が、購買に関わる情報を競合相手から入手しているとしたらどうでしょう?あくまでも仮定の話ですが、もしお客様の探している情報が皆さんのブログになく、競合相手のブログにはあるとしたら、お客様に選ぶ余地はありません。
ぜひ最大の競合相手のコンテンツをチェックしてみてください。重要なキーワードで検索してみて、皆さんの会社よりも競合相手の表示順位が高かった場合は、そのキーワードに関するさらに優れたコンテンツを制作し、プロモーションします。競合相手のウェブサイトに不足しているコンテンツがあることに気づいたら、それを最大限に利用しましょう。QuickSprout、Link Explorer(旧Open Site Explorer)、SEMRush Competitor Researchなどを利用すると、競合相手についての貴重な情報を手に入れることができます。
4) キーワード
どんなキーワードをターゲットにしますか?
記録する事柄:検索結果で上位を獲得したいキーワード5~10個と、ブログコンテンツに含めることができるロングテールの関連キーワード
キーワードは、各ウェブサイトのコンテンツの内容を検索エンジンが把握するのに使われます。どの企業も、あるフレーズについて検索する潜在顧客に競合相手のサイトではなく自社のブログ(またはウェブページ)にたどり着いて欲しいと思っています。では、求められているのはどのような情報なのでしょうか。ターゲット層の消費者がよく検索しているキーワードを調査する時間をとり、それらをブログ記事に反映させましょう。
注意:Googleのアルゴリズムは常に変化しており、ますます直感的になりつつあります。キーワードをただ羅列するといった従来のテクニックは、もはや表示順位に悪影響しか与えません。まずは見る人の心をつかむコピーに力を入れ、検索エンジンは二の次にした方がよいでしょう。キーワード検索の方法についてはこちらのブログ記事をご覧ください。
5) 配信プラットフォーム
ブログコンテンツはどこで配信しますか?
記録する事柄:ブログコンテンツを配信するプラットフォームのリスト
MozのSEOエキスパートRand Fishkin氏が、こんなことを言っています。「『ブログを始めたら、世界中の人が見に来てくれた』などという奇跡は、一度たりとも起こったためしがない」
私は彼のこの言葉がとても気に入っています。質の高いブログコンテンツを書くことはビジネスブログを成功に導くための重要な第一歩ですが、一番の難関はこのコンテンツの存在を読者に知ってもらい、この分野の権威としての地位を確立することです。
しかし、ブログコンテンツの制作は時間のかかる作業です。特定の分野で権威とみなされるよう、十分なリサーチに基づいた記事作りを目指している場合はなおさらです。ここで効果を発揮する戦略の1つが、ブログコンテンツの再利用です。以前のブログ記事で書いたコンテンツを見直し、そこにあるアイデアやリサーチ、構成、データなどを、異なる形で再利用しましょう。最初のブログを読まなかった人たちも含め、より広い読者層にアピールすることができます。
ブログの効果をさらに引き出すために、いくつかできることがあります。主なものをご紹介しましょう。
- ブログ記事から重要な引用文やポイントを取り出して、ブログ記事へのリンクと一緒にSNSに投稿しましょう。Canvaのようなプラットフォームを使って引用文を画像に加工してSNSに投稿すると、さらに効果的です。
- ブログ記事をシリーズ化し、ブログ記事へのリンクをつけてコミュニティにメール送信しましょう。
- ブログ記事のコンテンツやデータを使ったプレゼンテーションを、SlideShareにアップしましょう。
- インフォグラフィックを作成しましょう。必要なのはPowerPointだけで、それほど難しい作業ではありません(1時間以内でインフォグラフィックを作る方法はこちらのブログ記事(英語)をご覧ください。無料のテンプレートもあります)。
こちらの記事(英語)でも、さらに多くのアイデアをご紹介しています。
6) プロモーション
ブログコンテンツのプロモーションはどのように行いますか?
記録する事柄:ニッチ市場でインフルエンサーとなり得る人物や、ブログコンテンツの知名度を上げるために使える戦略のリスト
ブログ戦略における「プロモーション」とは、コンテンツの存在を人々に知ってもらい、読んでもらい、(できれば)ほかの人とシェアしてもらうための手段を意味します。ブログ記事を宣伝するのに役立つインバウンドマーケティングの手法は数多くありますが、この記事ではインフルエンサーマーケティングにしぼって解説します。
ブログ記事のプロモーションにインバウンドのアプローチを用いるには、下準備にかなりの手間が必要になります。まずは皆さんの業界で潜在顧客が信頼を寄せるインフルエンサーを特定しましょう。インフルエンサーとはその分野での権威を確立しており、信頼性のある情報源として認識されている人たちのことです。
皆さんのニッチ市場で影響力をもっている人物のリストを作成してください。リストができたら「預金」を始めます。インフルエンサーの中にブログを書いている人たちがいれば、目を通してコメントし、シェアします。メール購読があれば登録し、時には感想を返信したり、周囲に薦めたりします。本を出版した人がいれば読んでレビューを書き、自身のネットワークでも宣伝します。Adam Franklin氏の言葉を借りるなら、「ためになることをして相手を動かす」のです。
リストにあげたインフルエンサーたちとは日常的にコンタクトをとることが重要です。私は、どのインフルエンサーにいつ追加の預金を入れるかをカレンダーに書き入れています。一見簡単なメールやSNSでのシェアに過ぎませんが、時にはそれが大きな意味を持つこともあります。預金をする努力を続けていればネットワークが拡大し、想定顧客層の間で高い影響力をもつ人たちとつながることができます。
このようにして大きく育てたネットワークが、ゆくゆくはあなたが書くブログ記事の拡散にも役立つようになります。私が実施しているブログプロモーション戦略はインフルエンサーマーケティング以外にもありますが、個人的にはこれが一番重要だと考えています。
7) メンバーの数
ブログを運営するのは誰ですか?
記録する事柄:ブログ戦略を担当する人物とそれぞれの役割
ブログ戦略を実行する担当者を明確に決めておきましょう。この記事からもおわかりのように、ブログ戦略はいくつもの要素から成り立っており、それぞれに責任者を決めておかなければ成功は望めません。下に、ブログ戦略を効果的に実行するために必要な役割の例をまとめましたのでご覧ください(皆さんの会社のマーケティングチームの大きさやスキルによっては、1人のメンバーが複数の役割を担当しなければならない場合もあるかもしれません)。
- キーワード検索
- 事実確認、データ、事例リサーチ
- コピーライティング
- 編集
- 戦略、編集カレンダー管理
- 制作
- プロモーション
- 再利用
8) リズム
週に何本のブログ記事をアップできますか?
記録する事柄:編集カレンダーと1週間にアップするブログ記事の数
ブログ制作のリズムを作り、編集カレンダーに従って公開するメリットは、頻度よりも一定の信頼性の確立です。すべてのブログ記事でキーワードやCTAを最適化し、予定通りに制作、公開されるよう確実に管理する体制を維持できることが重要なのです。これによって、読者が共感できるブログコンテンツをインターネット上にコンスタントに発信することができます。
編集カレンダーはブログ戦略のほかの活動ともうまくかみあうように計画してください。私はそれぞれのブログ記事に関連する具体的なプロモーション戦略や目標、必要なリソースなども書き入れるようにしています。
HubSpotをご利用の方は、COS(コンテンツ最適化システム)に組み込まれた編集カレンダー機能をお使いいただけます。HubSpotをご利用いただいていない方は、Excelで編集カレンダーを作成できる簡単テンプレートか、Googleカレンダーを使って編集カレンダーを作成する方法(英語)をご覧ください。
9) 指標
どんな指標が重要ですか?
記録する事柄:ブログによって達成したい目標や、その目標に関連する指標(戦略が効果を発揮しているのかどうかを確認し、得られた結果をもとに目標を調整したり変更したりするのに十分な時間が確保できるよう、60日間ごとに目標を設定することをおすすめします。)
トラフィック、いいね、リツイート、フォロー、被リンク数、登録者数などの指標には、どんな意味があるのでしょうか。これらは、会社の最終的な損益にどの程度寄与しているのでしょうか。
指標は便利なツールですが、ビジネスに何らかのプラスとなる結果につながっていなければ意味がありません。ブログ戦略を成功させるうえで最も重要なことは、達成したい目標を明確に定めることであるともいえるでしょう。目標や指標を設定する際に再確認したい点は、以下の3つです。
- その目標は企業としての目的達成において重要か。もっと関連性の高いものがほかにあるか。
- その目標はほかの部門の事業戦略にも合致するか。
- この目標に向けた達成度を評価できる指標は何か。副次的あるいは実感にそぐわない指標になっていないか。
こういった質問を通して有意義な目標を設定し、指標の意味を正しく理解して目標の達成に役立てていきましょう。ブログ戦略の効果を正確に評価する方程式は存在しませんが、このプロセスによって、アクティビティから目標とする結果までの道筋を明らかにすることができます。SNSでのシェア回数のような具体的な数値について、具体的な業績(売上など)との相関が分かると、より的を絞った戦略が立案できるでしょう。(注目すべきブログ指標についての詳しい解説はこちらをご覧ください(英語)。)
ニッチ市場に対する影響力のあるブログを育てることは、潜在顧客層の着実な拡大につながります。読者の抱える問題を解決し、好奇心を満たすコンテンツを定期的に制作することが、読者からの信頼と推薦の「総額」を増やし、将来のビジネス全体の成長に役立ちます。ブログの目的を明確にする質問からスタートし、ブログマーケティングの効果を高めるレバーを1つずつ動かしていきましょう。
今回ご紹介した9段階のプロセスがコンパクトにまとまったテンプレートも公開されています。初めての方にも使いやすい、ブログ戦略カンバス(英語)です。