ロゴ制作を成功に導くプロセスとは

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戸栗 頌平(とぐり しょうへい)
戸栗 頌平(とぐり しょうへい)

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ごく小さなデザインにすぎないロゴですが、そこには多くの意味が込められています。いわば企業の顔です。それだけに、ロゴの制作は責任重大です。ごく普通の消費者が接する情報がますます増えている現代において、企業のロゴは、そのブランドの何たるかを瞬時に理解してもらえる存在でなくてはなりません。

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こうした難題をクリアするために、多くの企業はロゴのデザインを外部に委託しています。しかし、そのプロセスになじみがない者からすると、フリーランスのデザイナーにロゴをデザインしてもらうこと自体、1つのハードルとなり得ます。

そこで、ロゴを一からデザインした経験を持つデザイナーに話を聞いてみることにしました。コンセプトの段階から完成まで、ロゴのデザインはどのような手順で進むのでしょうか。社外のデザイナーが、その企業のミッションと個性を、たった1つのシンプルなデザインに織り込むことが、なぜできるのでしょうか。そのあたりをひもといていきましょう。

ロゴが持つ意味

デザイナーが新しいロゴの制作プロジェクトに取りかかるときには、まずはその企業とオーディエンスを理解する作業にかなりの時間を費やします。ロゴが伝えるべきことを把握する手順については、後で説明するとして、まずは、そもそもよいロゴとはどのようなものなのかを見ていきましょう。

優れたロゴデザインには、次の5原則があります。ロゴデザインに携わる人の多くは、この種の原則に従っています。

  • わかりやすい:シンプルにすっきりまとまっていて、認識しやすく、柔軟性が高いデザインかどうか。ゴチャゴチャとやかましいデザインではないか。
  • 印象に残りやすい:すぐに認識できるか。見た人が1~2秒以内に意味を理解できるか。
  • 時がたっても色あせない:今から10年、20年、50年といったスパンで、優れたロゴであり続けるか。
  • 使い勝手がよい:サイズを変えても質が落ちないか。メディアや環境が変わっても使えるか。
  • 目的に合っている:ターゲットのオーディエンスの心に響くか。

HubSpotをはじめとする企業のロゴを制作したグラフィックデザイナーのTyler Littwinによると、この5原則は、新しいロゴを作るときに、攻めたデザインになりすぎるのを防ぐうえで有益とのことです。

「デザイナーは、斬新なスタイルでしゃれた外観のものをデザインできそうだと思ったときに、興奮を覚える傾向があります。しかし、ロゴのデザインとは、究極的には問題解決です。企業の基本理念と存在意義を理解してもらうための何かをシンプルに伝えなくてはなりません。この5項目を頭に入れておけば、興奮で我を忘れそうになるのを防ぐことができ、誠実に歩みを進めていくことができます」

ロゴデザインの具体的なプロセスの話に入る前に、優れたロゴの例を2つ見てみましょう。

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    例1:Evernote

    Evernoteのロゴは、5原則をすべて満たしている好例です。象の図柄は、「象は決して忘れない」という有名なことわざを踏まえています。また、象の耳の端がめくれているのは、文書を表すよく知られたアイコンを巧みになぞらえています。

    evernote-logo-1

    画像クレジット:Graham Smith

    このロゴは、シンプルで印象に残りやすく、オーディエンスにも合っています。しかも、その物理的特性やデジタル特性は、多種多様なメディアや用途に完璧に適合します。ロゴやブランドアイデンティティを手がけるフリーランスデザイナーのGraham Smith氏は次のように話しています。

    「私がこれまでに目にした使用例の中で、このロゴがうまく合っていなかった例は1つもありません。16ピクセルのファビコンから、ブラウザー拡張機能の白黒アイコンとカラーアイコン、iOSのアイコン、MacのDockのアイコンまで、どれも完璧です」。それに、象は時代遅れになることもありません。

    このシンプルな象のロゴは、コンセプトを打ち出して考えるのに要した期間は6週間だったそうです。象に決まる前に、初期段階で出された案には、次のようなものがありました。

    evernote-logo-process

    画像クレジット:Graham Smith

    象に決まってから、あらためて修正を順次加えていき、最終的なデザインが決まりました。そのプロセス全体に要した期間が6週間です。こうして、現代の最も魅力的なロゴの1つが生まれました。

    例2:Icon Snowskates

    もう少し小規模な例としては、Icon Snowskatesというスノースケートボード製造企業があります。米マサチューセッツ州で、ある親子が営んでいる小さな会社です。実を言うと、その子供のほうは、HubSpotで動画とデザインのプロジェクトに携わっているMatt Playsです。

    今から7年前、Mattは、設立したばかりのIcon Snowskatesのロゴ制作に取りかかりました。作成するロゴは、ウェブサイト上だけでなく、スノーボードのような33インチの板面に引き伸ばしても使えるものでなくてはなりません。

    Mattは次のように言います。「私は、Element SkateboardsやPlan B Skateboardsなどの会社に影響を受けました。両社のロゴは幾何学的で、ウェブにもボードにもうまく合います。私は、文字間を詰めたCentury Gothicの字体を使い、やや抽象的な、色抜きした水滴のロゴマークを組み合わせることにしました」。Icon Snowskatesのウェブサイトに表示されているのは、次のようなロゴです。

    icon-snowskate-logo

    この水滴にはどのような意味があるのでしょうか。Mattはこう言います。「雨などの降水は、スノーボードでは通常は困りものです。しかしスノースケートボードでは違います」。スノーボードの会社と、スノースケートボードの会社は、フィーリングやオーディエンスという面で相通じる部分があるものの、決して同じではありません。その違いを表すのが、まさにこの水滴なのです。

    加えて、文字間を詰めた字体と幾何学的なロゴは、さまざまなサイズと用途に適合します。特に、スノースケートボードの板面にはぴったりです。「画面に表示したときも、型抜きしたときも、ウェブ用にそのまま保存したときも成立します。どれも、当社のブランドにとって非常に重要です」。スノースケートボードの板面では、ロゴは次のような見栄えです。

    icon-snowskate

    EvernoteやIcon Snowskatesは、ロゴデザインの重要原則を第一に考えたロゴを生み出すことに成功しました。では、ロゴデザインはどのようなプロセスで進むのか、もう少し詳しく見ていくことにしましょう。

    ロゴデザインのプロセス

    デザインの具体的なプロセスは、デザイナーによっても異なりますが、Tyler Littwinの場合は、次のようなプロセスをとっているそうです。

    ステップ1:対象の分野や業界についてリサーチする

    紙にペンを走らせてデザインを考えるずっと前の段階として、まずはリサーチが必要です。「対象の分野や業界についてリサーチすると、作ったロゴがどのような世界に置かれるのかという感じがつかめます」とTylerは言います。

    これは特に、その分野や業界の仕事を初めて手がけるときには重要です。「現在のトレンドや、何が適切なのかを知らなくてはなりません」

    たとえば、不動産会社のロゴを作るときに、どのような外観や印象が適切かという話は、飲食店や音楽バンドのロゴとは違うはずです。「どのようなロゴが世に出ているかを見なくてはなりません。従来の流儀のうちで、そのまま踏襲したほうがよいのはどれでしょうか。そこを出発点にして、既存の膨大なロゴと差別化を図る方法を考えることができます」

    新しいロゴで認められる斬新さの度合いは、状況によって異なります。場合によっては、目にした人を引かせることがないよう、常道から大きく外れたロゴは避けたほうがよいケースもあります。

    たとえば、医療業界の顧客は、一定の水準の安心感や親しみやすさを求めます。一方、コンサート業界であれば、斬新で奇抜なロゴでもよいかもしれません。状況は分野ごとに大きく異なります。

    ステップ2:クライアントを知る

    対象の分野や業界について客観的にきちんと理解したら、その次は、クライアントの業務内容やそのターゲットオーディエンスについて、とことん理解しましょう。

    このステップには2つの要素があるとTylerは言います。1つは、クライアント自身から集める情報です。何を手がけていて、自社をどのように捉えていて、どのような顧客がいるかといった情報が該当します。

    もう1つは、その情報を変換するプロセスです。「クライアントは建設会社なのに、家族経営だという話が多く出てくることに気づいたら、そのひらめきを確固たるアイデアに変換することが課題です。その会社の本質をどのように捉えればよいでしょうか」

    このプロセスを適切に行うとしたら、かなりの行き来を繰り返し、質問を投げかけ、クライアントのバリュープロポジションを明確かつ詳細に説明するよう促すことになります。設立から日が浅い企業の場合、こうした話し合い自体が、先方にとって新たな発見につながることがあります。

    「よそにはない自社ならではの特色を認識していない企業は多いものです。小さな会社は特にそうです。クライアントにとっては、ロゴデザインを巡るこの話し合いから、競合他社との差別化要因についての考えが深まっていく場合すらあります」

    ステップ3:草案を考え、いくつか提示する

    「私の場合、通常はクライアントに2~3個の草案を提示するようにしています。それ以上の場合、すべての案に修正を加える羽目になったときに、自分にとっては作業が大きく増え、先方にとっては費用が大きくかさむことになります」

    たとえば、Inbound Marketing Week 2015のロゴをTylerがデザインしたときに、最初に提案したのは、次のような草案でした。

    inbound-marketing-week-logos

    ステップ4:修正を加える

    このステップは、微修正を1つ加えるだけの場合もあれば、もっと時間をかけて修正を繰り返していく場合もあります。Tylerの場合は、最大何回まで修正に対応するかを、最初に結ぶ契約の中で定めておくのが普通だそうです。そうすれば、クライアントは1回ごとの修正要求を入念に検討するようになります。「時には、すべてを一からやり直すように言ってくるクライアントもいます。最初に契約を結ぶときに精査しておけば、そのような事態を防げます」

    Inbound Marketing Weekのロゴの場合、修正版は最終的に次のように仕上がりました。その横に示したのは、ウェブサイト、入場証、看板など、関連する各種アイテムで使用した派生版のロゴです。

    inbound-marketing-week-final-logo

    ステップ5:成果物をまとめる

    ロゴのデザインが完成したら、Tylerの場合は、ファイル形式や、そのロゴを使う別の状況について、クライアントとすり合わせを行います。たとえば、Icon Snowskatesの場合、スノースケートボードの板面にうまく収まるロゴが必要です。あるいは、飲食店のロゴであれば、メニュー、看板、Tシャツなどのデザインが必要かもしれません。

    ロゴを一からデザインするのは、クリエイティブで難しいプロセスです。かなりのリサーチが必要で、企業とそのオーディエンスについての知識や、ロゴデザインの原則に対する熟慮も求められます。しかし、適切なデザイナーと企業がパートナーを組んで、プロセスをきちんと進めていけば、満足が行くロゴが完成し、人々にも理解してもらえるはずです。

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    編集メモ:この記事は、2015年1月に投稿した内容に加筆・訂正したものです。Lindsay Kolowichによる元の記事はこちらからご覧いただけます。
    トピック: ウェブデザイン

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