インターネット・スマートフォンの急激な普及に伴い、ウェブサイトを閲覧するユーザーが増え企業におけるウェブサイトの売上貢献度は高まりつつあります。そのため、いかにユーザーに興味を持ってもらい閲覧してもらうかが重要です。
一つの事実を伝えるにも、表現・伝え方でイメージが変わったことはありませんか?ユーザーも同じように企業からの情報を受け取る際に、表現次第で印象が変わることは少なくはありません。
貴社ウェブサイトをより良くするために、心理学を学び活用することも一つの手段です。今回は心理学を用いたウェブデザインについてお伝えします。
ファネル像を理解し、適切な手段を用いる
ウェブサイトからの売上をUPさせたいと考えても様々な要素が含まれるため、自社のボトルネックを把握し適切なKPIを立てることが一般的です。よく指標として用いられているのは訪問数、直帰率、コンバージョン数、新規ユーザー数、会員数などではないでしょうか。
今回はその中でもウェブサイトの運営に強く関わる「有益な情報を多くの人に見てもらうため」の直帰率低下の施策と、自社のファンになってもらうための施策、顧客単価をUPさせるための施策の3つに絞ってご紹介します。
直帰率を低下させる心理
有益な情報を掲載していてもユーザーに気づいてもらい閲覧してもらわなければ意味がありません。ユーザーは3秒以内に「このページは自分にとって有益か?」を判断し、有益ではないと判断した場合には離脱すると言われています。
1ページ目で離脱する確率を「直帰率」といい、直帰率が高いと他のページに掲載している有益な情報を見てもらう機会を損失してしまうため、直帰率を下げようと工夫する企業が多数あります。
「このページは自分にとって有益である」と判断してもらうために、1stビューがとても重要になります。そこで用いられている有効な心理効果に「カクテルパーティー効果」や「ハロー効果」、「ツァイガルニック効果」などがあります。
カクテルパーティー効果
”自分に関係のある情報には、無意識に注意・関心が向く現象”を意味します。人は周囲の環境の中で自分に必要な事柄だけを選択して聞き取ったり、見たりします。「カクテルパーティーの騒音の中でも、会話をする相手の声だけを判別して聞き取る能力」ということから”カクテルパーティー効果”と言われています。
ウェブページでこの理論を用いた場合には、「ユーザーを細かく切り分け、ユーザーが求めているコンテンツを示す」ということです。閲覧者が「あ、これは私に関係のある事柄だ」と振り向いてもらうことが大切です。
ウェブページのみならず、CTA制作でもこれは大変重要なポイントで、どのような見出し文を盛り込むかでクリック数に大きな影響を及ぼします。
例えば、専門学校や○○スクール等といった訴求CTAを制作する際には、どんなジャンルを得意としている学校なのか・初心者向け?上級者向け?さらには、実際にどんな人が通える学校なのか?というのを、一目で伝えることが大切です。
具体的に「誰に向けたサイトなのか・CTAなのか」、「どのようなニーズにこたえられるか」を伝え、よりクリックしてもらえるサイトやCTAの制作を目指しましょう。
上記クリエイティブであれば、「ウェブクリエイターになりたい」と考えているユーザー向けには左のCTAを、「デザイン・映像業界に興味がある」と考えているユーザーには右のCTAと使い分けると効果が見込めます。
ウェブサイトでは必ずしもTOPページからユーザーが訪れるとは限りません。ブログやお客様の声など様々なページから訪れることがありますが、そのようなユーザーにも「自社が望む行動」を実施してもらうために、コンテンツ・CTA・クリエイティブを駆使して誘導していきます。
下記クリエイティブではゴールを「資料請求」に設定しているため、各ページにクリエイティブを設置し誘導を試みています。
このようにそれぞれの目的を明確にすることでウェブサイトの売上向上を助ける可能性があります。
ハロー効果
ある対象を評価する際に、対象者が持つ目立ち易い特徴に引っ張られ、その他についての評価にバイアスがかかり歪んでしまう心理現象のことをハロー効果といいます。
人は、他社を評価するときに、その人が所属している組織や出身大学などといったステータスを無意識のうちの重視してしまうことがあるかと思います。それがとてもネームバリューのあるものだと信用度があがってしまう傾向にあり、これらの心理現象のことを指しています。
ウェブサイトで言えば、「導入実績」がこの心理現象を利用したコンテンツです。例えば、ChatWork株式会社のサイトではサービスの導入企業の部分に企業のロゴを配置し、さらには事例企業の担当者様に登場して頂いており、お客様の信頼を獲得しています。
「誰もが知る有名な企業」を掲載することは有効ですが、「ニッチな業界だが、その業界のTOP企業」を掲載することも有効です。
例えばIT業界のシェアを伸ばしていきたいと考えた場合、IT業界の企業をたくさん掲載することにより「IT企業にとって有益なツール」と判断してもらえる可能性が高くなります。そのため「ユーザーがどのような観点で見ているか?」を把握し掲載企業を選定することが大切になる、ということです。
ツァイガルニック効果
こちらは、「完成されたものよりも、未完成なものに興味を引かれてしまう心理効果」のことを言います。
CM・テレビ番組・ドラマや映画でもよく使われている効果で、「続きはウェブで」というコメントを見たことはありませんか?まさにこのツァイガルニック効果を利用したものです。
欲しい情報が最後まで明確に分からずに不完全な状態で記憶に残ると、人は完全に近づけたいという欲求と行動を引き起こします。この心理的効果を用いてウェブコンテンツを制作・配置することで、ユーザーの気を引き付けることができ訴求効果で期待できます。
例えば、こちらのサイトでは、重要な「ノウハウ」を敢えて隠した状態で展開しているページ構成で、ユーザーの興味を引き立てています(右下のCTA)。
自社のファンを増加させるための心理効果
コンテンツマーケティングでは有益な情報を提供し、何度もウェブサイトを見ていただくことが大切です。そのためには「この企業・ウェブサイトは自分にとって有益だ」と感じていただくことが大切で、その際に用いられる心理効果が「返報の法則」です。
返報の法則
「人は何かを受け取ったとき、くれた人に何かしらのお返しをしたくなる心理学的効果」のことを言います。
ユーザーが求めていること・価値を感じてくれる行為をこちら側が自発的に行い、ユーザーが「何かお返しをしたい」と思ってもらうということです。ネットビジネスでは、この法則を利用しているシーンが実は沢山あります。
例えば、「無料サンプルプレゼント」もその一つと言えます。無料であれば、ユーザーが損をすることなくそのサービスの体験をすることができ、よりサービスの内容を細かく伝えることが出来ます。ユーザーからすると「無料なら試してみようかな」と気軽に試すことができ、サービスへの関心が高まります。
ユーザーの求めているものに合致することができれば、「じゃあ、次から契約してみよう、もう一度利用してみよう」とコンバージョンに繋がる可能性を高めることが出来ます。ユーザーは無意識に「良い対応を受けたのでお返しとして」、製品・サービス購入をしてくれているということになります。
一度利用しているサービスと全く利用したことのないサービスを天秤にかけたときに、「サンプル試したから」と、前者を選択するユーザーがほとんどです。お礼として何かをお返しせずにはいられないような性質を上手に利用する手法ですね。
BtoB企業でも返報の法則は有効で多くの企業ではホワイトペーパーを用いています。上記ではERP導入・選定を行っている担当者向けに「導入手順のすべて」や「選定のポイント」をまとめたホワイトペーパーを提供しています。
このようにユーザーが困っていることを解決する手段を提供することで、ユーザーの印象を良くし検討時期に声をかけてもらいやすくします。
顧客単価をUPさせるための心理効果
売上をUPさせるためには顧客数の増加はもちろんですが、顧客単価を向上させることも必要です。一顧客あたりの単価をUPするために同時購入を促進することが多いですが、そのときに用いられる心理効果が「テンション・リダクション効果」です。
テンション・リダクション効果
Amazonで商品購入をしたことがある方なら必ず目にしているあの機能も実は、この「テンション・リダクション効果」を利用しています。行動心理学では、「商品購入」などの緊張する行動が済んでしまった際の心理的に無防備な状態に、「オススメ!」を目にすると、つい併せて購入してしまう傾向があります。この心理効果を「テンション・リダクション効果」と言います。
例えば、Amazonの「この商品を買った人はこんな商品も買っています」というリコメンド機能を見たことはありませんか?他には、商品購入をしたユーザーに送るサンクスメールに併せて他の商品のオススメを紹介したり、「お気に入り」としていた商品と類似している商品をよりユーザーの目につきやすい場所に配置したり、多くの場面で利用されています。
こちらのサイトでは本を購入すると、具体的な同時購入率を提示しながら別商品の提案を行っております。安さ・値引きはユーザーにとってメリットになりますが、BtoB企業であれば「あわせて導入することの効果・メリット」を訴求することも有効です。
まとめ
今回は「ウェブサイトの効果を向上させるため用いるべき5つの心理効果」をお伝えしましたが、本質的には「ユーザーを理解し、適切な情報を適切な方法で届ける」ことが重要です。
ユーザーがどのような状況でウェブサイトに訪れ、どのように考えているか?を想像することで、ユーザーが求めている情報を適切な方法で提供することが出来ます。自社のウェブサイトのボトルネックを把握し、適切な施策を実施してみてください。