「ブランド」と「ロゴ」の関係性、皆さんはどう捉えていますか?
ロゴは企業のシンボルとして考えられますが、ブランドの全てを網羅してはいません。ロゴの作成は、強力なブランドアイデンティティーの構築に向けた小さな一歩にすぎないのです。
ブランド認知度の向上を巡り多くの競合がひしめき合う現代において、自社の存在感を際立たせるには、強力なブランドを作り上げることがますます重要になっています。
初めてブランドアイデンティティーの構築に取り組む際には、それが顧客のためであれ、自社のためであれ、まず「ブランドとは何か」「ブランド確立のためには何が必要か」を理解することが大切でしょう。
この記事では、ブランドアイデンティティーの効果的な例を挙げながら、ブランドストラテジストの指針に従って、自社のブランドアイデンティティーを作り上げる方法について説明します。
ブランドアイデンティティーとは?
ブランドアイデンティティーは、ブランドのメッセージ、自社の価値観、製品の表現方法、そして自社とのやり取りを通じて顧客に与えたい印象、という数種類の要素で構成されます。その真髄は、ブランドの個性を示すこと、そして顧客への約束を守ることです。
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「ブランド」という言葉はもともと、牧場主が所有する牛に押していた「焼き印」のことを指していましたが、時代の流れと共に単なる名称やシンボルを超えた意味が包含されるようになりました。
ブランドとは、競合他社との違いを表現する特徴や一連の特徴のことです。通常ブランドを構成する要素は、名称、タグライン、ロゴやシンボル、デザイン、ブランドボイス(ブランドらしい語り口調)に分けられます。
そして、ブランドアイデンティティーとは、ブランド構築において、ブランドの個性と顧客に提供する価値に焦点を当てた部分と考えられます。
インテリア用品のECサイト、Wayfairでシニア ブランド マネージャーを務めるJared Rosen氏は、ブランドアイデンティティーについて次のように語っています。「ブランドアイデンティティーとは、コーヒーカップのスリーブや店先に使うロゴを見つけることだけではなく、ブランドDNAの中核的要素を引き立てるような「個性」を築き上げるとことです。以前と比べて現在では、デジタルプラットフォームから現実世界の体験、そして実際の顧客との自然な会話にまで対象を広げたブランドアイデンティティーが多くの人を惹きつけるようになっています」
最も重要な点は、製品が与える印象は販売から長い時間が経過しても顧客の中に残るということです。ブランドアイデンティティーというものは、こうした印象を形作るプロセスと言ってよいでしょう。
それでは、この概念をさらに深く理解するために、実例を見ていきましょう。
強力なブランドアイデンティティーの例
- Coca-Cola
- Hustle & Hopeのグリーティングカード
- POP Fit
- Burt's Bees
- Asana
- Semicolon Bookstore & Gallery
1. Coca-Cola
Coca-Colaという名前を聞いて思い浮かべるのは、有名なこちらのロゴではないでしょうか。
しかし中には、シロクマのキャラクターや真っ赤なテーマカラー、キャッチフレーズのほか、缶に印刷された「リボン」を思わせるお馴染みのイメージが浮かぶ人もいるかもしれません。Coca-Colaのブランドアイデンティティーは、次の2つの要素で構成されています。
- Coca-Colaのブランドアイデンティティーの基本要素は、筆記体で書かれた赤いロゴです。あの赤い色がコーラを飲む人に自信をみなぎらせ、筆記体の文字が楽しさを感じさせます。例えば、朝働き始める前の飲み物といえばコーヒーが思い浮かびますが、仕事が一段落した午後に楽しむ飲み物といえば「Coca-Cola」でしょう。これがCoca-Colaというブランドの「顔」です。
- Coca-Colaのロゴは、独特の形状をした瓶に印刷されています(実際、まったく同じ形の瓶を使用している飲料メーカーは他にありません)。この特徴によって、模倣品ではなく、本物であることを顧客に示しているわけです。このようにして、Coca-Colaは信頼のおけるブランドを築いています。
2. Hustle & Hopeのグリーティングカード
Hustle & Hopeは、自社の製品を単なるグリーティングカード以上の存在として位置付けているブランドです。同社の文房具やカードは、就職活動や自己啓発といった、複雑なテーマにも対応しています。シンプルな励ましのメッセージに加えて、カードの裏に印刷されたQRコードから、各テーマに関するアドバイスを記載したデジタルコンテンツを閲覧できるようになっています。つまり、何らかの形でカードを受け取った人の「気力を高める」という意図が込められています。
創業者のAshley Sutton氏は、以前から文房具の会社を立ち上げたいと思っていましたが、Fortune 500に名を連ねる大手企業数社でのキャリアを経て、人々が自分の能力を最大限に発揮できるようなキャリア支援を後押しすることにも情熱を感じるようになりました。そんなある日のことです。「素敵なグリーティングカードの販売と人助けを同時に実現できるのでは?」とひらめいたのです。この発想が後に独創的な会社の原点となります。同社のブランドアイデンティティーは次のような形で確立されています。
- 全ての紙製品には、まるでページから飛び出すかのようにモダンで色鮮やかなデザインを採用し、ありきたりの応援メッセージとは一味違うスローガンを特徴としています。
- コードをスキャンするという斬新な体験を通じて、製品そのものだけでなく、製品に込めたインスピレーションを届けたいという想いを含めて、顧客に強い印象を与えています。
3. POP Fit
女性用レギンスを主力商品とするPOP Fitは、明るいピンクや紫、黄色といったカラフルな色使いが印象的なブランドです。ただし、同社のブランドアイデンティティーで重要なのは、その点ではありません。このブランドの大きな魅力の1つとなっているのは、ブランドメッセージの随所に見られる先鋭的な表現です。同ブランドのウェブサイトには、「POP Fit Clothingは、表現、多様性、そして、ありのままの姿を前向きに受け止める姿勢が、ファッション界とメディア界の両方において重要であるという考えに基づいて設立されました」と記載されています。XXSから4XLまでのサイズ展開や4wayストレッチ素材の使用は、同社のブランドアイデンティティーを反映したものです。
- POP Fitの広告では、さまざまな人種や体型の女性のほか、車いすの利用者を起用することで、多様性を重視していることを伝えています。また、広告の写真は一切修整されておらず、多種多様なモデルの個性を尊重し、ありのままの姿を紹介しています。
- POP Fitの製品では、スポーツウェア業界に共通する大きな問題点を解消しています。例えば、サイズ展開を増やしたり、ポケットを付けたり、またスクワットなどのエクササイズをしている時に下着が見えたり、ウェアがめくれ上がったりすることを防止しています。
4. Burt's Bees
Burt's Beesは当初、養蜂業とハチミツの販売をこじんまりと営む会社でしたが、天然素材のみを使用した、持続可能なパーソナルケア用品に対するニーズに応えることで大きく成長を遂げました。同社は「自然への影響の抑制と生物多様性の保全に関するさまざまな選択を慎重に考慮した上で行い、私たちが暮らす世界を守ること」を目指しています。
初期のロゴ(上の画像)はあごひげを生やした創業者をモチーフにしており、シンプルさと素朴さが強調されています。これは、他の美容製品やパーソナルケア用品のブランドが打ち出している美のイメージとは正反対です。派手さを避けて、何よりも自然を重視する同ブランドの姿勢は、次のような点にも表れています。
- Burt's Beesでは責任を持って製品の原材料を調達し、リサイクル可能な包装材を使用しています。
- Burt's Beesでは環境保全プロジェクトやグリーン化事業への寄付を行っています。
5. Asana
ワーク マネジメント ソフトウェアを提供するAsanaのミッションは、「世界のチームが容易に協力しあえるようにし、人類の豊かな未来に貢献する」ことです。創業者の2人はFacebookに勤務していた当時、共同作業をスムーズに行うために、プロジェクト管理とコラボレーションのツールが必要であると強く感じていました。
「Asana」とはサンスクリット語でヨガのポーズ(坐法)のことであり、同社の社名には、仏教の原則である「集中(心身一如)」と「流れ」に対する敬意が込められています。この理念、「素晴らしい仕事を素早く成し遂げる」というAsanaの価値観、そしてチームワークは、同ブランドのビジュアルデザインにもはっきりと示されています。
- Asanaのデザインは余白を多くすることで集中を表現し、そこにたくさんの色を付け足すことで、職場に「エネルギーを注入」しています。
- ロゴに配置された3つのドットは、バランスと協力を象徴しています。
6. Semicolon Bookstore & Gallery
Semicolon Booksは、店のオーナー兼経営者であるDanielle Mullen氏が今を楽しもうと決めたことで誕生しました。視神経に腫瘍があると診断されてから、Mullen氏は次世代に何かを残したいと思うようになりました。そんなある日、店を開く見込みや意思があったわけではなく、通りすがりの場所で偶然うってつけの貸店舗を見つけたのです。Mullen氏がその店舗のオーナーとなり、書棚を作り始めたのは、それから間もないことでした。
同書店のミッションは、「文学とアート、そして知識の追求を結び付けると同時に、言葉の力によって近隣コミュニティーをもっと豊かにする」ことです。この理念の下、同書店はシカゴのコミュニティーに貢献し、来店するお客さまがくつろげる場所を提供することに努めています。
- この書店で実施されている#ClearTheShelvesプロジェクトでは、地元の学生に好きな本を無料で貸し出し、シカゴの識字率の向上を後押ししています。
- 近隣の住民は自由に飲み物を持ち込むことや、店内でくつろぐことができ、店主と雑談を交わせるような、親しみやすくアットホームな雰囲気がつくり出されています。
- Semicolon Bookstoreはギャラリースペースで地元のアーティストの作品や作家の著作を展示することで、地元クリエイターの活動を支援しています。
この書店ブランドのビジュアルイメージからも、シカゴの空気感が感じられ、来店した人々が店内の雰囲気と読書を楽しんでいる様子が伺えるのではないでしょうか。
ここまで紹介した事例では、ブランドはロゴをはじめとする企業のビジュアルイメージを超えて、はるかに広義な概念として捉えられています。以降では、この点について掘り下げていきましょう。
ブランドアイデンティティーが重要な理由
ブランドアイデンティティーはブランドそのものとその活動のほぼ全てを体現したものであり、顧客の心に働きかけ、ブランドに対するロイヤルティーを高める効果があります。そのような意味で、ブランドアイデンティティーはビジネスの将来にとって重要な意味を持っています。
さて、ブランドが単なる企業のロゴ以上の存在だということはお分かりいただけたかと思いますが、Coca-Colaのようなブランドの施策を手本としながら、自社の独自性を表す他の要素をブランドアイデンティティーに融合させていくにはどうすればよいのでしょうか?
ここからは、理想的なブランドアイデンティティーを構築するための6つの構成要素を挙げ、それらの要素を確立することが重要である理由について説明していきましょう。
自社の「顔」
企業の意図や目的にかかわらず、ブランドのロゴは自社の「顔」です。ただし、その役割は魅力的なデザインや面白みをアピールすることだけではありません。ロゴは人々にブランドを連想させる力を持つという点で、ブランドアイデンティティーの重要な要素となっています。つまりロゴは、「この画像」が「自社の企業名」を表している、ということを消費者に伝える手段と言えるでしょう。
信用と信頼
ブランドアイデンティティーを確立する理由には、自社の製品を印象に残りやすくするためだけでなく、市場におけるブランドの信頼性を高める目的もあります。ブランドとしての顔を確立し、一貫性を長期的に維持することで、競合企業の中で信用度の高さを示し、顧客の信頼を得ることができるでしょう。
広告で与える印象
ブランドアイデンティティーは、印刷物やオンラインの広告から、YouTube動画の再生前に流されるプレロール広告まで、自社のさまざまな広告に盛り込まれる全ての要素のテンプレートと考えられます。ブランドとしての顔と業界内での信用が確立されていれば、自らを宣伝し、潜在顧客に印象付ける基盤は整っているでしょう。
自社のミッション
自社のブランドアイデンティティーを構築する際には、自社が重要と考える信念を加えましょう。そうすることで、企業の目的もおのずと見えてくるはずです。多くの企業がミッションステートメントを掲げていることは、皆さまもご存じだと思います。ブランドアイデンティティーを確立することなく、このミッションステートメントを掲げることはできません。
新規顧客の創出と既存顧客の満足度向上
顔、信頼性、ミッションが確立されたブランドアイデンティティーは、ブランドが提供する価値観に共感する人々を惹きつけ、 その結果顧客となった人々の帰属意識を高める効果があります。優れた製品は顧客の創出につながりますが、優れたブランドがもたらすものはブランドアドボケイト(ブランドのファン)です。
誰もが知っている愛されるブランド名として知られるようになるには、それなりの努力が必要です。以降で示す手順に従って、ブランドアイデンティティーの確立を目指しましょう。手順はシンプルですが、実践するとなると、そう簡単ではありません。
ブランドアイデンティティーを構築する方法
- 自社のオーディエンス、バリュープロポジション(提供価値)、競合ブランドについて調査する
- ロゴとそのテンプレートをデザインする
- ソーシャルメディアでオーディエンスとつながり、自社製品を宣伝し、ブランドを体現するために使用する言葉遣いを確立する
- 避けるべきことを把握する
- ブランドをモニタリングして、ブランドアイデンティティーを維持する
1. 自社のオーディエンス、バリュープロポジション(提供価値)、競合ブランドについて調査する
事業を立ち上げるときと同様に、ブランドアイデンティティーを構築するための最初のステップは市場調査を実施することです。以降で挙げる5つの点を明確にし、しっかりと理解しておきましょう。
HubSpotでブランドストラテジストを務めるJames Zabikは次のように語ります。「ブランドアイデンティティーを構築する際に特に重要なのは、メッセージを通じてターゲットオーディエンスの共感をどれだけ得られるか、という点です。まずはターゲット層が抱える問題を見極め、その解決に自社や自社製品がどれだけ役立つかを伝えましょう」
Zabikはさらに続けます。「たとえ派手なロゴと、目を引くキャッチフレーズを使用していても、顧客の問題に明確かつ効果的に対処できなければ、強力で長きにわたって愛されるブランドアイデンティティーを確立するのは難しいでしょう」
オーディエンス
当然ながら、人によって求めるものは異なります。大学生を対象とした製品と同じ方法で、思春期前の子供を対象とした製品を売り込もうとしても、あまり効果は見込めません。人々に愛されるブランドを確立するには、自社のオーディエンスが業界内の企業に対して何を求めているのかを知ることが不可欠です。
バリュープロポジションと競合ブランド
業界における自社の独自性を考えてみましょう。他社にはない、どのようなものを顧客に提供できるでしょうか? 優れたブランドを構築するには、自社と競合企業との違いを知ることが欠かせません。また、競合企業の動向を常に注視することで、ブランディングの効果的な手法と効果的でない手法を把握することもできます。
ミッション
自社の製品やサービスが提供するものを理解することは当然のことですが、それに加えて、自社のビジョンや目標を分かりやすく説明したミッションステートメントを作成することも忘れないようにしましょう。言い換えれば、自社の事業目的を把握することが重要です。ビジネスの目的を知らずして、自社の個性を生み出そうとしてもうまくいかないでしょう。
HubSpotのシニア ブランド マネージャーであるCallie Wilkinsonは次のように述べています。「自社の信念を堂々と主張してください。現代の顧客はかつてないほど、共通の価値観を感じられるブランドに魅力を感じるようになっています。自社のミッションとビジョンをありとあらゆる企業活動に織り込むことで、同じ価値観を共有する人や組織との有意義なパートナーシップの構築に努めましょう」
個性
たとえブランディングの対象が個人ではないとしても、人柄を感じさせるブランドイメージを構築できないというわけではありません。書体や配色、画像などを駆使して、ブランドの人柄を表現してみましょう。さらに、ブランドの語り口調を決めることで、言葉を使って視覚的なイメージをさらに強固なものにできます。皆さまの会社は、Nikeのように活気と自信に満ちたブランドでしょうか? それとも、Givenchyのように優美でプロフェッショナルな企業でしょうか? いずれにせよ、ブランド戦略を通じて自社を表現することが大切です。
調査を実施することは決して楽しい作業ではないかもしれませんが、自社について知れば知るほど、強固なブランドアイデンティティーを築くことができる、ということを念頭に置いておきましょう。
SWOT分析
最後に、SWOT分析を実施することで、自社のブランドに対する理解を深められます。ブランドの特性についてじっくり考えることで、その中から特に強調したい特性が見えてくるでしょう。
「SWOT」は、次の4つの単語の頭文字を取ったものです。
- Strengths(強み):競合他社よりも優位に立てるプラスの特性
- Weaknesses(弱み):競合他社に後れを取っている特性
- Opportunities(機会):自社のビジネスにチャンスをもたらす業界の変化やトレンド
- Threats(脅威):自社を取り巻く環境や業界において、自社のビジネスに問題を引き起こす恐れのある要素
2. ロゴとそのテンプレートをデザインする
自社のビジネスを徹底的に分析したら、次はブランドに命を吹き込みます。グラフィックデザイナーのPaul Rand氏の言葉を借りれば、「デザインは物言わぬブランドのPR大使」です。それでは、ここで重要なポイントを見ていきましょう。
ロゴ
ロゴはブランドアイデンティティーの全てではありませんが、ブランドを構築する上で不可欠な要素であり、ブランドを強く印象付けるシンボルです。また、自社のウェブサイト、名刺、オンライン広告に至るまで、あらゆるものに掲載されます。下の画像のように、全てのものにロゴを付けると、ブランドに一貫性が生まれます。
画像出典:Creative Commons
興味を引く形状
ロゴはブランドの構築に欠かせない要素ですが、ブランドアイデンティティーを強化するものはロゴだけではありません。製品やパッケージから、サービスの提供方法までの全てを、ブランドアイデンティティーの要素として捉える必要があります。あらゆるビジネス活動において自社を視覚的なシンボルとして表現することで、一貫したイメージが定着し、さらに消費者に親近感が芽生えるはずです。例えば、McDonaldは、アルファベットの「M」を思わせるユニークな形状を開発しました。今では、この「ゴールデンアーチ」と呼ばれるシンボルマークを知らない人はいないのではないでしょうか。
配色と書体
カラーパレットの作成も、ブランドアイデンティティーを強化する方法の1つです。カラーパレットは選択の幅を広げ、ブランドアイデンティティーを忠実に守りつつ、自社に合わせてユニークなデザインを生み出すのに効果的です。
書体も使い方を誤ると、ブランドイメージに悪影響を及ぼしかねません。複数の書体を組み合わせたデザイン(「ミックス&マッチ」)が大いに流行していますが、数種類のフォントを混ぜて使用する方法が、企業にとって必ずしも良い効果をもたらすとは限りません。ロゴやウェブサイト、企業で作成するドキュメント(印刷物およびデジタル文書)全体で、タイポグラフィーに統一感を持たせましょう。Nikeのウェブサイトや広告では、あらゆる媒体でフォントやスタイルが統一されており、ブランドアイデンティティーの構築に絶大な効果を与えていることが分かります。
テンプレート
皆さまはきっと、毎日のように潜在顧客にEメールを送信したり、手紙を書いたり、名刺を渡したりしていることでしょう。テンプレートを作成すると(Eメールの署名など、あまり目立たないものも含め)、企業としての統一感や信頼性が高まり、洗練された印象が伝わります。
一貫性
前述のほぼ全てのステップで説明したように(それでもまだ言い足りませんが)、強力なブランドアイデンティティーを構築できるかどうかは、一貫性にかかっています。前述のテンプレートを使用し、企業活動のありとあらゆる場面でブランドの規定デザインに従って、調和の取れたブランドアイデンティティーを構築しましょう。
柔軟性
一貫性の大切さは言うまでもありませんが、次々と新しいものが求められる現代社会では、柔軟性を保つことも同様に重要です。
柔軟性があれば、広告キャンペーンやキャッチフレーズを調整したり、ブランドアイデンティティー全体に最新の流行を取り入れたりと、オーディエンスを飽きさせることはありません。ただし注意点として、変更を加える場合にはブランド全体に反映させ、一貫性を保つようにしてください(例えば、名刺のデザインだけ変えて他はそのまま、といったことは避けましょう)。
文書化
企業全体でブランディングの「ルール」を順守するために、一連のブランドガイドラインを作成しておくと効果的です。自社ブランドに関する「べし、べからず」の注意事項を全て洗い出し、文書にまとめておきましょう。
例えばSkypeでは、誰もがルールを守れるように、簡単明瞭かつ統一されたブランドガイドを作成しました。このようなブランドガイドを作成することにより、ブランドの基準を保ちながらブランド要素を構築し、ブランドを共有することが可能になります。
3. ソーシャルメディアでオーディエンスとつながり、自社製品を宣伝し、ブランドを体現するために使用する言葉遣いを確立する
ブランドを確立し、ブランドの構築に必要な社内プロセスを全て完了したら、次はいよいよコミュニティーに自社ブランドを浸透させる段階に入ります。
この目標を達成する方法として最も効果的なのは、ブランドを通じて質の高いコンテンツを提供することです。HubSpotのeBook「Branding in the Inbound Age」の中で、Patrick Sheaは次のように述べています。「オンラインでは、あらゆる点で、コンテンツがブランドとして見なされます。コンテンツは、営業担当者や店舗、マーケティング部門の役割を果たし、自社のストーリーを伝えてくれます。そして、公開されるコンテンツの全ての要素がブランドのイメージを反映し、ブランドを定義付けます。つまり、上質なコンテンツは上質なブランドとして、つまらないコンテンツはつまらないブランドとして認識されると言ってよいでしょう」
言葉遣い
ブランドの個性に合った言葉遣いを選びましょう。高級ブランドを目指す場合は格調高い言葉遣いを、カジュアルなブランドなら少し砕けた言葉遣いを採用します。ブランドとして採用を決めた言葉遣いはビジネス全体で常に使われることになるので、ブランドの個性にふさわしいトーン(口調)を慎重に作り出すことが大切です。
つながりと感情
消費者はストーリーに関心を持っています。もっと正確に言うと、感情や行動を喚起するような感動的なストーリーに惹かれます。強力なブランドアイデンティティーは消費者との感情的なつながりを築き上げ、長きにわたる関係を構築するための盤石の基盤となります。
広告
自社のブランドを世界に発信するには、広告をデザインするのが最も効率的です。これは、プリント広告でもデジタル広告でも構いません。広告を見たり聴いたりしてもらうことで、ターゲットオーディエンスにブランドのメッセージを届けられます。
ソーシャルメディア
消費者とのつながりを確立するのに効果的なもう1つの手段といえば、ソーシャルメディアでしょう。インターネット上のさまざまなプラットフォームは、ブランドアイデンティティーを確立するために数多く利用できるデジタル空間の宝庫です。先ほども紹介したCoca-Colaは「Happiness」という自社のテーマに沿った画像を表示することで、Facebookのカバー写真のスペースをうまく利用しています。
顧客と直接対話する場や、ブランドへの親近感を生み出す場としても、ソーシャルメディアは重要です。ツイート、ステータス、投稿で自社のブランドがメンションされたら(相手が疑問や懸念を抱いている場合は特に)、効果的に回答して好印象を与えましょう。
4. 避けるべきことを把握する
強力なブランドアイデンティティーを構築するための全ての手順に従っていても、次に挙げるポイントを1つでもおろそかにすれば、ブランドの存在感を弱めたり、台無しにしたりする危険もあります。
一貫性のないメッセージを顧客に伝えない
伝えたいことをよく理解した上で、適切な言葉遣いとビジュアルデザインを組み合わせて表現しましょう。社内関係者に理解できることだからといって、それが顧客にも伝わるとは限りません。
競合他社のまねをしない
同じ製品やサービスを扱っている競合他社が効果的なブランド戦略を展開していると、ついまねしたくなるかもしれませんが、それは避けてください。他社を参考にしながらも独自の工夫を加えることで、業界内での存在感を高められるでしょう。
オンラインとオフラインの環境間で一貫性を保つ
印刷物とオンラインコンテンツとでは見た目が多少は異なるかもしれませんが、配色や書体、テーマ、メッセージに常に一貫性を保つようにしましょう。
従来の方向性を変えずに拡大する
WayfairのRosen氏は次のように述べています。「新たなチャネルへブランドを拡大する際に、時流に乗ろうとして、自社ブランドの価値観に沿わないトレンドを取り入れたくなる衝動は抑えたいものです。ブランドアイデンティティーの拡大を音楽に例えてみましょう。ポイントは、まったく新しい曲を作ることではなく、元の楽譜を繰り返し演奏することです」
5. ブランドをモニタリングして、ブランドアイデンティティーを維持する
他のマーケティング活動と同様に、主要なパフォーマンス指標を追跡していなければ、成果を上げている施策とそうでない施策を区別することは困難でしょう。
Google アナリティクス、アンケート、コメント、ソーシャルメディアでの会話などを通じて自社ブランドをモニタリングし、ブランドに関する投稿や自社と顧客とのやり取りの全体像を把握しましょう。そうすることで、ミスを正したり、ブランドアイデンティティーの改善を図ったりする上で、必要に応じてブランドを調整できるようになります。
HubSpotのZabikは次のようにまとめます。「大切なのは、テスト、学習、そして最適化です。自社ブランドと競合ブランドの違いを際立たせる要素を見極め、信頼感を高めるような方法でメッセージを伝えられるようにしましょう。自社の製品が宣伝通りのものであれば、ブランドに信頼を寄せる顧客との関係に弾みをつけられるでしょう」
記憶に残るブランドを構築するには、書体、配色、画像、言葉遣いに一貫性を保つ必要がありますが、その努力はきっと開花するはずです。自社のロゴを見ただけで、どのような信念を持った、何の会社であるかを消費者が瞬時に思い浮かべられるようになれば、単なる名前とシンボルマークを超越した存在になったと言えるでしょう。
編集メモ:この記事は、2019年1月に投稿した内容を包括性の観点から加筆・訂正したものです。