ブランディングとマーケティングの関係とは?より良い成長戦略を描くヒント

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伊佐 裕也(いさ ひろや)
伊佐 裕也(いさ ひろや)

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「ブランディング」も「マーケティング」も、使う人によって意味のずれが起こりやすい言葉です。特に日本では「ブランディング」を企業ロゴやイメージ広告、マーケティングを「プロモーション活動」と狭義にとらえる傾向もあります。今この記事をご覧になられている方も、ブランディングとマーケティングの区別に迷われているのではないでしょうか。

ブランディングとマーケティングの関係とは?より良い成長戦略を描くヒント

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本記事ではブランド戦略の基礎となる「ブランディング」と「マーケティング」の定義と関係性を整理します。それぞれの目的や役割を押さえ、ブランド戦略やマーケティング施策立案をスムーズに進めましょう。

効果的なブランドガイドラインの作り方

ブランディングとマーケティング、それぞれの定義は?

ブランディングとマーケティング、それぞれの定義は?

ビジネスを成功させるための要素の1つに、価値ある商品やサービスの提供があります。しかし実際は、商品力やサービス力が高いにもかかわらず、撤退を余儀なくされる企業も存在します。

そこでカギとなるのが、ブランディングとマーケティングです。
 

ブランディングの定義

買い手は、半ば無意識に「この店なら間違いないだろう」「ここの商品なら間違いはないだろう」と判断しながら、店や商品を選んでいることがあります。これは、買い手の頭の中には、これまでの経験や口コミ、SNS、ニュースや広告などで形作られた「店」や「企業」のイメージが形作られているためです。そして、このイメージが「ブランドイメージ」であり、買い手はブランドイメージを規準として店や商品を選ぶのです。

企業は買い手に、「快適な着心地」「くつろげる空間」など、 自社がどのような価値を提供するかを約束します。この約束事が「ブランド」です。そして商品や店舗、店舗での顧客対応、Webサイト、SNS、広告など、あらゆる接点を通して「約束事」を伝え、体験してもらいます。この「約束事」を伝え・体験してもらう活動全般が「ブランディング」なのです。
 

マーケティングの定義

「マーケティング」については様々な定義がありますが、私たちHubSpotとしては、企業が提供する商品やサービスの価値を将来的に買い手となり得る人々(見込み客)に伝え、見つけてもらい、それをきっかけに良好な関係を構築するための活動全般と捉えています。

今日のマーケティングは、一方的に商品やサービスの価値を伝えるのではなく、個々の買い手が持つ課題をいかに解決できるかがより重要になっています。

当然、マーケティングは広告宣伝だけではなく、市場調査や顧客分析、オンラインやオフラインでのコンテンツ提供、SNSでのコミュニケーションなど幅広い活動を含みます。
 

事例を通じてブランディングとマーケティングの関係を学ぼう

事例を通じてブランディングとマーケティングの関係を学ぼう1

ブランディングとマーケティングの関係を理解するために、アウトドアのアパレルブランドである「パタゴニア」の事例をご紹介します。
 

パタゴニアに見るブランディングとマーケティングの関係性

パタゴニアは、創業以来一貫して「環境問題」に取り組んでおり、自社のブランディングの中核に「私たちは、故郷である地球を救うためにビジネスを営む」というミッションステートメントを掲げています。

パタゴニアは2011年のブラックフライデーに合わせ、自社の主力商品であるフリースジャケットの写真とともに「Don’t Buy This Jacket(このジャケットを買わないでください)」という広告を掲載しました。広告の中で衣料品の廃棄が環境に及ぼす悪影響を説明し、新商品を買うよりひとつの商品を長く使おう、そして長く使える商品を選ぼう、と買い手に呼びかけたのです。

このマーケティングキャンペーンは多くの支持を集め、同社の収益は2012年に約 30%増の5億4,300万ドルに達しました。

「環境問題への取り組み」は創業以来続くパタゴニアのブランディングです。「このジャケットを買わないでください」というキャンペーンは、このブランディングを分かりやすく伝えるために展開された2011年のマーケティング活動の1つです。

パタゴニアの事例から、マーケティングとブランディングの関係性がよく分かります。ブランディングは長期的にぶれることのない、企業として守るべき約束事です。マーケティングは、企業としてどのような約束事を掲げているのかを知ってもらうきっかけを作り、信頼を深める役割を担っているといえます。

以上を踏まえると、ブランディング施策の一環としてとマーケティングがあり、簡単に図式化すると以下のように表現できるでしょう。

事例を通じてブランディングとマーケティングの関係を学ぼう2


 

ブランディングとマーケティング、どちらを先に考えるべきか?

では、実際に自社のブランディングとマーケティングを実施する上で、どちらを先に考えるべきなのでしょうか。

先に見たパタゴニアの例にもあるように、マーケティングはブランディングに基づいて行われなければなりません。

仮に「環境への配慮」を訴える企業が、シーズンごとに新しいデザインを多数発表し、大量生産大量消費を促すような商品展開を行ったら、買い手はどのように感じるでしょうか?

おそらく「環境への配慮」はもう考えていないのかとがっかりされ、企業理念に共感していた買い手や、さらには企業内の社員や社外パートナーまで離れてしまう可能性が高いでしょう。

ブランドに対する信頼は、さまざまな体験の積み重ねによって個人の内側に形成されるものです。個々のマーケティング施策が優れていても、一貫性がなければ、買い手の中に信頼できるブランドだというイメージは形成されません。

そのため、まずはブランディングの確立を行い、それに基づいてマーケティング戦略・施策を検討しましょう。
 

ブランディングとマーケティングの役割を理解しよう

ブランディングとマーケティングの役割を整理しよう

ブランディングやマーケティングの実施を検討する際に、それぞれがビジネスの中でどのような役割を果たすのかを押さえておかなくてはなりません。
 

買い手・売り手それぞれにブランディングはどう影響する?

ブランディングの役割を、買い手から見た場合と売り手となる企業から見た場合に分けて見ていきましょう。
 

買い手にとってのブランディングとは?

買い手にとって、ブランディングは「識別」と「想起」2つの役割をもっています。

  • 識別 …他の商品との差異を認識し、カテゴリ名ではなく商品名や企業名で認識できる
  • 想起 …「このカテゴリならこれを選べば間違いない」と、選択・検討プロセスを省略してニーズを満たす商品を選ぶことができる

皆さんも、スーパーやドラッグストアで日用品を購入する際、無意識のうちにカゴに入れ、購入している商品があるはずです。「洗濯洗剤はこの企業のこのブランドをいつも買っている」という行動は、ブランドとして識別し「洗濯洗剤ならこの商品」と想起しているからこそ起こることです。

企業内におけるブランディングの役割

企業にとってのブランディング(インナーブランディング)の役割は様々ありますが、大きくは以下の2点に集約できるでしょう。

  • 商品やサービスの先にある自社のアイデンティティを社員に共有しやすくなる
  • ブランディングを通じて従業員や関連企業の自社に対するエンゲージメントが高められる
  • 自社のブランドを理解する社員が増えることで、顧客体験の一貫性を強められる

ブランディングは買い手だけでなく、社員や共に事業推進する社外パートナーにももちろん影響します。自社の商品を誇らしいと思えるかどうかは、多くの人にとって働くモチベーションを左右する要素の1つでしょう。

そして、ブランドを理解し、自ら体現しようとする社員が多ければ多いほど、その先にいる買い手に提供するサービスの質は大きく変わっていきます。
 

買い手・売り手それぞれにとってのマーケティングとは?

次にマーケティングの役割も同様に、買い手から見た場合と売り手である企業から見た場合に分けて整理します。
 

買い手から見たマーケティングとは、どのような存在なのか

買い手にとってマーケティングは、自分のニーズ(欠乏しているもの)とウォンツ(〇〇がほしいという欲望)を満たしてくれる商品やサービスに導いてくれる存在であるべきです。

買い手は自分のニーズやウォンツを必ずしも理解しているわけではありません。

例えば、本来ならば制限しなくてはいけない甘いものがどうしても食べたいと感じているとします。そこで「甘いものがほしくなるのはストレスが溜まっているかもしれない、リラックスできる環境を整えよう」という記事を読んだ結果、「自分が今、ストレス過多の状態にある」ことに気づかされた経験は誰にもあるでしょう。

マーケティングはこのように潜在的なニーズとウォンツにも気づかせてくれる役割を果たしているのです。
 

企業にとってのマーケティングとは

企業にとって、マーケティングは「買い手に価値提供する」ための手段であり、まずは知ってもらい、購入し、使い続けた先にファンになってもらうための一連のプロセスを担うものです。

この役割を果たすために何をすべきなのか、戦略を立てる上で活用したいフレームワークの1つが「4P分析」です。

  • Product(商品)…その商品によって、顧客のどのような課題を解決するのか?
  • Price(価格)…その商品に対して、顧客はどれだけ払いたいと考えるのか?
  • Place(流通)…顧客の手元に届くまでにどのような経路をたどるのか?
  • Promotion(販促)…どのようなメッセージが顧客に伝わるのか?

この4つの「P」は、全て顧客との接点となる部分です。4つのすべての接点で一貫したメッセージを発信できているか、スムーズな顧客体験を提供できているかが重要であり、その指針となるのがブランドでありブランディングなのです。

 
 参考:マーケティングに欠かせない4P分析とは?定義を解説

 

ブランドを軸にしたマーケティング活動が、企業を成長に導く

ここまで読んでいただいた方なら理解されていると思いますが、ブランディングは大企業やB2C企業だけが実施するものではありません。B2Bビジネスであっても、事業規模が小さくても、自分たちが目指す姿を決め、自分たちらしさを言語化し、自分たちらしさを「表現」「行動」で可視化することは、ビジネスの成功に大きく寄与します。

そして、マーケティングも企業にとって重要な戦略の1つです。すべてのマーケティング施策は、自社のブランディングに根ざして実行するべきです。

今後、私たちを取り巻く情報は、一層の増加を続けるでしょう。その中で一貫して「ブランド(約束事)」を発信し、実行する企業のメッセージこそが、多くの人に届き、選ばれることになるはずです。よりよい顧客体験の提供に向けたブランディングとマーケティングを継続しましょう。

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トピック: ブランディング

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