多くの企業が、Webサイトの制作・運用にCMSを導入しています。現在はWordPressをはじめ、多くのCMSがリリースされていますが、それらは大きく2つの種類に分けられます。
本記事では、2つの種類のCMSについて、それぞれの特徴やメリット・デメリット、代表的なサービスの例などを解説します。
CMSの基本的な仕組み
そもそもCMSとは、Webサイトの制作や更新を直感的な操作のみで行えるようにしたシステムを指します。WordPressについてある程度知っている方は、WordPressがCMSの代表例だと考えて問題ありませんが、CMSによってできることや得意なことが異なります。
どのCMSにも共通しているのは、テキスト・画像・デザイン・レイアウトなどのデータがサーバーに保存され、CMSによって組み合わさって出力されるという点です。
本来は画像やテキストを逐一配置しなければならないところ、CMSによってテンプレートに沿ったデザインに整えられます。
CSMの種類は大きく2種類
CMSは、大きく「オープンソース型」と「独自開発型」の2つに分けられます。
オープンソース型は、ソースコードが原則すべて公開され、無料で利用できるようにしたCMSです。ソースコードが公開されることで有志による開発が行われ、豊富なテンプレートやプラグインが提供されるという特徴があります。
独自開発型は、各ベンダーが独自に開発しているCMSです。利用者はベンダーのサービスを契約し、基本的には料金を支払ってCMSを利用します。
独自開発型はさらに「オンプレミスタイプ」と「クラウドタイプ」に分かれます。
CMSの種類①:オープンソース型
オープンソースとは、ソースコード(プログラミング言語で記述された文字列)が無償で一般公開され、商用・非商用を問わず誰でも自由に利用・修正・再配布できるようにしたソフトウェアのことです。
オープンソース型CMSのメリット
オープンソース型CMSのメリットは、大きく5つあります。
①低コストで導入できる
多くのオープンソース型ソフトウェアは低コストで利用可能で、オープンソース型CMSの場合も同様、ほとんどが無料で利用可能です。(サーバー、ドメイン代は別途必要)
②プラグインが豊富でカスタマイズしやすい
利用者数が多いぶん、オープンソースCMS用に開発されたプラグインも豊富です。
特にWordPressはあらゆるジャンルが網羅されており、Webサイト構築に関する大体のニーズに応えられるでしょう。
③使い方やカスタマイズに関する情報を拾いやすい
利用者が多いということは、それだけ色々な使われ方がなされているということです。プラグインの他にも導入ノウハウやサービステンプレートなど、さまざまな周辺情報がインターネット上で公開されています。
これらを組み合わせることで、HTMLやCSSに明るくなくともある程度思った通りのサイトを作ることができます。
④開発元の倒産などで使えなくなることはない
オープンソースは特定の企業によって運営されているわけではないので、企業の倒産やサービスサポート終了によって使えなくなるリスクはありません。
⑤無償にも関わらず、有償より品質が高いものも
オープンソース型CMSのソースコードは一般公開されているので、外部の優秀なエンジニアがバグ改修や改善に取り組んでいます。だからこそ、閉じられた体制で開発されたCMSよりも品質が高いことがあります。
WordPressなどはその典型例といえるでしょう。
オープンソース型CMSのデメリット
では、デメリットについてはどうでしょうか。主なデメリットは以下の3つです。
①サポートがないため、運用には相応のリテラシーが求められる
特定の企業が提供している製品ではないので、マニュアルがまとまっているわけではありません。自社で構築、運用する場合は自力で必要な情報を集めなければいけません。
また、アップデート等の保守管理はユーザー自身で行わなければならないので、保守コストがかかります。
②日本語のドキュメントが少ないものもある
日本人のエンジニアコミュニティが活発なオープンソース型CMSならともかく、そうでないものは日本語のドキュメントが少ないケースがあります。
導入前にあらかじめ日本語対応した情報がどれだけあるのか確認しておいた方がいいでしょう。
③ソースコードが開示されている分、脆弱性を突かれやすい
オープンソース型CMSのソースコードは一般公開されているので、その脆弱性を突かれるリスクがあります。
メリットの部分でお伝えした通り、改修や改善は日々進んでいますが、セキュリティ問題は基本的にはいたちごっこです。脆弱性のリスクがあることは覚えておきましょう。
CMSの種類②:独自開発型<オンプレミスとクラウド>
次は「独自開発型」について見ていきましょう。Web制作会社などのベンダー企業が一社ごとにカスタマイズして開発するCMSツールです。
有料で提供されているものがほとんどで、データベースなどのサーバーを自社で管理する「オンプレミスタイプ」と、CMS提供者がサーバーを管理する「クラウドタイプ」に分かれます。
それぞれのメリット・デメリットを解説します。
オンプレミスタイプとは
「オンプレミス」とは、サーバーやネットワーク、ソフトウェアなどのハード設備を自分たちの企業・設備内で管理・運営していくことを示すシステム用語です。
オンプレミスタイプの独自開発型CMSとは、システムを導入する会社がCMS用のサーバーを用意・設置し、自分たちで管理することを前提に提供されます。
開発にはベンダー企業が請負い、ある程度汎用的なパッケージをカスタマイズしていく方法と、ゼロから要件定義等を経て開発していく方法の2つのアプローチがあります。
最近では、セキュリティ対応・技術革新対応・可用性・運用効率性など様々な観点から、サーバーの自社保有ではなく、クラウド運用を選択する事業者が多い印象です。
オンプレミスタイプのメリット
オンプレミスタイプの独自開発型CMSのメリットとして挙げられるのは以下の3つです。
- 導入から保守運用までベンダーのサポートを受けられる
利用する場合は自社内にサーバー設置する必要があるため、一般的には提供側が専用チームを設け、導入サポートをしてくれます。
また、導入が完了後は保守チームが運用サポートを行う場合がほとんどです。 - 必要な機能が最初の段階でほぼ備わっている
導入のタイミングでしっかりと要件定義を行うので、必要とする機能はスタートするタイミングで揃えられます。
予算やスケジュールの都合で最初の段階で必要機能を実装できなかったとしても、運用を進めていく中で機能追加することも可能です。 - セキュリティ対策が充実している
CMS提供企業の開発チームがセキュリティ含めたシステム設計をしてくれるので、自分たちで個別にセキュリティ対策を講じる必要は基本的にはありません。
オンプレミスタイプのデメリット
オンプレミスタイプの独自開発型CMSのデメリットは、以下の2つを挙げることができます。
- コストがかさむ
汎用的なオープンソース型CMSと異なり、ゼロから個別に開発を進めるので、導入コストは膨大になるケースがほとんどです。
また、一般的には何か新しい機能を追加したりシステム更改をするたびに、追加機能開発コストがかかってきます。
さらに、多くのオンプレミスタイプCMSではライセンス費用や保守費用がかかってくるので、月々のランニングコストもかさみます。 - 構築に時間がかかる
ゼロから要件定義を行うため、設計から開発までそれなりの期間を要します。
当然、要望が複雑であればあるほど開発期間も長くなる可能性が高いので、オンプレミス型を検討する場合は本当に必要な機能はどれなのか、しっかり検討しておいた方がいいでしょう。
クラウドタイプとは
オンプレミスタイプがCMSサーバー等のハード設備を自社に設置することが前提だったのに対して、クラウドタイプはクラウド事業者がCMSサーバーを管理してくれます。
また、パソコン端末にCMSをインストールする必要もなく、ネット環境とブラウザさえあれば導入できます。開発フローが全く異なりますが、オープンソース型に近いものと捉えて良いでしょう。
クラウドタイプのメリット
クラウドタイプの独自開発型CMSのメリットは、以下の3つを挙げることができます。
- サーバーを別途契約する必要がない
先述の通り、クラウド事業者がサーバーを管理してくれるので、自分たちでサーバー契約する必要がありません。
CMSシステムとサーバー、両方込みのパッケージとして提供されていることがほとんどです。 - xベンダー側でシステムのアップデートをしてくれる
多くのクラウドタイプはパッケージとして提供されているので、セキュリティ対策を含めた各種アップデートはベンダー側が行ってくれます。 - テンプレートを組み合わせるだけで一定の品質のWebサイトができる
クラウドタイプのCMSパッケージには多くのテンプレートが用意されているので、それらを組み合わせるだけで商用利用するのに十分なWebサイトを構築できます。
クラウドタイプのデメリット
クラウドタイプの独自開発型CMSのデメリットは、以下の2つを挙げることができます。
- デザインやレイアウトの細かいカスタマイズがしにくい
あらかじめ用意されたパッケージの範囲内でのカスタマイズを前提とするので、細かい表示変更などに対応できないケースが多くあります。
ボタンのタイプ一つとっても、自分好みのものが用意されていないことはままあることです。 - 海外製が多く、日本語サポートを受けにくい
最近では日本製も多くなってきたものの、クラウドタイプの多くは海外製です。海外製が多いということは、サポート対応や事例も外国語のものが多いということです。
クラウドタイプの独自開発型CMSを利用するときは、担当者の外国語リテラシーも踏まえて選択するのが良いでしょう。
CMSの種類ごとのメリット・デメリット比較表
ここまでお伝えした各CMSの種類ごとのメリット・デメリットについて、コスト・サイト規模・セキュリティ・自由度・拡張性・サポートの項目に分けて表にまとめてみました。
どのCMSを導入するべきか、概要を把握するのにお役立てください。
CMSの種類ごとおすすめ製品
ここからは、CMSの種類ごとにおすすめの製品をご紹介しますので、CMS選びにぜひ役立ててください。
主なオープンソース型CMS・3選
1. WordPress
現在、世界でもっとも高いシェア率を誇るCMSが「WordPress」です。2003年にオープンソース型のブログシステムとして公開され、世界中の有志のエンジニア達によって常にバージョンアップされている「CMSの代表格」といえるでしょう。
W3Techs.comによると、CMS全体の62.8%がWordPressという調査結果が出ています(2024年4月15日時点)。
最大の特徴は「テーマ」と「プラグイン」の豊富さです。「テーマ」はデザインテンプレート、「プラグイン」は機能を拡張させるためのプログラムを指します。
WordPressには世界中のデザイナーやエンジニア達が作ったデザインテンプレートとプラグインが無数に存在するので、それらを自在に組み合わせることであらゆる種類のWebサイト構築が可能です。しかも、多くのテーマやプラグインは無料で使えます。
一方で、サーバーやドメインは自分で用意する必要があります。また、テンプレートだけでは限界があるので、自分好みのサイトを構築するにはどうしてもHTML、CSS、PHPへの知識が必要になってきます。
初心者だけでなく、プログラミングやネット周りなど最低限のWeb知識がある方にWordPressはおすすめなツールといえるでしょう。
2. Joomla!
オープンソース型の中では根強いシェアを持つCMSが「Joomla」です。EC構築がとても簡単で、連絡先やフォロワー管理など、ユーザー同士のネットワーク構築にも優れているツールです。WordPressほどの量ではありませんが、デザイン性に優れたテンプレートも多く揃っています。
公式ドキュメントで多くのチュートリアルが提供されているものの、WordPressほどノウハウが落ちているわけではないので、慣れるまでに一定の時間が必要となりそうです。
また、SEOに関するオプションがあまりないため、WordPressと同じレベルで投稿を検索エンジンに最適化させるためには相応の作業が必要になります。
3. Drupal
Joomlaと同じく、オープンソース型の中で人気の高いCMSが「Drupal」です。
世界的な大企業や政府機関、大学などの大規模サイトでよく利用されており、他CMSと比べて汎用性が高く、複雑なシステムを構築できる点が評価されています。また、WordPressやJoomla!と比べるとページ読み込みが速い傾向もあります。
一方、Drupalは構造が複雑なため、先に挙げたCMSに比べてより技術的知識が必要となります。また、デザイン性に優れたテーマもほか2つと比較すると少ないと感じます。
主なオンプレミスタイプのCMS・3選
基本的には、オンプレミス限定で提供されているパッケージはほとんどありません。今回挙げたもののうち、SITEMANAGE以外の2つは後述のクラウドタイプのプランも用意されています。
1. SiTEMANAGE
株式会社シフトが提供するオンプレミス専用CMSパッケージが「SiTEMANAGE」です。月額費用がかからず、セキュリティが強固で、100種類以上あるプラグインを自由に組み合わせてカスタマイズできるのが最大の特徴です。
導入時の時の必要機能と運用を進める中で必要となる機能は変わるものですが、そんな運用状況に合わせて必要なプラグインがメーカーベースで用意されているのは魅力的です。
2. Movable Type
シックスアパート株式会社が開発・提供するCMSプラットフォームが「Movable Type」です。ブログ形式でホームページを作成できるので、Microsoft Wordのような要領で文字入力と画像の貼り付けだけで簡単にページを作成することができます。
有償のメーカー公式サポートもあるので、ネットやプログラミング知識に不安があったり、SEOについて専門的な知識や経験が少ない場合はこちらを頼っても良いでしょう。
3. Kuroko
「Kuroko」は株式会社ディバータが提供するCMSパッケージで、かつては「RCMS」として提供されていたCMSの進化版です。250以上の標準機能と運用者別のメニューなど充実した管理機能を備えており、金融機関・商社・メーカー・IT企業など、上場企業から中小企業まで3,000社以上に導入されています。
CDN連携などSEOに必要な表示速度の向上施策も可能であり、またTwitter・Facebook・YouTubeなどの各種SNS関連サービスとも連動できるので、サイトでのコンテンツ表現方法が豊富にあると言えます。
主なクラウドタイプのCMS・4選
1. Wix
イスラエルに本社を置くWix社が提供するクラウドタイプCMS「Wix」は、世界190カ国で1億6,000万人以上のユーザーが利用するホームページ作成ツールです。
特徴は、ドラッグ&ドロップのみの操作で、無料でホームページが作れる点。特別なプログラミング知識やネット周りの知識がなくても簡単にページを作成できます。
2. Jimdo
ドイツに本社を置くJimdo GmbH社が提供するクラウドタイプCMSが「Jindo」です。Wixやペライチと同様、企業が独自開発するクラウドタイプCMSの中では汎用性が高く、プログラミング等の知識がなくても使いやすい仕様になっています。
操作特徴として挙げられるのはネットショップ機能の存在でしょう。特に有料版(JimdoBusiness)では販売手数料なし、かつ掲載数無制限で利用可能です。
また、支払方法も複数選べるので、ネットショップを開きたい方にとっては有難いCMSと言えます。
3. ペライチ
日本企業の株式会社ペライチが提供するクラウドタイプCMSが「ペライチ」です。WixやJimdoでは最初から複雑なホームページ作成が可能なように多層構造になっているため、導入段階からそれぞれのページコンテンツを考える必要があります。
一方でペライチであれば、その名の通り1ページから設置が可能なので、コンテンツを考える負担が圧倒的に少なくなります。
また操作性についても、WixやJindoと同様にドラッグ&ドロップという直感的な操作でページ構築が可能となっており、日本語サポートも充実しています。
まだホームページを作ったことがない人や、ちょっとしたランディングページを作成したい人に最適なサービスと言えるでしょう。
4. Content Hub
当社HubSpotが提供する、AI機能を搭載したコンテンツマーケティングソフトウェアです。
Content Hubには完全無料で使用できるCMSを含め、パーソナライズされたコンテンツを作成・管理するための機能がそろっており、マーケティング活動の成果向上をサポートします。
Content Hubのコンテンツ生成機能では、プロンプト(指示)を入力するだけでブログ記事を作ることが可能。
アウトラインを作成することもでき、短時間でコンテンツを完成させられます。
種類ごとの特徴を把握して自社に最適なCMSを選ぼう
ここまで解説したとおり、CMSにはその種類ごとにメリット・デメリットがあり、自社の目的や予算などによって最適解が異なります。
まずは目的、予算、サイト規模、携わる人数、追加予定のコンテンツ、更新頻度、サポートの必要性など、自社の状況と要望を洗い出した上で、運用コンセプトにもっとも沿ったCMSの種類とサービスを選定するようにしましょう。