私は最近新しい部屋に引っ越したのですが、新居にぴったりのソファーをずっと探していました。そして昨日、ようやく見つけたのです!
とはいえ、探すのは大変でした。ソファー1つを買うために利用したコミュニケーションチャネルやサービスは、数えきれないくらいあります。Google検索、Googleショッピング、Amazon、ソーシャルメディア、いくつものeコマース(電子商取引)サイト、そして実店舗も訪れました。購入までの道のりが平坦だったとは、とても言えません。実は、オンラインショッピングをする人はほとんど同じような道をたどります。ブランドのeコマースサイトやブログ、プラットフォームの製品リスト、そして実店舗を行ったり来たりすることになるのです。では、企業がこうした全ての顧客とのタッチポイントの情報を常に把握しておくには、どうすればいいのでしょうか?
そこで活用されるのが、カスタマー データ プラットフォーム、つまりCDPです。顧客とのタッチポイントが膨大な数に上り、無数のコミュニケーションが発生する今日、CDPを活用すれば顧客の意識やニーズを一元化して把握することができます。CDPについてご紹介するために今回、このガイドを作成しました。後で参照できるように、ぜひこのページをブックマークしてください。下のリンクから各章へ進むこともできます。
Chapters
カスタマーサービス測定指標計算用ツール
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CDPとは?
カスタマー データ プラットフォーム(CDP)は、多様なタッチポイントにわたって顧客データを集約および整理するソフトウェアで、他のソフトウェアやシステムとの連携やマーケティング業務などに活用されます。CDPではリアルタイムデータが収集され、個人のプロファイルとして構造化されます。
マーケティング担当者の顧客データ管理を支援する組織、CDP Institute(英語)によれば、CDPとは「他のシステムからアクセス可能で一元的な、永続性のある顧客データベースを構築するパッケージソフトウェア」と定義されています。
カスタマー データ プラットフォームは、ファーストパーティー、セカンドパーティー、さらにサードパーティーのさまざまなソースから集めたデータを合わせて顧客プロファイルを構築します。こうしたソースは、自社のCRMやDMP(データ マネジメント プラットフォーム)、取引システム、ウェブフォーム、Eメールやソーシャルメディア投稿、ウェブサイト、eコマース行動データなど多岐にわたります。
CDPが提供する情報は、ピープル ベースド マーケティング(人物基点のマーケティング)に大いに役立ちます。HubSpotでもフライホイールという「顧客」中心の考え方を大切にしています。貴社で同様の取り組みを推進する場合にも、CDPは効果的です。
そもそも「顧客データ」とは?
CDPが関心を集めている背景として、事業やマーケティングのオペレーションにおいて顧客データが極めて重要になっていることが挙げられます。では、顧客データとは正確には何を指すのでしょうか?
顧客データとは、インターネットの利用や、オンライン上またはオフラインでの企業とのコミュニケーションなど、顧客の行動履歴として残される情報を指します。ウェブサイトやブログ、eコマースサイト経由のコミュニケーションの他、実店舗でのやり取りも含まれます(後でいくつかの例を詳しく紹介します)。顧客データは企業にとって非常に価値がありますが、最近のEU一般データ保護規則(GDPR)などの影響を受けて、企業や組織によるこうしたデータの収集・管理が変化してきています。
CDPで収集・整理される顧客データには、主に次の4種類があります。
1. 識別データ
識別データは、CDPに保存される各顧客プロファイルの基礎になります。この種のデータがあることで、企業は1人ひとりの顧客を識別し、不必要なデータの多重管理を防ぐこともできます。識別データには次の内容が含まれます。
- 氏名情報:姓、名
- デモグラフィック情報:年齢、性別など
- 住所情報:番地、市区町村、郵便番号など
- 連絡先情報:電話番号、Eメールアドレスなど
- ソーシャルメディア情報:Twitterアカウント、LinkedInアドレスなど
- 職業情報:役職名、会社名など
- アカウント情報:会社で使用するユーザーID、アカウント番号など
2. 詳細データ
詳細データは識別データの内容を膨らませて、顧客の人物像をさらに詳しく把握するための情報です。詳細データのカテゴリーは、企業のタイプによって変わってきます。
例えば、自動車販売店なら、顧客の車に関するライフスタイル情報を収集することが考えられます。一方、おむつメーカーなら、世帯としての子どもの人数についてのデータを収集するでしょう。詳細データには次の内容が含まれます。
- 職歴情報:以前の勤務先、業種、収入、職務レベルなど
- ライフスタイル情報:住居形態、所有車、ペットなど
- 家族情報:子どもの人数、配偶者の有無など
- 趣味情報:購読雑誌、会員になっているフィットネスクラブなど
3. 量的データまたは行動データ
量的データは、1人ひとりの顧客が特定の行動、反応、あるいは取引を通じて、自社とどのように関わりを持っているかを把握できる情報です。量的データには次の内容が含まれます。
- 取引情報:購入または返品した製品の数量と種類、かご落ち数、注文日など
- この情報にはRFM分析(英語)も含まれます。RFM分析とは、最終購買日(Recency:この顧客が最後に購入したのはいつか)、購買頻度( Frequency:この顧客はどれくらいの頻度で購入するか)、購買金額(Monetary value:この顧客は一度の購入でいくら使うか)を基に顧客を分析する手法です。
- Eメール通信情報:Eメールの開封数、Eメールのクリックスルー数、Eメールへの応答数、その日付など
- オンライン行動情報:ウェブサイトの訪問、ウェブサイトのクリックスルー数、製品の閲覧数、ソーシャルメディアの利用状況など
- カスタマーサービス情報:連絡日、問い合わせ内容、対応した担当者など
4. 質的データ
質的データは顧客プロファイルに背景情報、つまり特徴を付加するものと言えます。この種のデータには、ある企業の顧客が表明した動機、意見、態度に関する情報が含まれます。その情報が当該企業に関連があるかどうかは問いません。質的データには次の内容が含まれます。
- 動機の情報:「当社を知ったきっかけは何ですか」、「この製品を購入した理由は何ですか」、「他の製品ではなく、この製品を選んだ決め手は何ですか」などの質問への回答
- 意見の情報:「この製品をどのように評価しますか」、「当社のカスタマーサービスをどのように評価しますか」、「当社を他の人に勧めたいとどの程度思いますか」などの質問への回答
- 嗜好の情報:色、動物、素材、食べ物などに関する好み
以上の説明から、CDPでは幅広いデータが収集、整理されます。ただし、具体的なデータやデータカテゴリーの大部分は、事業内容や業種によって異なることに注意が必要です。
次に、CDPの詳細について説明する前に、CDPと他のソリューションとの違いを明確にしておきましょう。
CDPとCRMの比較
CDPと顧客関係管理(CRM)ツールは、どちらも顧客データを収集し、組織にとって価値のある情報を提供します。しかし、似ているのはその点だけです。CDPは、オンラインとオフラインのさまざまなチャネルから収集したデータを基に、1人ひとりの顧客プロファイルを自動的に作成します。これに対してCRMには、顧客が企業との間で意図的に行ったコミュニケーションのみが記録されます。
CDPとCRMには、主に次のような違いがあります。
- CDPでは匿名の閲覧者データも収集されるのに対し、CRMの情報は既知の顧客または潜在層に限られます。
- CDPはその人物のさまざまな行動履歴とカスタマージャーニーを分析するのに対し、CRMは基本的に特定の営業案件に関するパイプラインと予測を分析します。
- CDPではオンラインとオフラインの両方の顧客データが追跡されるのに対し、CRMの場合、オフラインのデータについては入力がない限り収集できません。
- CDPでは多様なソースの複数のデータポイントを扱うことで、データの重複や欠落のおそれが低減されています。これに対して、個別に入力されたデータを収集するCRMでは、処理のミスなどによってデータが失われたり、誤って分類されたりすることがあります。
CDPとDMPの比較
CDP Institute(英語)の創設者David Raab氏は、CDPとデータ マネジメント プラットフォーム(DMP)との違いを次のように的確に説明しています。「CDPは匿名の個人と既知の個人の両方を取り扱い、氏名、住所、Eメールアドレス、電話番号といった『個人識別情報』を蓄積します。これに対してDMPは、ほぼ匿名の主体のみを扱います。つまり、Cookieやデバイス、IPアドレスなどです」
- CDPの影響範囲があらゆる種類のマーケティングに及ぶのに対し、DMPは主に、広告の領域でターゲティングやオーディエンスへのリーチの改善に寄与します。
- CDPは主にファーストパーティーデータを(ソースから直接)収集するのに対し、DMPは主にサードパーティーデータを(データプロバイダー、データ管理者、データサービス事業者経由で)収集します。
- CDPは個人を特定できる具体的な顧客識別子を反映する(氏名、Eメールアドレス、顧客IDなど)のに対し、DMPは匿名の顧客識別子(Cookieなど)を反映します。
- CDPは、詳細で正確な顧客プロファイルを構築し、顧客との関係を醸成するためにデータを長期間にわたって保持するのに対し,DMPは広告のターゲティングと類似オーディエンスの構築のため、データを短期間だけ保持します。
マーケティングの業界には数多くの頭字語がありますが、ここまでの説明で概要が整理されたと思います。次に、CDPの利用を検討する理由として、どのようなポイントがあるかを掘り下げていきましょう。
CDPの主なメリット
CDPを導入すれば、既存のソフトウェアとマーケティング活動を補完する形で、組織の在り方を改善し、顧客とより良い関係を築くことができます。CDPの導入には、主に次のようなメリットがあります。
データサイロを回避できる
「データサイロ」とは、ある部署では利用できるものの、組織内の他の部署からは隔絶されたデータを指します。事業規模が急拡大したためにデータの共有が十分にできない場合や、システムが変化に適応できない場合に生じます。サイロ化は好ましいことではありません。社内のコラボレーションが難しくなる、組織の敏捷性や生産性が低下する、顧客プロファイルデータの正確性を保てなくなるといったマイナス面を伴うためです。
CDPを利用すれば、データサイロを回避することが可能になります。顧客データを一元的に管理することで、データの正確性を維持するとともに、全従業員がデータを利用できる環境を確保することができます。
「1人ひとりの従業員が、何らかの形で顧客データにアクセスできなければなりません。マーケティングの場合は、分析とアトリビューションの目的で顧客データを必要としています。営業部門のCRM環境には、迅速に取引を成約させるための顧客データが欠かせません。ファイナンスやオペレーションにおいては、支払いの傾向や購買行動を把握するための顧客データが不可欠です。カスタマー データ プラットフォームは、使用しているツールにかかわらず全社規模で一貫した顧客データを収集し、活用することを可能にする重要なシステム基盤の1つです」 -- Segment(英語)、最高経営責任者(CEO)、Peter Reinhardt氏
オーディエンスから直接データを収集する
世の中には膨大な量のデータがあふれています。では、どうすればデータの精度に確信を持てるでしょうか? そのためには、ファーストパーティーデータ、つまり、顧客やウェブサイト訪問者、ソーシャルメディアのフォロワー、登録ユーザーなどから直接データを収集することが必要です。自社のオーディエンスから直接集められたデータは、マーケティングの意思決定を行うためのヒントとしても最適です。
CDPでは、主にピクセルなどのトラッキングツール経由でファーストパーティーデータが収集されます。このため、CDPに反映されるオーディエンス情報は常に高い精度が期待できます。
顧客を知るために役立つ
顧客中心のマーケティングを実践するためには、まず顧客のことを知る必要があります。CDPでは幸い、1人ひとりの顧客を深く理解できるように顧客プロファイルが構築されます。こうした情報を、顧客行動分析や顧客識別グラフの作成に役立てることもできます。
CDPを活用すれば、顧客との関係を管理し、オーディエンスを念頭に置きながら正確で効果的なマーケティングを行うことができます。
チャネル横断型のマーケティング活動を一元化する
複数のマーケティング活動を並行して実施するケースはよくあるはずです。各施策で使用するデータや収集したデータを共有したり、その内容に関する打ち合わせ、検討を行ったりする際には、時間も労力も必要になります。
このような場面で役立つのがCDPです。CDPは、整理、統合された正確なデータを提供することで、複数のチャネルにまたがる施策の一元管理を支援します。また、進行中の他の施策の参考になるデータを新たに収集して調整する際にも活用できます。
主要なCDPソフトウェア
さまざまな形態、規模の企業に向けて、数多くのCDPソフトウェアが提供されています。ここでは、検討を始めるための参考として、特に人気のあるソフトウェアをいくつかご紹介します。
- Segment(英語)は、複数のオンラインチャネルやソースから顧客データを収集し、一元化できるCDPです。多様なタッチポイントにわたってカスタマージャーニー全体を一元的に把握できるという特徴があります。300以上のマーケティングツール、分析ツール、データ ウェアハウス ツールを横断して顧客データを結び付けることができます。
価格:Free、Team、Businessの3つのプランがあります。Freeプランは無期限で無料ですが、使用できる機能は限られています。Teamプランは月額120ドルから、最も包括的なBusinessプランにはカスタマイズの価格が設定されています。 - Emarsys(英語)は、さまざまなソースからのデータを収集、分析して、オムニチャネルのアプローチを実践できるCDPです。レポートと分析、チャネル横断型の自動化とパーソナライゼーション、業種別ソリューション(eコマース、旅行、小売を含む)などの機能があります。
価格:Essential、Advanced、MAX AIの3段階の価格があります。各プランの料金は業種によって変動します。Emarsysに見積もりを依頼する(英語)必要があります。 - Exponea(英語)は、主にeコマースとB2Cの企業を対象とした総合CDPです。このCDPソリューションは、さまざまなチャネルやソースからのオンラインとオフラインのデータを結合して追跡し、各顧客の情報を一元化して表示するとともに、パーソナライズされたキャンペーンを作成します。
価格:CDP、Email、CDXPの3種類のパッケージがあり、それぞれに対応する事業タイプに合わせた機能が提供されます。各パッケージにはGrow、Scale、Enterpriseの3種類のバンドルが用意されています。Exponeaのウェブサイトに価格は公表されていません。同社に見積もりを依頼する(英語)必要があります。 - Optinmove(英語)は、CDPを中核とするリレーションシップマーケティング基盤です。顧客データの収集、セグメント化、分析を通して、アクションにつながる洞察を導き出すことが可能になります。パーソナライズされたマルチチャネルキャンペーンの作成、トラッキング、最適化が可能なソリューションです。
価格:運用する顧客ネットワークの数と、各データベースに登録された顧客数に応じたカスタマイズになります。デモと見積もりをOptinmoveに依頼する(英語)必要があります。 - Tealium AudienceStream CDPは、オーディエンスとの信頼関係の醸成に役立ち、包括的な顧客プロファイルを構築できるプラットフォームです。顧客プロファイルに保存されるデータを活用して、想定されるビジネスの規模を判定し、関係構築に関する重要な情報を引き出し、さらにオーディエンスのセグメント化のための指標を特定することができます。
価格:多くのCDPソフトウェアプロバイダーと同様に、Tealium AudienceStreamも固定価格のパッケージは提供していません。同社に見積もりを依頼する必要があります。
CDPサービスプロバイダーを検索できるサイト
CDPの活用方法などをご理解いただけましたか? CDPを利用して顧客に関する理解を高めた上でマーケティングを行うことには、多くのメリット(英語)があります。CDPソフトウェアを選定する際に参考になる、信頼できるサイトをいくつか紹介しておきましょう。
- CDP InstituteのCDP Service Provider Directory(英語)。このリストには、「CDP関連のコンサルティング、導入、代理店サービス、データ、テクノロジーを提供する企業」が掲載されています。CDP Instituteのパートナー企業も含まれています。
- G2 CrowdのBest Customer Data Platform (CDP) Softwareランキング(英語)。客観性に定評のあるG2のレビューページの1つです。他のレビューページと同様に、組織の規模や星の数による絞り込み表示が可能です。満足度、人気度、G2スコアの高い順に並べ替えることもできます。
- CapterraのBest Customer Data Platform Softwareランキング(英語)。価格、人気機能、ユーザー数、導入形態などのさまざまなフィルターを使用して、CDP製品を絞り込むことができます。
顧客データを活用した顧客主導のマーケティングへ
顧客なくして、ビジネスは成り立ちません。全ての企業活動、特にマーケティングの中心にあるのが顧客です。そして顧客中心のビジネスには、現実を反映した「生」の顧客データが不可欠です。
カスタマー データ プラットフォームを活用すれば、社内の共通認識の醸成、マーケティングのアイデア創出、顧客との信頼関係の構築に欠かせないデータの鮮度、精度、一貫性を確保することが可能になります。マーケティングの高度化に向けて、CDPソフトウェアの利用も検討してみると良いかもしれません。