NPS(ネットプロモータースコア)は、顧客ロイヤルティを定量化した指標であり、特定の企業の商品やサービスを親しい人にどの程度すすめたいかをスコア化したものです。自社の顧客のNPSを測定すれば、商品・サービスの品質向上に役立てられます。
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本記事では、NPSの概要やCS・CSATとの違い、調査方法・計算方法を解説します。NPSのメリット・デメリットや活用シーン、導入時の注意点も解説するので、自社でNPSを測定する際の参考にしてください。
NPS(ネットプロモータースコア)とは
NPSの概要・特徴と、CS・CSATとの違いを詳しく解説します。
NPSの概要・特徴
NPS(Net Promoter Score:ネットプロモータースコア)とは、顧客ロイヤルティを定量化した指標です。顧客ロイヤルティは、顧客の企業への忠誠心や愛着心を表します。
NPSは、顧客に「商品やサービスを家族や友人、親しい人にどのくらいおすすめしたいですか」とアンケートを取り、0から10まで11段階で評価してもらうことで測定します。
顧客ロイヤルティの詳細は、次の記事で解説しているのであわせて参考にしてください。
CS・CSATとの違い
NPSと混同されやすい用語に、CS(Customer Satisfaction:顧客満足度)と、CSAT(Customer Satisfaction Score:顧客満足度スコア)があります。
CSとは、企業が提供する商品やサービスに対する顧客の満足度合いのことで、CSATは、CSを数値化した指標です。主にWebやDMなどでのアンケートを基に計算され、顧客がどれくらい商品・サービスに満足しているかを数値化します。顧客の感情を評価することから、感情スコアとも呼ばれています。
企業はCS・CSATを把握することで顧客に評価されている点や反省点を特定して、今後の戦略立案に活用できます。
CS・CSATが特定の商品やサービスの満足度を短期的に評価する指標であるのに対し、NPSは長期的な満足度や顧客ロイヤルティを表す点が両者の違いです。
NPSを調査する方法
NPSの調査は、メールやWebサイトを通じてアンケートを行うのが一般的です。
メールの場合は、商品やサービスの購入後、利用後に、NPS調査用アンケートを顧客に送付します。
Webサイトの場合は、ポップアップを表示させたりアンケートページを別途作成したりして、NPSを調査します。
NPSの計算方法
NPSの計算は、次の手順で行います。
- アンケートの実施
- 顧客をセグメントする
- 推奨者 - 批判者の割合を算出する
それぞれのステップを解説するので、自社で測定する際の参考にしてください。
1. アンケートの実施
まず、NPS測定のターゲットに対して、「X社を友人や同僚におすすめする可能性はどのくらいありますか?」とのアンケートを実施し、回答を0~10までの11段階で評価してもらいます。
この段階で重要なのは、可能な限り質問数を少なくすることです。なぜなら、顧客の負担が減って回答してもらえる確率が高まるからです。さまざまな質問のなかでも、「どのくらい薦めたいか」を聞くことが重要であり「究極の質問」とも呼ばれています。
より詳細な分析を実施するには、すすめる可能性について質問した後に、「なぜそのスコアをつけたのですか」「改善すべき点は何ですか」などの項目を加えると良いでしょう。
2. 顧客をセグメントする
究極の質問の回答をもとに、顧客を3つのセグメントに分類します。
3. 推奨者の割合 - 批判者の割合を算出する
セグメント結果から、NPSを算出します。推奨者の割合から批判者の割合を引いたものがNPSです。
NPS® = 推奨者の割合 - 批判者の割合
例えば、100人の回答のうち、50人が推奨者で、批判者が30人いたとします。この場合、推奨者が50%、批判者が30%となり、NPS®の数値は「50 - 30 = 20pt(ポイント)」です。
同様の計算方法で、推奨者が20%、批判者が30%であれば、NPS®は「20 - 30 = -10pt」になります。
NPSの目安スコア
NPSに明確な目安はありません。一般的には、0ptより大きければ推奨者の方が多いと評価できるので、良いスコアだとされます。
なお、平均は業界によって異なります。NTTコム オンライン・マーケティング・ソリューション株式会社が2023・2024年に実施した「NPS® (顧客推奨度)業界別ランキング」では、業界別のトップ企業のNPSと平均値が公開されているので参考にすると良いでしょう。
NPS活用のメリット
NPSを活用するメリットは、次の通りです。
- 顧客ロイヤルティを容易に数値化できる
- 顧客から回答を集めやすい
- 改善点を把握できる
それぞれのメリットを解説します。
顧客ロイヤルティを容易に数値化できる
NPSは顧客に対して、「親しい人にすすめる可能性はどのくらいありますか?」と質問することで算出できます。そのため、アンケートの設計や運用に高度な知識がなくても容易に調査できる点がメリットです。
また、質問内容と、回答の指標が決まっているため、定量的に評価を確認できる点もメリットにあげられます。
顧客から回答を集めやすい
アンケートに質問項目が複数あり、回答者に手間がかかる場合、回答数が少なくなる可能性があります。
その点、NPSは最低限の「究極の質問」のみで算出できるため回答者の負担が少なく、意見を集めやすい点がメリットです。
改善点を把握できる
NPSは究極の質問のみで算出可能です。しかし、その質問に続けて「なぜこのスコアをつけたのですか」「改善するにはどうすれば良いですか」と質問すれば、より詳細な意見を抽出できます。
NPSの基軸となる質問を中心に複数の質問を実施し、得られたフィードバックを活用すれば、何をどのように改善すれば良いのかを把握できるでしょう。
NPS活用のデメリット
NPS活用のデメリットは、次の通りです。
- 文化的な背景に影響される
- 得られる情報が限られる
それぞれのデメリットを解説するので、自社で活用する際に留意してください。
文化的な背景に影響される
NPSは、回答者の文化的な背景に影響を受ける点がデメリットです。
特に日本人は中立的な評価をしやすく、NPSのスコアがマイナスになりやすい傾向があります。
NPSをベンチマークとして用いる場合は、絶対的な指標にするのではなく、競合や業界平均、過去からの推移との比較を行いましょう。
得られる情報が限られる
NPSを算出する際の質問は、多くても数個であるため得られる情報が限られる点がデメリットです。
質問が少ないと回答率が高まる一方で、詳細なフィードバックの収集には向いていません。
NPSの活用シーン
NPSの活用シーンには、次があげられます。
- 競合との比較
- 評価されている項目の把握
競合との比較
競合と自社のNPSスコアを比較すれば、さまざまな分析に用いることが可能です。これは、NPS®ベンチマーク調査とも呼ばれます。
NPS®ベンチマーク調査では、競合との比較において自社の強みや改善が必要な部分を確認できます。
競合のみならず、他業種・他業界のスコアを把握して、優れた取り組みを自社に導入すれば自社のNPSスコアを高めるきっかけとなるでしょう。
評価されている項目の把握
NPSは、顧客からどの項目が評価されているかを把握できる指標です。評価が高い顧客がなぜ自社の商品・サービスを推奨しているのかを具体的に把握できれば、強みをさらに伸ばせます。
反対に、評価が低い場合は、問題を特定して優先順位をつけて改善することが重要です。
NPS導入のポイント
NPS導入のポイントは、次の通りです。
- 批判者を推奨者にする改善策を慎重に考える
- 定期的に計測する
- 社内全体を巻き込む
実際にNPSを導入する際の参考にしてください。
批判者を推奨者にする改善策を慎重に考える
批判者は否定的な口コミを発生させる層なので、企業には批判者を減らす努力が求められます。
しかし、批判者を推奨者にする改善策は慎重に考える必要があります。改善策が、批判者に有効である一方で、推奨者にとっては逆効果になる可能性があるためです。
改善策を検討する際は、まずは、批判者が企業の狙うターゲット層であるかを確認してください。批判者がターゲットの場合は推奨者にするための対策を考案・実施し、ターゲットではない場合は商品・サービスが適切な顧客に届くように施策を改善しましょう。
定期的に計測する
NPSは、一度測定すれば終わりではなく、継続的に計測する必要があります。なぜなら、定期的に計測することで、マーケティング施策の妥当性や顧客からの評価を過去と比較できるからです。
社内全体を巻き込む
NPSを導入する際は、社内全体を巻き込むこともポイントです。
まずは社内にNPSを導入する目的とその重要性を周知し、NPS向上のための施策に対する理解を得ましょう。トップダウン式で導入を進めると、現場は「なぜこの業務が必要なのか」「ただでさえ忙しいのに」と、前向きになれない可能性があるからです。
組織全体の協力を得ることで、NPSに関する取り組みを推進できるでしょう。
NPS導入時の注意点
NPS導入時の注意点は、次の通りです。
- 十分な回答数がないと正確に評価できない
- 数字ごとの評価がわかりにくい
十分な回答数がないと正確に評価できない
NPS調査に限らず、調査の信頼性や精度を高めるには、十分な回答数が必要です。
統計学的には、誤差を±5%程度に抑えたい場合は400程度の回答数が必要とされています。より多くの回答を集めるには、短時間で回答できるように設計する、Webを活用してより多くの人にアプローチする方法が効果的です。
数字ごとの評価がわかりにくい
NPSは、数字ごとの評価がわかりにくい点には注意が必要です。
評価のセグメントでは、0点から6点を「批判者」として一括りにして扱うため、0点の非常に不満を持つ顧客と、6点の中立よりの顧客が同じカテゴリーに含まれます。そのため、批判者であるとのセグメントだけでは不満の度合いを正確に評価できず、具体的な改善点や顧客の真の意見を把握しづらくなります。
具体的な評価とその理由を把握するには、追加の質問をする、自由回答形式で意見をもらうなどの対策が必要です。
NPSを把握し、顧客ロイヤルティを高める施策を実施しよう
NPSは、顧客ロイヤルティを定量化できる指標です。顧客からのフィードバックを得ることが可能で、自社の商品・サービスの改善点やサポートの質の見直しに役立てられます。
NPSは有用な指標である一方で、日本ではマイナスの値になる傾向が高いことには注意が必要です。絶対値の確認に加えて、競合や業界平均との乖離の確認、過去の数値との比較を行い俯瞰的に把握しましょう。
推奨者には継続的にフォローアップを行う一方で、批判者の状況も把握し、否定的な口コミが拡散されないよう慎重に対応する必要があります。NPSをもとに一貫した対応ができるよう、導入時は社内全体の理解を得るとともに、定期的に計測して改善施策を実施しましょう。
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