IoTを用いたマーケティングの具体的な事例をご紹介します。IoTを実店舗等でのデータ収集に生かすことによって、新しい切り口でのマーケティングが可能になり、成功例も増えています。実例に共通する、IoTによるマーケティングを成功させるためのポイントをご紹介します。
IoTとは?マーケティングへの活用の基本
IoTとは、「Internet of Thing」のことで、「モノのインターネット化」とも訳されます。パソコンやスマートフォンといった情報通信機器に限らず、あらゆるモノがインターネットに接続する仕組みのことを言います。2013年ごろから注目されるようになり、冷蔵庫や空調など、家電商品のIoTが有名です。
IoTは、マーケティングの新たな手段として注目されています。自動販売機や商品のタグ、極小のセンサーなどにIoTをとりいれることによって、それまでは自動で収集することができなかった顧客の動きなどのデータをデジタル化して収集し、マーケティングの新たな切り口として生かし、成功した事例が各地で増加しています。
また、有益な情報や景品、試供品をデジタル化して顧客のスマートフォンに配信することで、試供品を配る人件費や管理費、送料などのコストをカットするメリットもあります。
顧客を惹き付けるためのデジタルマーケティング戦略ガイド
IoTを活用したマーケティング、4つの事例
以下に、IoTをマーケティングに活用した具体的な事例を紹介します。BtoCの事例と、BtoBとBtoCが混在する事例とを分けて説明します。
BtoCの事例
コカ・コーラの「Coke On(コーク・オン)」
日本コカ・コーラ株式会社では、自動販売機とスマートフォンのアプリをつなげることにより、自販機の利用がよりお得で楽しくなるサービス「Coke On」を成功させています。
Coke ON対応自販機と接続して、飲料を購入するとスタンプがたまり、15スタンプ集めると、好きな飲料と無料で交換できるドリンクチケットをもらうことができます。
ドリンクチケットは近くにいる友人にプレゼントすることができ、顧客にとっては身近な人とのコミュニケーション手段としても利用できるのがメリットです。
Coke ON対応自販機は2017年9月時点で全国に20万台設置されています。自動販売機が普及している日本ならではのIoT活用術といえるでしょう。
ディズニーワールドの「MagicBand」
アメリカ・フロリダのウォルト・ディズニー・ワールド・リゾートでは、2014年から、アトラクションやショッピングなど、パーク内の支払いがすべてリストバンド1つで可能な「MagicBand」を導入しています。
MagicBandはRFIDタグがついたゴム製リストバンドで、事前申し込みをすれば自宅に郵送されます。バンドの色や、刻印される名前は顧客の好みでカスタマイズ可能です。
MagicBandは、ディズニーのサイトに登録されている個人情報と紐づいているため、誕生日にディズニーランドを訪れるとサプライズ演出がされる、といった嬉しいサービスも可能になりました。
MagicBandを装着した顧客の、園内でのすべての行動がデータとして収集され、マーケティングに役立てられています。
BtoCとBtoBが両立している事例
スペインのバルセロナ市
スペインのバルセロナ市ではMicrosoft社と連携して駐車場にセンサーを設置し、市内全域の駐車場の空き具合に関する情報を提供しています。これにより、駐車場を探しまわることによる渋滞が減り、また、駐車スペースが効率的に利用されることにより、市の駐車場収入が増加しました。
駐車料金はスマートフォンで支払うことが可能です。観光客にもこのサービスは歓迎され、観光客の滞在時間が長くなり、観光収入が増加しました。
同様に、ゴミ収集所にもセンサーが設置され、ゴミの蓄積具合や腐敗具合といったデータを収集しています。ゴミ収集のための最も効率的なルートを自動で割り出すシステムが採用され、作業が効率化し、市の経費削減につながりました。
りそな銀行の「Sota」
りそな銀行はNTTデータとITアウトソーシング契約を締結しており、コミュニケーションロボットによる顧客対応支援の共同実証実験を行っています。
「豊洲支店(セブンデイズプラザとよす)」にコミュニケーションロボット「SOTA」を導入し、1階ATMコーナーから2階への顧客誘導や、2階における顧客の一次対応といった、実店舗での業務におけるコミュニケーションロボットの導入し、検証しています。
顧客が来店すると、ロボットがセンサーで検知し、スタッフに通知するので、少数での店舗運営をサポートできます。
また、顧客との対話データをクラウド上に蓄積することで、運営オペレーションの改善を行うことができます。将来的には、2020年の東京オリンピックに向け、外国人観光客の増加に対応できるよう、多言語対応といった顧客対応業務の拡大を目指す予定です。
IoTでデジタルマーケティングの限界点を突破
IoTを取り入れれば、これまでのデジタルマーケティングの限界点を克服し、従来よりさらに多様なデジタルデータの収集と分析により、幅広い観点からのマーケティングが可能になります。
デジタルマーケティングとは、インターネットや電子メディア、各種の電子機器などを用いて行うマーケティングの総称です。
インターネット上のオウンドメディアなど、さまざまなWebメディアを用いたマーケティングはもちろん、それ以外にもデジタルサイネージ、デジタルテレビなど、様々なデジタル機器の情報を収集して、顧客の行動データを蓄積し、マーケティングを行います。Webマーケティングと比べて、より広い概念ということができます。
デジタルマーケティングの特長は、結果やプロセスがデジタル情報として記録されることです。アナログマーケティングの「なんとなくそんな感じがする」ではなく、CRMにデータ報を蓄積して客観的に分析し、具体的な根拠を持って、次の施策に役立てることができるのが強みです。
多くのメリットがあるデジタルマーケティングですが、従来は、この手法で収集できるデータは、基本的に顧客がデジタル機器に接触した場合に限定されていました。
たとえば、ネットショップ上の顧客の動き方であれば、Google AnalyticsやHubSpotのウェブサイトグレーダーなどを利用してアクセスデータを解析し、今後の施策に役立てることが可能です。
しかし、実店舗を動き回っている顧客に関しては、監視カメラで行動を撮影することはできても、結局目視で顧客の動きを検証することになり、最終的にはアナログでデータを収集することになりました。
しかし、IoTをとりいれることで、これまでは自動では収集することができなかったデータを蓄積することが可能になりました。来店した顧客がどのように移動し、何を手に取り、実際には何を購入したかといった情報を、監視カメラやセンサーなどで収集します。
情報はインターネットにより送信され、自動処理され、クラウドに蓄積されます。顧客の年代や性別といった特徴も、監視カメラとAIを組み合わせることにより、自動的に判断しデータとして貯めることができます。
IoTを活用したマーケティングの現状
IoTを活用したマーケティングは、日本ではまだ始まったばかりです。しかし、「ワールド・マーケティング・サミット・ジャパン2015」にて、日本IBM 代表取締役社長執行役員のポール与那嶺氏は、今後のビジネスやマーケティングでは、デジタル化とIoTの活用がさらに重要になると指摘しています(「マーケティングでのIoT活用法、グーグルとIBMの両社長が提言)。
ポール与那嶺氏によれば、各種センサーやビーコンの性能は向上する一方で、コストは下がっており、マーケティングに導入しやすくなっています。また、収集したビッグデータの解析が可能なWatsonの日本向けローカライズにより、IoTデータ分析の幅がさらに広がっていくと予測しています。
新規の技術をいち早く生かすことができれば、競業他社に対して大きなアドバンテージとなります。IoTを活用したマーケティングの成功例から、IoTをマーケティングに生かす際のポイントを学びましょう。
IoTを使ったマーケティング成功のポイント
IoTの導入によって成果を上げている企業に共通しているポイントは、「IoTの導入により顧客に利益がある」という点が明白なことです。成功例として取り上げた事例は、いずれも、企業サイドにとってメリットがあるだけではなく、利用する顧客にとって喜ばしいメリットがある、ないしはそのようなメリットを目的として、導入が検証されています。
IoTを活用したマーケティングに成功するためには、「IoTを利用して何ができるか」という視点ではなく、「顧客が抱えている問題を解決するために、IoTをどう活用できるか」を考えることが大切です。
まとめ
IoTは新しい切り口からのデータ収集やコストカットを可能にしますが、あくまでも手段でしかありません。顧客がどんな問題を抱えているか、どんなサービスを喜ぶか、それを発見し解決することを念頭に置きながら、IoTをマーケティングに活用していきましょう。
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