IoTとは「internet of things」の略で、さまざまなモノをインターネットにつなげてデータを取得する仕組みのことです。スマートフォンやパソコンなどの電子機器だけでなく、これまでインターネットに接続されていなかった自動車や家電などにもIoTが広がり、その技術は日々進化しています。
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IoTの技術を活用したマーケティング手法を、「IoTマーケティング」といいます。インターネットにつながった製品やサービスを通じて収集したデータが、さまざまな分野のマーケティング活動で積極的に活用されています。
IoTマーケティングは企業だけでなく、ユーザーにとっても、顧客体験(カスタマーエクスペリエンス)が向上するというメリットがあります。
本記事では、IoTを活用するメリットや具体的な活用方法、事例を詳しく解説します。
IoTをマーケティングに活用するメリットと具体例
マーケティング活動では、データを収集・分析し、仮説を立てたうえで施策を検討します。つまり、データの収集はマーケティングのベースになるということです。
IoTの長所をマーケティングに活用することで、今まで収集できなかったデータの取得やプロモーションが可能になるため、マーケティング活動の品質向上が見込めます。
ここでは、具体的にどのようなメリットがあるのか解説します。
適切なタイミングでのアプローチが可能
IoT技術を搭載した機器は、使用状況を把握できるというメリットがあります。取得した情報を活用することで、バッテリーの残量が少なくなる時期や、故障が予想されるタイミングなどで、ユーザーに対して適切なアプローチが可能です。
【プリンターへの活用例】
プリンターにIoT技術を導入し、インクの残量や稼働状況をリアルタイムで監視します。これにより、インクが少なくなる前にユーザーに新しいインクの補充を推奨したり、機械のトラブルを早期に検知したりできます。
【冷蔵庫への活用例】
冷蔵庫にセンサーを取り付けることで、保存食品の状態をユーザーに知らせるだけでなく、近隣のスーパーの野菜価格やおすすめのレシピの提案が可能です。
【ごみ収集ボックスへの活用例】
ごみ収集ボックスにIoTデバイスを設置し、蓄積されるごみの状況をリアルタイムで分析します。そのデータを活用して、ごみの収集ルートを最適化するなどの実用例もあります。
製品開発に活かせる
IoTを活用すると、製品を通じて詳細なデータを取得できるため、製品開発や広告戦略の立案に役立ちます。
【家電製品への活用例】
家電製品にIoT技術を活用して、ユーザーの生活リズムや利用頻度、さらには製品のエラーの発生状況まで把握することを可能にしました。収集したデータを深く分析することで、製品の課題や改善点を抽出し、次世代の製品開発につなげています。
【体温計への活用例】
体温計にIoTを搭載したケースでは、ユーザーがその日の体調や体温を送信できるようになっています。収集されたデータから健康状態を分析することで、最適な食事や生活習慣のアドバイスを提供する新たなサービスが可能になりました。
機会損失を防ぎ売上アップを図る
IoTを搭載したモノから、購入された種類や数、時間、販売数の多い場所などのデータを収集し、分析することで事業に活用します。
【自販機への活用例】
IoTを自販機に搭載した事例では、リアルタイムで商品の売れ行きを分析しています。これにより、商品の入れ替えや補充がタイムリーに行えるため、人気商品の売り切れを防止でき、売上アップにつながっています。
【駐車場への活用例】
駐車場にIoTセンサーを設置することで、駐車場の利用率が上がり、収入が増加した例もあります。駐車状況をリアルタイムで把握して配信することで、駐車場を探している車が原因で起こる渋滞が緩和され、スムーズな駐車が可能になるためです。
【バス停への活用例】
バス停にIoTを活用したデジタルサイネージを設置し、広告収益の向上を実現した例もあります。利用者にリアルタイムでバス運行情報を表示するほか、利用者がバスを待っている時間に広告を配信するなどの施策が行われています。
利用状況に応じて価格変更を行える
収集したリアルタイムのデータから、利用している商品の摩耗度を把握したり、利用者のリスクを算出したりして、価格に反映させる方法があります。
【保険商品への活用例】
車載通信機から取得されたデータをもとに車の操作状況を把握し、そこから算出したリスクによって保険料を割り引くという活用方法があります。安全に運転するドライバーにとっては大きなメリットです。
【食品への活用例】
食品業界では、お惣菜やお弁当に特殊なタグを取り付けることで賞味期限を監視する事例があります。賞味期限が迫っている商品は値下げを行い、食品ロスと販売の機会損失を効果的に抑制することが可能です。
データを蓄積して調査・分析に役立てられる
乗車カードや、監視カメラとAIを組み合わせたデータを大量に蓄積することで、調査・分析に役立てます。
【監視カメラへの活用例】
監視カメラにAIを組み合わせ、消費者の購買行動やそれに至らなかった行動パターンを明らかにします。滞在時間や入店者数、入店者の属性、混雑する時間帯といったデータとあわせて消費者の行動データを蓄積し、商品のラインアップの調整や分析に役立てることが可能です。
【乗車カードや電子マネーへの活用例】
乗車カードや電子マネーにIoTマーケティングを活用すると、「利用者が何をどのくらい利用・購入したか」という膨大なデータを取得できます。それらのデータを分析することで、効果的な利用促進や販売戦略の立案につながります。
IoTを使ったマーケティング成功のポイント
今後、さらなる広がりが期待されているIoTですが、IoTを使ったマーケティングには「顧客視点」が欠かせません。
ここでは、IoTを活用して成果を上げている企業から学ぶIoTマーケティングのポイントを紹介します。
データを活用して顧客にメリットをもたらす
IoTの成功例に共通するのは、企業だけでなく顧客にとってもメリットがあるか、顧客にメリットを提供することを目的として導入されていることです。
例えば、在庫がなくなりそうなときに在庫の補充をレコメンドすることで、「いざ必要なときに使えない」ということがなくなります。
また、購買データに行動データを掛け合わせて分析し、マーケティングに活用すると、顧客が必要とするタイミングで品切れが起きることを防げるかもしれません。
このように、まずは顧客の目線でIoTの活用を考えてみると良いでしょう。
セキュリティ面の対策を怠らない
IoTには、デバイスのハッキングや情報漏えいのリスクがあるため、セキュリティ対策が欠かせません。さまざまなモノがインターネットとつながることで、悪意のある攻撃や接続に利用されてしまう可能性があるからです。
セキュリティに不安があると、ユーザーが安心してIoTを活用できません。
このようなセキュリティリスクに応える技術が、「IoTデバイスセキュリティ」です。認証情報を格納するほか、ストレージに暗号をつけて情報を読みにくくする方法などが登場しています。
IoTを活用したマーケティングの事例
IoTをマーケティングに活用した具体的な事例として、製品への活用事例と、サービスへの活用事例を分けて説明します。
製品への活用事例
まずは、製品への活用事例を紹介します。
SHARP
シャープマーケティングジャパン株式会社の「AIoT家電」は、利用者の家族構成や使用時間、使用環境によって最適化が進む仕組みです。
万が一の故障の際も、インターネットを通じて情報収集を行い、修理時間の短縮などを実現する仕組み構築にも取り組んでいます。
出典: お客様のDX実現への貢献|シャープマーケティングジャパン株式会社
ダイキン工業株式会社
ダイキン工業のグローバル空調IoTプラットフォームは、エアコンに無線LANアダプターを装着することで、さまざまなデータを取得する仕組みになっています。
リアルタイムで500万台以上の空調機のデータを取得しており、スピーディな分析と改善が可能です。
出典: ダイキン工業
サービスへの活用事例
ここでは、IoTを活用したサービスの例を紹介します。今回取り上げる例は、どちらも2社でサービスを共同開発しています。
NTTデータ・unerry
NTTデータでは、デジタルツインコンピューティング(DTC)を実現する人流センサーを活用したサブスクリプションサービスを、株式会社unerryと共同で提供しています。
施設や店舗にIoTセンサーを設置し、測定したデータを、300億件以上のビッグデータと掛け合わせてAIで解析し、来訪者の属性を推定。東京駅にある「グランスタ東京」で実証実験を行ったところ、ターゲット広告は「東京ステーションナビ」アプリの開封率が2.0%から8.5%へと約4倍に増加し、集客率向上につながりました。
2025年までに100社への本格導入を目指しています。
グローリー・全日食
グローリーと全日本食品は、リテールメディアサービス「全ちゃんメディア」を共同開発しました。
顧客の購買データを集積し、分析・可視化することでデジタル広告との連携を可能にしています。これによって、ユーザー行動に合わせた広告配信が可能になり、顧客体験が向上します。
出典: グローリーと全日食チェーンが リテールメディア事業で業務提携
IoTを活用して自社のマーケティングを進化させよう
IoTはマーケティングと相性の良い技術であり、活用方法によっては自社のマーケティング活動を進化させることが可能です。本記事で紹介したポイントや事例を参考に、自社の製品やサービスにIoTマーケティングを取り入れる方法を考えてみましょう。
ただし、IoTはあくまでも手段です。顧客が抱えている問題を発見し、解決するための方法を考える姿勢が、最終的に製品やマーケティングの画期的な進化につながります。