HubSpotの創立記念日に寄せて - 15年間で学んだ15の教訓

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Dharmesh Shah
Dharmesh Shah

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私たちは15年前の今日、2006年6月9日に、HubSpotを公式に創業しました。「公式に」と書いたのは、既にその数年前から、大学院の級友だった共同創業者のブライアン・ハリガンとHubSpotのアイデアを練っていたからです。6月9日という日付は、私が正式に卒業し、学生ではなくなった日を選びました(ブライアンは1年前に卒業していて、私はまだ論文の執筆中でした)。

HubSpotの創立記念日に寄せて - 15年間で学んだ15の教訓

創業から数年間の写真はあまり持っていません。後から分かったことですが、ブライアンも私も、写真を多く撮るタイプではないのです。しかし、HubSpotの2周年を祝う2人の写真がありますので、お見せしましょう。

HubSpotの創立記念日に寄せて - 15年間で学んだ15の教訓この15年間、楽しいこと(fun)がたくさんあり、多くのこと(ton)を学びました(韻を踏んでいますが偶然です。詩を詠み上げたい誘惑に屈していない自分を我ながらたいしたものだと思います)。創業者2人(とデュオと名付けられた観葉植物)で始めた会社は、今や世界中に4,000人以上の社員を抱え、ニューヨーク証券取引所において時価総額200億ドルを超える上場企業へと大きく成長しました。

そこで、これまでに学んだ教訓をいくつか共有しようと思います。

なお、どのソートキーで並べ替えたらよいか分からなかったので、順不同でご紹介します。

HubSpotの15年間で学んだ、ささやかな15の教訓

  1. 早い段階で多様性のあるチームを構築する。仕事上の失敗は他にもたくさんありますが、これを実現しなかったことは最大級の、かつ最も後悔している過ちです。正直、当時を振り返ってみても、多様性には意識が及んでいませんでしたし、もっと幅広いトピックであるカルチャー(企業文化)についてもあまり考えていませんでした。しかし、それではいけなかったのです。性質の似たメンバーばかりでチームを構築すると、企業文化に負債が生じることになります。財務上の負債や技術的負債と同じように、いずれそのツケを払わなければなりません。しかし、財務上の負債は小切手で返済でき、技術的負債の多くはシステムの部分的なリライトやリファクタリングで解消できるのに対し、企業文化における負債は非常に厄介です。完済することが本当に難しいため、この負債は抱えないようにしましょう。未来の自分から感謝されるはずです。

  2. 「顧客第一」の考え方を浸透させ、醸成する仕組みを整備する。この点は非常にうまくいきました。「Solve For The Customer(顧客にとっての「最適解」を考える)」は私たちのミッションとして、創業初期から企業文化に組み込まれています。ただの理想で終わらせるのではなく、いくつもの仕組みを整えることで有言実行を果たしているのです。例えば、全社会議の冒頭では毎回、お客さまをお招きしてお話を伺う時間を設けています。NPS®(顧客ロイヤルティー指標)調査も行っていますが、これ自体は特に珍しくはないでしょう。特筆したいのは、お客さまからの回答を社内Slackの専用チャンネルにそのまま配信している点です。このチャンネルには1,000人を超えるHubSpotのメンバーが参加しています(参加は任意)。また、HubSpotでは「シャープエッジ」というリストを作成しています。シャープエッジとは、これまでに行った意思決定の中で顧客本位とは言い難かったものを指します。私たちは毎年、こうしたリスク要因を取り除こうと力を尽くしています。

  3. 優れたアイデアは必要だが、それだけでは十分ではない。適切に実行して初めて事業を軌道に乗せることができる。私たちは創業初日から、物事を成し遂げる姿勢を大切にしています。どんなときも、実行志向であることを重要視してきました。なぜかというと、その必要があったからです。私たちには、素晴らしい発明や他には真似できない技といったものがありませんでした。余裕のない状況を乗り切るには、突き進むしかなかったのです。

  4. 企業文化の自然な浸透を待つのではなく、なるべく早い時期に明文化する。社員に企業文化を少しずつ会得してもらう体制だと、所属人数が増えるにつれ、理解度が低下していきます。できるだけ早い段階で、企業文化や価値観を文書化しましょう。HubSpotのカルチャーコードのように、100スライドを超える資料に仕上げる必要はありません(第1版は16スライドでした)。紙1枚でも(今もそうした企業があると聞いています)ペーパーナプキン1枚でも構わないので、とにかく形にすることが重要です。その際には各チームと協力して明確に表現しましょう。そうしないと、単なる文字の羅列になってしまう危険性が高くなります。

  5. 透明性を上げるのは怖い… しかし劇的な効果をもたらす。不安を感じるのは、誰かに信頼を裏切られるリスクが常に存在するからです。しかし、良い面もたくさんあります。まず、最高の人材(つまり、採用したい人材)は透明性を重要視しており、その度合いは高まる一方です。次に、透明性の向上は効率化にもつながります。誰がどの情報へのアクセス権限を持つべきかを何時間もかけて議論する必要がなければ、多くの手間が省けます。そのためHubSpotでは、創業初日からチーム全員にあらゆる情報を共有しています。もし最初からやり直せるとしても、心臓が鼓動(heartbeat)を1回打った瞬間に、すぐさま同じことを始めるでしょう。それとも、ここでは「HEARTbeat」と書くべきでしょうか?(おっと失礼、HubSpot社員に求められる特性を表す「HEART(ハート)」という言葉にかけた内輪のジョークです)

  6. 企業が破綻する原因は、共同創業者の対立が最も多い。このリスクを最小限に抑えるために、共同創業者は慎重に選びましょう。最も重要なのはスキルセットではなく、互いに尊敬し、称賛し合えること、そしてあえて言うならば、愛があることです(ブライアン、愛してるよ相棒!)。公共の場で共同創業者への愛を語ってしまったことをお詫びいたします。普段はこういうスタイルではないのですが、私にも時折、人間らしさを垣間見せる瞬間があるのです。

  7. 新たなカテゴリーを生み出すことは楽しいが、必ずしも必要とは限らない。Teslaのイーロン・マスク氏は、電気自動車というカテゴリーを作ってはいません。Shopifyのトバイアス・ルーク氏も、eコマース(電子商取引)というカテゴリーを作ってはいません。そしてHubSpotも、CRMというカテゴリーを生み出したわけではないのです。しかし、私たち全員が実践したことが1つあります。カテゴリー内の既存の製品やサービスから、それまで恩恵を受けていなかったであろう多くの人々に対し、そのメリットを享受できるように支援したのです。

    ちなみに、創業間もない時期に、私たちが「インバウンドマーケティング」というカテゴリーを生み出したのも事実です。当時の事業成長には役立ちましたが、労力やコストがかかり、リスクも高いものでした。誰にでも勧められるかどうかは分かりません。

  8. チームを信じる。大きな夢があるなら(もちろん私たちにもありました)、それに向かって突き進みましょう。そして、その夢を追い求めて、社員が失敗を重ねながらも自主的に取り組めるようにサポートします。そうすれば、見事な成果で驚かせてくれるはずです。ブライアンと私は夢や願いを大抵は実現させてきましたが、その中で私が1つ学んだのは、必ずしも望んだタイミングで叶うとは限らないということでした。多くの場合、時間がかかります。素晴らしいアイデアが現実になるまで、何年もかかることは珍しくありません。アイデアが素晴らしいかどうかさえ、はっきりと分からないこともあります。

  9. 自分自身とチームに賢明なリスクを取らせる。これを実践するのは、規模拡大に伴ってますます難しくなっていきますが、非常に重要なことです。規模が大きくなれば、多くを失うことになるため、リスク回避の傾向が強くなるのは自然な流れといえます。だからこそ、あえて大胆な賭けをしなくてはなりません。社運を賭ける必要はありませんが、驚異的な効果をもたらすような賭けをしましょう。

  10. 合理的に気前良く。相手から価値を得ようとする前にこちらから価値を与えるようにいつも心掛けましょう。目の前の利益を手放してしまっても構いません。自社の獲得できる消費者余剰を最大化しようと躍起になる必要もありません。顧客やパートナーに利益を得てもらってよいのです。創出した価値よりも、さらには無理なく交渉できる金額よりも、低い額を請求してもよいのです。

  11. 皮肉屋とは距離を置こう、エネルギーを吸い取る有毒な吸血鬼だから。ここで取り上げるのは皮肉ばかりを言う人であって、疑い深い人ではありません。懐疑心の強い人は多くの場合「悪魔の代弁者」として、ある意見の有効性を検討するために、あえて質問や反論を投げかけます。物事を良くしたい一心でそうした行動をとっているため、チームに必要な存在です。一方、皮肉屋は根底から否定的で、善意や倫理的な動機に人や組織が突き動かされるとは信じていません。心の奥深くで、組織が改善されることはないと考えています。賢明な人材を採用すると、社内の活気が増し、士気が高まるというメリットも期待できます。一緒にいて幸せを感じられる人たちと働きましょう。人生は短いのですから。

  12. 長期的な成功はシステム思考ができるメンバーによって定義される。「システム思考ができるメンバー」とは、物事の分析が好きな人たちのことです。無駄に複雑化しているものが気になり、簡素化したいと考えます。また、レバレッジのチャンス(つまり、表面上は些細に思えても長期的に大きな影響をもたらす可能性のあるもの)を賢く活かす方法をいつも探しています。パターンを見つけ、パズルを解くのが得意なのです。なお、私の言う「システム」とは、技術的なシステムだけに限定されず、ここでもエンジニアについてのみ言及しているわけではありません。あらゆる部門、あらゆる分野に当てはまる教訓です。フレームワークやフライホイールに沿って物事を考えられる人材を見つけ、育てましょう。

  13. ほとんどのスキルは企業レベルでも個人レベルでも習得できる。「天賦の才に恵まれている」とは、一般的に何らかのスキルを少ない時間と労力で習得できることを意味します。しかしそうでなかったとしても、自分の意思で選んだことに意欲を持って取り組んでいれば、それなりの成果を挙げられるはずです。個人だけでなく企業も、何かしらのスキルを習得する(HubSpot流に言うと「筋力を鍛える」)のは難しいかもしれませんが、ほとんどの場合は不可能ではありません。必要なのは、習得が難しいスキルのうち、挑戦する価値があるものを見極めることです。HubSpotでは、マーケティングと営業について精通するところから始めました。その上で、素晴らしい製品の開発に投資することを慎重に決断したのです。創業当初は、インサイドセールスが私たちの得意分野でした。それから10年後、フリーミアムと製品主導の成長に関するスキル向上のために投資することを決断しました。

  14. いつでも、どこにいても、できるだけ多くのことを学び続ける。知ったかぶり(know-it-all)ではなく、知りたがり(learn-it-all)になりましょう(ブライアンがどこかで聞いてきたことで、私にも教えてくれました)。誰しも、自分自身や会社のことを唯一無二の特別な存在だとつい考えてしまいますし、実際にその通りなのです。ただし、他者に学ぶ知恵や洞察がないということではありません。事業に役立ちそうなものがあれば採用しましょう。具体的なアクションとしては、本を読むことを強くお勧めします。HubSpotではかなり前に、社員の学習支援の一環として「Free Book Program」を始めました。HubSpotの社員が学びや成長に役立つ書籍を購入し、その代金を会社が負担する制度です。これまでに導入した施策の中でも特に気に入っています。

  15. ベクトルを統一する。抽象化のあらゆるレベルにおいて、統一を図りましょう。チームの全員が同じ方向に進んでいること、全チームが企業ミッションに沿って活動していること、そして企業ミッションが顧客の利益と合致していることが大切になります。統一を図るメリットは、社員数や社員の平均的能力を一定に保ったままで、さらなる発展が可能になることです。大事なセリフなのでもう一度言わせてください。まったく同じ社員構成で、社員のスキルもまったく同じ状態を維持したままでも、社員が(ほぼ)同じ方向に進むよう意識の統一を図るだけで、成果の向上が期待できるのです。このトピックについては「Aligning Vectors To Optimize Impact」と題した記事でさらに詳しく説明しています。

いったん流れに乗ったら、考えが次々とあふれ出てきました。他にも思い浮かんだことはありますが、別の機会に取っておきます。「早めのリリース、頻繁なリリース」が私の信条ですので。

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