BtoBマーケティングは、購買プロセスが長く、複数の意思決定者が存在するため、潜在顧客の創出から購買までのリードタイムが比較的長い傾向にあります。検討段階で接点を持ち、自社に興味を持ってもらえるようアプローチしていくためには、いかに意思決定者が検討している段階で接触できるかが重要となります。
検討初期の見込み客と接点を持つ手段のひとつに「LinkedIn広告」があります。
LinkedInというと、採用目的に利用するイメージが強いかもしれませんが、LinkedIn広告はマーケティングにも十分活用できます。
LinkedInには、多くのプロフェッショナルが自身の仕事に関する詳細なプロフィールを登録しています。その内容を踏まえた、高精度なターゲティング広告を活用することで、効率よく意思決定者にアプローチできるでしょう。
一方で、単に広告キャンペーンを作成するだけでは成功にはつながりません。大切なことは、「相手が求める情報を提供する」ことです。
本記事では、LinkedIn広告の種類や出稿手順、運用のポイントなどを紹介します。
LinkedIn広告の効果的な運用方法
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LinkedIn広告とは?
LinkedIn広告とは、LinkedInに出稿する運用型の有料広告です。
LinkedIn広告を活用すれば、日本国内でLinkedinに登録している200万人以上のプロフェッショナルに効率よくアプローチでき、ブランド認知度向上やビジネス機会の創出などが期待できます。
またGoogleやFacebookなどで広告運用経験があるのなら、LinkedInでの広告運用は難しくないでしょう。
参考:ファーストペンギンのチャンス。村上氏が語る、LinkedInの現在地と企業が活用すべき理由
LinkedIn広告を活用する2つのメリット
LinkedIn広告を活用するメリットは、以下の2つが考えられます。
1. 1日数百円単位から出稿できる
LinkedIn広告は、Google広告と同様にPPC(クリック課金型)を採用しています。広告主が自由に予算とスケジュールを決め、ユーザーが表示された広告にアクションを起こしたときに料金が発生するのです。
たとえば、広告キャンペーンの目的がWebサイトへの訪問者数を増加させることならば、ユーザーが広告からWebサイトURLをクリックしたときに、料金が発生します。
LinkedIn広告は、800円/日からの小額出稿が可能です。予算が少ない中小企業でも手軽に開始でき、限られた予算の中で効率よく運用できます。
参考:LinkedIn Advertising Costs & Pricing | LinkedIn Marketing Solutions
参考: LinkedIn広告設定画面のキャプション
2. ターゲティング精度が高い
広告配信で重要なのは「いかに高い精度でターゲットにリーチできるか」です。最適なユーザーに広告表示できれば、高いCVR(コンバージョン率)が期待できます。
実際に、LinkedIn広告では、ユーザーのプロフィールに基づいたターゲティングが可能です。 主に以下の項目で設定できます。
- 会社(自社ページのフォロワーや会社名、業種など)
- 職務経験(スキルやポジション、職務タイプなど)
- 学歴(出身校や学位、専攻など)
- 関心と特徴
- デモグラフィック(人口統計学的:性別や年齢、地域など)
たとえば、「大阪大学経済学部出身でデジタルマーケティング歴5年以上の女性」など、かなりターゲットを絞りこんだ広告配信が可能です。
参考:LinkedIn Marketing Solutions Updated Targeting Playbook 2020
LinkedIn広告で利用できる4つの広告形式
LinkedIn広告は4種類あります。各々の広告の特徴を知り、自社ブランドに最適な広告を選べるようになりましょう。
1. スポンサードコンテンツ
スポンサードコンテンツは、ユーザーのフィード画面に表示される広告です。利用できる広告フォーマットは下記の通りです。
- シングル画像広告
- 動画広告
- カルーセル画像広告(複数枚の画像をスライド表示させる広告)
- イベント広告
豊富な広告フォーマットが利用できるため、製品やイベントのプロモーション、自社チャネルへの誘導など、様々な目的で使用できます。
参考:Native Ads - Sponsored Content | LinkedIn Marketing Solutions
2. スポンサードInMail
スポンサードInMailは、ターゲティングしたメンバーのインボックスへ直接配信する広告です。配信したメッセージはインボックス内の目立つ場所に表示されるため、大量のメールに埋もれることなく、高い開封率が期待できます。
スポンサードInMailで利用できる広告フォーマットは、以下の2つです。
- メッセージ広告:オーディエンスに直接メッセージを送る広告
- 会話型広告:事前に会話シナリオを設定したメッセージを送る広告
オーディエンスに直接アプローチできる、且つ開封率が高いため、CVを目的にしたキャンペーンに最適な広告です。
参考:Sponsored Messaging | LinkedIn Marketing Solutions
3. ダイナミック広告
現代のマーケティングでは、パーソナライズ化した顧客体験を提供することも求められています。
LinkedInのダイナミック広告を活用すれば、ユーザーのプロフィールを基に、カスタマイズ化した広告を表示できます。
ダイナミック広告は、ABM(アカウントベースドマーケティング)、ブランド認知度向上や各種プロモーション、リード創出が目的のキャンペーンに最適です。
参考:Dynamic Ads | LinkedIn Marketing Solutions
4. テキスト広告
テキスト広告とは、テキストと会社ロゴなどの小さな画像で構成されるシンプルな広告です。ユーザーのフィード画面の上部やサイドに表示されます。
高いターゲティング精度でリーチできるため、リード創出に最適な広告です。PPCもしくはCPM(インプレッション単価)の料金方式となっており、費用対効果も高いでしょう。
参考:Text Ads - Targeted, Self-Service PPC & CPM Ads | LinkedIn Marketing Solutions
LinkedInで広告出稿する際の簡単8ステップ
LinkedIn広告の基礎知識をご紹介したところで、実際に広告出稿する手順を見ていきましょう。
手順1.「広告を作成する」をクリック
LinkedIn「マーケティングソリューション」へ向かい、画面中央もしくは右上にある「Create ad」を選択して、キャンペーンマネージャーアカウントへ移動します。
アカウントを持っていない場合は、画面の指示に従い、まずはアカウント作成を行いましょう。このとき、アカウントと会社ページを忘れずに紐づけてください。
アカウントの作成が完了したら、「キャンペーングループを作成」をクリックします。
グループ名やスケジュールなどを設定し、「保存」をクリックすると、作成したキャンペーングループが画面下に表示されます。
キャンペーングループは一般公開されないので、「A広告テストー北関東男性25~35歳」のように、詳しい名前をつけるのがおすすめです。 ひと目でキャンペーン内容を理解できるため、複数担当者で広告を運用する際に便利です。
「キャンペーンを作成する」をクリックしたら、LinkedInキャンペーンの内容制作を開始します。
手順2.キャンペーンの目的を選択
初めに行うのは、キャンペーンの目的設定です。下記7種類の目的から、最適な目的を選びましょう。
【認知度】
- ブランド認知:会社やサービス、イベントなどをユーザーに紹介するのが目的
【関心度】
- ウェブサイト訪問:ウェブサイトやLPにユーザーを誘導するのが目的
- エンゲージメント:コンテンツのエンゲージメント率向上、および会社ページのフォロワー数を増やすのが目的
- 動画視聴:動画の視聴者数やエンゲージメントを増やすのが目的
【コンバージョン】
- リード獲得:プロフィールデータを使用したリード獲得フォームを活用し、リード創出するのが目的
- Webサイトコンバージョン:Webサイトへのトラフィックを増やす、およびブランド認知度向上が目的
- 求人応募者:自社求人情報を広める、および応募者の数を増やすのが目的
手順3.ターゲットオーディエンスの選択
ターゲットオーディエンスの設定を行います。ターゲティングは具体的にするほど、精度が向上するため、ROI(投資収益率)は高くなる傾向があります。
まずは、広告表示するオーディエンスの住む場所と、プロフィール設定言語を選択します。
ユーザーの中には、日本人であっても英語でプロフィール設定している方が多いです。ターゲットを外資系企業の社員にする場合、プロフィール言語は英語にするといいでしょう。
オーディエンスの基本情報を選択したら、より詳細な設定に進みます。以下が設定できるターゲット条件です。
【会社】
「HubSpot所属の従業員」のように、特定の企業に属している社員の指定が可能です。また、業界や企業規模に基づいたターゲティングを行えます。
【統計データ】
特定の性別や年齢層にアプローチしたい場合は、統計データを設定しましょう。
【学歴】
特定の出身校や学位・専攻のユーザーに向けて広告の発信が可能です。広告運用の目的が”採用”の場合に便利でしょう。
【職務経験】
広告で製品売上を伸ばしたい場合、意思決定権のある役職の方にアプローチするのが効果的です。 LinkedIn広告では、ターゲットの職務レベルを設定できるため、マネージャーやVP(副社長)などにだけ広告表示することもできます。他にも、スキルや職務タイプなどの設定も可能です。
【関心と特徴】
ユーザーの興味関心に基づいたターゲティングが可能です。たとえば、キャリアアップに関するイベントを開催するのなら、キャリアと雇用に関心があるメンバーにのみ広告表示できます。特定の興味関心を持つメンバーにアプローチしたい際に、有効なターゲティングです。
手順4.広告フォーマットの選択
利用できる広告フォーマットは、キャンペーン目的によって異なります。フォーマットを選ぶ際は、画面右側に表示されるボックス「推定オーディエンスとその他の情報」に注目しましょう。
フォーマットを切り替えると、ボックス内の情報が変化します。このボックスが表示するのは、選択したフォーマットでキャンペーンを実施した際のシミュレーション結果です。
予算やインプレッションなどの優先順位を明確にして、より効果的な広告フォーマットを選びましょう。
手順5.広告の配信先を選択
LinkedInによると、「LinkedInパートナーネットワーク」を有効にすれば、サードパーティ製アプリやサイトメンバーにも広告を配信できるようになり、最大25%リーチが向上します。
特別な理由がない限り、「LinkedInパートナーネットワーク」は有効にしましょう。
手順6.予算とスケジュール、入札方式の決定
予算とスケジュール、入札方式を決定します。
【予算】
予算の設定方式は下記の3つから選べます。
- 1日の予算と通算予算
- 1日の予算
- 通算予算
なおキャンペーン開始段階から、多額の予算投資をするのはおすすめできません。キャンペーンが軌道に乗っていることを確認したら、予算の追加をしましょう。
【スケジュール】
キャンペーンの開始日を決めます。終了日を設定できれば、継続的に広告表示することも指定可能です。
【入札方式】
入札方式は次の3つがあります。
- 最大配信(自動):広告目的と効果が最大化となるように、LinkedInが予算を自動調節します。
- ターゲット単価:1日の平均単価がターゲット単価の30%を上回らない範囲内で自動調節します。
- 手動による入札:入札単価を自分で決めます。
ターゲット単価もしくは手動による入札をする場合は、最適な入札額の発見が必要です。ターゲット単価と手動による入札の場合は、表示される推奨額も参考に入札額を決めましょう。
手順7.コンバージョントラッキングの設定
コンバージョントラッキングを設定すると、広告をクリックした後のユーザー行動をトレースできます。貴重な顧客情報が得られるので、必ず設定しておきましょう。
手順8.広告を設定
最後に「広告を新規作成する」をクリックし、配信するクリエイティブを作成して終了です。
LinkedIn広告を効果的に運用する6つのポイント
LinkedIn広告の強みは、優れたターゲティング精度です。しかし、的確にターゲットにリーチできたとしても、その後の関係構築につながらなければ施策が無駄になりかねません。ここでではLinkedIn広告運用の6つのポイントをご紹介します。
1. ペルソナをできる限り詳細に決める
LinkedIn広告には、様々なターゲットオプションがあり、特定の業界やポジションに属するペルソナにリーチできます。この強みを活かすためにも、自社で集めた顧客情報を分析し、サービスに興味を持ってくれるペルソナを具体的に定めましょう。
ペルソナ作成方法がわからない、不安があるという方は、ぜひ以下の記事を読んでみてください。
参考: 5分で分かる『ペルソナ』の作り方|マーケティングで成果を出すための手法を徹底解説
2. ペルソナと行動フェーズに合わせた目的設定を行う
LinkedIn広告では、様々な選択肢の中から目的を選べます。目的を決める際は、ペルソナは今どのフェーズ(まだ課題が明確になっていないのか、ツールを検討している段階なのか)にいるのか、その状態に対してどのようなアクションを取るべきかを先に設定しておきましょう。
たとえば、まだ自社を知らず、ツール導入もまだ検討段階でない潜在顧客をペルソナに設定した場合、一旦「自社ツールの認知」を目的にしようと決めます。
3. 目的に合わせてKPIを設定する
当然ですが、 適切なKPI(重要業績評価指標)設定をしなければ、広告パフォーマンスの測定、およびパフォーマンスを向上させるためのPDCAは回せません。
ブランド認知度を高めることが目的なら、コンテンツエンゲージメントやサイトトラフィック数などが最適なKPIとなるでしょう。一方、リード創出が目的なら、ROIやCPL(リード獲得単価)などが指標となります。
適切なKPIを設定して、広告パフォーマンスの動向を正確に把握しましょう。
参考:7 Key Metrics to Track the Success of your LinkedIn Sponsored Updates | LinkedIn Marketing Blog
4. ペルソナに合わせてクリエイティブや広告文を作成する
ペルソナと目標を決定したら、次は広告クリエイティブの作成に入ります。
広告クリエイティブの制作で大切なことは、「相手のインサイトを考えること」です。ペルソナが求める価値を考え、しっかり応えられるようクリエイティブに反映しましょう。
自社ツールを売り込むことを主眼に置いた内容ではなく、あくまで課題解決の手段を提供することに徹するのです。
自社から率先して価値を提供することで、相手が興味を持ってくれれば、良い状態で関係構築をスタートできます。
5. 企業ページとコンテンツを充実させる
情報が錯乱する現代、人々は「誰」が情報発信しているのかを重視します。プロフェッショナルたちは信頼できるブランドから情報やアイデア、サービスを求めるのです。
広告で自社ブランドに興味を持ったペルソナは、会社ページを確認して、次のアクションを起こすか決めます。会社ページが充実しておらず、何者なのかがわからない状態だと、関係構築には繋がりにくいでしょう。
広告配信前に、企業プロフィールや製品ページなど、会社に関する情報を充実させましょう。
参考:世界のオーディエンスとつながる日本語版マーケターのためのLinkedInガイド
6. ABテストを実施して広告の最適化を行う
ターゲティングやクリエイティブのちょっとした文言やデザイン、動画のサムネイルなどを調整するだけで広告のパフォーマンスは大きく変わります。効果の高い広告を作成するためには、複数の広告を同時運用する「ABテスト」がおすすめです。
ABテストを実施する際の注意点は、変更する要素を1つにとどめることです。改善点があるのは広告のデザインなのか、それともターゲティングなのか、仮説を立ててからABテストで検証しましょう。
ABテストの実施方法を知りたい方は、HubSpotの以下の記事を確認してみてください。
A/Bテストとは?コンバージョンを最大化させる手順まとめ
【BtoB向け】LinkedIn広告出稿の成功事例
それでは、実際にLinkedIn広告で大きな成果を出した企業事例を3つ見てみましょう。
事例1:Samsung SDI
Samsung SDIは、世界最大のリチウムイオン電池メーカーです。同社はグローバル規模で、質の高いリード創出を目的に、LinkedIn広告の活用を決定します。
同社がLinkedIn広告を出すにあたり初めに行ったことは、LinkedInのスライドシェアを用いて、同社の製品やテクノロジーを紹介するコンテンツの制作です。コンテンツ内容を充実させたのちに、具体的なペルソナ設定を行い、ディスプレイ広告とスポンサードInMailによる広告キャンペーンを開始しました。
結果、約30万人にリーチでき、約2か月で同社の年間数に相当するリード創出を達成しました。
参考:世界のオーディエンスとつながる日本語版マーケターのためのLinkedInガイド
事例2:Cisco
CiscoはグローバルにITとネットワーク関連の事業を展開している企業です。Ciscoのカナダ営業所はデジタルマーケティングの拡大を狙い、下記KPIを達成するためにLinkedIn広告を活用しました。
- リード創出とコンタクトの獲得
- リード創出コストの改善
同社がLinkedIn広告を出す際に初めに行ったことが、製造業を対象にしたCiscoの技術を紹介するホワイトペーパーの作成です。
効率的にリード創出するために、ペルソナは意思決定者に定め、職務や役職などで具体的にペルソナを絞り込みました。
ホワイトペーパー配布の広告をペルソナに表示したところ、リード創出コストの削減やキャンペーン精度の改善を実現しました。
参考:Cisco Canada Case Study | LinkedIn Marketing Solutions
事例3:Microsoft Canada
Microsoft CanadaがLinkedIn広告を選んだ理由は下記の通りです。
- 主な顧客であるビジネスプロフェッショナルが集う
- 効率よく意思決定者にリーチできる
- 確実にカナダの顧客に広告を届けられる
同社は効率よくリード創出するため、ペルソナは意思決定者に絞り、動画広告を配信しました。
キャンペーン期間中、同社は視聴者のセグメンテーションを組み合わせたテストを実施し、長さが15秒の動画が最も視聴完了率が高いことを発見しました。
精度の高いターゲティングと広告の最適化の結果、ファネルの短縮化、およびKPIの達成をしました。
参考:Microsoft Canada Case Study | LinkedIn Marketing Solutions
LinkedIn広告でも「相手が求める価値の提供」が不可欠
LinkedIn広告の大きな魅力は、高精度のターゲティングで意思決定者などの良質な潜在顧客にアプローチできることです。しかし、広告クリエイティブが最適化されていなければ、コンバージョンにはつながりません。
LinkedIn広告に限らず、あらゆる業務を成功させるには、顧客理解を深めることが必要です。ペルソナの詳細な設定、およびペルソナのインサイトを考え抜き、それを提供できる広告クリエイティブを制作してください。
LinkedIn広告を活用して、多くの潜在顧客に最適な価値を届けましょう。