新規の契約を獲得しました。社内は新しいクライアントの歓迎ムードに染まり、だれもが早速仕事に取りかかろうとやる気を見せています。さあ、ここから新しい関係の始まりです。きっと大きな利益を生み出せるでしょう。
しかし皆さんの中には、この喜びや達成感が、すぐに怒りやストレスに変わってしまった苦い経験をお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。実際、クライアントと何週間も連絡が取れなかったり、契約書に書かれていない成果を期待されたり、最初の請求書を送付する前にもう関係がこじれている場合すらあります。
マーケティング代理店の成長に関する2018年版のレポートによると、16%の代理店はクライアントを定着させることに苦戦しており、23%はクライアントの目標や期待を満たすことができていません。プロジェクトのキックオフミーティングを実施して、あらかじめ無理のない目標をクライアントと設定しておけば、クライアントを満足させ、長期的な関係を築ける可能性が高まります。
効果的なプロジェクト キックオフ ミーティングが必要な理由
クライアントとどのような関係を築けるかは、最初の90日間で決まります。継続的な関係を築きたいと考えるなら、導入支援プロセスをきちんと整備して、クライアントにとって頼りになる代理店であることを証明する必要があります。
キックオフミーティングを通じて現在の強み、弱み、チャンスについて理解を深めていきます。その中でわかったことを基に、戦略的なマーケティング計画を打ち立てましょう。
戦略的なマーケティング計画を打ち立てるためにキックオフ ミーティングで確認すべき項目
- 具体的なビジネス目標
- 競合他社の分析
- クライアントがこれまでに取り組んできたマーケティング活動の概要
- バイヤーペルソナ
- MQL(マーケティング活動で獲得した見込み客)とSQL(営業がフォローすべきと認定された見込み客)の定義
- 優れたビジネスモデルの設定
- 月単位、四半期単位、年単位でのKPI(重要業績評価指標)の目標値
- 各活動の目標を達成するために必要なサービスや時間配分を明記した、詳細なインバウンドマーケティング戦略
このマーケティング計画に記載されている内容は、少なくとも向こう3か月にわたって業務の基本方針となります。
新規クライアントとのキックオフミーティングに欠かせない7つの要素
クライアントの導入を支援するうえで、キックオフミーティングは特に重要なステップです。このミーティングは、主な関係者を集め、対面またはオンライン会議で行います。マーケティング計画を作成したり、優先事項をリストアップしたり、契約締結前に双方が合意に至った目標について再確認したりと、関係者全員の認識を統一することが目的です。
クライアントとのキックオフミーティングで確認すべきポイント
- チームメンバーの自己紹介
- SMART目標
- 目標達成に向けた計画
- クライアントが抱える課題
- プロジェクトのタイムライン
- マーケティングの概要
- 役割と責任
1)チームメンバーの自己紹介
参加者全員が自己紹介を行い、それぞれの役割を説明する機会を設けましょう。プロジェクトチームには代理店側のスタッフとクライアント側のスタッフが共に参加することになるため、まずお互いをよく知ることが大切です。また、各メンバーの専門分野を把握しておけば、コンテンツ作成中に助けが必要になった際には、適切な人物に協力を依頼できます。そして何よりも、チームのメンバーが打ち解け、互いに助け合う関係を築いていくことが肝心です。
2)SMART目標
クライアントの目標は、契約を結ぶ前の営業段階で既に明らかになっているかもしれませんが、キックオフミーティングでは以下の要件に沿って、改めて目標を設定する必要があります。この5つの要素はそれぞれの頭文字を取って「SMARTの法則」と呼ばれます。
- Specific(具体的):たとえば「トラフィックの拡大」ではなく「オーガニックトラフィックの拡大」といったように、目標の種類を見極めたうえで明確に設定します。
- Measurable(測定可能):目標達成率を把握する方法を決めます。たとえば、クライアントがブランドアフィニティー(ブランドへの親近感)を高めることを目標としている場合、どれくらいアフィニティーを高められたか(または高められていないか)を計測して報告するためのプロセスを確立する必要があります。
- Attainable(達成可能):クライアントが過去に取り組んできたマーケティング活動を検証し、これまでの成果を評価したうえで、今後どれくらいの成長が見込めるのかを明確に提示できるようにすることが重要です。
- Realistic(現実的):無理のない目標を設定します。クライアントが月間5,000件のリードを獲得したいと考えていても、月2件のブログ投稿しか契約に盛り込まれておらず、今までに一度もウェブサイトからリードを獲得できたことがないとしたら、その目標は現実的とは言えません。
- Timebound(期限付き):目標には期限があると効果的です。マーケティング活動を計画して展開するまでにどのくらいの時間がかかるか、活動の効果が現れるまでにどのくらいの時間がかかるかを話し合って、期限を設定します。
3)計画
目標が決まったら、達成するための具体的な戦術について話し合いましょう。
目標の例
- 新規訪問者を毎月○○人獲得する
- 訪問者からリードへのコンバージョン率を○○%引き上げる
- ○○人の訪問者をリードに転換させる
- リードから顧客へのコンバージョン率を○○%引き上げる
- インバウンドマーケティングを通じて○○人の顧客を獲得する
目標を達成するための計画
- ブログの更新頻度を上げる
- Top of the Funnel(ファネルの最上層)向けのeBookやホワイトペーパーを作成する
- eBookに誘導するためのCTAについてA/Bテストを実施する
- Eメールを利用してリードを効果的に育成する
- 有望なリードを特定するためのリード スコアリング システムを開発する
初回のミーティングでいきなり具体的かつ網羅的な計画を立てようとするのは望ましくありませんが、クライアントが最も重視している目標をなるべく早く達成できるように、いくつかの戦術について大まかに検討しておくとよいでしょう。
4)クライアントが抱える課題
この段階では、タスクリストの作成に着手します。オーガニックトラフィックの拡大を目標に掲げるなら、キーワード戦略を立てる必要があります。クライアントの既存の資産やオファーを利用してリードの獲得を目指す場合は、新しいランディングページとサンキューページが必要です。そして、ミーティング後のレポートを作成する際に、このリストをもう一度吟味します。リストの情報を基に、クライアントとのやり取りから分かったことや読み取れることを表にまとめましょう。この表は、代理店が自社のインバウンド戦略を構築するうえでも参考になります。
5)タイムライン
課題と目標が明らかになったら、それを基にチームがすぐに取りかかれる優先事項を判断します。たとえば、クライアントが膨大なリードを抱えながらも、それぞれの確度を評価する方法がわからず困っているというケースでは、リードナーチャリングのEメールキャンペーンを準備することが最初の一歩になるでしょう。
また、考慮しなければならないクライアントの全社的な目標がないかどうかについても話し合う必要があります。もしクライアントが四半期ごとに決算報告を行っているなら、それに合わせてプロジェクトのスケジュールを調整します。クライアントがどのような成果をどのようなタイミングで期待しているのかを明確に把握することが大切です。
6)マーケティングの概要
ここからは、クライアントの過去のマーケティング活動について把握することに集中しましょう。
過去にどのようなマーケティング活動に取り組んできたのか、どの活動が功を奏し、どの活動に効果が見られなかったかをクライアントにたずねます。これまでに実施したマーケティング戦術(従来型およびインバウンド型)、それに伴って発生した課題、ROI(投資収益率)を確認する必要があります。
また、クライアントがターゲットとする顧客についても簡単に聞いておきましょう。バイヤーペルソナについては少し時間をかけて話し合い、具体的な人物像を練り上げます。その主な目的は、クライアントが想定している顧客像が1つのグループに収まるのか、2つのグループに分かれるのか、それぞれ関連性のない多数のグループに分かれるのかを把握することにあります。複数のグループに分かれる場合は、クライアントのオーディエンスをセグメント化して購入者の人物像をさらに詳しく把握できるよう、既存のフォームまたは新しいフォームにプロファイリングのための質問を追加することをお勧めします。
7)役割と責任
クライアントとの関係は、対等なパートナーシップです。代理店には目標を達成することが求められますが、それと同時にクライアントも、作業を承認する担当者や請求処理に問題が起きた場合の窓口担当者を決めるなど、一定の責任を果たす必要があります。
また、コンテンツ作成はだれがどれくらいの頻度で行う予定ですか? クライアント社内の体制とプロセスを理解したうえで、代理店の担当業務をその中にどのように組み入れるのかを検討しましょう。クライアントにご協力いただくことをためらう必要はありません。クライアントからの情報提供やサポート、承認がなければ、代理店が十分な成果を上げることはできないのですから。