コミュニティー運営基本ガイド

コミュニティー運営の概要や、人間味あふれるコミュニティーをつくる方法について解説します。

執筆者 Kristen Baker
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コミュニティー運営完全ガイド

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人間とは不思議なもので、デジタル化が進み、インターネットが発達した今もなお、他者と分断されているように感じることがあります。大勢の人々はオンラインで交流しながらも、画面の向こう側ではむしろ孤独感を強めているようです。

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これはプライベートの人間関係だけでなく、企業と顧客、企業と従業員といったビジネスの関係にも当てはまります。

人が他者や企業との隔たりを感じる要因は何でしょうか。

それはコミュニティーの欠如です。

「コミュニティー」とは、共通の興味や特性をもって集まった人々の共同体のことです。帰属意識の醸成を促す効果があるため、今では多くの企業やブランドが顧客、従業員、ファンのコミュニティーを構築しようと励んでいます。この取り組みにまつわるプロセス全体をコミュニティー運営と呼びます。

企業がコミュニティーを構築する、つまりコミュニティー運営を実践することで、外部オーディエンス(顧客、ファン、フォロワー)と内部オーディエンス(従業員、ベンダー、パートナー、担当チームメンバー)との間に信頼関係が育まれます。

ごく普通のブランドでも、コミュニティー運営に投資すれば、ブランドを支え、ブランドのために働き、ブランドに関わる人々を大切にする、血の通ったブランドへと変化を遂げることができるでしょう。

コミュニティー運営の目的

コミュニティー運営は、あらゆるタイプの企業に認知され、普及しつつあります。しかし、その大部分がまだ明確には定義されていません。

では、コミュニティー運営にはどのような価値があり、なぜ導入すべきなのでしょうか。現代のブランドが成功するためにコミュニティー運営が欠かせない理由を解説します。

HubSpotで以前にソーシャル メディア コミュニティー マネージャーを務めていたKrystal Wuは次のように述べています。「ブランドはコミュニティーマネージャーを採用する必要があります。コミュニティーマネージャーは、ブランドボイス(そのブランドらしいスタイルやトーン)に沿ってメッセージを発信する、ブランドの顔となるからです」

コミュニティー運営により、以下のことが可能になります。

  • 実際の会話を通じて、顧客やオーディエンスからフィードバックやアイデアを集める。
  • オーディエンス、ファン、顧客に対し、必要なときにサポートを提供する。
  • ターゲットオーディエンスにおける、ブランドおよび製品の認知度を向上させる。
  • 顧客についての理解と、コンテンツ、製品、サービス、サポートに対する顧客の欲求、期待、需要についての理解を深める。
  • オーディエンスとブランドの間に、1対1および1対多の関係を築く。
  • お客さまとのコミュニケーション、会話、売上を増やす。
  • 製品やサービス自体にとどまらない価値をお客さまに提供する。

コミュニティー運営は幅広い分野に影響をもたらします。ここで紹介したのは、コミュニティー運営によって実現できることの一部に過ぎません。

また、「コミュニティー運営」は広義な言葉であり、実際には多様な方法が採用されています。ここでは、コミュニティー運営のタイプをいくつか紹介します。皆さんの会社がどのようなコミュニティー運営に注力したらよいか考える上で、参考になれれば幸いです。

コミュニティー運営キット

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    コミュニティー運営の種類

    コミュニティー運営は、大きく6種類に分類されます。オンラインで完結する非対面のタイプもあれば、担当者や担当チームとコミュニティーメンバーの対面コミュニケーションを伴うタイプもあります。コミュニティー運営の分類に役立つのがSPACEモデル(英語)です。
     

    コミュニティー運営のSPACEモデル

    SPACEモデルとは、コミュニティー運営の種類を表したものです。このモデルによって自社のニーズに合ったタイプを見極めやすくなります。詳しく見ていきましょう。

    重要:ここでは、数あるコミュニティー運営の種類の中から、6タイプに絞って取り上げます。また、それぞれの例も紹介します。
     

    S:カスタマーサポート/サクセス

    最初の「S」は「カスタマーサポート/サクセス(Customer Support/ Success)」です。一般的な例としては、フォーラム、FAQ資料、コミュニティーウェブサイトが挙げられます。

    フォーラムとは、顧客へのサービスとサポートを目的としたコミュニティーの掲示板であり、質問と回答を投稿できます。フォーラムはコミュニティーのつながりを生み出すのに効果的です。フォーラムは、顧客同士の会話や質問の場として使われるほか、顧客から企業側にフィードバックが提供されたり、新商品や新サービスについての意見が交わされたりすることもあります。

    フォーラムでコミュニティーメンバーにFAQ資料へのアクセスを提供すれば、よくある質問に対するスピード回答や顧客による自己解決が可能になります。

    また、投稿元のユーザーを確認できるので、必要なときには企業側から連絡してサポートを提供することもできます。その結果、コミュニティーメンバーの利便性を確保できるだけでなく、担当チームが同じ質問に何度も答える手間を省き、時間を節約することができます。

    カスタマーサクセス向けのプラットフォームやソフトウェアを利用すれば、顧客サポートに特化したブランドサイトやコミュニティーメンバー専用のランディングページを作成できます。

    そうしたウェブサイトやページでは、顧客自身が(または顧客同士で)解決策にたどり着き、企業側の担当者とやり取りし、必要な資料(ナレッジベース(英語)など)を見つけ、FAQ資料を参照することができます。

    企業のコミュニティーフォーラム、FAQ資料、ウェブサイト、ページの作成や運営には、Vanilla Forms(英語)などのソフトウェアを利用するのがおすすめです。ブランディングに合わせてウェブサイト全体をカスタマイズしたり、フォーラムやFAQの資料を作成・管理したり、さらには、顧客のニーズに合わせて製品やサービスを改良するためのアイデアを募集したりできます。

    このタイプのコミュニティー運営は、ソフトウェア会社のように多様な製品ラインを持つ企業に最適です。製品の使用中に見つけたヒントやコツ、問題点について、ユーザーが共有し合える場として活用されます。

    HubSpotではカスタマー サポート コミュニティーの1つとして、HubSpotソフトウェアをベースとした開発に携わる方向けの開発者フォーラムを運営しています。このフォーラムによって開発者の皆さんは、HubSpotとつながれるだけでなく、同じ立場にいる他の開発者とのつながりを強化(英語)し、HubSpotのプラットフォームを利用する際に役立つ資料を入手しやすくなります。
     

    P:製品に関するアイデア、イノベーション、フィードバック

    「P」は「製品(Product)」を指します。顧客やターゲットオーディエンスから意見や要望を募り、取り入れることで、製品やサービスをさらに向上していくためのコミュニティー運営です。そのためには、安心してフィードバックを送ってもらえる場所を提供する必要があります。

    コミュニティーメンバーに、アンケートへの回答や、自社が主宰する個別のフィードバックディスカッションへの参加を呼びかけるとよいでしょう。また、必要に応じて、オーディエンスや顧客が参加できるさまざまなユーザーテスト(英語)を実施するのも効果的です。

    例えば、フォーカス グループ インタビューとして、10名ほどの顧客をオフィスに招いて製品やサービスを利用してもらった後で、改良のアイデアをたずねる方法もあります。

    このタイプのコミュニティー運営は、ほとんどの企業に適しています。製品改良に関する実際の顧客やターゲットオーディエンスからのフィードバックは、全ての企業にとって非常に重要です。
     

    A:顧客獲得とアドボカシー

    「A」は「顧客獲得とアドボカシー(Acquisition and Advocacy)」です。リード(見込み客)、顧客、ブランドと提携して宣伝活動を助ける「ブランドアンバサダー」、ブランドを自発的に広めてくれる「ブランドアドボケイト」など、自社に強い関心を寄せる人々と直接関わるアプローチを指します。

    こうしたコミュニティーメンバーは、口コミ、アフィリエイトプログラム、ソーシャルメディアなどのさまざまな方法で、ブランド認知度の向上や、ビジネス、製品、サービスの販売促進に貢献してくれます。

    このような、ブランドにとって特に重要な人々のコミュニティーは、一般的にアクイジション(顧客獲得)の施策やブランドアンバサダーを募るプログラムなどを通じて構築されます。具体例を紹介しましょう。

    メディア企業theSkimm(英語)はブランド アンバサダー プログラムを実施しています。同社のコンテンツ利用登録を呼びかけ、10名の登録者を集めるとSkimm'bassador(英語)というブランドアンバサダーになれる仕組みです。

    同社の新規顧客や新規読者の獲得には、こうしたブランドアンバサダーやアドボケイトが貢献しています。Skimm'bassadorだけのコミュニティーも用意されており、プレゼントや限定イベント、本社訪問、パーティーへの参加といった特典を得られます。

    このコミュニティーでは、同社の社員や他のSkimm'bassadorと交流したり、同社の今後の成長や改善に向けてフィードバックを提供したりすることもできます。

    このタイプのコミュニティー運営は、優良顧客をフライホイールの中心に据えて満足度を向上させたい場合や、ブランドロイヤルティーやブランド認知度を高めたい場合、ブランドの支えとなってくれる人々と長期的な関係を築きたい場合に最適です。
     

    C:コンテンツとプログラミング

    「C」は「コンテンツとプログラミング(Content and Programming)」に焦点を当てます。このタイプでは、顧客、ファン、フォロワー、従業員などのためのコンテンツ作成やプログラミングが行われます。マーケットプレース、クラウドファンディング、ユーザーグループ、ユーザー作成コンテンツなどが、ここで言う「コンテンツとプログラミング」に含まれます。

    外部から寄せられるコンテンツを中心に、製品、ビジネスモデル、その他のアセットを展開する企業に最適なタイプです。例えば、クラウンドファンディングサービスのGoFundMe(英語)やバケーション レンタル サービスのAirbnbの場合、そのサービスの価値は、プラットフォームを利用して資金を集めたり、物件のレンタル情報をシェアしたりしているユーザーによって生み出されています。

    こうした企業は一般的に、コミュニティーによって作られる全てのコンテンツの適切性を確保し、企業ガイドラインやウェブサイト要件の順守を徹底するために、コミュニティー担当チームを設けています。
     

    E:外部エンゲージメント

    「E」の「外部エンゲージメント(External Engagement)」とは、社外の空間を利用して顧客やサポーターの帰属意識を醸成し、ブランドとの関係強化を図るタイプのコミュニティー運営です。代表的な施策としては、ソーシャルメディアでのアカウント運用が挙げられます。

    例えばHubSpotのInstagramページは、HubSpotという同じ関心事を持つフォロワーのコミュニティーを形成しながら、ブランドの認知度を高める、活発で魅力的なスペースになっています。

    HubSpotのソーシャル メディア コミュニティー マネージャーは、投稿へのエンゲージメントを単なる数値として捉えるのではなく、画面の向こう側に1人ひとりの人間がいることを意識し、大切な存在として接するよう心掛けています。フォロワーは、HubSpotと関わりを持ち、ページ上でシェアされるHubSpotのコンテンツに反応できるとともに、フォロワー同士で交流することも可能です。

    このタイプは、ブランド認知度を高めるだけでなく、ファンやお客さまなど、あらゆるタイプのフォロワーと1対1および1対多の関係を構築しようとしている企業に最適です。

    外部エンゲージメント型のコミュニティー運営は、ソーシャルメディアを利用することで、ほぼ全ての企業が取り入れられます。
     

    (I):内部エンゲージメント

    最後にもう1つ、「I:内部エンゲージメント(Internal Engagement)」のコミュニティー運営を紹介しましょう。現代の企業は、従業員、パートナー、ベンダー、サプライヤーなどから成る強力な内部コミュニティーづくりに価値を見いだしています。

    こうした内部の関係を強化することで帰属意識が高まり、互いに一体感を持てるようになるため、会社としての士気と全員の幸福感が向上(英語)します。

    例えば、HubSpotをはじめとする多くの企業がSlackなどのプラットフォームを利用していますが、こうしたプラットフォームには、内部のエンゲージメントやコミュニケーションを向上させるためにチャンネルなどの機能が備わっています。

    この機能は、関心事や役職を同じくする従業員同士で(リモートか社内かを問わず)グループを形成して、共同体意識を築くためにも役立ちます。

    このタイプのコミュニティー運営では、社内のメンバーが交流できる場を用意して、共通点のある者同士をつなぎます。そうすることで、支え合う仲間がいて、自分もその一員として受け入れられているという意識が強まり、職場への帰属感が醸成されます。

    さらに、製品やサービスに関する知識の強化にもつながるため、会社への貢献度が増し、幸福度と定着率も向上します。

    このタイプのコミュニティー運営は、コミュニティー構築が職場内で完結し、導入済みのソフトウェア(Slackなど)や、同じ関心を持つ従業員で構成された既存のグループを利用できることもあるため、ほぼ全ての企業で実現可能です。

    ここまで、コミュニティー運営の主なタイプと、それぞれがどのようにビジネスに価値をもたらすかを見てきました。次は、コミュニティー運営のメリットをいち早く享受できるよう、コミュニティー運営戦略の策定を始めるための具体的な手順を紹介します。
     

    コミュニティーの運営戦略はどう立てる?

    ここまで見てきたとおり、コミュニティー運営にはさまざまなタイプがあり、いくつもの導入方法があります。

    今回の記事では、前述の外部エンゲージメント型でソーシャルメディアを利用する戦略に焦点を当て、コミュニティー運営戦略の策定手順の一例を紹介します。
     

    1. 利用するソーシャルメディアを選ぶ。

    最初に、コミュニティー運営に利用するソーシャルメディアのチャネルを選びます。

    ターゲットオーディエンスのデモグラフィック(人口統計学的)属性を考慮して、最適なチャネルを選択します。例えば、ターゲットが若年層ならSnapchat(英語)、幅広い層ならInstagram(英語)、ビジネスパーソンならLinkedIn(英語)を中心に展開するとよいでしょう。

    コミュニティーの構築と運営に使えるプラットフォームとしては、この他にFacebook、YouTube、Pinterestなどが考えられます。

    エンゲージメントを最大限に高めるためのヒントは、こちらのソーシャルメディア最新レポートでご覧になれます。
     

    2. オーディエンスを理解する。

    ソーシャルメディアのチャネルを選んだら、次はそのプラットフォームにおける自社のオーディエンスについて把握します。

    その目的は、ターゲットオーディエンスがプラットフォーム上でどのようなコンテンツに反応しているか、既にフォローしている類似ブランドのどこが気に入って何を期待しているのか、今はどのブランドに強い関心を寄せているのかを知ることです。

    そうした情報が得られれば、選択したプラットフォーム上のターゲットオーディエンスに対して、自社で作成したコンテンツをどのように展開していくべきか検討できるようになります。
     

    3. どんなコンテンツを求めているのかオーディエンスに尋ねる。

    オーディエンスにとって意味のあるコンテンツを作成して提供するためには、オーディエンスを理解するだけでなく、どのようなコンテンツを期待しているのか実際に尋ねることも必要です。

    需要や関心に応えるコンテンツをソーシャルメディアに展開すれば、オーディエンスにリーチできるようになります。

    フィードバックや改善案を募ることで、オーディエンスの意見や主張に対する真摯な配慮を示すことができます。その結果、ブランドへのロイヤルティーと支持も高まり、一方通行のプラットフォームでは難しい有意義なコミュニケーションが可能になります。
     

    4. 成功の判断基準を決める。

    次に、何をもって成功と判断するかを決めましょう。これに関して正解や不正解はありません。自社にとって何が必要かによって成果指標となるものは全く異なります。自社ブランドが目指す理想について改めて考えてみましょう。

    例えば、以下のような成果指標が候補として考えられます。

    • オーディエンス規模の拡大やフォロワー数の増加
    • ウェブチャットやディスカッションで会話に参加する人数の増加
    • フォロワーによるコンテンツのシェア数または「いいね」数の増加
    • エンゲージメント全般(「いいね」、シェア、メンション、ハッシュタグ、メッセージ、コメント)
    • ブランド認知度の向上
    • 顧客満足度と顧客維持率の向上
    • 自社ウェブサイトに流入するトラフィックの増加
    • 売上とコンバージョンの増加

    コミュニティー運営の成果指標と測定指標については、後ほど紹介します。)
     

    5. 目標を設定する。

    ビジネスでは何についても言えることですが、さまざまなことに取り組み、その成果を測定する上では、チャレンジ目標だけでなく達成可能な目標を設定することが重要です。

    とはいえ、全く新しい戦略を策定しようとしている場合や、ソーシャルメディアのコミュニティー運営戦略に必要とされるような目標を設定したことがない場合、難しいことに感じられるかもしれません。

    まずは、成果測定をどのように行うか決めて、その方法を1~2回試してみましょう。

    例えば、特定のソーシャル メディア プラットフォームにおけるエンゲージメント全般を基に成果を測定することに決めたとします。その場合、同プラットフォーム上でシェアしたコンテンツに対する全てのエンゲージメントを任意の期間(最初は4~8週間くらい)にわたって試験的に追跡してみます。

    所定の期間が過ぎたら、全てのエンゲージメント(「いいね」、シェア、コメント、メンション、ハッシュタグ、メッセージなど)の平均を算出し、その数値を基に次の4~8週間の達成可能な目標を立てます(必要に応じて挑戦目標も)。

    こうした目標値は、年月を経て収集対象データを増やした場合など、いつでも更新してかまいません。

    試験段階では、異なるコンテンツを使ってA/Bテストを行い、フォロワーが特に好むコンテンツや反応の多いコンテンツを調べることもできます。
     

    6. 定期的に投稿し、オーディエンスに働きかける。

    ソーシャルメディアで成功を収めるには、一定頻度の投稿とエンゲージメントが必要です。ソーシャルメディアに投稿する頻度を決め、その計画を厳守することで、オーディエンスはブランドに信頼感を覚え、コンテンツを待ち望むようになります。つまり、自社ブランドの最新投稿を見るようにオーディエンスを習慣づけるのです。

    ブランドとオーディエンスの間に思い入れや絆を築くには、ソーシャルメディアの活用が効果的です。顧客やフォロワーを数字と見なすのではなく、従業員や会社全体にとって尊重すべき存在と考えていることを示しましょう。

    コメントには「いいね」を付け、質問、意見、懸念に必ず回答します(好意的なコメントにも「ありがとうございます!」や「弊社の無料CRMにご満足いただき光栄です」と反応するのがおすすめです)。

    また、適切と判断される場合には主要なブランドアドボケイトをフォローバックしたり、フォロワーがシェアしたコンテンツに(自社に直接関係なくても)反応したりすると、オーディエンスの味方であろうとする姿勢が伝わります。

    どのような方法でフォロワーに対するコミュニケーションやエンゲージメント獲得を図る場合でも、信頼の置けるブランドとして、1人ひとりに真摯に向き合うことが重要です。ソーシャルメディアではフォーラムと違い、フォロワーに定型文で回答するのは好ましくありません。

    信頼性の高いブランドボイスとソーシャルメディアでの存在感を確立することで、ブランド独自の持ち味が発揮されるようになり、顧客やコミュニティーメンバーに信頼と親しみを感じてもらうことができます。
     

    7. 結果を測定する。

    次は、結果を測定します。ソーシャルメディアでの成果測定は、定量データだけで終わらせないことが重要です。施策の効果が必ずしも正確に数値に反映されるとは限りませんし、コミュニティーメンバーの帰属意識をどれほど醸成できたかも数値では完全に分かりません。

    また、ソーシャルメディア施策の成果がすぐに出ることはほとんどありません。プラットフォームごとにターゲットオーディエンスを把握し、フォロワーを増やし、顧客にどのようにリーチすべきかを見極めるには時間がかかります。

    成果の測定には、自社のニーズや目標に合った方法を選びましょう。例えば、以下の方法があります。

    • ソーシャルリスニング:ソーシャルリスニング(英語)とは、ソーシャルメディア上で自社のブランド、製品、サービス、顧客(また、場合によっては競合他社)などに関するメンション、フィードバック、キーワード、ディスカッションを全て見つけ、モニタリングする手法です。これらの情報を詳しく分析することで、顧客やフォロワーに対して効果のあった施策や、改善の必要な施策が突き止められます。
    • プラットフォームアナリティクス:コミュニティー運営戦略で選択したプラットフォームによっては、アナリティクス(分析)ツールが組み込まれていることがあります。そのプラットフォームに特化した変数で成果を測定できます。例として、TwitterアナリティクスInstagramインサイトFacebook Analyticsが挙げられます。
    • アナリティクスツール:選択したプラットフォームにアナリティクスツールが組み込まれていない場合や、詳細な分析を行いたい場合、成果測定に別のツールを取り入れてもよいでしょう。例えば、Google アナリティクスSprout SocialHubSpotなどが考えられます。

     

    コミュニティーマネージャーがビジネスの成長に果たす役割

    可能であれば、コミュニティーマネージャー(さらに言えばコミュニティーマネージャーのチーム)の採用を検討しましょう。コミュニティー運営の施策を速やかに始動させ、コミュニティー形成を促進できます。
     

    コミュニティーマネージャーとは?

    コミュニティー運営の施策を実行するのが、コミュニティーマネージャーの役割です。コミュニティー運営のタイプによっては、複数のコミュニティーマネージャーにそれぞれ異なる分野を担当してもらう必要があるかもしれません。

    とはいえ、担当業務にかかわらず、コミュニティーマネージャーに共通して求められる特性がいくつかあります。一般的には以下のような特性が挙げられます。

    • コミュニティーを発展させるための施策を主導する能力がある。
    • 顧客志向を徹底している。
    • フォーラム、対面ミーティング、ソーシャルチャネル、コミュニティープラットフォームなどにおいて、コミュニティーメンバーに共感を示すことができる。
    • 共感を示すべき場面とその方法を知っている。
    • 信頼性が高く、細部まで配慮が行き届いている。
    • コミュニティー運営の施策とその成果を分析、測定できる。
    • ブランドの特性を理解し、マーケティング施策を踏まえながらブランドイメージとブランドボイスをコミュニティー運営戦略に落とし込める。

    それでは、前述の外部エンゲージメント型コミュニティー戦略の例に戻り、ソーシャル メディア マネージャーの具体的な業務を詳しく見てみましょう。
     

    コミュニティーマネージャーの役割

    ソーシャルメディアのコミュニティーマネージャーは、以下のことを行います。

    • 全ての投稿やコミュニケーションにおいて、ブランドボイスを守る。
    • 全てのコンテンツが目的を持ってシェアされ、フォロワーやターゲットオーディエンスの期待やニーズを満たすように徹底する。
    • 全コンテンツの投稿スケジュールの設定、投稿、エンゲージメントを担う。
    • ソーシャルメディア上でコンテスト、プレゼントキャンペーン、プロモーションを企画し、その全てを管理してフォローアップを行う。
    • コミュニティーメンバー全員にコミュニティーのルールとガイドラインの順守を徹底する。
    • ソーシャルメディア上の全てのコンテンツと取り組みの成果を測定する(さらに、必要に応じて調整を加える)。
    • 業界の動向や、利用しているプラットフォームの更新に対応する。
    • シェアされたソーシャル メディア コンテンツから、オーディエンスの要望やニーズを見いだす。
    • 適切な対応を行い、「ありがとうございます」、「申し訳ありません」、「お力になります」など場面に応じてコメントする。
    • フォロワーやコミュニティーメンバーが質問したり、助けを求めたり、アイデアやフィードバックを共有したり、問題を解決したり、味方がいると安心できるような場所をつくる。

     

    コミュニティーマネージャーが見つかる場所

    1. Community Club(英語)

    コミュニティー運営にまつわる全てを求めているなら、Community Clubにアクセスしてみてください。

    1,000人を超えるメンバーが在籍し、人脈づくりを目指すコミュニティーマネージャーから、コミュニティー運営のエキスパートを探しているブランドまで、コミュニティー運営に関心を持つあらゆる方々のニーズに応えます。
     

    2. CMX Hub(英語)

    CMX Hubは、コミュニティー構築に携わる人々のキャリア形成を支援するためのオンラインプラットフォームです。

    人脈づくりの面では、意欲的で向上心のあるコミュニティーマネージャーのために、交流、学習、メンターシップの機会を提供しています。

    求人に関しては、ブランドが募集情報を投稿できる求人掲示板が設置されています。コミュニティー運営の求人全般を取り扱う専門掲示板なので、企業は役割に合った条件の人材を簡単に探せます。
     

    3. LinkedIn

    コミュニティーマネージャーを採用したい、またはコミュニティー運営のグループに参加したいなら、まずはLinkedInにアクセスすることをおすすめします。

    LinkedInでは、地域内または世界中から、求職中のコミュニティーマネージャーを簡単に見つけられます。また、コミュニティーマネージャーになりたい方は、現在コミュニティーマネージャーとして活躍しているLinkedInユーザーのプロフィールにアクセスすれば、どのような経歴をたどって現在のポジションに就いたのかが分かります。

    コミュニティー運営のコミュニティーに興味があるなら、まさにそのためのLinkedInグループが多数存在しています。コミュニティーマネージャーたちが業界の最新情報について意見を交わし、アドバイスや求人情報もシェアしています
     。

    4. Facebookグループ

    Facebookには多数のコミュニティー運営に関するグループが存在し、それぞれに特色を持っています。

    同じ地域のコミュニティーマネージャーが交流しているグループもあれば、ある業界に特化したグループもあります。

    そうしたグループに参加することで、コミュニティーマネージャーは人脈を広げ、新しい転職先に出会うことができるでしょう。
     

    5. Upwork(英語)

    業務委託やフリーランスのコミュニティーマネージャーを探している場合は、Upworkがおすすめです。

    Upworkはクラウドソーシングのプラットフォームであり、依頼したいプロジェクトや必要な条件について記載した求人情報を投稿できます。

    依頼主1,538件を対象にした調査によると、Upworkのオンライン コミュニティー マネージャーは5点中平均4.7点の評価を獲得しており、Upworkプラットフォームに在籍しているプロフェッショナルたちにほとんどの依頼主が満足していることが分かります。
     

    ソーシャルメディアのコミュニティー運営

    1. オーディエンスが使っているチャネルを見極める。

    Instagram、TikTok、Facebook、LinkedIn、Trillerは、ほんの一部に過ぎません。

    消費者が利用できるソーシャル メディア プラットフォームは多数あるので、コミュニティーマネージャーはターゲットオーディエンスがどのプラットフォームを積極的に使っているのかを見極めることが重要です。

    例えば、若者がターゲットなら、若い層に比較的強いTikTokやInstagramに注力するとよいでしょう。

    つまり、最も多くのユーザーにリーチでき、最もエンゲージメントを獲得できるソーシャルプラットフォームを優先する必要があります。そうしなければ、まるで誰もいない部屋でしゃべり続けるように、時間と労力を浪費することになりかねません。
     

    2. 進捗を確認するための測定指標を決める。

    比較的新しい分野であるため、コミュニティーマネージャーの成果を測定する方法が判然としないこともあるでしょう。

    しかし、目標の達成状況はさまざまな方法で測ることができます。指標となるのは、エンゲージメントや、ソーシャルメディアでのメンション、ブランドに対するセンチメントです。

    エンゲージメントの形式はプラットフォームによって異なりますが、「いいね」、コメント、シェア、返信などは標準的な測定指標として扱えます。

    ブランドがメンションされる頻度とその推移を追跡するのもよいでしょう。ブランドがどこまでリーチできているかを推測できます。また、ユーザーがブランドをメンションするときに何と言っているかなど、一部の定性データも測定可能です。

    これは次のポイントにもつながっています。
     

    3. 自社に関する会話をモニタリングする。

    コミュニティー運営において、ソーシャルモニタリングとソーシャルリスニングは非常に重要です。

    これらは、オーディエンスとのつながりを維持し、オーディエンスの心に響く要素を理解し、コンテンツのアイデアを引き出すために役立ちます。

    例えば、衣料品会社がコミュニティーマネージャーを採用したとします。自社のブランドに関する会話をモニタリングしていると、サステナビリティーの取り組みに関するメンションが多いことが分かりました。ブランドのメッセージングでは主眼にしていなかった部分です。

    このような発見は今後のマーケティング施策のヒントとなり、ブランドへの関心を高めるために活用できます。
     

    4. 常にオーディエンスに働きかける。

    コミュニティーづくりには、双方向のエンゲージメントが欠かせません。

    単にコンテンツを公開するだけでなく、以下のようにオーディエンスに反応する必要もあります。

    • ユーザーが作成したコンテンツを活用する。
    • 質問、懸念、称賛など、どんな内容のコメントにも返信する。
    • 投票形式や自由回答のアンケートを実施する。

    オーディエンスの元にブランドのメッセージが届き、ブランドがオーディエンスに働きかければ、それだけ信頼も強化され、コミュニティーの発展につながります。

     

    1. コミュニティーのルールとガイドラインを定める。

    自社のビジネスに関するものは全て、会社を適切に象徴し、ブランドを正確に表現したものであってほしいと考えるでしょう。コミュニティーも例外ではありません。そのため、コミュニティーのルールとガイドラインを定めて、全てのメンバーとコントリビューター(コミュニティーを管理している担当者を含む)に徹底する必要があります。

    コミュニティーのタイプにより、ルールとガイドラインを策定する方法は異なります。ここでは手始めに、ガイドライン策定に関する例をいくつか紹介します。

    • 全てのメンバーに期待するコミュニケーション、行動、貢献について記載した文書を作成します。そして、社内の担当チームやコミュニティーに参加するメンバーにその文書を共有します。
      • フォーラム、FAQ資料、コミュニティーウェブサイトがある場合は、この文書を常に参照できるようにそうした場所に掲載するのも有効です。対面で会う機会があるコミュニティーなら、期待事項を明確に伝えるために、この文書を印刷して配布し、対面で確認しましょう。
    • コミュニティー内で大きな問題が起きた際に適切に対処できるよう、担当者が社内の上位管理者に問題を報告するエスカレーションのプロセスを整えておきます。
    • ルールやガイドラインは、コミュニティーの規模が拡大したり変化したりするにつれ、必要に応じて更新しましょう。

     

    2. コミュニティーを定期的にチェックする。

    どのようなタイプのコミュニティーを運営する場合でも、どのようなメンバーが参加しているのかを把握し、社内担当者だけでなく顧客がシェアするコンテンツもチェックしてください。ブランド アンバサダー プログラム、フォーラム、Facebookアカウント、コミュニティーのウェブサイトなど、何を実行に移すにしても全てを円滑に運営するのがコミュニティーマネージャーの仕事です。メンバーが必要なサポートを得られ、疑問が解消され、共同体意識を感じてもらえるように努めましょう。
     

    3. ブランドらしさを打ち出す。

    どのようなタイプのコミュニティーを運営する場合でも、ブランドのアイデンティティーを貫くことが重要です。顧客、ファン、フォロワー、リードがコミュニティーを訪れたときに、ブランディングやブランドボイスなどさまざまな要素によって、それが自社コミュニティーであることがすぐに伝わるようにしておく必要があります。

    また、オンラインまたは対面など、コミュニケーションの形式にかかわらず、誠実に思いやりを持って接することも忘れてはいけません。コミュニティーを構築する最大の目的は、1人ひとりが大切な存在であるとメンバーに感じてもらうことだからです。
     

    4. コミュニティーの意見を尊重する。

    コミュニティー運営においては、心のこもったコミュニケーションが求められるため、メンバーの話をよく聞くことが重要になります。ソーシャルリスニング、フォーラムやFAQページの定期チェック、対面またはオンラインでのフィードバックへの返信など、あらゆるコメントやメッセージを大切に扱うことが、コミュニティーを最大限に発展させるためには欠かせません。

    そうすれば、ブランドがオーディエンスやメンバーの意見を尊重し、聞き入れていること、コミュニティー内でのエクスペリエンスに配慮していることが伝わります。
     

    5. フォロワーに感謝を伝える。

    コミュニティー運営を成功させるために重要なのは、メンバーに感謝を伝えることです。ブランドへのロイヤルティーを高め、メンバーとの信頼関係を築く効果があります。

    また、メンバーが費やす時間とブランドへの貢献に大きな価値を認めていることも伝わります。コミュニティーには、ブランドに資金を投じていたり、力を貸していたりするロイヤルティーの高いファンやフォロワー、顧客などが多く参加していることを常に意識しておきましょう。

    必要なときに確実に感謝を伝えられるようにするには、コミュニティーのタイプに応じて、以下のテクニックをお試しください。

    • コミュニティーに新しいメンバーが増えたら、すぐに「ご参加ありがとうございます!」とあいさつし、有意義な体験をしてもらうために貴社にできることがないか尋ねましょう。
    • コミュニティーへの貢献度の高い人たちに注目しましょう(氏名やEメールアドレスなどを一覧にまとめておくことをおすすめします)。そうすれば、プレゼントを贈ることや、公の場で謝辞を示すことができます。
    • ブランドアンバサダーやブランドアドボケイトをオフィスに招いて担当者と会う機会を設け、コミュニティー運営の現場を紹介しましょう。
    • フォーラム、ソーシャル メディア プラットフォーム、コミュニティーウェブサイトなどで、メンション、キーワード、ハッシュタグを常にモニタリングしましょう。コンテンツに反応してくれた相手に感謝を示したり、人間味あふれるメッセージを送ったりして、信頼関係を築くことができます。

     

    6. 常にブランドボイスを崩さない。

    前述したブランドらしさと似ていますが、コミュニティー運営においては常にブランドボイスを順守する必要があります。コミュニティーの独自性を確立する大きな要素であり、自社コミュニティーであることをメンバーやオーディエンスに確実に伝えるためにも重要です。

    コミュニティーを何人で担当しているとしても、全員がブランドボイスを理解しましょう。全てのコミュニケーション、エンゲージメント、コンテンツにおいてブランドボイスを維持するためには必要なことです。

    そのためには、自社のマーケティング目標と結び付ける、またはマーケティング部門と連携するとよいでしょう。メッセージングとコミュニケーションの方針が明確になり、ブランドボイスを守りやすくなります。
     

    7. コミュニティーとの新たな関わり方を模索する。

    コミュニティーとの関わりは常に持ち続けたいものですが、もし業界に変化が起きた場合や、自社の製品やサービスに大幅な変更が入った場合、メンバーが新しいタイプのコンテンツを求め始めた場合は、どうすればよいでしょうか。

    時流に合わせてコミュニティーを常に更新していくには、オンラインか対面かを問わず(コミュニティーのタイプに応じて)、メンバーとの新たな関わり方(英語)を模索し続ける必要があります。また、メンバーの参加直後に働きかけるようにすれば、オーディエンスが何を求め、どのような理由でコミュニティーに参加したのかを継続的に確認できます。オーディエンスとの新たなコミュニケーション方法を見つけるためにも役立ちます。

    コミュニティー運営が全く初めてという場合には、どこからどのように始めたらよいか迷ってしまうかもしれません。

    コミュニティー運営の計画を立てるときには、まずコミュニティーマネージャーを採用するかどうかを検討するのが一般的です。

    ここまでコミュニティー運営の重要性、コミュニティー運営がビジネス成長につながる背景、コミュニティー運営戦略の立て方について、情報満載でお届けしましたが、いかがでしたでしょうか。皆さまの参考になりましたら幸いです。
     

    コミュニティーの構築を始めましょう

    コミュニティー運営は新しいながらも影響力の大きな分野です。顧客、ファン、従業員、フォロワーが協力し合い、フィードバックを提供し、絆を深め、学びを得るための安全な場所を作ることができます。

    ひいては、ブランドロイヤルティー、コンバージョン、売上の向上につながることに加え、自社が成功を収める上で特に重要な人々にブランドの人間味のある側面を見せて、親しみを感じてもらうこともできます。

    まずは、自社に適したコミュニティー運営タイプはどれか、選択肢を確認するところから始めます。そして戦略を立て、コミュニティーマネージャーの採用について検討しましょう。

    HubSpotではこの他にもマーケティングやセールスに役立つ資料を無料で公開していますので、ぜひこちらからご覧ください。

     

    コミュニティー運営キット

    編集メモ:この記事は、2019年5月に投稿した内容を包括性の観点から加筆・訂正したものです。

    コミュニティーを構築し、成長させ、関係を深めるために役立つ3種類のテンプレート