パソコンやスマホの画面表示を容易に保存できるスクリーンショット(以下スクショ)はとても便利です。ビジネスやプライベートで日常的に使っている方も多いのではないでしょうか。しかし、2020年の著作権法改正によって、違法アップロードや違法ダウンロードの取り締まりが強化され、スクショについても適法になるケース、違法になるケースが明文化されました。
違法にアップロードされたコンテンツを違法と知りながらスクショをして利用した場合、発信者だけでなく、スクショを掲載したWebサイトの管理者まで著作権侵害に該当する可能性があります。
本記事では、著作権法改正にともなうスクショ違法化の概要に加えて、違法にならないためのスクショの利用法と注意点を解説します。
スクショは違法になる?
スクショはいつから違法化されたのか、どこまでが適法でどこからが違法になるのか、判断に迷うかもしれません。スクショに関する規定は、2020年6月5日に成立した改正著作権法で明文化されました。ただし、すべてのスクショが違法になるわけではありません。
改正著作権法で押さえておきたいのは次の2点です。
- スクショ自体を違法とするものではない
- 違法にアップロードされたコンテンツと知りながらのスクショは私的使用が目的であっても認められない
インターネット上のコンテンツは、著作権者によって適法にアップロードされたものと、著作権者以外によって違法にアップロードされたものがあります。
違法アップロードとは、著作者の許諾を得ずに、多くの人が閲覧や視聴できる状態にすることを指します。代表的な例に、コミック作品を原作者や公式サイトの許諾なく別のサイトにアップロードし、誰でも読めるようにしたケースがあります。海賊版サイトのように大規模なものだけでなく、個人ブログやSNSに他人の著作物を無断でアップロードする行為も違法アップロードに該当します。
今回の著作権法改正によって、違法にアップロードされたコンテンツを違法と知りながらスクショをして保存する行為も違法となりました(著作権法第30条)。
違法ではないスクショの条件
ここでは、違法ではないスクショの条件について、3つのケースをご紹介します。
- 私的使用は適法
- 私的使用以外でもスクショが「引用」であれば適法
- 違法コンテンツであっても「例外」に相当する場合は適法
1. 私的使用は適法
違法アップロードではないコンテンツ、例えば公式サイトで公開されている画像のスクショを個人的に又は家庭などで使用すること(私的使用)は、原則的には可能です(著作権法第30条第1項)。
私的使用とは、自分自身や家族などごく限定された人々で使用することを指します。友人や会社内の少人数のグループにスクショを配布することは、私的使用の範囲を超えるため違法となります。
2. 私的使用以外でもスクショが「引用」であれば適法
著作権法では、一定の条件下で、公表された著作物の「引用」が認められています(著作権法第32条)。
「引用」とは、他人の著作物を自分のコンテンツに取り込み使用することです。スクショを引用として用いる場合は、次の点に留意してください。
- 他人の著作物を引用する必然性があること
- 自分の著作物と引用部分とが区別されていること
- 自分の著作物と引用する著作物との主従関係が明確であること(自分の著作物が主体)
- 出所の明示がなされていること(著作権法第48条)
出典:著作物が自由に使える場合 (注5)引用における注意事項|文化庁
3. 違法なスクショであっても「例外」に相当する場合は適法
著作権法第30条第1項第4号では、違法なスクショと判断される場合であっても、次の場合の私的使用は例外的に違法とならない旨が規定されています。
- 複製される部分の占める割合が軽微なものである場合
長文記事の数行や数十ページのコミックの数コマなど、全体から見て複製される部分の占める分量の割合がわずかであれば「軽微なもの」にあたります。
- 表示の精度その他の要素に照らし軽微なものである場合
画質が悪い場合など、それ自体では鑑賞の対象にならないような表示の精度が低い画像は「軽微なもの」にあたる可能性が高くなります。
- 著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合
「特別な事情」にあたるかどうかは、「著作物として保護をする必要性の程度」と、「ダウンロードの目的・必要性などの態様」の2つの要素によって判断されます(出典:文化庁|著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律案(説明資料)P.14)。
例えば、詐欺メールのスクショを注意喚起の目的で使う場合は、著作物としての保護の必要性に欠けるため、「特別な事情がある場合」にあたります。
「例外」に相当する例をご紹介しましたが、実際に適法になるかどうかは、各ケースによって異なるためご注意ください。
私的使用以外で適法とみなされるスクショの例
ここでは、文化庁|「著作権法及びプログラムの著作物に係る登録の特例に関する法律の一部を改正する法律(説明資料)をもとに、私的使用以外でも認められるスクショ使用の一例をご紹介します。
ただし、実際に認められるかどうかは、個別的な事情を考慮して裁判所が判断します。必ずしも適法になるとは限らない点にご注意ください。
【例1】新聞で取り上げられた自社の記事の一部をスクショし、コンテンツ内で詳しく説明する
例えば、新聞記事を引用する場合、長文で構成される論文や新聞記事などの1行?数行のダウンロードであれば、「軽微なもの」と判断されますが、半分程度になると、「軽微なもの」とはいえない分量と判断されます。
1行~数行をスクショとして引用する際には引用ルールにのっとり、自作のコンテンツが主で、スクショが従の関係になるように主従関係にも気をつけて編集することが重要です。
【例2】コンテンツの内容を補完させるためにコミック作品の1コマのスクショを挿入する
数十ページで構成されるコミックの1コマのダウンロードであれば、「軽微なもの」にあたると考えられます。ただし、引用ルールに従い、あくまでも補完としての分量にとどめ、出典元も必ず記載しましょう。
【例3】小さなサムネイル画像が並んでいるスクショを挿入する
小さなサムネイル画像のように画質が低く、鑑賞に堪えないような粗い画像は「軽微なもの」にあたり、ダウンロードやスクショを行えます。ただし、投稿などに挿入する場合などスクショをアップロードする場合は、例1や例2と同様に引用ルールを満たす必要があります。
違法となる可能性の高いスクショ
違法になる可能性が高いスクショとはどのようなものなのかを整理し、例を見ていきましょう。
違法となる可能性が高いスクショの条件
違法となる可能性が高いスクショは、主に2つの条件があります。
- 違法にアップロードされたコンテンツのスクショ
公式サイトや著作権者の許諾を得ずに、違法アップロードされたコンテンツを「違法であると知りながら」スクショをした場合は、違法になります。
- コンテンツや画像の「引用」ではなく「無断転載」に相当する場合
先述した引用ルールを満たさない場合は、違法となる可能性が高くなります。また、スクショがメインに用いられる場合など、引用の範囲を超えるスクショの利用は「無断転載」と判断される可能性が高いので、注意が必要です。
違法となる可能性の高いスクショ使用の一例
違法となる可能性の高いスクショの使用例を紹介します。
【例1】SNSやウェブサイトの閲覧数を伸ばすために違法アップロードされたコンテンツをスクショして掲載する
違法アップロードされたコンテンツの掲載は、先述の通り、著作権者の利益を不当に害しないと認められる特別な事情がある場合に限って認められています。閲覧数を伸ばすためなど自らが利益を得るために利用することは、「特別な事情」とは認められず、違法になる可能性が高くなります。
【例2】他社のホームページの画像をスクショし商品名がわからないようにして掲載する
スクショの利用時は、引用ルールを守る必要がありますが、画像の一部にモザイクをかけたり、切り落としたりして元の画像との同一性を損なう行為は、画像の改変にあたり、引用ルールの違反となります。ただし、使い方を示すための矢印の挿入などは、利用の目的及び態様に照らしやむを得ないと認められる改変として可能です(著作権法第20条第2項第4号)。
【例3】自社が報道された記事のスクショをウェブサイトに掲載する
たとえ自社が報道された記事であっても、著作権者の許諾を得ずに無断でスクショを掲載する行為は著作権法違反となります。記事の掲載元に利用目的を説明したうえで許諾を取りましょう。
違法にならないためのスクショ利用の注意点
スクショ利用が違法にならないためには、次の2点に気を付けましょう。
- コンテンツの出所に注意する
海賊版サイトやまとめサイト以外に、個人のブログやSNSなどでも、違法アップロードされたコンテンツは数多く掲載されています。そのコンテンツが適法にアップロードされたものかを判断するためにも、引用元が明記されているかなどをよく見て判断しましょう。
- むやみにスクショを使用しない
不要なスクショの掲載は、引用ルールからも違法となる可能性が高くなります。コンテンツにとって必要なスクショかどうか、掲載前にもう一度考えてみましょう。
自分のコンテンツがスクショされているのを発見したら?
自社コンテンツや自分が作成したコンテンツがスクショされ、出典元もないまま無断で掲載されているのを発見した場合は、どうしたら良いのでしょうか?
著作権侵害の判断は難しいため、対処する必要があるのかどうかも含めて検討が必要です。まずは弁護士会や法テラス、自治体の無料法律相談会などに相談してみましょう。
先方が自社のスクショで利益を得ていたり、好ましくない記事にスクショが使用されるなど、自社にとって悪影響が予想されたり、実際に被害が出ていたりする場合があるかもしれません。その場合は、専門家の助けを借りて削除請求や損害賠償請求、著作物使用料の請求を行うことになります。
スクショのルールを理解して違法にならないよう適切に利用しよう
PCやスマホ画面を簡単に保存できるスクショは便利な機能です。自社コンテンツを作成する場合にも、適切なスクショの利用を通じてユーザーの理解を深めることもできます。
しかし、今日インターネット上にあるコンテンツは、違法アップロードされたものか、適法にアップロードされたものか、見分けのつかないものも少なくありません。そのため、意図しないところで、スクショを通じた著作権侵害を行っているかもしれません。
本記事でご紹介した違法ではないスクショの条件や違法にならないための利用ルールを理解し、適切にスクショを利用しましょう。