複数のデータベースにまたがる重複した情報を統合する「名寄せ」は、営業活動やマーケティング活動の効率化、精度向上には欠かせません。特に、複数の部門や個人で保管され、散在している顧客情報を収集・整理するには労力がかかるものです。しかし、生成AIを活用すれば、作業の効率化が可能です。

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本記事では、名寄せに生成AIを活用できる理由と、その方法、メリット、事例を解説します。実施時の注意点もご紹介するので、活用する際の参考にしてください。
生成AIを活用した名寄せとは?
生成AIを活用した名寄せとは、複数のデータベースやシステムに分散する同一企業や同一顧客の情報を統合する名寄せ作業に、生成AIを用いることです。
名寄せはデータ調査から行います。必要なデータの抽出、表記ゆれや重複などの不備の修正を行い、最終的にデータをマッチングさせるのが一般的な進め方です。
名寄せにおける生成AIの活用例
生成AIを活用した名寄せは、さまざまな領域で活用されています。ここでは、顧客データの一元化やデータベースの活用、ECサイトの商品名を統一する事例をご紹介します。
顧客データの一元化
マーケティング分野では、顧客情報の重複や表記ゆれを特定し、顧客データを一元化する目的で、生成AIを利用可能です。ターゲティングの精度が向上し、新規顧客創出の効率化、顧客満足度の向上などの効果が期待できます。
<プロンプト>
こちらの企業名について、以下を直してください。
- 全角を半角に統一
- (株)を株式会社に変更
- 小文字を大文字に変更
- その他、表記ゆれと思われる箇所がある場合は指摘してください。
データベースの活用
生成AIを取り入れると、企業情報を集めたデータベースをより活用しやすくなるため、名寄せ作業を大幅に効率化することが可能です。
HubSpotのAI機能「Breeze」は、2億を超える購入者と企業のプロファイルで構成されたデータベースを参照することで、不完全な企業データに不足しているフィールドを自動入力します。業種や年間売上高、従業員数、所在地など、40を超える属性も追加できます。名寄せを行うだけでなく、データを充実させることでインサイトの取得やコンテンツのパーソナライズといった施策にも活用しやすくなるでしょう。
ECサイトの商品名を統一
ECサイトでの商品名の統一にも、生成AIは役立ちます。例えば、「525mlペット」「ペットボトル(525ml)」のような表記ゆれを同一商品として識別できるようになります。ただし、抜け漏れが生じる可能性があるため、目視でのチェック・修正もあわせて行うことが重要です。
名寄せで生成AIを活用するメリット
名寄せで生成AIを活用する主なメリットは、次の3点です。
- 表記ゆれに柔軟に対応できる
- 名寄せ作業の効率化
- 多言語に対応できる
表記ゆれに柔軟に対応できる
前後の文脈や語彙の意味を理解できる生成AIの活用により、高精度な名寄せが可能となっています。
従来の名寄せでは、重複確認前にデータの表記を統一する必要がありました。例えば、「株式会社AA」と「(株)AA」の表記ゆれを検出するには、「(株) → 株式会社」と変換するルールを設け、一致判定させる前にデータを加工します。
一方で、生成AIでは、先ほどの例であげたように、あいまいな表記や誤字脱字などが混ざっていた場合も関連情報をもとに意味的な一致を判断できるため、表記ゆれに柔軟に対応できます。
名寄せ作業の効率化
一般的に、名寄せは、次の手順で進めます。
- データ収集:取引先・顧客データベースより名寄せ対象となるデータを収集する
- 前処理:表記ゆれの統一(全角・半角変換、法人格の統一など)、不要な文字の削除など
- マッチング:同一企業・同一人物の情報を1つに統合する
- データ検証:名寄せにより得られた結果を検証する
この手順では、前処理の工程では表記ゆれのパターンに対して逐一ルールを設定して変換する作業が発生します。
一方で、生成AIを活用すれば、手作業で膨大な時間がかかる前処理をテキスト形式のプロンプトで行い、作業を大幅に効率化することが可能です。
多言語に対応できる
多言語に対応した名寄せができるのも、生成AIの強みです。
外国人名の多様な表記の統一にも対応し、従来の文字列一致検索では検出が難しかったケースでも高度な名寄せを実施できます。
例えば、姓名の順序やイニシャル・ニックネーム表記、ミドルネームの有無、アルファベットと漢字による表記の相違も、同一の名前と判断します。
名寄せに生成AIを用いる際の注意点
名寄せに生成AIを用いる際は、「生成AIの出力結果が正しいとは限らない」「情報漏洩に注意する」点に注意が必要です。
生成AIの出力結果が正しいとは限らない
生成AIを用いて名寄せを行う場合、出力結果が必ずしも正しいとは限りません。共通点のある別人を同一であると誤認したり、反対に、表記ゆれを取りこぼして別人と判定したりする可能性があるためです。
生成AIを利用する際は、ハルシネーションと呼ばれる、誤った情報や存在しないデータをあたかも正しいものかのように出力する現象に注意が必要です。一般に、学習データの不足や誤った情報の入力が原因となって生じます。
生成AIを活用する以上、ハルシネーションを完全に防ぐことはできません。ミスを防ぐためにも、目視によって出力結果が正しいかどうかのチェックを行いましょう。
情報漏洩に注意する
生成AIを活用して名寄せを行うには、企業情報や顧客データを生成AIにインプットする必要があります。ただし、情報を読み込ませる行為にはセキュリティリスクがともなう点に注意が必要です。例えば、入力した情報が第三者への回答に活用されたり、生成AI自身の学習データに加えられたりする可能性が考えられます。
情報漏洩を防ぐには、信頼のおける生成AIを選び、インプットしたデータがどのように扱われるのかをあらかじめ確認することが大切です。
生成AIモデルが提供しているAPIを活用するのも有効です。ChatGPTではAPI経由で送信したコンテンツはモデルの学習には用いないことが明記されています。インプットしたデータを生成AIが学習に使用しないように設定できるツールもあるので、適宜活用してみましょう。
生成AIの活用で名寄せを効率化しよう
生成AIを活用して名寄せを行うと、精度の高い名寄せの実施や作業の効率化、多言語対応などのさまざまなメリットが得られます。
ただし、AIによる出力結果が必ずしも正しいとは限らない点と情報漏洩リスクには十分に注意しましょう。
なお、名寄せを行う際は、顧客情報を管理するツールの見直しも同時に行うのがおすすめです。顧客情報の管理に特化したデジタルツールを導入することで、一貫性が保たれた最新の顧客情報を維持できます。
HubSpotのCRM(顧客関係管理)ツールは、部門を越えて社内の顧客情報を一元管理でき、営業・マーケティング・カスタマーサポートに役立つ機能が充実しているのが特徴です。また、Operations Hubを利用すれば、CRMデータの整合性を確保し、顧客情報をクリーンに維持・管理できます。
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