顧客情報の「名寄せ」は、営業やマーケティングの業務効率を高めるうえで欠かせない取り組みです。複数のデータベースに散在する情報を整理・統一することで、顧客のニーズに合った対応やマーケティング施策の実施が可能になります。

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本記事では、名寄せの基本的な概念から具体的な進め方、注意点までを体系的に解説します。
名寄せとは
名寄せとは、複数のデータベースやシステム上に存在する同一人物・同一企業などの情報を統一し、正規データとしてまとめる作業のことです。
例えば、「株式会社ABC」「(株)ABC」「ABC株式会社」など、表記が異なるデータを同一の会社や個人として統合します。顧客名以外に、住所・メールアドレス・電話番号なども確認し、重複しているデータは削除します。
名寄せを行うメリット
ここでは、名寄せの代表的な3つのメリットを紹介します。
- 顧客情報の正確性向上
- 営業・マーケティング活動の精度向上
- コスト削減とリソースの最適化
顧客情報の正確性向上
名寄せを行うと、同じ顧客に関するデータが統合されるため、情報の重複や矛盾が解消されます。
顧客の役職変更などの最新情報も顧客情報に反映されるため、最新の情報をもとにした営業・マーケティング活動が可能です。具体的には、DMの宛名のミスやテレアポの重複架電などの防止などに役立ち、業務効率化にもつながります。
営業・マーケティング活動の精度向上
顧客情報が整理・統合されると正確なデータ分析が可能となり、ターゲットに応じた最適なアプローチが実現可能です。
サイト訪問や問い合わせ、メールでのコミュニケーション、購入履歴などの顧客行動から収集された幅広いデータを名寄せすることで、これらのデータを同一の人物・企業のものとして正しく集約できます。
SFA(営業支援システム)やMA(マーケティングオートメーション)などのツールを使用している場合には、顧客情報を整理しておくことが営業・マーケティング活動の質に直結します。施策の振り返りや改善もしやすくなるでしょう。
コスト削減とリソースの最適化
重複している顧客情報を統合すると、営業活動の重複も避けられます。これにより、印刷費やDM送信費、対応に必要な人件費などのコスト削減が可能です。
また、マーケティング部門では、正確なデータに基づいたセグメントが設定できるようになります。これにより、興味関心の高い見込み客へのアプローチといった戦略的な業務に集中でき、リソースの最適化にもつながります。
名寄せの実施手順
効率的で精度の高い名寄せを行うには、適切なステップを踏むことが大切です。具体的には、次の4つの手順で行いましょう。
1. 目的の明確化と対象データの確認
最初に、名寄せを行う目的と統合後のゴールを明確にします。目的やゴールを定めないまま進めると、不要な項目が増えたり、あとから必要な項目が出てきたりするため、効率が悪くなってしまいます。
また、この段階で名寄せの対象となるデータソースを特定し、データの活用状況や項目を確認しておきましょう。
2. 必要項目の抽出と整理
次に、リスト化する項目と、「名寄せキー」となる項目を抽出します。名寄せキーとは、顧客や企業に関する情報を「同一データである」と判断するための項目のことです。
例えば、氏名・会社名・電話番号をキーにする場合、この3項目が合致していれば、担当者名や住所が異なっていても同一の顧客とみなします。
あわせて、「氏名」と「名前」、「企業名」と「会社名」のように項目名が異なる場合は、どちらの表記を採用するかを決めて統一しておきます。
3. データの前処理
データを統合する前の処理として、抽出したデータの表記ゆれや誤入力を修正し、表記を統一しましょう。次のような処理を行うことで、システムが同一の顧客や企業を正確に判断できるようになります。
- 全角と半角の統一
- 旧字体と新字体の整合(例:「渡邊」と「渡辺」)
- 「(株)」と「株式会社」のような略記の統一
- ハイフンやスペースの有無の統一
- 電話番号や郵便番号の形式統一
- 不要な空白や改行の削除
4. マッチングと統合処理
表記の統一が完了したら、マッチング処理を行います。
設定した名寄せキーをもとに、同一の企業・顧客と判断されるデータには、共通のIDやキーを割り振ります。
その後、共通IDのデータ内容をそれぞれ精査し、最新のデータや信頼性の高い情報を優先して採用します。不要なレコードは削除または統合して、クリーンな状態に整理しましょう。
ここまで紹介した各ステップを丁寧に行うことで、信頼性の高い顧客データベースを構築できます。
名寄せの実施方法
名寄せは、次の3つのツールのいずれかを使用して行う方法が一般的です。
- エクセル
- 名寄せツール
- 生成AI
取り扱うデータ量やツールの特性に応じて、適切な方法を選択してください。
エクセル
エクセルを使った名寄せは、ツールの導入コストを抑えてスモールスタートしたい場合におすすめの方法です。データ件数が少なく、簡易的な名寄せの場合は、次のようなエクセルの機能・関数を使って名寄せを行うことができます。
- フィルター機能
- ピボットテーブル
- SUMIF関数
- VLOOKUP関数
データ件数が多い場合は、名寄せツールや生成AIのほうが適しています。エクセルを使用すると、関数の設定や入力ミスといったヒューマンエラーが発生しやすくなるので注意が必要です。
名寄せツール
大量のデータ処理や複雑なデータクレンジングが必要な場合には、名寄せ専用のツールを活用すると効率的です。フォーマットに必要なデータを入力するだけで、名寄せが自動で行われます。
名寄せツールをMA(マーケティングオートメーション)ツールやSFA(営業支援システム)と連携することで、名寄せが完了したクリーンな状態のデータをそのまま営業やマーケティングに活用できます。
生成AI
生成AIとは、AIがオリジナルの画像や動画、文章といったコンテンツを生成する技術のことです。
生成AIには、NLP(自然言語処理)と呼ばれる、人間が日常的に使用する自然言語をコンピューターが処理するための技術が活用されています。文字列の類似度の判定やパターン認識が可能なNLPの特性を活かして、精度の高い名寄せが可能です。特に、企業名などの固有名詞や略語などの表記ゆれの吸収に適しています。
名寄せを実施する際の注意点
名寄せの品質を確保し、継続的に運用していくためには、次のポイントに注意しましょう。
- 表記統一の徹底
- 適切な名寄せキーの設定
- 継続的な運用体制の整備
- プライバシーとセキュリティへの配慮
表記統一の徹底
名寄せの精度を高めるためには、表記を統一することが不可欠です。
例えば、同一の顧客名でも「株式会社ABC」と「㈱ABC」のように表記が異なると、同じ顧客として認識されない可能性があります。
このような表記ゆれがあるとマッチング処理ができず、データが重複したまま残ってしまうため、表記の統一を徹底しましょう。名寄せの手間を最小限に抑えるために、データ登録の際の表記ルールをあらかじめ決めておく方法がおすすめです。
適切な名寄せキーの設定
同一データを判断するための「名寄せキー」の設定方法によっては、名寄せが適切に行われないことがあるので注意が必要です。
一例として、氏名のみをキーとしていた場合、同姓同名の別人が同一人物とみなされてしまう可能性があります。一方で、氏名と住所を名寄せキーとして設定すると、住所変更があった顧客が重複したまま残ってしまう可能性もあります。
このように、名寄せキーの設定方法によって精度が大きく変わってくるため、複数のキーを設定し、マッチング作業を繰り返し行うことが大切です。
プライバシーとセキュリティへの配慮
名寄せ作業では、個人情報を取り扱うため、プライバシーとセキュリティへの配慮が必要です。
作業中はアクセス権限の管理に注意し、作業に関係のない従業員はアクセスできない状態にしておきましょう。
多くの専用ツールは個人情報保護に関する法令・規制に対応した設計になっています。
継続的な運用体制の整備
顧客データは常に更新され、増えていくものです。そのため、名寄せの作業も定期的に行う必要があります。「いつ・誰が・どのようなタイミングで」名寄せを行うか、運用ルールを決めておくと良いでしょう。
データを入力すると名寄せが自動で行われるツールの導入も選択肢のひとつです。
定期的に名寄せを行って営業・マーケティング活動を最適化しよう
顧客情報は、営業やマーケティング、カスタマーサービスなどの基盤となる重要なデータです。名寄せによって常に最新の顧客情報を維持し、部門を越えて活用できる状態にしておきましょう。
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