ERPとは、生産管理や在庫管理、販売管理など、さまざまな基幹業務の機能を搭載したシステムです。


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ERPの導入形態はクラウド型とオンプレミス型に大きく分類でき、導入費用やランニングコストも、どちらの導入形態を選ぶかによって大きく変わります。そのため、ERPの導入にあたっては、導入・運用にかかる費用の内訳や相場を理解したうえで、自社の予算や導入目的に見合う製品や導入形態を検討することが大切です。
本記事では、クラウド型・オンプレミス型の導入にかかる費用の内訳と目安を解説します。導入費用を抑える方法もご紹介しますので、ERP導入の予算の検討にお役立てください。
ERP導入の際にかかる費用
ERPの導入には初期費用と運用コストがかかり、クラウド型とオンプレミス型の導入形態によってかかる費用が異なります。
それぞれの費目の概要は次の通りです。
- 導入費:
ハードウェアの構築に必要な費用や導入サポート代、運用方法の社員教育に必要な費用などの総称。クラウド型ERPは自前でハードウェアを用意せずに済むため、導入費が少額、あるいは無料のケースも多い。 - 開発費:
オンプレミス型のERPでシステムを設計する際にかかる費用。自社の仕様に合わせてオリジナルのERPを開発する場合と、基本設計にカスタマイズを行ったり拡張機能を加えたりする場合がある。クラウド型ERPはすでに開発されたシステムを使用するため開発費は不要。 - ライセンス料:
システムにアクセスするための権利金。ユーザー単位で発生するユーザーライセンスと、事業所単位で発生する基本ライセンスの2種類がある。 - サービス利用料:
クラウド型ERPにのみ発生するサブスクリプション料金。月あるいは年単位で料金が発生する。 - 保守管理費:
システムを維持するための保守費用。ソフトウェアやセキュリティ機器などの更新料、ハードディスク交換費、メモリ増設費などが含まれる。クラウド型ERPの場合はベンダー側が保守を行うため、保守管理費は不要。
クラウド型ERPの導入にかかる費用の内訳と目安
クラウド型ERPでは、初期費用として導入費とライセンス料がかかり、運用コストとしてサービス利用料が発生します。各費用の内訳と目安を解説します。
なお、クラウド型ERPの特徴やメリットなどに関しては、こちらの記事で詳しく解説していますのでご覧ください。
1. 導入費
クラウド型ERPはオンプレミス型ERPに比べて、導入費が安い傾向にあります。サーバーやネットワークなどの物理的なハードウェアを構築する必要がないからです。また、導入サポートや導入教育などはオプションとして提供されるのが一般的です。
導入費やライセンス料がかからない、初期費用が無料のクラウド型ERPも存在します。導入コストを抑えたいスタートアップや個人事業主でも手軽に導入できるのが、クラウド型ERPのメリットです。
【導入費の目安】
- 0~20万円弱
2. ライセンス料
ライセンス料が必要なクラウド型ERPは、ユーザー単位で発生するユーザーライセンスと、事業所単位で発生する基本ライセンスの両費用が発生するのが一般的です。
一方で、オンプレミス型ERPでは、どちらかのライセンス費用で済むケースがあります。そのため、ユーザー数が多い場合、クラウド型ERPのほうがライセンス料が高くなる可能性があります。
なお、クラウド型のライセンス費用はサービス利用期間中は継続的に支払います。
また、先述したように、初期費用そのものが不要で、ライセンス料がサービス利用料に含まれているクラウド型ERPも存在します。このような場合は、運用コストとしてサービス利用料のみがかかります。
【ライセンス料の目安】
- ユーザーライセンス:1,000~1万円/ユーザー
- 基本ライセンス:1~100万円
3. サービス利用料
クラウド型ERPでは、ハードウェアを自社で保守管理する必要がありません。一方で、運用コストとしてのサービス利用料が発生します。契約形態には月間契約と年間契約があります。年間契約では利用料を一括で支払うことが多く、月額料金に比べてひと月当たりの利用料が割安に設定されているのが一般的です。
なお、多くの場合、サービス利用料はユーザー単位で課金されるため、ユーザー数が増えるほど費用が高額になります。また、サービスを利用する限り、継続的に発生するので、利用期間によってはオンプレミス型ERPよりもトータルコストがかさむ可能性も考えられます。
【サービス利用料の目安】
- 1,000~1万円/ユーザー
オンプレミス型ERPの導入にかかる費用の内訳と目安
オンプレミス型ERPでは、初期費用として導入費や開発費、ライセンス料がかかり、運用コストとして保守管理費が発生します。各費用の内訳と目安を解説します。
1. 導入費
オンプレミス型ERPを導入する際に、最も費用がかかるのが導入費です。なぜなら、オンプレミス型ERPの導入にあたって、ハードウェアの準備など社内インフラの構築が必要だからです。
例えば、サーバーやネットワークをゼロから構築したり、ストレージが不足しているために追加したりする場合は、システム構築費が高額になってしまいます。また、ロードマップ策定や初期設定サポート、コンサルティングなど、導入時にさまざまな支援を受ける場合、トータルコストが数千万円を超える可能性もあります。
【導入費の目安】
- 基本導入費用:10~1,000万円
- 導入サポート代:100~2,000万円
- 教育費:10~100万円
2. 開発費
オンプレミス型ERPのメリットは、システムの仕様を柔軟にカスタマイズできる点です。ただし、仕様変更に際して開発費が発生します。
一般的に、開発費は、機能を追加する際や既存の仕様を修正する際にかかります。複雑で大規模なシステムほど開発費が高額になるため、要件定義で必要な機能を洗い出して優先順位を設定することが重要です。
【開発費の目安】
- 追加機能一つにつき数万円~数百万円
3. ライセンス料
クラウド型ERPと違い、オンプレミス型ERPのライセンス料は、ユーザーライセンス、もしくは基本ライセンスの一方が発生します。基本ライセンスは、クラウド型ERPのような継続型ではなく、導入時に一括で支払う買い切り型で生じるのが一般的です。
【ライセンス料の目安】
- 100~1,000万円
4. 保守管理費
オンプレミス型ERPでは、自社でシステムの保守を行うため、運用コストとして保守管理費がかかります。インフラの規模が小さければ保守費用があまりかからないため、クラウド型ERPよりも費用を抑えやすくなります。
ハードウェアの保守管理は、自社もしくは外部委託で行います。インフラの規模が大きくなると費用だけでなく時間や労力もかかるため、外部委託を検討するのも良いでしょう。
【保守管理費の目安】
- 100~200万円/年
ERPの導入費用を抑えるには
ERPの導入費用を抑える方法は次の通りです。
- 業務の見直しや改善を行う
- ハイブリッド型ERPを導入する
- ユーザー数を調整する
ERPの導入前に準備をしっかりと行い、導入方法を工夫することでコストを抑えられます。
業務の見直しや改善を行う
オンプレミス型ERPの導入費のなかでも開発費は、業務の見直しや改善によりコストを大幅に削減できる可能性があります。機能を追加するほど開発費用は高くなるため、システムに搭載させる機能を絞ることで開発費を抑えられるからです。
具体的には、システムの標準機能に合わせて業務フローを見直すのが有効です。例えば、従来利用していた帳票が導入するERPの財務会計機能に対応していない場合には、業務フローから外したり、ExcelやBIツールで代用したりすることで、開発量を削減できます。
ハイブリッド型ERPを導入する
ハイブリッド型ERPとは、クラウド型ERPとオンプレミス型ERPを組み合わせて利用できるERPです。導入ハードルの低いクラウド型ERPと、カスタマイズ性に優れたオンプレミス型ERPの、両者のメリットを活かせます。
例えば、本社ではオンプレミス型ERPを、支社ではクラウド型ERPを導入する方法が代表的です。オンプレミス型ERPを採用しつつ、サーバーやネットワークなどのハードウェアをPaaS(クラウド事業者が運用するハードウェアを借り受けるサービス)で代用する方法もあります。
ハイブリッド型ERPでは、クラウドならではの「導入コストを抑えられる」メリットが働きやすく、オンプレミス型ERPのみ導入するケースに比べて、費用を抑えられます。
ユーザー数を調整する
ERPのユーザー数は、ライセンス料やクラウドサービス利用料に影響するため、これらの利用料を抑えるには、ユーザー数の調整が不可欠です。
具体的には、ERP運用の専門チームを立ち上げ、ユーザー数を絞り込みます。担当業務や責任範囲が不明瞭なまま、ユーザーを増やすと、ライセンス料やクラウドサービス利用料が高くなるからです。
また、運用中に離職やチームから離脱したことで現在は利用していないユーザーの登録があれば、忘れずに削除しましょう。遊休ユーザーが増えると無駄なコストが発生するほか、情報の窃取や改ざんといったセキュリティトラブルにも発展しかねないので注意が必要です。
費目ごとの違いや特徴を押さえてERP導入の予算を検討しよう
ERPの導入には、導入費や開発費、ライセンス料、サービス利用料など、さまざまな費用がかかります。クラウド型ERPとオンプレミス型ERPによって発生する費用は異なるため、まずはどちらの導入形態を選択するかを明確にしましょう。
ERPの導入費用を抑えるには、導入前の準備を行うことが大切です。業務の見直しや改善、ハイブリッド型ERPの導入などの工夫をすることで、初期費用や運用コストを削減できます。
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