kintone(キントーン)を使用するうえで、ぜひ覚えておきたいのがルックアップ機能です。
kintoneは、膨大な量のデータを集約し、独自の業務プラットフォームを構築できるツールですが、適切に運用するためには、社内に蓄積された多数の情報をシステム内に入力する必要があります。そのデータ入力の手間削減に役立つのが、ルックアップ機能です。マスタアプリに基盤となるデータを保存しておけば、別のアプリにもワンクリックでコピーできるため、入力ミスの削減や業務効率化などに役立ちます。
kintoneのルックアップ機能とは
kintoneのルックアップとは、特定のアプリに登録されているデータを、別のアプリから取得できる機能です。
例えば、顧客リストアプリ(マスタアプリ)に登録されているデータを、案件管理アプリにコピーするような使い方が可能です。案件管理アプリのデータ入力時、顧客名や部署名、電話番号などの情報をマスタアプリから瞬時に呼び出せます。
顧客リスト以外にも、商品リストや社員名簿など、マスタ情報が保存されているアプリであれば、マスタアプリとして設定が可能です。
ルックアップ機能を利用することで、データを手入力する項目数が少なくなるため、データ入力の効率化やヒューマンエラーの抑制につながります。また、入力名を統一できることから、データ入力における担当者ごとの表記揺れの解消にも役立つでしょう。
kintoneのルックアップの使い方・設定方法
ここでは、ルックアップ機能の具体的な使い方を解説します。
- マスタアプリの作成
- ルックアップフィールドの設定
- アプリからマスタ情報を読み込み
ここでは一例として、顧客リストアプリをマスタアプリに設定し、案件管理アプリにマスタデータを読み込む方法をご紹介します。
1. マスタアプリの作成
まずは、マスタアプリとなる顧客リストアプリを作成しましょう。アプリ作成の手順は次の通りです。
- アプリ一覧から「顧客リスト」を検索
- 「このアプリを追加」をクリックして顧客リストアプリを追加
- アプリ編集ページにアクセスし、フォームを設定
- 自社の顧客データを登録
最終的には、次のような形で顧客データが登録されていれば問題ありません。
なお、今回はあくまでルックアップ機能を試すテストなので、アプリを追加する際に、[サンプルデータを含める]にチェックを入れるのも良いでしょう。この手順を踏むと、kintoneが用意した、顧客データのサンプルがデータベースに自動登録されます。
アプリを作成する具体的な手順は、こちらの記事で詳しく解説しています。画像付きで詳細を確認したい方は、あわせてご覧ください。
2. ルックアップフィールドの設定
顧客リストからデータを取り込むアプリ(今回は案件管理アプリ)を作成します。案件管理アプリの作成方法も、前述した顧客リストアプリと同様です。
ただし、案件管理アプリでは、フォームを設置する際にルックアップフィールドを設置しなければなりません。ルックアップフィールドを配置することで、他アプリのレコード情報を参照してデータの取得が可能になります。
そこでまずは、案件管理のページにアクセスし、画面右側の設定(歯車)マークから[フォーム]をクリックしましょう。
デフォルトのフォームが表示されるので、そのなかにルックアップフィールドをドラッグ&ドロップで配置します。
配置したルックアップフィールドの設定(歯車)マークから、[設定]をクリックします。
次のような形で設定を行います。
- フィールド名:「会社名」と入力
- 必須項目にする:チェックを入れる
- 関連付けるアプリ:「顧客リスト」を選択
- コピー元のフィールド:「会社名」を選択
設定が完了したら、画面右下の[保存]をクリックしましょう。
すると、次のようなフォームに変更されるため、重複しているフィールドを削除します。ここでは、デフォルトで用意されている任意項目の「会社名」を削除するため、設定マークから[削除]をクリックしてください。
この状態でいったんアプリを保存しましょう。画面右上の[アプリを更新]をクリックし、アプリの一覧画面に戻ります。
3. アプリからマスタ情報を読み込み
案件管理アプリの一覧画面から、試しにレコードを作成してみましょう。画面右側にあるレコード追加(プラス)マークをクリックします。
すると、先ほど追加した「会社名」というルックアップフィールドが表示されています。この項目の隣にある[取得]をクリックしてください。
次の通り、顧客リスト(マスタアプリ)に登録されている会社名のリストが一覧表示されます。
一覧から該当する会社名を見つけ、[選択]をクリックすれば、項目に必要な情報が反映されます。
誤ってデータを選択した場合は、その隣にある[クリア]をクリックしましょう。
このようにルックアップ機能を使うと、一覧から必要なデータを選択するだけで済み、手入力の手間を抑えられます。今回は「会社名」というフィールドのみを作成しましたが、ほかにも「部署名」や「電話番号」など、自由な項目をルックアップフィールドとして設定できます。
ルックアップの操作についてよくある疑問
ルックアップ機能はシンプルな操作で設定できますが、活用方法によっては操作が複雑になることもあります。ここでは、ルックアップの操作に関するよくある疑問をご紹介していますので、利用中に迷った方は参考にしてください。
マスタアプリの更新データは自動で取得できる?
原則として自動的に取得できません。そのため、マスタアプリのデータを更新するたびに編集が必要になります。
例えば、顧客リスト(マスタアプリ)に保存されている、取引先の電話番号を変更するとしましょう。その電話番号は、ルックアップにより案件管理アプリにも登録されますが、過去に入力済みの電話番号は自動的に更新されません。そのため、更新前の電話番号が登録されている案件データにアクセスし、[取得]のリンクをクリックして、再び情報を更新します。
ただし、以下の2つの方法を使えば、更新データの自動取得が可能です。
- JavaScriptで独自の機能を追加する:自社要件に合わせて自由に機能をカスタマイズできるが、プログラミングの知識が必須
- kintoneの公式サイトにある「ルックアップ自動取得プラグイン」を導入:インストールするだけで済むため手間を抑えられるが、1ドメインあたり年額50,000円の費用がかかる
CSV・Excelファイルが取り込めない場合の対処法は?
顧客リストや案件管理などのアプリを作成する際は、いちからデータを入力する以外にも、CSV・Excelファイルに保存されている既存データを読み込めます。
この場合、ルックアップフィールドを設定していることによりエラーが起きることがあります。エラーが発生した際は、画面に表示されたエラー内容を参考に対処が可能です。代表的な対処方法をご紹介しますので、参考にしてください。
重複禁止が設定されていない
CSV・Excelファイルから案件管理アプリへと、「会社名」のデータをインポートするとしましょう。ファイルのアップロード後、[アプリのフィールドと読み込むデータの列を対応付けます。]の項目を見ると、「会社名」のフィールドが表示されていないことがわかります。
「ファイルから読み込む」の画面に移動すると、以下のような注意書きがあります。
つまり、フォームの設定上で「値の重複を禁止する」の項目にチェックを入れていない場合は、データの取り込みができないということ。今回の例でいうと、「顧客リスト」の「会社名」の項目で、[値の重複を禁止する]にチェックを入れる必要があります。
マスタデータがある顧客リストのアプリにアクセスし、顧客リストアプリのページから、設定マークをクリックしましょう。
フォームの設定画面が開くので、「会社名」のフィールドにマウスを合わせ、設定マークから[設定]をクリックします。
[値の重複を禁止する]にチェックを入れ、[保存]をクリックしてください。
その状態でアプリを更新し、案件管理アプリで再びファイルをアップロードしましょう。すると、先ほど存在しなかった「会社名」のフィールドが、今度は無事に表示されます。
この状態でファイルを読み込むと、上記のエラーが解消されます。
入力値に問題がある
「~~の値が不正です」というエラーが表示される場合は、CSV・Excelファイルの入力値と、kintoneに保存されている入力値との間で、表記揺れを起こしている可能性があります。これは、担当者名などの値を入力する際に起きやすいエラーです。
例えば、CSV・Excelファイルに記載されている営業担当者の表記が「田中 太郎」なのに対し、kintoneに保存されている担当者名が「Taro Tanaka」で記載されているようなケースです。この場合は、CSV・Excelファイルの表記を、kintoneの内部データに統一すると良いでしょう。
マスタアプリの複数選択フィールドなどはコピーできる?
ルックアップ機能でマスタアプリからデータを取得する際は、文字列フィールド以外にも、チェックボックスフィールドや複数選択フィールドなどを選択できます。
例えば、マスタアプリの顧客リストに、「利用製品」というチェックボックスフィールドが含まれていたとします。案件管理アプリにて顧客リストのデータを取得する際、会社名のデータと同時に、利用製品のデータもあわせて取得することが可能です。
このような設定を行う際は、まずマスタアプリとなる顧客リストのページにアクセスし、画面右側の設定マークをクリックします。
チェックボックスフィールドをドラッグ&ドロップで任意の箇所に設置します。
追加したチェックボックスフィールドの隣にある設定マークから、[設定]をクリックしましょう。
フィールド名や項目名、並び順などを設定し、[保存]をクリックします。
この状態でアプリを更新してください。その後は、顧客リストの一覧から任意のレコードを選択します。
画面右上の編集マークをクリックしましょう。
先ほど追加した「利用製品」のチェックボックスに、ひとつだけチェックを入れておきます。この状態で画面上部の[保存]をクリックし、編集を完了させてください。
続いて案件管理アプリのページにアクセスし、画面右側の設定マークをクリックします。
マスタアプリと同じ手順で、案件管理アプリにも「利用製品」のチェックボックスフィールドを作成しましょう。フィールド名や項目名、並び順なども、マスタアプリと同じ設定にしておいてください。
次に、「会社名」のフィールドの隣にある設定マークから、[設定]をクリックします。
設定画面では、[ほかのフィールドのコピー]と[コピー元のレコードの選択時に表示するフィールド]で、次のように項目を選択します。
- ほかのフィールドのコピー:
「利用製品」←「[顧客リスト]利用製品」 - コピー元のレコードの選択時に表示するフィールド:
「利用製品」
この状態で[保存]をクリックし、アプリを更新してください。
では、実際に案件管理アプリでレコードを追加してみましょう。「会社名」のフィールドの隣にある[取得]をクリックします。
すると、会社名に加え、利用製品の項目が新たに現れていることがわかります。先ほどチェックを入れた会社名を探し、隣の[選択]をクリックしましょう。
次のように、マスタアプリの顧客リストに登録されている会社名の情報と、利用製品のチェックボックスが同時に取得できました。
ルックアップの設定を解除する方法は?
ルックアップの項目を削除する際は、該当するアプリのフォームにアクセスし、設定マークから[削除]をクリックしましょう。
ルックアップフィールドが削除されたことを確認し、[アプリを更新]をクリックすれば設定は完了です。
ルックアップ機能を使ってデータ入力を効率化しよう
マスタアプリのデータを別のアプリへとコピーできるのが、ルックアップ機能の特徴です。マスタアプリに必要なデータを入力しておけば、別のアプリから瞬時に情報を読み込めるため、データ入力の時間や手間を削減できます。
プラグインを導入すると、マスタアプリの更新データを自動的に取得できるため、さらに利便性が高まるでしょう。
今回紹介した手順を参考に、ルックアップ機能を最大限に活用してみてください。結果として、kintoneがより使いやすくなり、組織へのスムーズな定着が図れるでしょう。