ロジックツリーは、特定の事柄を構成する要素をツリー状に分解し、情報を整理するフレームワークのことです。複雑な事柄であっても、ロジックツリーを使えば要素を可視化して物事を論理的に捉えやすくなるため、ビジネスにおける課題発見や問題解決に多く用いられています。
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本記事では、ロジックツリーの基礎知識や種類、具体例を解説します。作り方のポイントや注意点も解説するので、課題を抱えている企業担当者は、ぜひ参考にしてください。
ロジックツリーとは
ロジックツリーとは、特定の事柄を構成する要素をツリー(階層)に細分化し、情報を整理するフレームワークのことです。要素を細分化する過程の図が木のように見えることから、ロジックツリーと呼ばれています。
ロジックツリーを使えば物事の要素を論理的に捉えられるため、課題発見や問題解決、アイデア出しなど、ビジネスシーンで多用されています。
ロジックツリーを活用するメリット
ロジックツリーを活用する主なメリットは次の5つです。
- 全体を把握しやすい
- 課題や原因が明確になり、素早いアクションにつながる
- 優先順位を決めやすい
- 要素の抜け漏れを防ぎやすい
- アイデアが出やすい
全体を把握しやすい
ロジックツリーでは、情報やプロセスを階層的に整理して表示するため、ビジネスプロセスや課題全体を捉えやすくなります。
また、各要素の関係を明確にして関連項目をグループ化できるため、複雑な概念やプロジェクトも容易に理解できるようになります。視覚的に把握できるため、物事に対する認識を共有しやすい点もメリットです。
課題や原因が明確になり、素早いアクションにつながる
ロジックツリーでは、特定の事柄を構成する要素を掘り下げて、情報を整理します。そのため、問題が生じた場合に、その問題の根本的な原因を見つけることができ、具体的な対策につなげやすくなります。
また、課題解決に向けた過程も可視化されるため、チームメンバーが行うべきアクションが明確になり、素早く対応できる点もメリットです。
優先順位を決めやすい
ロジックツリーでは、課題に対する解決案を並べて記載できるので、そのなかからどれを優先すべきなのか考えやすい点もメリットです。解決案同士の比較もしやすく、どれを実行すればどれくらいの影響があるのかといった検討も容易に行えます。
要素の抜け漏れを防ぎやすい
ロジックツリーでは、一つの要素を階層に分けて洗い出していくため、特定の事柄に対する要素の抜け漏れを減らせる点もメリットです。例えば、あるプロジェクトが失敗した原因を考える場合には、プロジェクトの目標、リソース、スケジュールなどのトピックごとに分解していくことで、重要な要素を見逃しにくくなります。
アイデアが出やすい
ロジックツリーでは、関連するすべての要素を階層化して書き出すので、アイデアを出しやすくなります。また、作成過程で判明した課題に、さらにロジックツリーを展開することで、新たなヒントが得られます。
例えば、「売上減少」という課題に対し、解決手段に「新規顧客増加」というツリーを広げる場合、続けて「新規顧客を増やすために必要なアクション」を考えることになり、考えの道筋が立てやすくなります。
大きな内容を小さくするイメージで進めていくと、次に考えるべき内容が明確になり、アイデアが出やすくなります。
ロジックツリーの種類と具体例
ロジックツリーには、次の4つの種類があります。
- 要素分解ツリー(Whatツリー)
- 原因追求ツリー(Whyツリー)
- 問題解決ツリー(Howツリー)
- KPIツリー
順番に詳しく解説します。
要素分解ツリー(Whatツリー)
要素分解ツリーは、物事を構成する要素を断層的に分解し、その物事の全体像を把握するためのツリーです。このツリーは、「新商品の開発」や「既存商品の改善」「ターゲティング」などに幅広く活用できます。
例えば「スマートウォッチの新製品開発」の構成要素を分解する場合は、次の図のように、「ハードウェア設計」と「ソフトウェア開発」などの大きな要素に分けます。大きな要素ごとに、さらに具体的な要素を書き出すことで全体像を把握できます。
原因追求ツリー(Whyツリー)
原因追求ツリーは、物事の原因を突き止める際に用いるツリーです。例えば、「売上が上がらないのはなぜか」という原因を探る場合には、「新規顧客が増えていない」「既存の顧客が離れている」など複数の要因をさらに細分化して、具体的な原因を明らかにします。
問題解決ツリー(Howツリー)
問題解決ツリーは、問題に対する解決策を洗い出すためのツリーです。例えば、社員の離職率に問題を抱えている場合は、次の図のように、大きな要素を細分化していき、どのような解決策があるのかを深掘りします。
KPIツリー
KPIツリーは問題解決ツリーの派生型です。KPI(Key Performance Indicator)とは、組織やプロジェクトの目標達成を評価する指標で、重要業績評価指標とも呼ばれます。組織や企業には、KGI(Key Goal Indicator)と呼ばれる最終目標があり、KGIを達成する過程で設定されるのがKPIです。
KPIツリーを作る際は、まず、KGI(組織や企業の目標)を設定し、次に目標を達成するためのKPIを設定します。
例えば、「Webサイトの売上を〇%上げる」というKGIを設定した場合のKPIツリーは次の図のようになります。KPIツリーを展開することで、KGI達成に必要なアクションや、目標達成、もしくは失敗に至った原因を可視化できます。
ロジックツリーの作り方のポイントと注意点
ロジックツリーを作る際に、意識しておきたいポイントと注意点を3つ紹介します。
- MECEを意識する
- 階層の関係を意識する
- 具体的な行動を起こせるまで掘り下げる
MECEを意識する
MECE(ミーシー・ミッシー)とは、論理的思考法の概念で、「Mutually(互いに)」「Exclusive(重複せず)」「Collectively(全体に)」「Exhaustive(漏れがない)」の頭文字をとった略称です。漏れもダブりもない状態を指します。
例えば、ターゲティングで国内の居住地を次のように区分する場合を考えてみましょう。
- 北海道地方
- 東北地方
- 中部地方
- 近畿地方
- 中国地方
- 四国地方
- 九州地方
- 日本海側
この場合、「関東地方」が漏れ、日本海側の地域が重複しています。これはMECEであるとはいえません。一方で、都道府県に分ける場合は漏れもダブりもないため、MECEであるといえます。
ロジックツリーを作る際は、同じカテゴリに属する要素を明確に区別し、情報が重複しないようにすることが大切です。
階層の関係を意識する
ロジックツリーで物事を分解する際は、その要素が「包含関係」または「因果関係」であるかを意識するのも重要です。
包含関係とは、1つの集合が別の集合に含まれる関係のことです。例えば、「果物」は「リンゴ」や「バナナ」などの個々の果物を包含しています。ロジックツリーでは、上位の項目が下位の項目を含む包含関係が成り立っています。
要素分解ツリーでは、包含関係を意識して作成することが重要です。例えば、次の図をご覧ください。
上位の項目(全体の売上)に、下位の項目(A・B・C各商品の売上)が含まれる包含関係が成り立っています。この例では、A・B・C各商品の売上の合計が、全体の売上になります。
一方、因果関係とは、複数の要素が原因と結果の関係にある状態のことです。原因追求ツリーや問題解決ツリーは、下位の要素で上位の要素が構成されるように作ります。
前述した原因追究ツリーの例では、「売上が上がらないのはなぜか」という結果の原因として、「認知度が低い」から「新規顧客が増えない」、その帰結として「売上が上がらない」関係が成り立っています。
なお、階層の関係を意識する際は、同じ階層における要素の粒度を揃えることが大切です。例えば、本を、単行本・文庫本・小説と分ける場合、単行本と文庫本はサイズや値段など同一の指標で区分されます。しかし、小説はジャンルの一つなので粒度が異なります。そのため、粒度の異なる小説は同階層には入れないようにします。
具体的な行動を起こせるまで掘り下げる
ロジックツリーは、展開するにつれて、具体的な内容に掘り下げます。行動を起こせるまで要素を掘り下げたら終了して、行動に移しましょう。
分析が中途半端な状態で終わると行動に移せず、問題解決やアイデア出しなどの最終目的を達成できません。「行動を起こせるか」を目安として要素を掘り下げていくことが大切です。
ロジックツリーを活用して情報を整理しよう
ロジックツリーを使うと複雑な問題を整理できるため、起こすべき行動が明確になります。また、物事の構造が視覚化されるので社内での情報共有がスムーズになり、アイデアの創出にもつながります。
本記事で紹介したロジックツリーの具体例を参考にして、現在抱えている課題の解決を目指しましょう。