MECEは、ロジカルシンキングの基盤となる思考法で、「漏れなくダブりなく」という意味を持ちます。シンプルな思考法ですが、実際に業務に活用するには深い理解が必要です。
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本記事では、MECEの原則の概要と考え方の具体例をわかりやすく解説します。また、企業が直面する課題を構造的に分析し解決するための、実践的なフレームワークもあわせてご紹介しています。
MECEを用いて情報の漏れや重複を防ぎ、網羅的に捉えて分析できるようになりましょう。
MECEとは
MECEとは、論理的思考法の基本概念で、「Mutually Exclusive, Collectively Exhaustive」の頭文字をとった略称です。日本語での読み方は「ミーシー・ミッシー」で、「漏れなく、ダブりなく」という意味を持ちます。
分析対象を漏れやダブりがないように個々の要素に分けて思考する方法です。マッキンゼーなどのコンサルティング企業などでビジネス分析に使用されています。
また、全体をいくつかの要素に分けて見落としや重複がない状態を「MECEである」と呼びます。
MECEの必要性
MECEは複雑な問題を明確にし、効率的に解決するのに役立ちます。本章では、MECEの必要性を詳しく解説します。
ロジカルシンキングの土台となる
MECEはロジカルシンキングの手法の一つで、論理的思考を行ううえで欠かせません。
ロジカルシンキングとは、論理的思考や論理的に考えるという意味です。物事を感覚的や直感的に捉えるのではなく、道筋を立てて矛盾がないように結論を出す思考法を指します。
ビジネスシーンではさまざまな要素が絡み合って煩雑な問題が形成されます。その解決に役立つのが、情報を主観的な視点ではなく客観的な視点から論理的に整理するロジカルシンキングです。
ロジカルシンキングの基本概念であるMECEを活用すれば、「セグメント化」や「構造化」が必要な課題において論理の穴をなくし、効率的に解決できるようになります。
現状を正しく把握するために欠かせない
現状を正確に把握するためには、MECEを用いた情報の分解が不可欠です。
例えば、全社の売上を分析するためには、「店舗A、店舗B、店舗C」や「カテゴリーX、カテゴリーY、カテゴリーZ」などと分けて現状を捉えるのではなく、要素ごとに現状を把握することが大切です。
仮に、店舗Aと店舗Bのみデータを収集して店舗Cが漏れている場合や、カテゴリーYとカテゴリーZの要素が重複していて本来の数値がわからない場合には、正確な分析結果が得られないでしょう。
現状を正しく分解し把握するために、MECEは役立ちます。
【図解】MECEな考え方の具体例
ここからは、具体例を交えてMECEの考え方を解説します。代表的なパターンは次の4つです。
- 漏れなしダブりなし(MECE)
- 漏れなしダブりあり
- 漏れありダブりなし
- 漏れありダブりあり
漏れなしダブりなし(MECE)
MECEと呼ばれる、漏れがなく、ダブりもない理想的な状態です。
例えば、次のようにWebアクセスの流入元をデバイスごとに分けた場合が該当します。
- パソコン
- 携帯
- タブレット
この分解は、デバイスに漏れやダブりがない状態といえます。
漏れなしダブりあり
すべての要素がカバーされていて漏れはないものの、内容にダブりがある状態です。この状態はMECEではありません。
例えば、社員を次のように分けた場合が該当します。
- 新卒
- 若手社員
- 中堅社員
- ベテラン社員
上記の区分では、新卒と若手社員がダブっています。
漏れありダブりなし
内容にダブりはないものの、要素に漏れがある状態です。この状態もMECEではありません。
例えば、ユーザーを次の世代ごとに分けた場合が該当します。
- 20代
- 30代
- 40代
この場合、年代にダブりは生じていません。しかし、20~40代以外の世代が漏れています。
漏れありダブりあり
漏れもダブりも発生している状態です。この状態もMECEではありません。
例えば、コンビニ商品を次のカテゴリーに分けた場合が該当します。
- 飲食物
- 生活雑貨
- スイーツ
- 雑誌や本
この場合、飲食物とスイーツが食品としてダブっています。また、チケットなど、これらの区分に該当しない商品が漏れています。
MECEに考えるための方法
ここからは、MECEに考えるための2つのアプローチ方法と4つの切り口について解説します。
2つのアプローチ方法
MECEの2つのアプローチ方法は次の2つです。
- トップダウンアプローチ
- ボトムダウンアプローチ
トップダウンアプローチ
トップダウンアプローチは、大枠から細部へと情報を分解していく方法です。全体の目的やカテゴリーといった大枠から始め、徐々に具体的な要素へと分解していきます。
このアプローチは、すでに問題の大枠が把握できている状態から、小さな問題に分割して考える際に有効です。
体系的に俯瞰した考え方ができる一方で、全体像の把握が甘い場合には漏れが生じる可能性があります。また、大枠を把握できていない状態では、トップダウンアプローチは行えません。
ボトムダウンアプローチ
ボトムダウンアプローチは、個別の情報や小さな要素から出発し、それらを組み合わせて大きなカテゴリーや枠組みを構築していく方法です。
トップダウンアプローチとは対照的に、具体的なデータや事例から出発し、そこから全体の構造を見出したい場合に適しています。最初に課題の全体像を把握できていなくても要素から全体像を導き出すことが可能です。
ただし、全体像を把握できていないために漏れが発生する可能性があるため注意が必要です。
4つの切り口
MECEの主な切り口は次の4つです。
- 要素分解
- 時系列・ステップ分け
- 対照的概念
- 因数分解
要素分解
要素分解は、「足し算型」「積み上げ型」とも呼ばれ、全体を構成する要素で分解する方法です。
例えば、顧客を年齢層で分ける、営業エリアを地域別に分ける場合が該当します。
時系列・ステップ分け
時系列・ステップ分けは、「プロセス型」とも呼ばれ、時系列や段階(ステップ)で分解する方法です。
例えば、顧客の購買プロセスをAIDMA(注意・興味・欲求・記憶・行動)に分ける、自社の市場をプロダクトサイクルに分ける場合があげられます。
対照的概念
対照的概念とは、相反する概念群を列挙していく方法です。
例えば、「メリットとデメリット」「質と量」「主観と客観」などが相反する概念にあたります。それぞれの概念間の因果関係や対立を分析して理解を深めるために利用されます。
因数分解
因数分解は、「変数型」とも呼ばれ、計算式を使用する方法です。
例えば、売り上げを「顧客数×顧客単価」としたり、マーケットシェアを「売り上げ÷市場規模」に分解する場合が該当します。
足し算、引き算、掛け算、割り算のどれでも使用でき、さまざまな切り口で分解できます。
MECEに基づくフレームワークの例
本章では、経営戦略やマーケティング戦略の立案にMECEの考え方を応用できる5つのフレームワークをご紹介します。
3C分析
3C分析は、企業(Company)、顧客(Customer)、競合(Competitor)の三要素を中心にビジネス環境を分析するフレームワークです。
これらの要素を個別に、そして相互関係の中で網羅的に評価します。企業の競争戦略やマーケティング戦略を明確にするのに役立ちます。
4P分析
4P分析は、製品(Product)、価格(Price)、流通(Place)、広告(Promotion)の要素から、製品戦略を構築するためのフレームワークです。
製品やサービスの特性、価格設定、流通チャネル、プロモーション戦略を総合的に分析するのに役立ちます。
SWOT分析
SWOT分析は、強み(Strength)、弱み(Weakness)、機会(Opportunity)、脅威(Threat)を特定し、企業の戦略的ポジショニングを評価するためのフレームワークです。
内部環境と外部環境の両方を分析する手法で、経営戦略やマーケティング戦略の立案に役立ちます。
PEST分析
PEST分析は、政治(Political)、経済(Economic)、社会(Social)、技術(Technological)の4つの外部要因を分析し、企業が直面するマクロ環境を理解するためのフレームワークです。
外部環境の変化がビジネスに及ぼす影響を評価します。
7S分析
7S分析は、戦略(Strategy)、構造(Structure)、システム(System)、共通価値(Shared Value)、スキル(Skill)、人材(Staff)、風土(Style)の7つの内部要素を評価するフレームワークです。
各要素や相互作用を理解することで、組織構造の見直しができ、企業価値の向上が可能になります。
MECEの注意点
MECEを適用する際は、次のポイントに注意しましょう。
- 分析対象全体を定義する
- 異なる要素を混ぜない
- 分析の目的を意識する
分析対象全体を定義する
分析を始める際は、分析対象の全体を定義しておきましょう。分析対象の全体が定義できていない場合、抜け漏れにつながることがあります。
例えば、全体の売上を定義せず、「男性からの売上」と「女性からの売上」のように顧客の性別で分解するケースを仮定しましょう。このとき、企業との法人間取引をしていた場合は「法人からの売上」が漏れてしまいます。性別による区分は、全体を分解する切り口ではなく、「個人からの売上」を分解したもののため、漏れにつながってしまうのです。
要素が抜けてしまうと正しく分析できません。まずは分析対象の全体を正しく定義しましょう。
異なる要素を混ぜない
MECEの切り口は、異なる要素を混ぜないように留意しましょう。
例えば、日本・アジア・北米に分ける場合、国と大陸が混ざっています。物事にはさまざまな切り口があります。しかし、正しく分析するためにも異なる要素を混ぜないように注意しましょう。
分析の目的を意識する
要素を分解する際にMECEであることは大切です。しかし、より重要なのは「分析の目的に合致しているか」「目的自体を忘れていないか」を意識することです。
どれだけ精密にMECEに分解できていたとしても、問題発見や課題解決につながらなければ目的は達成できません。
選択した切り口が課題解決につながらなければその他の切り口から分解するなど、目的に合致した切り口になるよう修正しましょう。
また、本来の目的を忘れて要素分解自体が目的にならないようにも注意が必要です。
MECEで論理的思考を強化して課題解決につなげよう
MECEに基づく論理的思考は、漏れやダブりといったミスを防ぎ、情報の整理と分析を効率化できます。そのため、複雑な課題に対する適切な解決方法を導き出すのに役立ちます。
MECEの考え方や具体例を理解してロジカルシンキングを強化し、ビジネスの課題解決に活用しましょう。