マーケティングオートメーション(MA)とは、顧客それぞれの興味関心に応じて適切なコミュニケーションを取れるマーケティングサポートツールです。マーケティングオートメーションの運用するにあたっては、顧客の購買活動を想定し成約に至るまでのシナリオを設計することで、より一層顧客に寄り添うことができ成果を上げやすくなります。

昨今は営業に会う前に顧客が事前に商材を比較検討できるようになっています。その結果、営業が見込み客へアプローチをした時点で購買プロセスの半分以上は完了しており、顧客へ提案する前に結論が出ているケースも多々あります。
このような顧客の購買プロセスの傾向に対応できるのがCRM(顧客関係管理ツール)による顧客情報を管理やマーケティングオートメーション(MA)による最適化されたアプローチです。これらのツールを導入すると効果的な営業活動が行えますが、一方でCRMやマーケティングオートメーションの活用が売り上げ拡大につながると期待しつつも、まだ導入に踏み切れていない会社も多数あります。
「実際にマーケティングオートメーションを導入して何ができるのか」「シナリオを使ったマーケティングが自社の売り上げ貢献に寄与してくれるのか」などマーケティングオートメーション導入に当たっての懸念事項はあるでしょう。しかし、シナリオを設計することでより良い運用が見込めます。
本記事では、シナリオの作成方法やKPIとして設定すべき事項、シナリオ作成のための5つのステップについてシナリオの例とあわせてご紹介します。マーケティングオートメーションのシナリオを網羅的に理解し、導入の決め手の参考にしていただけるはずです。
マーケティングオートメーションにおけるシナリオとは?
マーケティングオートメーションにおけるシナリオとは、顧客の購買行動を想定し購買に至るまでのルールを設定し、 「特定の行動(トリガー)を起こした見込み客に対して、そのトリガーを元にあらかじめ設定している行動を返す」ものです。

例えば、ある営業メールを見込み客に送信した場合に、見込み客と自社が取るシナリオは以下のように設計されます。
- 自社:イベント参加登録のアクションをトリガーにサンキューメールが自動で送られるよう設定しておき、イベント案内のメールを送信する
- 見込み客:送られてきた企業のイベント案内のメールを受信する
- 見込み客:メールをクリックして内容を確認し、参加登録を済ませる
- 自社:参加登録をした人を対象にサンキューメールが送信される
次に、それぞれの工程の違いを紹介します。
- 通常のメール配信ツールを利用する場合
- マーケティングオートメーションを利用してメール配信を行う場合
通常のメール配信ツールを利用する場合
メール配信ツールを利用する場合、通常は下記のようなプロセスで実施されます。
- 配信先のリストを顧客データからCSVに出力
- 宛先を確認した上で一斉送信
一斉送信を行う際はCSVを出力するマニュアル対応が必要になり、その後のフォローもすべてマニュアルでマーケティング担当者やインサイドセールスが実施しなければなりません。
また、配信するメールがテキストかHTMLかによっても作業内容が異なります。
- テキストメールの場合:開封確認ができない
- HTMLメールの場合:開封確認は取れるが、開封したリストに対し行うネクストアクションはマニュアル作業
HTMLメールを採用する場合は開封確認ができても、顧客がどの程度メール内容に興味があるかはわからないのが実態です。単純にメールチェックの一環で開封をしただけの可能性もあり、見込み客の興味関心度合いは追えないため、効果的なフォローにつながりません。
このように単純なメールマーケティングの場合、アクションは打てたとしても、営業担当者のカンや経験に頼った属人的な施策になってしまい、再現性が出にくい課題があります。また、顧客の行動をもとにした施策を考えられないため、今後の施策の裏付けにできずメール配信が無駄打ちになる可能性があります。
マーケティングオートメーションを利用してメール配信を行う場合
マーケティングオートメーションを活用してメール配信する場合は次のようなメリットがあります。
- 開封確認が取れる
- Webトラッキング機能によって開封後の興味関心が把握できる
- スコアリング機能を利用する場合は顧客の興味関心のスコアをつけ、さらにページやコンテンツごとに重み付けができる
- 興味関心度合いに応じたアプローチなどバリエーションが広がる
マーケティングオートメーションにはその名の通りオートメーション機能があるため、以下のようなアクションも活用できます。
- 配信リストの抽出から一斉送信を自動化して実施する
- メールの受信者の反応の有無に応じてシナリオを組む
- 定期的に見込み客の興味関心度合いのチェックも自動で行える
マーケティングオートメーションの有する機能を上手く使えば、自社の配信内容に全く興味のない人はインサイドセールスのフォロー対象から外し、興味関心の高い人を優先的にフォローできるため、効率的に営業活動を行えます。
シナリオ設定すると何ができるのか?
マーケティングオートメーションでシナリオを設定すると、 見込み客の興味関心度合いを高い精度で把握できます。Webの行動から興味がある人に対してはより詳細なコンテンツやイベントへの誘導をかけ、営業アプローチを行うべき対象か判断可能です。
一方で全くソリューションやコンテンツに興味のない人に対しても、マニュアルではなく自動的にフォローができ、インサイドセールスや営業の手間を最小限に抑えられます。その結果、興味のない人のフォローは行いつつ、興味関心度合いが強く、より成約可能性の高そうな見込み客へ注力できます。
また、シナリオを設計すると、「メール送信」「開封」「滞在時間の計測」「次のコンテンツを送信」「開封」といくつかのトリガーを元に顧客の興味関心度合いが詳細かつ明確に拾えます。見込み客の行動にスコアをつけ、会社が力を入れているコンテンツを閲覧したら高めにスコアをつけるように設定しておくと、見込み客や顧客の囲い込みができ効果的な営業活動を行えるようになるでしょう。
参考:Listfinder「 【図解】マーケティングオートメーションで使えるシナリオを設計するコツ 」より
シナリオ作成前に押さえるべきポイント

本章では、シナリオ作成前に押さえておくべきポイントをご紹介します。シナリオ作成時、「誰宛なのか」についてはCRMをしっかり運用することで明確になります。そしてCRMに蓄積した顧客情報をもとに、より個別最適化したメールを配信できるようにするためのポイントを紹介します。
既存顧客からヒアリングする
シナリオ作成前には、ペルソナ設定が重要です。既にソリューションを導入している顧客からヒアリングを行うことで、詳細なペルソナを設定できるでしょう。実際にサービス導入を決めた顧客の悩みや検討のプロセスを元に設定することで、これから提案を行う見込み客のニーズを満たせるようなポイントを押さえたシナリオを作成できます。
具体的には、サービスやソリューションの導入前の検討時に、営業やマーケティングから共有された情報や提案内容のどこに興味を持ち、何を導入の決め手にしたのかをヒアリングできるとシナリオにも反映させやすくなります。
高度なシナリオは作らない
最初から高度なシナリオは不要です。
例えば、以下のようなシナリオは、ある程度マーケティングオートメーションを使いこなしている会社であれば組むべき内容です。
初めて見込み客にアクセスした場合のシナリオ例①
イベント参加→お礼メール配信→メールを開封し、活用事例のコンテンツを3分以上閲覧→別のシナリオメール配信→開封し、製品価格ページを5分以上閲覧→インサイドセールスのフォロー
マーケティングオートメーションを使い慣れていない場合は、上記のように複雑にシナリオを作成するのではなく、以下パターンのように、最初はシンプルに作成することをお勧めします。
シンプルなシナリオで見込み客への反応を見ながら、シナリオのパターンや分岐を少しずつ増やしていきましょう。
初めて見込み客にアクセスした場合のシナリオ例②
イベント参加→お礼メール配信→メールを開封し、活用事例のコンテンツを3分以上閲覧→インサイドセールスのフォロー
シナリオ例②のように、まずは分岐の少ないシンプルなシナリオから始め、そもそもシナリオメールが機能するのか試すレベルで顧客の反応を見つつ、商談を作成していけるかチェックしていきましょう。
参考:Urumo「 マーケティングオートメーションに必要なシナリオ設計 」より
マーケティングオートメーションのシナリオ機能で得られる効果
本章では、シナリオを活用すると営業活動にどういったメリットや効果があるのか紹介していきます。
特定の顧客を抽出
シナリオ機能では元々狙いを定めていた会社や業界を絞り、その特定の見込み客が興味関心を抱きそうなシナリオを組むことで、見込み客の醸成が目指せます。
既に特定の業界の導入事例があれば、事例をコンテンツとして配信し、イベント集客に活用します。見込み客の反応があり次第、その業界の抱える課題や導入による効果などの詳細コンテンツを配信し、さらに興味を引きます。十分に見込み客を醸成できたあとで、最終的にインサイドセールスがフォローを行いアポイントメントを設定します。
このように明確なペルソナを設定し、効果的なアプロオーチをかけることで戦略的に特定の顧客を狙えるようになります。
自動化による業務効率化
見込み客の数にもよりますが、膨大な数のアタックリストを上から一つ一つタッチしていくのは現実的ではありません。
オートメーション機能を活用し、マニュアルと対比してクオリティに差がつかない、あるいはマニュアルで行うことでミスが発生しやすい下記のような単純作業はツールに代替してもらうことも可能です。
単純な作業を減らし、営業担当者が顧客に対してより良い営業活動を行うためにも、マニュアルで行う業務は、人間の頭を使う創造的な内容であるべきです。「顧客との会話やコンテンツのクオリティを上げること」「マーケティング施策全体を戦略的に考えること」などに時間を費やし、自動化できる部分はオートメーション化して業務効率を図りましょう。
営業機会の最大化
営業としてはすぐに導入検討の可能性が高いリストからアプローチする方が、成約率の向上や効率的な営業活動につながります。
マーケティングオートメーションのシナリオ機能を活用すれば、既存のお客様の検討プロセスを再現しながら見込み客の興味関心度合いを高められます。HPに長時間滞在する場合や、資料請求やダウンロードをし、見積もりや面談の機会を依頼されたら、興味関心の度合いが高まっていることは明らかです。
マーケティングオートメーションのシナリオ機能を駆使すれば、今すぐ検討したいと思っている見込み客順にリストが作成できます。
一方、見込み度合いが低いリストに対しては、中長期的にコミュニケーションをとり、検討意欲が高まったところでアプローチできるようなシナリオを設定しておけば、限られた営業のリソースが有効に活用できます。
参考:Marketo「 MA(マーケティングオートメーション)とは?基礎知識や事例を紹介 」より
マーケティングシナリオの作成に必要な基本要素
本章では、実際にシナリオを作成する際の4つのポイントを紹介します。
- WHO (誰に)
- WHAT (何を)
- WHEN(いつ)
- HOW(どのように)
WHO (誰に)
誰に対しシナリオを組むかは企業・ソリューションによって異なります。業界が同じでも、リーダーなのか、中位なのかなどのポジションによっても異なります。
そのため、「誰に」を設計する際、マーケティング対象を明らかにすることから始めます。
設計が細かすぎると途中で挫折してしまう可能性があるため、シンプルに作成していくと良いでしょう。
WHO (誰に)の具体例:
- 資料請求をしたがソリューションの検討に至っていない人
- メルマガの登録をしたものの、それきりになり数か月連絡が取れていない人
- Webサイトへ訪問をするものの、それ以上の具体的な行動に移っていない人
WHAT (何を)
配信するコンテンツは興味関心度合いに大きな影響を及ぼします。エレベーターピッチのように短時間しかコンテンツに目を触れる時間がない想定を置き、提供されたコンテンツに目を通し、面白いなと思ってもらい、次のアクションを取ってくれるような、見込み客のニーズに訴える情報を提供しましょう。
WHAT (何を)の例:
- ソリューション紹介
- メール本文
- 導入事例
- 導入メリット
- 課題感
- 課題の解決方法
- ROI(投資収益率)
WHEN(いつ)
アプローチのタイミングは非常に重要です。タイミング次第で受け手がポジティブに感じる一方で、興味を失ってしまう可能性もあります。シナリオ機能に加え、マーケティングオートメーションの他の機能も組み合わせて最適なタイミングで情報を提示しましょう。
コンテンツを提供するタイミングで注意すべき点:
- 時間帯(メールが開封されやすい時間など)
- 行動の起点(資料ダウンロード、Webサイトの閲覧など)
- 接触頻度(連続して配信する場合)
HOW(どのように)
コンテンツの受け取り方も重要です。見込み客が最もコンテンツを読んでくれそうな方法でアプローチをするよう心がけましょう。
HOW(どのように)の参考例:
- ダイレクトメール
- Eメール
- SNS
- 自社サイト・オウンドメディア
- アウトバウンドコール
- 営業
それ以外にも手紙や人伝えなど、最もコンテンツが受け手にとって響く方法やシチュエーションが大事です。見込み客の開催するイベントに逆に出席し、顧客理解を深めてからアプローチするなど様々な工夫の可能性もあります。
参考:Listfinder「 【図解】マーケティングオートメーションで使えるシナリオを設計するコツ 」より
シナリオ設計は、何をKPIにするかが重要

シナリオ作成時にはシナリオを評価することも重要です。シナリオを評価するためにはKPI(重要業績評価指標)を適切に設定し、シナリオが機能しているかを定点観測できるようにしましょう。
KPI設定のコツ
KPIは、KGIから逆算しつつ、自社の通常のコンバージョン率などを鑑みて現実的な数値を割り出すと良いでしょう。
KPI設定例:
- コンバージョン率…XX件の問い合わせを受けるために、ランディングページを閲覧したXX%の人に問い合わせをしてもらわなければならない
- クリック率…コンバージョン率XX%を達成するためにはXX人がメールをクリックしてランディングページに到達してもらわなければならない
- 開封率…XX人の見込み客にメールをクリックしてもらうためには、XX人の見込み客にメールを開封してもらわなければならない
- 配信数…〇%の開封率を達成するためには、〇〇通のメールが配信されなければならない
参考:BowNow「 MA(マーケティングオートメーション)ツール運用時のKPI・KGI~目標・指標設定について~ 」より
シナリオを設計するための5つのステップ
マーケティングオートメーションツールでシナリオを設計する際は、以下の流れで進めていきます。
- KGIに基づいてKPIを設定する
- 送信対象を決定する
- カスタマージャーニーを設計する
- マーケティングオートメーションのシナリオを設計する
- コンテンツを作成する
ステップ1:KGIに基づいてKPIを設定する
マーケティング戦略全体に基づいてKGIを設定し、そこから逆算してKGIを達成するためのKPIを設定します。メールマーケティングでは、以下のKPIを設定するのが一般的です。
配信数…配信したメールの数
到達数…見込み客に届いたメールの数
開封率…見込み客が開封した割合。開封数÷到達数で求める
クリック率…見込み客がURLをクリックした割合。クリック数÷到達数で求める
コンバージョン率…求める行動を取ってくれた見込み客の割合。コンバージョン数÷到達数で求める
配信停止率…見込み客が配信停止を希望した割合。配信停止を希望した見込み客数÷到達数で求める
ステップ2:送信対象を決定する
「誰に」送信するかを明確にするため「ペルソナ」を設定します。
顧客一人ひとりに寄り添ったOne to Oneコミュニケーションを実践するためには、顧客がどのような価値観を持ち、何を求め、どのような行動を取るかなどを深く観察し、現実にかぎりなく近い人物像を定義する必要があります。
これをペルソナといい、ペルソナを具体的にイメージすることがシナリオの成功確率を上げると言っても過言ではないでしょう。
ペルソナを設定する際は、できるだけ具体的に特定の人を思い浮かべると良いでしょう。
例えば「30代で、郊外に住んでいて、車はXXに乗っており、興味関心は...」とペルソナ設定時は属性情報を付加していきますが、結局は顔のない誰かになります。
できるだけ明確に属性情報を並べた際に思い浮かぶ特定の見込み客を具体的にイメージし、ペルソナと設定すると効果があります。
それは身近な人でも良いので、ターゲットとして困っている誰かを設定し、ソリューションを提示することでその人の悩みを解決できるようイメージすることが重要です。
ステップ3:カスタマージャーニーを設計する
カスタマージャーニーとは、設定したペルソナが商品やサービスをどのように認識し、検討し、購入・利用するかを時系列で捉え、カスタマージャーニーマップによって視覚化する方法です。
- カスタマージャーニーのゴールを設定する
- カスタマージャーニーのフレームを設定する
- マッピングを行う
ステップ4. マーケティングオートメーションのシナリオを設計する
次にカスタマージャーニーの内容をマーケティングオートメーションに落とし込みます。
- メールの開封・未開封の分岐
- フォームへのURLをクリックしたか、未クリックかの分岐
- フォームに入力したか、未入力かの分岐
そして、顧客の反応であるトリガーによるシナリオ発動を埋め込みます。
ステップ5:コンテンツを作成する
最後にコンテンツの作成です。シナリオ設計で見込み客の温度感を高められたら、開いたコンテンツの充実度にも力を入れておきたいところです。
- サンキューメール/ウェルカムメール
- 新着情報/更新情報
- 企業の取り組み紹介
- お役立ち情報
- 特別オファー
- Q&A
コンテンツは自社をアピールする大切な顧客との接点です。顧客への提案を行っているのだという緊張感を持って作成することが重要です。このコンテンツで次のアクションを起こしたいと思ってくれるかが鍵となります。
マーケティングオートメーションの シナリオ作成で注意したい3つのポイント

マーケティングオートメーションのシナリオを設計する上で、3つの注意点があります。
- メールの目標は1つに絞る
- 接触頻度を考慮する
- シナリオの停止条件を設定する
1. メールの目標は1つに絞る
コンテンツを発信する場合、その趣旨がひと目でわかるようにするのが重要です。例えばメール配信をする場合、どのような内容か見込み客がひと目で判断できるよう件名(タイトル)など工夫する必要があります。
1スライド1メッセージといわれるように、相手に伝える内容を絞り込むことが大切です。目標が複数あると余計な情報がインプットされ、本来伝えたいメッセージが伝わらない可能性があります。メール1通に対して1つのコンテンツに絞り、ノイズとなる情報はできるだけ外すようにしましょう。
2. 接触頻度を考慮する
接触頻度は低くなく高くなりすぎないように、メールの配信頻度など考慮します。
情報量が多すぎると、それだけでネガティブな印象を持つ人もいます。配信頻度について一定のシナリオを設けた上で、配信を止める場合や配信頻度を下げて顧客の興味関心を引き出すレベルで接触を続ける場合を見極めることが重要です。
一方、オファーの内容によっては情報が早く届く方が望ましい場合もあります。例えばウェビナー受講後のように、フォローアップメールに盛り込む関連情報や参考コンテンツなどは、見込み客にとってウェビナーの印象が強く残っている時に確認できるように送信すると効果的です。
ソリューションの案内などの頻度を抑え、顧客にとって必要な情報は早く届け満足度を高めることが重要です。その上で、興味関心や内容に合わせて設定を変える必要があります。
3. シナリオの停止条件を設定する
マーケティングオートメーションはシナリオに基づき自動でメールが配信され続けるため、終わりを設定しないと永遠に動き続けます。シナリオに以下のような停止条件を設定することも忘れないようにしましょう。
- 顧客からオプトアウト(配信停止)の申し出があった場合
- クレームが出された場合
- 目標が達成された場合
代表的なマーケティングオートメーションのシナリオ例
ここでマーケティングオートメーションシナリオの例として、2つ紹介します。
1. 会員登録を行った見込み客に対するシナリオの例

見込み客が会員登録フォームを送信したことがトリガーとなって、自動配信されるサンキューメールのシナリオです。
この場合の目標は、見込み客がメールに記載されたURLをクリックして会員登録を完了することです。メールからWebサイトへ遷移すれば、Webサイト上の見込み客の行動履歴とメールアドレスが紐づけられるからです。
通常、サンキューメールには「〇時間以内」などの制限時間を設けています。そのため、その時間内にクリックされなかった場合は会員登録が完了しなかったとみなし、今後のメール配信は行わないように設計します。
一方開封してURLをクリックした見込み客に対しては、Webサイト上の行動履歴から見込み客が興味を持ちそうなコンテンツを選んで、定期的にメールを配信するシナリオに移行します。
2. ウェビナーへの参加を目標としたシナリオの例
メルマガ登録者に向けて、ウェビナーの開催を知らせるメールを配信する場合のシナリオ例です。
開封したものの、ウェビナーへの参加申込フォームへ遷移するURLをクリックしていない見込み客には、4日後にウェビナーへの通知を再送します。
開封後、参加申込フォームへのURLをクリックし、フォームへ入力した見込み客にはサンキューメールを送信し、ウェビナー1日前にリマインダーを送信。ウェビナーに参加できるURLを通知します。
参加申込フォームに遷移したものの、入力せずに脱落した見込み客には、ウェビナーの詳細情報を配信し、もう1度呼びかけを行います。
最初のウェビナーへの招待メールを開封しなかった見込み客に対しては、数日後、別のメールを配信し、開封した見込み客に対してはウェビナーへの招待を再送します。そのメールも開封しなかった見込み客には、配信を停止します。
シナリオは見込み客が目標に向けた行動ができるように、分岐を設定しながら、次の施策につなげます。
3. HubSpotワークフローを使ったシナリオ作成

ワークフローにはあらかじめ以下のようなアクションが用意されています。メールの開封結果をトリガーにチーム内に通知をしたり、CRMやチャットツールと連携させたりすることで、担当メンバーに見込み客の行動を即座に共有できます。
- 日付・時間・条件を決めたメール送信
- チーム内へのメール通知
- SlackCRMへの自動通知
- 広告オーディエンスへの追加・削除
マーケティングオートメーションのシナリオ設計は「できること」から始める
現在、マーケティングオートメーションのシナリオ設計を使いこなしている企業であっても、最初は初心者から始まります。複雑に考えすぎてしまい活用しきれず解約せざるを得ないケースも多々あります。
シナリオ設計には様々な活用方法があり細かく設定することができます。初めからすべてを使いこなそうとするのではなく、試したいシナリオがあれば、導入してみると良いでしょう。
設計に当たっては、顧客の検討プロセスに乗っとった自然なシナリオの作成が重要です。見込み客のニーズを調べ、欲しい情報をできるだけ自然に少しずつ出していき、興味関心がわかり次第営業にパスをすればいいのです。
シナリオ設計にこだわるあまり、見込み客や顧客が置いていかれるようなマーケターの自己満足でシナリオ設計が組まれることは避けましょう。顧客にとって必要な情報を最低限届け、営業活動につながる興味関心度合いを確認できるようなシナリオ設計から始めていきましょう。
顧客起点を忘れずにマーケティングオートメーションのシナリオを設計しよう
マーケティングオートメーションを活用すれば、大量の顧客リストの中から見込み客のリストを抽出し、ニーズに沿ったメールの出し分けなど適切なアプローチができるようになります。ランディングページをマーケターでも簡単に作成できたりメール配信が行えたりと、マーケティングやインサイドセールスの業務を大いに助けてくれるでしょう。
シナリオ設計は、マーケティングオートメーションの中でもスキルと設計にかかる労力も相当に必要で、かつ効果検証も簡単ではありません。自社の想定するペルソナの興味関心を引くことができれば、いったんは目的が達成できているとみなし、実運用を始めるべきです。
マーケティングオートメーションは、売り上げや成約率改善につながるサポートツールという位置付けで考えるのがおすすめです。自動化やシナリオ設計で単純作業を軽減できればマーケターやインサイドセールスが行うべき創造力をはたらかせる業務に集中できるようになります。
そして、マーケティングオートメーションツールを利用する際は、常に顧客を起点に考えてください。顧客にとってストレスのない快適なコミュニケーションがシナリオ設計で実現できるようになれば、営業の提案活動にも活かされますし、結果的に売り上げや成約率の改善につながるはずです。
マーケティングオートメーションに適切なシナリオを設定すれば、自社の業務が効率化でき最短距離で見込み客へアプローチできるメリットがあります。「顧客にとってより良い情報を提供できるか」「顧客にとって価値のある提案につなげるための情報を収集しているか」など、常に顧客起点を前提にしてツールを扱っていきましょう。

