カスタマージャーニーとは、見込み客が商品を認知し、購入に至るまでの道のりのことです。見込み客が商品を購入するまでには、あらゆるタッチポイントが存在し、各ポイントでさまざまな感情・行動が伴います。マーケティングでは、こうした顧客心理の理解が欠かせません。
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また、カスタマージャーニーは、見込み客のフェーズごとのアクションプラン策定が可能なだけではなく、効果検証と改善によって体験価値の向上にも結び付きます。本記事では、カスタマージャーニーの仕組みや必要性、6種類の構成要素などについて徹底的に解説します。
当社HubSpotの独自調査によると、「従来に比べ、過去1年間でマーケティング部門における目標達成の難易度が高まっている」と感じているマーケティング従事者は、全体の73.1%を占めることがわかりました。
環境の変化によって移り変わる見込み客の課題やニーズを理解するためには、購買プロセスごとに見込み客の行動や思考を可視化するカスタマージャーニーの設計が不可欠です。カスタマージャーニーは、見込み客のフェーズごとのアクションプラン策定が可能なだけではなく、効果検証と改善によって体験価値の向上にも結び付きます。
本記事では、カスタマージャーニーの仕組みや必要性、6種類の構成要素などについて徹底的に解説します。
カスタマージャーニーとは
カスタマージャーニーとは、見込み客の行動や思考、感情の変化を時間軸でまとめ、商品やサービス購入のプロセスと意思決定までのストーリーを「見える化」する手法です。
見える化することで顧客とのタッチポイントを洗い出し、適切な場所やタイミングで最適な施策を打てるようになります。
顧客が商品やサービスやブランドを認知し、購買意欲を喚起され、購入や登録などに至るまでの一連の流れが一種の「顧客の旅」と表現されたことから、「カスタマージャーニー」と名付けられました。
上の図のように、顧客の行動や、その時の心理を時系列に並べ、わかりやすく可視化したものを「カスタマージャーニーマップ」といいます。
マーケティングにおけるカスタマージャーニーの必要性
マーケティングにおいてカスタマージャーニーの考え方が重要なのは、次のような理由があるためです。
多様化する顧客の行動や心理を理解し適切にアプローチするため
マーケティングの目的は、顧客のインサイトを深く理解し、さまざまなチャネルを通して、必要な情報を必要なタイミングで提供することにあります。
デジタル化がまだ進んでおらず、メディアもテレビ、ラジオ、新聞など一方通行的なコミュニケーション方法しかなかった数十年前までは、企業側が顧客像やタッチポイントを想定するだけで充分でした。
しかし、現在では顧客のニーズはもちろん、情報収集や購買行動が多様化しており、顧客のインサイトやそれにより導かれる行動を把握することが困難です。特にスマートフォンが普及して以来、その傾向は顕著になっています。近年では、AIをはじめとしたテクノロジーの進歩も目覚ましく、さらなる購買行動の変化やマーケティング手法の多様化が進むことも想定されます。
実際に、当社HubSpotの独自調査によると、「従来に比べ、過去1年間でマーケティング部門における目標達成の難易度が高まっている」と感じているマーケティング従事者は、全体の73.1%を占めることがわかりました。
時代とともに変化・複雑化する顧客の行動や心理を理解するためにも、全体を俯瞰できるカスタマージャーニーは、マーケティングに不可欠な存在です。
カスタマージャーニーによって顧客の行動と心理を可視化し、明確にすることで、最適なアプローチ、プロモーションを考案できます。
「個客」に合わせて効果的なマーケティングを実行するため
顧客一人ひとり、つまり「個客」に合わせた効果的なマーケティングが実行できることも、カスタマージャーニーが不可欠といわれる理由です。高度なデジタル化やICT技術が進んだ現代は、顧客に関する情報の量が増え、質も高まっています。それにより、顧客の行動を高精度で可視化することができるようになっています。
加えて、マーケティングオートメーションツール(MA)やアドテクノロジーの進化が、チャネルを横断して、各顧客に対して有効なマーケティング施策の展開を可能にしました。
顧客が商品やサービスを購入するまでに、タッチポイントや各フェーズでの顧客体験を設計できるようになり、ユーザー満足度の向上を目指せます。
カスタマージャーニーは、顧客の行動や考えをより深く理解するための必要不可欠なツールだと言えるでしょう。
施策の効果や改善点を可視化するため
カスタマージャーニーは、施策の効果検証や改善においても重要な役割を担います。
HubSpotの独自調査によると「マーケティングのROIを高めるために効果測定が必要だ」と回答したマーケティング従事者は、全体の94.4%を占めています。しかし、必要であると回答した人のうち、効果測定を実践できている割合は53.1%に過ぎません。
データ分析のノウハウが確立しておらず、効果検証を実行に移せない場合は、いま一度マーケティングのスタート地点に立ち返ってみると良いでしょう。施策を進めるなかで、はじめに考案したカスタマージャーニーと現状出ている効果を照らし合わせることで、問題点を抽出しやすくなります。
以下のような振り返りを行いながら、方針をブラッシュアップしていくイメージです。
(例)
- どのタッチポイントから効率良くリードを創出できているか
- 各施策の費用対効果にはどのような差があるか
- タッチポイントA、タッチポイントBでは顧客の転換率に差があるが、ナーチャリングフローの改善を検討する必要があるか
- プロセスのどこで顧客が離脱しているのか
カスタマージャーニーと実態の乖離がある場合には、都度更新をして精度を高めていきます。
さらに、競合・市場調査を定期的に実施してカスタマージャーニーへ反映していくことで、施策単位での改善に加え、外部要因まで考慮した改善が図れます。
カスタマージャーニーに必要な6つの情報
基本的にカスタマージャーニーは、大きく分けて次の6つの要素によって成り立っています。
- ペルソナ
- フェーズ
- チャネル・タッチポイント
- 行動
- 思考・感情
- 施策
各要素を理解しておくことで、より精度の高いカスタマージャーニーマップを作成できます。6つの項目の設計方法はこちらの記事で詳しく解説しているのでご参考ください。
カスタマージャーニーの各フェーズで用いられる施策一覧
カスタマージャーニーでは、購買プロセスの基本である「認知→興味・関心→比較・検討→行動」という4つのフェーズを活用するのが一般的ですが、各フェーズで実施できる施策にはどのようなものがあるのでしょうか。想定できる施策をフェーズごとにご紹介します。
1.認知フェーズ
認知フェーズでは次のような施策が活用できます。
- 広告
不特定多数の消費者に広く商品やサービスを認知させるマス広告や、ターゲットの条件を指定して効率良く露出を行うWeb広告を活用する。 - SEO
検索サイトでの上位表示によって自社コンテンツへのアクセスを拡大。商品やサービスを利用するうえでの基礎知識やノウハウを提供し、潜在層が商品やサービスを認知する起点を作る。 - プレスリリース
新商品や新サービスの発売、新規事業の開始といったニュース素材を、メディアの記者が利用しやすいように文書や資料にまとめる。第三者の視点で報道・記事化されることで、認知とともに社会的な信頼が得られる。 - 外部メディア活用
自社メディアを立ち上げたばかりであれば、すでにアクセス数の多い外部メディアに出稿することで多くの認知を獲得できる。
カスタマージャーニーは作成したマップにSEO要素を加えることもできます。カスタマージャーニーとSEOを組み合わせる方法は、こちらの記事をご覧ください。
2.興味・関心フェーズ
興味・関心フェーズでは次のような施策が活用できます。
- コーポレートサイト
自社サイトを活用した製品の詳細や事業内容の紹介。商品やサービスを詳しく知るとともに、企業やブランドについての理解を深めてもらう。 - メールマガジン
定期的なメールの配信により商品やサービスへの理解を深め、見込み客とのつながりを強化する。この段階で見込み客の行動の性質や嗜好を分析することが可能。 - イベント・セミナー
見込み客に自社が主催するイベントやセミナーに参加してもらい、商品やサービスの機能やメリットを理解してもらう。イベントやセミナーの情報を記事コンテンツ化させるのも効果的。
3.比較・検討フェーズ
比較・検討フェーズでは次のような施策が活用できます。
- コンテンツマーケティング
見込み客が求める情報に対して価値のあるコンテンツを提供し、商品・サービスへの関心や購買意欲を醸成する。文章や動画による他社製品との比較やベネフィットの訴求など。 - SNS・口コミサイト
比較検討フェーズにおいて、商品やサービスの客観的な評判がわかるプラットフォーム。ここで得た好意的な意見は、貴重なコンテンツとしてオウンドメディアやランディングページなどに活用できる。 - 展示会
複数の出展企業が集う展示会に参加することで、購入フェーズの手前にいる購買意欲の高い見込み客にアプローチできる。
4.行動フェーズ
行動フェーズでは次のような施策が活用できます。
- ECサイト
実店舗に加えてECサイトを用意してユーザーの利便性を高める。 - 会員特典
「無料会員になることでクーポン情報が受け取れる」といった、見込み客にとってお得な施策で販売促進を行う。 - 動画配信サイト
商品の具体的な紹介やサービスの使い方などの映像を配信し、購入に迷う見込み客を後押し。ライブ配信にインフルエンサーを起用して商品を紹介してもらう「ライブコマース」という販売方法もある。
カスタマージャーニーを成功に導く考え方
ここまでご紹介した知識が身につけば、カスタマージャーニーのマッピングを行うことが可能になります。より精度の高いカスタマージャーニーマップを作るためにも、成功につながる考え方を理解しておきましょう。
見込み客の本質的なニーズを理解する
カスタマージャーニーで見込み客の行動や思考、感情を正確に予測するには、見込み客の本質的なニーズを理解する必要があります。企業側でイメージした顧客像と本来のニーズにズレがあると、想定した施策の効果が高まらない可能性があるためです。
見込み客の本質的なニーズを捉えるには、見込み客の願望や、済まさなければならない用事などを「ジョブ(仕事)」として捉える、ジョブ理論が効果的です。例えば、毎日ビールを飲むのが楽しみな人であれば、「仕事が終わった後に自分へのご褒美がほしい」というジョブが設定できます。
ジョブ理論によって見込み客の本質的なニーズを定義することで、売り手側が想定するニーズと本来のニーズのズレを埋めることができます。
近年の消費者は、売り手側が予測したカスタマージャーニーとは異なる行動をとることが増えてきているため、カスタマージャーニーの考え方自体が古いという意見もあります。
しかし、カスタマージャーニーがまったく機能しないわけではありません。そもそもカスタマージャーニーは、見込み客が主にマスメディアから情報を取得していた時代から存在します。これまでの企業目線による古いカスタマージャーニーの考え方を見直し、よりユーザー目線に立った新しい捉え方が必要です。
実態に則ったフレームワークを構想する
売り手側の想像だけでカスタマージャーニーを組み立ててしまうと失敗につながります。新規事業の場合は見込み客、既存事業の場合は既存顧客にインタビューするなどして、実態に則ったカスタマージャーニーマップを構想することが大切です。
効果検証と改善を繰り返す
前提として押さえておきたいのは、カスタマージャーニーは最初に作ってそれで終わりというものではなく、効果検証と改善を繰り返してブラッシュアップしていくものということです。どれだけ設計段階でカスタマージャーニーを練り込んだとしても、施策を進めるなかで、想定通りの効果が得られない場合もあります。
進めている施策に対して適切な効果検証を行えば、カスタマージャーニーと実態のズレを把握し、軌道修正が可能です。リードが創出できている・できていないタッチポイントや施策、離脱が起きているポイントなどを検証し、改善を繰り返すことで、より見込み客にとって満足度の高い体験を提供できます。
カスタマージャーニーは、マーケティング施策のスタート地点であるのと同時に、常に立ち返るべき場所といえるのです。
カスタマージャーニーを活用した企業事例を知りたい方は、以下の2記事をご覧ください。
カスタマージャーニーマップの作成にチャレンジしよう
見込み客の購買プロセスごとに適切な施策を洗い出せるカスタマージャーニー。見込み客の行動や思考、タッチポイントを想定することで、適切な施策の立案や課題の想定、優先順位付けができるようになります。
カスタマージャーニーの精度を高め、想定した施策を成功に導くためには、ペルソナやフェーズといった基本となる6つの構成要素をよく理解し、見込み客の行動や思考を基にしっかりとニーズを捉えることが大切です。成功法則を踏まえてマッピングを行い、効果検証をしながら都度更新していくことで、より適切な施策で見込み客を快適な「旅」へと導けます。
カスタマージャーニーマップを初めて作成する場合は、テンプレートの活用がおすすめです。HubSpot独自のテンプレートを使いたい場合は、こちらの記事をご覧ください。