ECサイトやサブスクリプションサービスのWebサイトで、「あなたにおすすめ」というテキストと共に、商品やサービスの紹介が表示された経験はありませんか。これは、「レコメンドシステム」という機能によるもので、レコメンドシステムをメールに活用したのが「レコメンドメール」です。
レコメンドメール(パーソナライズドメール)とは、ユーザーの属性や行動履歴に基づいて最適化された内容のメールを配信する手法です。たとえばカゴ落ちしたユーザーに対して、メールで購入を促すようなアプローチが可能になります。
本記事ではレコメンドメールの仕組みやメリット、導入時のポイントなどを解説します。
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レコメンドメールとは?
レコメンドメールとはユーザー属性や行動・購入履歴などに基づき、個別のユーザーに最適化されたメールを配信する手法です。メールの内容がユーザーごとにパーソナライズ(個別最適化)されるため、「パーソナライズドメール」とも呼ばれます。
同じ内容を一斉配信するメールマガジンとは異なり、レコメンドメールの場合は、各ユーザーが興味を持ちそうな商品やコンテンツを提案できるのが特徴です。
ユーザーは自分の求めていた情報へすぐにたどり着けるので、満足度の向上につながります。企業側は、顧客に上位モデルの製品を提案するアップセルや、セット商品を勧めるクロスセルなどの効果が期待できます。
レコメンドメールの必要性
Amazon(アマゾン)やNetflix(ネットフリックス)にはレコメンドシステムが搭載されており、ユーザーの視聴履歴などを基に、おすすめの商品や動画が表示される仕組みになっています。レコメンドシステムの拡大に伴い、レコメンドメールの需要も徐々に高まっています。
これまでは、レコメンドメールを好むユーザーと好まないユーザーは、およそ半々の割合でした。凸版印刷の連結子会社であるトッパン・フォームズの調査を見ると、2014年にはパーソナライズ(レコメンド)DMを好ましいと思う人が約4割にのぼる反面、同じく約4割の人が好ましくないと回答していることが分かります。
出典:TOPPAN FORMS|年齢や性別、購入履歴に基づいて内容が最適化された「パーソナライズDM」は生活者に受容される傾向に
しかし2019年になるとパーソナライズDMを許容するユーザーが増加しており、反対に「好ましいと思わない」と回答したユーザーが大幅に減少しています。DMとデジタルメールでは発行物が異なりますが、レコメンドシステムそのものを受容する人が増えていることは間違いないでしょう。
情報化社会において、消費者は自分と関連が深いコンテンツを望むようになってきています。レコメンドメールは、新しいユーザーのニーズに応えるためにも導入すべき施策だと言えます。
レコメンドメールの主な3つの種類
レコメンドメールには以下の3つの種類があります。
- 協調フィルタリング
- コンテンツ・フィルタリング
- ハイブリッド・フィルタリング
それぞれの仕組みを理解したうえで適切なレコメンドメールを導入しましょう。
協調フィルタリング
協調フィルタリングとは、ユーザーの購入履歴や閲覧履歴に基づいてレコメンドメールを配信する手法です。
たとえばECサイトに協調フィルタリングを導入すると、「この商品を見た人はこんな商品も見ています」「この商品を購入した人はこんな商品も購入しています」というようなレコメンドを表示できます。
レコメンドメールにおける協調フィルタリングの仕組みもこれに似ており、「商品Aの詳細ページの閲覧履歴があるユーザーに商品Aのプロモーションメールを送る」といったアプローチが可能になります。
AIの学習機能によってユーザーの興味関心を把握するため、ある程度情報が蓄積されないと精度が高まりません。しかしユーザーの嗜好に合う商品を自動的に提案してくれるので、運用の手間がかからないというメリットがあります。
コンテンツ・フィルタリング
コンテンツ・フィルタリングとは、商品の価格や色、ブランドなどの商品属性に基づいてレコメンドメールを送る手法です。
たとえば商品Aと商品Bの関連性が高い場合、商品Aを購入した顧客に商品Bを勧めるメールを送るといった方法がコンテンツ・フィルタリングにあたります。プリンターとカートリッジ、カメラとSDカードなど、クロスセルを活用したセット販売を行いたい場合に最適です。
複数の商品の関連性を企業側で設定できるため、運用者の意図を反映させやすいというメリットがあります。ただしアイテム数が多いとデータ処理が複雑化し、運用コストがかさんでしまうことがあるので注意が必要です。
ハイブリッド・フィルタリング
ハイブリッド・フィルタリングは、協調フィルタリングとコンテンツ・フィルタリングを組み合わせた手法です。ユーザーの行動履歴と商品属性の両方を組み合わせてレコメンドメールを配信できます。
ハイブリッド・フィルタリングのメリットは、協調フィルタリングやコンテンツ・フィルタリングのデメリットを和らげることができる点です。具体的には、レコメンドエンジンに十分なデータが蓄積されるまでの間、コンテンツ・フィルタリングを活用することで精度が低くなるというデメリットを解消できます。
レコメンドメールを導入するメリット
レコメンドメールを導入する主なメリットは次の3点です。
クリック率やCVRの向上
レコメンドメールではユーザーが関心を持つ情報を発信できるため、一般的なメルマガに比べてクリック率やCVR(コンバージョン率)が高くなる傾向にあります。レコメンドシステムを提供する「さぶみっと!レコメンド」は、レコメンドメール導入後のクリック率がメルマガの2倍、CVRが4倍に向上した事例を紹介しています。
一斉送信のメルマガからレコメンドメールに切り替えることで、コンバージョンの改善が期待できるでしょう。
追客の自動化
レコメンドメールを活用すると効率良く追客を行えます。
追客とは、サイトを訪問しただけで購入に至らないユーザーや会員登録後にアクションがないユーザーなどに対して、商品の購入やサイト訪問を促す行為です。Web広告のリターゲティング機能とよく似ています。
レコメンドメールにおける追客は、カゴ落ち(カートに入れたまま離脱)したユーザーに再度その商品を提案する方法が代表的です。レコメンドシステムを活用することで上記のような作業が自動化されるため、効率的に再アプローチを行えます。
信頼度向上によるリピーター創出
消費者は、自分に合っていない商品を勧められても興味を持ちません。レコメンドメールで自分が欲しいと思っているものを提案されることで、「このお店は自分の好みをわかってくれている」という印象を抱かせ、信頼度の向上につながります。
顧客満足度が高まった結果、リピーターになってもらえる可能性もあるでしょう。
レコメンドメールの具体的なパターン
レコメンドメールには、「おすすめ商品を表示」と「カゴ落ちユーザー向けの表示」という2種類の活用方法があります。それぞれの仕組みについて詳しく解説します。
1.おすすめ商品の表示
特定の商品に関心を示したユーザーに「自社のおすすめ」を提案します。おすすめ商品を提案できるのは以下のようなケースです。
- ユーザーが特定の商品カテゴリページにアクセスした
- ECサイトの商品ページを閲覧したが、カートには追加しなかった
- サイト内検索ツールで商品を調べたが、カテゴリ・商品ページには移動しなかった
この場合、ユーザーは購入する商品をまだ具体的に決めていません。上記のような潜在層にアプローチしたい場合には、おすすめ商品を表示する方法が最適です。
2.カゴ落ちユーザー向けの表示
商品をカートに追加したままサイトを離れてしまったユーザーに再アプローチします。レコメンドメールの本文には「ショッピングカートに保存中の商品」といった情報が表示されるため、ユーザーの購買意欲を再燃させることが可能です。
カゴ落ち対策になるだけではなく、カートに入った商品に関連する商品も表示できるため、アップセルやクロスセルにもつながります。
レコメンドメールの効果を高めるポイント
レコメンドメールの効果を高めるには、ユーザーの嗜好に合ったコンテンツを表示させるのが基本的な手法ですが、少し工夫することでユーザーの反応が変わる場合があります。以下の方法を参考に、より質の高いレコメンドメールを作成しましょう。
他ツールとの連携でレコメンドシステムの精度を上げる
レコメンドメールの精度は、他ツールとの連携によって向上させることができます。
たとえばCRM(顧客関係管理)やGoogleアナリティクスと連携することで、会員属性データやWebサイトの閲覧履歴などを取得できます。さまざまなツールと連携すればレコメンドエンジンに蓄積されているデータが補完され、さらなる精度の向上につながります。
効果測定の実施
レコメンドメール配信後は必ず効果を測定しましょう。あらかじめ定めておいた開封率やクリック率の目標値(KPI)と実数値との差を確認し、不足するようならレコメンドの条件設定やコンテンツの内容を見直します。
参考としてメルマガの各KPIの平均値を見てみましょう。
【メルマガの各KPIの平均値(参考:Benchmark Email)】
- 開封率:37.42%
- クリック率:4.84%
- エラー率(メール不達率):1.78%
メール配信後に開封率とクリック率の数値が基準を上回っているかどうかを確認しましょう。エラー率の数値が基準を下回っていることも大切です。平均値よりも実数値が悪い場合には原因を調査します。より詳しい効果測定方法や改善策については、以下の記事で詳しく解説しています。
トランザクションやフォローメールにレコメンド枠を設置
購入後の注文確認や入金確認、発送完了などの際に送るメールを、トランザクションメールやフォローメールといいます。トランザクションメールやフォローメールはメルマガと比べて開封率が高いため、内部にレコメンド枠を設置すると効果を発揮しやすくなります。
レコメンドメールを導入する際に確認すべきポイント
レコメンドメールを導入する際は、以下のポイントをチェックしましょう。
- 導入コスト
- ECカートの種類
- デバイスへの最適化
それぞれのポイントについて詳しく解説します。
導入コスト
レコメンドメールは、ユーザーデータが蓄積されることで効果を発揮します。効果が出るまでに時間がかかる場合もあるので、導入コストに加えて、中長期的な目線で運用コストについてもしっかりと検討しましょう。
ECカートの種類
ECサイトのカートシステムによっては、レコメンド機能が正常に動作しない可能性があります。まずは複数のツールをピックアップした後、そのツールと既存のカートシステムとの互換性をチェックしておきましょう。互換性は、ツールの公式サイトをチェックするか、ベンダーのヒアリング時に質問しましょう。
各種デバイスへの最適化
最近ではパソコン以外に、スマートフォンやタブレットからWebにアクセスするユーザーが増えています。スマートフォンアプリを使ってメールを確認するユーザーも多いため、ツールを選ぶうえでレスポンシブ対応は必須です。
レコメンドメールの活用事例
最後にレコメンドメールの活用事例を紹介します。活用事例を知ることで、レコメンドメールの具体的な効果をイメージできます。
Amazon
AmazonはECサイト内でおすすめ商品を提案するレコメンドシステムが有名ですが、そのデータベースを活用しユーザーごとに内容が異なるレコメンドメールも配信しています。Amazonが活用しているレコメンドメールの種類は以下の通りです。
- 購入履歴に基づいたメール
顧客の購入履歴からおすすめ商品を提案。メールの文面には、「お客様がこれまでに購入された商品に基づいて紹介させていただいています」と表記されている。 - 閲覧履歴に基づいたメール
特定の商品ページにアクセスしたユーザーにおすすめ商品を提案。メールの文面には、「○○商品をチェックした方へお送りしています」と表記されている。 - カテゴリ検索に基づいたメール
商品カテゴリから検索をしたユーザーにおすすめ商品を提案。メールの文面には、「○○のカテゴリで何かをお探しですか?次のような商品はいかがでしょうか」と表記されている。
TSIホールディングス
アパレル大手のTSIホールディングスは、パーソナル人工知能(AI)と連動するレコメンドメールを導入し、約7万人のユーザーにメールを配信しています。配信方法は、ユーザー属性ごとに特定の商品をレコメンドするメールと、ショップスタッフのコーディネートを個別のユーザーに送信するメールに分かれます。
何度かテストを繰り返した結果、レコメンドした商品または類似商品の実店舗での購入率が高まりました。これまで事業部が手動でおすすめ商品を提案していたメルマガに比べ、レコメンドメール導入後は1通あたりの売上額が31%アップしています。
参考:WEBCAS|AIを活用したメールマーケティングで、1通あたりの売上が最大31%アップ。素材や色合いなど顧客の好みにあったレコメンドを実施
リクルートスタッフィング
大手人材派遣会社のリクルートスタッフィングは、2017年4月より登録スタッフ向けのメールコミュニケーション改革を実施しました。その施策のなかで、レコメンドメールが活用されています。
もっとも特徴的なメール施策の一つが「7日ループメール」です。これはリクルートスタッフィングのWebサイトで求人情報を閲覧したユーザーに対し、条件が近い求人情報をレコメンドして配信する施策です。その名称の通り、配信7日後にユーザーがメールを開封していないようなら配信を停止します。
上記を含めスタッフの心情に寄り添うコミュニケーション改革を実行した結果、メール経由の求人応募数が5倍に上昇しました。
参考:Rtoaster|私たちの使命である「ご登録いただいているスタッフの方が自分らしい働き方を実現する」ために、1年間で多くのメールコミュニケーション改革を行ってきました。
レコメンドメールを活用しユーザー満足度を高めよう
レコメンドメールを活用すると、一人ひとりのユーザーに合うおすすめ商品を表示できます。ユーザーが求めている商品をレコメンドすることで、ユーザー満足度の向上につながります。その結果、企業は売上アップや見込み客の醸成といった恩恵を得られるでしょう。
レコメンドメールを効果的に活用するには、他ツールとの連携やPDCAなどの工夫を行うことが大切です。先に紹介した複数の事例を参考にレコメンドメールの効果を最大限に活かしましょう。