採用コストの平均相場はどれくらい?新卒・中途採用のコストの違いを徹底解説

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水落 絵理香(みずおち えりか)
水落 絵理香(みずおち えりか)

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企業の資産である人材の継続的な確保は、経営戦略上、重要な課題です。しかし、少子高齢化による労働人口の減少により、今後は採用の難易度が高まることが予想されています。採用が難しくなると、広告の出稿頻度を増やすなどの対策が必要となり、コストが増大します。

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実際に、リクルートの就職白書2020 によると、採用コストは新卒・中途共に増加傾向にあります。むやみに予算を増やすとをかけると企業収益を圧迫してしまうため、採用コストの平均相場を把握したうえで最適化を目指しましょう。

本記事では、採用コスト平均相場を新卒・中途に分けて解説し、採用コストを適正化する方法も具体的に紹介します。ぜひ参考にしてください。

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    採用コストとは

    採用活動には、募集・選考・決定・入社というステップがあります。採用コストは、採用のフローにかかるコストの総称であり、「内部コスト」と「外部コスト」の2つに分けられます。ここでは、採用コストの内訳や、採用活動のKPI(最重要業績評価指標)として用いられることが多い「採用単価」について解説します。
     

    内部コスト

    内部コストとは、採用関連の事務や面接対応などの業務で発生した社内費用のことです。

    内部コストの具体例は次のとおりです。

    • メディア出稿・自社サイト構築・パンフレット作成などの打ち合わせにかかる人件費
    • 電話・メールなどによる問い合わせ対応にかかる人件費
    • 選考・面接対応にかかる人件費
    • 採用担当者の交通費

    内部コストの多くは人件費のため、費用を明確にしにくい面がありますが、人事担当者が一日のうちどれくらいの時間を採用活動に費やしたかを時給で計算すると、把握しやすくなります。内部コストの最適化には、自動化ツールの導入などが有効です。効率化できる作業は積極的に減らしていきましょう。
     

    外部コスト

    外部コストとは、採用活動にかかった費用のうち、社外に支払った費用のことです。広告費やパンフレットの制作費など、自社を多くの人に認知してもらうためにかけるコストや、選考に必要な会場の使用料などが外部コストにあたります。

    外部コストの具体例は次のとおりです。

    • 求人メディアへの出稿費
    • 自社採用サイトの構築費
    • パンフレットの制作費
    • 説明会・セミナーの会場費
    • 採用エージェントへの委託費
    • 採用テストの実施費用
    • 選考の会場費

    外部コストは、内部コストよりも高額になりやすい傾向があります。費用対効果を考えながら、社内で対応できる作業は巻き取るなどしてコストを最適化しましょう。

     

    採用単価との違い

    採用コストは、企業規模や採用人数によって変動します。自社の採用コストが最適かどうかを判断するには、採用にかかるコストの総額を採用人数で割って算出できる「採用単価」を指標にすると良いでしょう。

    採用単価 = 採用コスト ÷ 採用人数

    1人当たりの採用コストが明確になれば、自社で過去に実施した採用活動や他社との比較もしやすくなります。

    1人当たりの採用コストについては、次の記事をご覧ください。

     

    採用コストの平均相場

    ここでは、新卒・中途にかかる採用コストの平均相場を比較してみましょう。全体的な傾向としては、中途のほうが新卒よりも採用コストが高くなる傾向にあります。
     

    新卒の採用コスト

    リクルートの就職白書2020 によると、2019年度の入社予定者1人当たりの新卒の採用コストは平均で93.6万円でした。2018年度は71.5万円で、増加していることがわかります。

    2019年卒マイナビ企業新卒内定状況調査の結果から、新卒の採用コストの内訳を上場企業と非上場企業に分けて詳しく見てみましょう。

    リクルートの就職白書2020

    非上場企業の場合、採用コストの約半分を広告費が占めています。一方の上場企業では、セミナーの運営費やインターンシップ費用など、広告費以外にも幅広くコストが分散していることがわかります。上場企業は非上場企業に比べて採用人数が多く、採用に携わる担当者の人数も増えます。非上場企業に比べて人件費の割合が高くなることが要因の一つと考えられるでしょう。

    また、採用単価で見ると、上場企業が1人当たり45.6万円であるのに対し、非上場企業は48.4万円となっており、非上場企業のほうがやや高くなっています。 非上場企業の平均採用コストは上場企業の約4分の1にもかかわらず、実際の入社予定者が少ないため採用単価が上場企業を上回っています。求人数にも差があるため、一概にはいえませんが、非上場企業は上場企業に比べると採用が難しい傾向にあると推測できます。
     

    中途の採用コスト

    次に中途採用の採用コストを見ていきましょう。新卒の採用コストとはどのような違いがあるのでしょうか。

    リクルートの就職白書2020 によると、中途採用者の1人当たりの平均採用コストは103.3万円でした。2018年度は83万円で、新卒採用と同じく増加していることがわかります。

    新卒採用の平均採用コストの93.6万円と比較して、中途採用のコストのほうが約10万円高いという結果になっています。中途採用は求職者に求める経験やスキルが求人ごとに変わるため、新卒に比べて採用の難易度が高いことが要因の一つといえるでしょう。

    中途採用には、専門性や実績を問わない「ポテンシャル採用」と、「即戦力を求める採用」があります。即戦力を求めるほど採用コストは高くなるのが特徴です。

    マイナビの中途採用状況調査2022年版(2021年実績)によると、採用単価も企業の規模を問わず中途採用が新卒採用を上回っています。

    マイナビの中途採用状況調査2022年版(2021年実績)

    中途採用は新卒採用と異なり、採用時期を定めず、企業が人材を採用したい時期に短期間で行われます。そのため、外部コストが採用コストの大半を占め、内定決定後のコストもほとんどかかりません。

    外部コストの内訳をさらに詳しく見てみましょう。同調査によると、中途採用にかかるおもな外部コストの平均実績は次のとおりです。

    • 人材紹介会社への紹介費:316.4万円
    • 求人広告への出稿費:127.7万円
    • ダイレクトリクルーティング:145.8万円
    • 求人検索エンジン:105万円
    • 合同企業説明会への出展費:125.2万円
    • 採用ブランディング:61.5万円

    中途採用では、人材紹介会社への紹介費が最も大きなウエイトを占めていることがわかります。そのため、中途採用のコストを最適化するうえでは、マッチングのスキルが高い転職エージェントに依頼して就職後の離職率を下げるなどの工夫が効果的でしょう。
     

    求人媒体別の採用コスト

    続いて、求人媒体別の採用コストを見ていきましょう。下の図は、1件当たりの採用コストを求人媒体別にグラフ化したものです。

    民間職業紹介事業者(紹介会社)が平均85.1万円であるのに対し、求人情報誌・チラシは平均11.3万円、インターネットの求人情報まとめサイトは平均6.4万円と、媒体によって大きな差があることがわかります。

    求人媒体別の採用コスト

    出典:採用における人材サービスの利用に関するアンケート調査 報告書

    正社員を採用する場合、民間職業紹介事業者やスカウトサービスにかかるコストは高額であることから、最適化の余地が大きい求人媒体だといえるでしょう。人材紹介やスカウトサービスの利用は、特定の専門スキルを持った人材を採用する場合に限定するなどの工夫が求められます。

    1人当たりの採用コストの詳細は、次の記事で解説しています。

     

    今後の採用コストの動向

    日本は、少子高齢化と人口減少が進み、人材不足が問題視されています。総務省の統計によると、2023年4月1日時点での日本の総人口は1億2,447万人、厚生労働省の予測によれば、2065年には9,000万人を割り込むとされています。さらに、高齢化率は38%台の水準になる見込みです。

    人材不足で採用が難しくなると、広告の出稿頻度を増やすなどの対策が必要となり、採用コストが高くなることが予想されます。

    採用コストを最適化するため、内部コストと外部コストの相場と自社の現状を比較し、削減できるコストがないかどうか定期的に確認しましょう。コストの削減と同時に、応募から内定後までの応募者の体験を向上させることで自社のファンになってもらい、内定後の辞退や離職率の低下を目指す取り組みも必要です。
     

    採用コストを無駄にしないためのポイント

    人材紹介会社への紹介費や求人サイトへの広告掲載費用など、採用にはさまざまなコストがかかります。内定辞退や早期離職によって採用コストを無駄にしないために、次のポイントを理解しておきましょう。
     

    ミスマッチを防ぐ

    ミスマッチは早期退職につながる原因となります。企業の求めるスキルや経験が不足していた、仕事内容の認識に相違があった、労働時間や人間関係に問題があったなど、ミスマッチの理由はさまざまです。

    企業は応募者に対して、具体的な仕事内容や、入社後にどのようにステップアップしていってほしいのかなど、具体的にありのままを伝えることが大切です。
     

    内定後のフォローアップを欠かさない

    リクルートの就職白書2020 によると、採用数が「計画より若干少ない・かなり少ない」と回答した企業があげた理由は、「選考応募者が予定より少なかった」が最多で51.4%となりました。次に、「内定辞退が予定より多かった」が48.6%でした。

    さらに同調査で、採用予定数を100とした場合に採用予定数の1.75倍に内定を出し、約半数が辞退したという結果が出ています。

    • 採用予定数:100
    • 面接人数:602.1
    • 内定出し人数:175.0
    • 内定辞退人数:83.1
    • 内定数:89.5

    内定辞退者からは、「コミュニケーション不足により不安を感じた」「疑問を解消する機会がなかった」などの声があがっています。

    内定辞退を防ぐには、懇親会や座談会の場を設けたり、SNSなどのオンラインツールを活用したりするなどの方法で、内定者と定期的にコミュニケーションを取ることが大切です。

    また、求職者が応募先の企業を選定する段階では、企業のWebサイトや採用サイトが、自社に関心を持ってもらうための重要なタッチポイントです。これらの媒体を活用し、応募者に対して適切な情報を提供しながらコミュニケーションを取ることで、エンゲージメントの向上が期待できます。

    内定の辞退率が下がるだけでなく、自社に良い印象を持った状態で内定者が入社することになるため、入社後のモチベーション向上にも寄与します。

    このように、自社コンテンツをターゲットとなる応募者に向けて発信し、関係性を構築して採用に結びつける手法を、「インバウンドリクルーティング」といいます。応募者に対して企業のほうから先に価値を提供し、ファンになってもらうのがインバウンドリクルーティングの本質です。
     

    無駄のない採用コスト作りには現状把握が大切

    採用コストの最適化を図るには、現状を把握することが重要です。採用コストの相場を知り、自社の現状が平均値と比較してどの程度なのかを確認しましょう。

    また、「この会社に応募して良かった」と感じてもらえるような採用活動を提供することも重要なポイントです。インバウンドリクルーティングによって応募者と信頼関係を築くことで内定の辞退率が下がり、結果的に採用コストの削減にもつながるでしょう。常に応募者の視点に立ち、採用活動の最適化を目指しましょう。

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    トピック: 採用管理

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