ヴェブレン効果とは?マーケティングでの活用方法や事例を解説

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水落 絵理香(みずおち えりか)
水落 絵理香(みずおち えりか)

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高級ブランドを所有して高いステータスを得たり、高額商品を見せびらかして顕示欲を満たしたりと、贅沢品には人の欲望を刺激する魅力が備わっています。このように、高価な商品やサービスが需要を喚起する行動心理学を「ヴェブレン効果」と呼びます。

ヴェブレン効果とは?マーケティングでの活用方法や事例を解説

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    ヴェブレン効果を上手く活用すれば、消費者の購買意欲を醸成できます。ただし、商品・サービスとの相性の見極めや、活用範囲の明確化が必要になるので注意が必要です。

    本記事では、ヴェブレン効果が働く条件や事例、活用時のポイントを解説します。マーケティングに行動心理学を取り入れたい方は参考にしてください。

    ヴェブレン効果とは

    ヴェブレン効果とは、高価な商品やサービスほど消費者の需要が高まる現象を表した行動心理学です。贅沢品や高級ブランドなど、高価なものを他者に見せびらかしたり(見せびらかし消費)、それによって自身の顕示欲を満たしたりする際に(顕示的消費)、このヴェブレン効果が働きやすいといわれています。

    1899年、米国の経済学者ソースティン・ヴェブレン氏が「The Theory of the Leisure Class(有閑階級の理論)」と呼ばれる経済論文を発表し、見せびらかし消費や顕示的消費の行動原理を明らかにしました。その著者の名前から、経済学者のハーヴェイ・ライベンシュタイン氏がヴェブレン効果を提唱。21世紀に入ってからも、ラグジュアリー市場をはじめとするマーケティングでこの行動心理学が広く活用されています。
     

    ヴェブレン効果の事例

    ヴェブレン効果は、高級車や高級ブランドといった主に高価格帯の商品・サービスで作用します。

    ここでは、ヴェブレン効果を活用しやすい4つの事例を紹介します。
     

    高級車の事例

    高級車市場では、ヴェブレン効果が顕著に表れます。

    数ある高級車ブランドのなかでも、近年特に好調なのがランボルギーニです。2022年には過去最高となる9,233台の納車台数を記録し、売上高や営業利益率も記録的な増加率を見せています。

    日本でも業績は好調で、国別の販売台数で第5位にランクアップしました。中期経営計画では、史上最高額の25億ユーロの事業投資を見据えています。

    自動車は本来、ひとつの移動手段ですが、ステータスシンボルにもなり得ます。だからこそ、高価格帯の商品は人々の自己顕示欲を強く刺激するといえるでしょう。

    参考: アウトモビリ・ランボルギーニ 2022年過去最高の納車台数、売上高、利益率を達成|LAMBORGHINI OSAKA KOBE NEWS
     

    高級ブランドの事例

    高級ブランドは、自身のステータス向上につながりやすく、見せびらかし消費や顕示的消費と密接な関係があります。そのため、ヴェブレン効果が働きやすい領域のひとつだといえるでしょう。

    最近では、複数の高級ブランドを傘下に持つモエヘネシー・ルイヴィトン(LVMH)が、好調な業績推移を見せています。2023年12月期通期決算では、過去最高となる861億ユーロの売上高を記録。日本でも前年同期比28%増の増収を達成しました。

    ファッションに限らず、家具や家電、美容など、高級ブランドが存在するさまざまな領域で活用が可能です。

    参考: 仏LVMHの売上高、過去最高の13兆円 23年12月期|日本経済新聞
     

    高級マンションの事例

    不動産売買でもヴェブレン効果が働くケースがあります。

    例えば、不動産価格が著しく高騰した2023年7月には、東京23区における1億円以上のマンションの約93%が売約済みとなりました。 8,000万円以上1億円未満の物件の成約率が64%程度なのに対して、高額な物件ほど堅調に売れていることがわかります

    同時期の発売戸数を見ると、1億円以上のマンションは748戸、8,000万円以上1億円未満に限ると453戸になるため、高額な物件の数が極端に少ないわけではありません。つまり、希少価値が高いからよく売れるというよりも、節税対策として有利な点や、世帯間格差が広がっていることなどが要因として考えられます。

    参考: 1億円超の高額物件ほどよく売れる……顕在化する格差「東京でも不動産は三極化する」|Yahoo!JAPANニュース

    首都圏 新築分譲マンション市場動向(2023年7月)|株式会社不動産経済研究所
     

    プチ贅沢品の事例

    ヴェブレン効果は購入ハードルが高い高額な商品やサービス以外に、より身近な存在の贅沢品である「プチ贅沢品」にも適用できます。例えば、少しグレードの高い食材や高級スイーツ、お酒のほか、高級エステなどの体験もプチ贅沢品です。

    高級車や高級ブランドほどの出費は必要なく、SNS映えするため購入者の顕示欲を満たしやすく、ヴェブレン効果と相性が良いといえるでしょう。
     

    ヴェブレン効果が働く条件

    ヴェブレン効果が働く条件は、主に次の2つに分かれます。

    • 社会的に価値が認められている
    • 希少価値が高く価格が高額

    それぞれの条件について詳しく解説します。
     

    社会的に価値が認められている

    ヴェブレン効果は、社会的に価値が認められている物事に対して作用します。社会的な価値が低かったり、誰も知らないような商品やサービスだったりすると、顕示欲を満たすことは難しいためです。

    例えば、ブラックカードやプラチナカードは、ほかのクレジットカードに比べて特典や付帯サービスが優れている点から、ハイステータスというイメージが定着しています。だからこそ一部の消費者は、高額な年会費を支払ってでもブラックカードやプラチナカードを欲しいと感じます。

    このように、ヴェブレン効果を活用する際は、社会的価値の高い商品やサービスで用いるのが効果的です。
     

    希少価値が高く価格が高額

    希少価値が高く、なおかつ高価なものは、それだけ入手するのが難しいものです。そのため、所有しているだけで周囲の人から羨ましがられ、自己顕示欲を刺激します。

    具体的には、世界に数個しか存在しない限定品や美術品、高級ブランド商品などが該当します。また、日常的に用いられる身近な品物であっても、数量や販売期間などを限定することで希少性が生まれます
     

    ヴェブレン効果と関連する心理効果

    行動心理学には、ヴェブレン効果のほかにも、バンドワゴン効果やスノップ効果など、さまざまな種類があります。ヴェブレン効果と組み合わせて活用できるものもあるため、それぞれの特徴や活用シーンを押さえましょう。
     

    バンドワゴン効果

    バンドワゴン効果とは、使用者の数が多い商品やサービスほど、消費者の需要が高まる現象を表した行動心理学です。パレードの先頭を行く楽隊車(バンドワゴン)に、行列が続く様子から転じて名付けられました。

    商品やサービスの使用者が多いということは、消費者からすると、「皆が使っているなら、きっと良いものだ」という心理が働きます。また、集団と同じ行動をして安心を得ようとする同調効果とも密接な関係があります。

    マーケティングでは特に、コピーライティングの分野でバンドワゴン効果を活かせます。例えば、「お客様満足度ナンバーワン」「累計販売数10万個」といった形でキャッチコピーを作成すれば、商品やサービスの販売促進に効果を発揮するでしょう。
     

    スノップ効果

    スノップ効果はバンドワゴン効果とは反対に、多くの人が利用している商品やサービスほど、消費者の需要が低くなる現象を表した行動心理学です。そこには、「他者と異なるものが欲しい」という差異化の心理が働きます。

    例えば、人気の高い機種を選ばず、あえて少しマイナーなメーカーのスマートフォンを購入するようなイメージです。そのほか、販売地域や数量などが限定されている商品も他者と被りにくく、差異化願望を満たしやすいといえるでしょう。希少価値が高いものに引かれるという点では、ヴェブレン効果とよく似ており、相乗効果を発揮します。
     

    ヴェブレン効果を活用する際のポイント

    ヴェブレン効果を活用する際は、消費者の「共感する・実感する・共有する」という行動体系から適切な施策を検討することが大切です。それぞれのフェーズで施策を実施するなら、次のようなアクションプランを見出せます。

    • 共感:高級感のあるイメージでブランディングを行う
    • 実感:商品やサービスに特別な価値を持たせる
    • 共有:ブランドイメージや口コミが拡散する工夫を凝らす
       

    共感:高級感のあるイメージでブランディングを行う

    そもそも自社商品・サービスの高級なイメージや、希少価値の高さが一般的に認識されていなければ、ヴェブレン効果は機能しません。そのため、まずはブランディングを通じて、自社商品・サービスの価値を消費者に共感してもらう必要があります

    ブランディングを行うには、テレビCMを中心としたマス広告に加え、動画広告やSNS広告、デジタルサイネージなどを活用するのが一般的です。また、店舗やECサイト、Webサイトなどを、一貫したブランドイメージで統一するのも良いでしょう。
     

    実感:商品やサービスに特別な価値を持たせる

    必要十分なブランドイメージが醸成されれば、消費者が実際に商品やサービスを購入し、共感から実感のステージに移行します。

    ただし、高価格にもかかわらず内容が乏しいなど、価格と内容が釣り合わない商品・サービスは、消費者の期待を失望へと変化させ、かえってブランドイメージを悪化させてしまいます。そのため、本来のイメージ通り、またはそれ以上の付加価値を持たせることが重要です。

    消費者の顕示欲を満たすには、マーケティング・営業活動で得た顧客情報を製品開発の段階にまで落とし込む必要があります。消費者が自社商品・サービスに対して価値を感じるポイントや、価値を実感してもらうために不足している要素を洗い出し、既存製品の改良、あるいは新製品の開発へとつなげましょう。
     

    共有:ブランドイメージや口コミが拡散する工夫を凝らす

    商品やサービスを購入した顧客の満足度が高ければ、良い口コミやレビューが生まれます。すると強固なブランドイメージが確立され、また新たな顧客を呼び寄せるといった好循環につながります。

    そのためにはブランドイメージや口コミが拡散する仕組みを構築することが大切です。具体的には、SNSでのハッシュタグキャンペーンやコミュニティサイトの構築などの方法があげられます。

    インフルエンサーを起用するのも方法のひとつです。高級感や洗練されたイメージがあるインフルエンサーに商品やサービスを紹介してもらうことで、消費者の購買意欲を強く刺激できます。
     

    ヴェブレン効果を活用してマーケテイング施策を最適化しよう

    マーケティング施策を実行するうえで、消費者の行動原理を読み解くことは非常に重要です。ヴェブレン効果を適切に活用することで、消費者の購買意欲の醸成につながるため、売上向上に大きな効果を発揮します。

    ただし、商品・サービスの種類によってはヴェブレン効果が発揮しない可能性があるため、ヴェブレン効果が働く条件をよく理解することが大切です。また、商品・サービスそのものの価値を見出し、消費者に適切なイメージを伝えることも欠かせません。

    今回紹介したポイントを踏まえ、自社のマーケティングにヴェブレン効果を活用してみてはいかがでしょうか。

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