VRIOとは、自社の経営資源や競合優位性を把握できる分析フレームワークです。VRIOを活用することで、経営戦略に役立てることができます。
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本記事では、VRIO分析の概要やメリット・デメリット、やり方について詳しく解説します。また、VRIO分析を行う際の注意点や事例も紹介するので、VRIOを活用する際には参考にしてください。
VRIO分析とは=自社の競争優位性を把握するためのフレームワーク
VRIO(ブリオ)分析とは、自社の競争優位性や経営資源の価値を把握するためのフレームワークです。VRIO分析では、企業が持つヒト・モノ・カネ・情報について分析を行うことができます。
VRIO分析の評価対象となる経営資源には、次のようなものがあり、有形・無形を問いません。
- 不動産
- ノウハウ
- ブランド力
- 特許システム
- 人材(能力やスキル)
- 組織力
次の4つの問いかけにYesかNoで回答し、評価を導きます。
- Value(価値):自社の経営資源の価値がどの程度あるのか
- Rarity・Rareness(希少性):競合他社と比べて自社の独自性がどれくらいあるか
- Imitability(模倣困難性・模倣可能性):自社の持つ経営資源が他社にどの程度模範できるか
- Organization(組織):自社の経営資源を活用できる組織力があるかどうか
各項目について詳しく見ていきましょう。
Value(価値)
Value(価値)の項目では、自社の経営資源の価値がどの程度あるのかを評価します。
- 売上や利益にどのくらいの影響を与えているか
- 社会にどのくらいのインパクトを与えているか
- 顧客が継続してお金を払う価値はあるか
- ビジネスチャンスの創造につながるか
ここでの「価値」には、資金だけでなくノウハウやヒト・モノ・カネ・情報などすべての価値が含まれます。自社の経営資源を活用して、顧客のニーズを満たす価値を提供できているかを評価するのがポイントです。
Rarity・Rareness(希少性)
Rarity・Rareness(希少性)の項目では、競合他社と比べて自社の独自性がどれくらいあるかを評価します。一例として、独自性が強い商品やサービスは市場のなかでの希少性が高まり、結果として顧客に提供できる価値も高まります。
自社の持つ技術やノウハウで、希少性を出せるかどうかを分析しましょう。
Imitability(模倣困難性・模倣可能性)
Imitability(模倣困難性・模倣可能性)の項目では、他社が自社の持つ経営資源をどの程度模倣できるかを評価します。競合他社が模倣できない、または模倣が難しいスキルは、差異化につながる要素の一つとなります。
資源や能力が模範される可能性が低いほど、競合他社との差異化を長期間維持できます。また、模範困難性を高めるためには、独自の技術やノウハウを、特許申請などの法的拘束力を利用して保護しなければいけません。
Organization(組織)
Organization(組織)の項目では、自社の経営資源を活用できる組織力があるかどうかを評価します。資源や能力を効率的に活用している場合、競争上の優位性を獲得しやすくなります。
経営資源を有効活用するためには、組織体制や教育制度、フローなどを整えることが重要です。他社に比べて価値の高い経営資源を有していたとしても、企業が組織的に機能していないと、その資源を活かしきれていないと判断します。
VRIO分析のメリット
ここでは、VRIO分析をすることで企業が得られるメリットについて解説します。
強み・弱みを可視化できる
VRIO分析により、自社の経営資源の強みや核となる「コアコンピタンス(Core competence)」を明確化できます。コアコンピタンスは「中核能力」を意味し、他社を圧倒的に上回る強みのことです。変動の激しい市場の中で生き残るためには、コアコンピタンスを軸とした経営が必要となります。
また、VRIO分析は、自社の強みだけでなく弱みも知ることができます。競争優位性が明確になる一方で、弱みの発見ができ、それを補完・解消するような施策に活かせるでしょう。
競合他社との差異化を実現できる
VRIO分析によって、経営資源を把握すると競合他社との違いが明らかになり、差異化がしやすくなります。
経営資源を把握することは、自社の商品やサービス・ビジョン・ノウハウなどにおいて、独自性を生み出すきっかけとなるでしょう。
経営戦略に役立つ
VRIO分析を行うと、経営戦略の立て直しや見直しに活用できます。経営戦略は、中長期的な企業の活動方針を立てるために必要です。
戦略立案には、根拠と判断基準となる要素が求められるため、自社の経営資源や強み・弱みが明確化できるVRIO分析が役立ちます。VRIO分析の結果を通じて、市場環境に応じた経営戦略を展開できるでしょう。
VRIO分析のデメリット
VRIO分析を行う前に、デメリットも把握しておきましょう。
分析に時間を要する
VRIO分析の実施には、組織力やノウハウを含めた情報収集が必要です。
小規模な企業は、比較的短期間で分析ができますが、多くの経営資源を保有している企業ほど、分析に時間がかかるのがデメリットといえるでしょう。
定期的な分析実施が必要
VRIO分析は一度実施しても、その結果を永続的に活用できるわけではありません。顧客の価値基準や競合他社の状況といった外部環境は変化があるため、定期的に分析し直す必要があります。
特に、世界情勢が大きく変わるような出来事があると、顧客の価値基準や市場の環境は大きく変わります。状況によっては、過去に実施したVRIO分析が活用できなくなることもあるでしょう。
競合企業の詳細は分析できない
VRIO分析は、あくまでも自社の経営資源を明らかにするためのフレームワークです。競合他社の詳細な分析には向いていないので注意しましょう。
競合他社が公開しているSNSやホームページ、社外向けの資料などをもとに分析を行うことになるため、詳細な分析はできません。
【5ステップ】VRIO分析のやり方
VRIO分析は、先述した4つの視点から評価を行うだけではなく、正しい手順を踏んで実施することが大切です。VRIO分析は、次の5つのステップで行います。
- 分析の目的を明確化
- 経営資源の洗い出し
- 分析対象の競合他社の選定
- VRIO分析の実施
- 経営戦略を立てる
1. 分析目的の明確化
VRIO分析の最初のステップは、VRIO分析を行う目的や経営戦略にどのように活用するかを明確化することです。VRIO分析をすること自体が目的になってしまうと、十分な成果が得られません。
VRIO分析は、時間がかかるため目的を細かく設定しすぎないようにして、分析を効率的に進めましょう。
2. 経営資源の洗い出し
VRIO分析の材料となる自社の経営資源について、バリューチェーン分析を用いて洗い出しを行います。
バリューチェーン分析とは、商品やサービスを生み出して消費者に提供するまでの各工程を分析するフレームワークのことです。工程ごとに生み出している価値が明確になり、自社の強みや弱みを把握することに役立ちます。経営資源の再配分に活用されるフレームワークであるため、VRIO分析での経営資源の洗い出しに適しています。
3. 分析対象の競合他社の選定
希少性や模倣可能性を分析するために、自社の経営資源と比較する競合他社を選定しましょう。
選定した企業によって結果が異なるため、目的に適した競合他社を選定するのがポイントですが、比較する競合他社の範囲を広げすぎると、分析に時間がかかってしまいます。そのため、はじめは比較する競合他社の範囲をできるだけ絞りましょう。
4. VRIO分析の実施
VRIO分析の4つの視点を順番に、YesかNoで評価します。次の表を参考に、Value→Rareness→Imitability→Organizationの順番で競合他社との相対評価を行いましょう。
すべての項目がYesの場合、自社の経営資源は持続的な競争優位性があると判断できます。Noの評価が出た場合、その後の競争優位性の判断に影響しないため分析は終わりです。
つまり、VRIO分析ではVRIO全てがYesの場合のみ、持続的な競争優位性があると判断します。
5. 経営戦略を立てる
VRIO分析が完了したら、その結果をもとに経営戦略を立てましょう。評価が高かった部分を最大限に活用するためにはどうするか、評価が低かった部分をどう改善するかを検討していきます。
優位性の持続や拡大の可能性も考えながら戦略を立てるのがポイントです。
VRIO分析を行う際のポイント・注意点
VRIO分析を行う際には、次のようなポイントや注意点を押さえておきましょう。
時間をかけすぎるとギャップが生じる
VRIO分析で正確な結果を導くためには、判定項目を緻密に設定することが重要です。しかし、分析に時間をかけると顧客や市場の状況が変わってしまい、ギャップが生じます。結果として正確な分析ができなくなるため、分析にかける時間に注意しながら進めましょう。
経営資源の活用方法は導き出せない
VRIO分析は、経営資源の優位性や弱みについては分析できるのが特徴ですが、具体的な活用方法までは導くことができません。VRIO分析を有効活用するには、経営資源を重要視する経営理念である「リソースベースビュー」を活用しましょう。
リソースベースビューは、「模倣優位性が高い経営資源の活用で競争優位を獲得できる」という考え方です。VRIO分析で経営資源を評価し、リソースベースビューを用いて経営資源の活用方法を検討すると良いでしょう。
社員がチャレンジにしづらくなる可能性がある
VRIO分析は、人材ポテンシャルが評価されにくいという特徴があります。そのため、VRIO分析を重視しすぎた経営戦略を実行すると、社員が慎重になり、チャレンジしづらい社風を生む可能性があります。
能動的でチャレンジングな提案や発言が起こりにくくなる場合があるため、VRIO分析の結果のみに固執するのではなく、社員との向き合い方も検討しましょう。
VRIO以外のフレームワークを活用しながら、多角的な自社分析を行うことも大切です。その他のフレームワークについて詳しく知りたい方は、次の記事をご覧ください。
VRIO分析の例
VRIO分析は、さまざまな企業で活用されています。ここでは、実際に企業で活用されたVRIO分析の例を2つ紹介します。
スターバックスの例
スターバックスは、世界的に認知度や信頼性が高い企業です。おしゃれで高級感のある空間を提供して競合との差異化を実現しているだけでなく、独自で開発したコーヒーの希少性が高いことも評価されています。
また、接客マニュアルがなくスタッフの個性を生かした接客をしている点でも評価が高くなっています。スターバックスのVRIO分析の一例は次の通りです。
- Value(価値):どこの店舗でも清潔感がある。いつ来店しても、快適で充実した時間を過ごせる。
- Rarity・Rareness(希少性):独自のコーヒー豆を開発している。接客マニュアルがない。
- Imitability(模倣困難性・模倣可能性):世界的に展開しており、同様の店舗数を展開するにはコストがかかる。スターバックスと同様の品質を保ち、それを元に、信頼性を得るのは容易ではない。
- Organization(組織):接客マニュアルがないため、スタッフの個性を生かした教育ができている。
マクドナルドの例
マクドナルドは、2024年時点で創立53年を迎えました。圧倒的な知名度や影響力を持ち、中小企業が競争するには難易度が高いといえるでしょう。マクドナルドをVRIO分析した結果は、次のようになります。
- Value(価値):駅前などに店舗を構えており、アクセスがしやすい。リーズナブルなファーストフード店である。
- Rarity・Rareness(希少性):歴史・知名度・信頼性・ブランド力などに関して肩を並べられるハンバーガー店がない。
- Imitability(模倣困難性・模倣可能性):マクドナルドのように、海外に広く展開するには、莫大なコストがかかる。長い年月を経て確立されたノウハウは真似しにくい。
- Organization(組織):海外展開しており、安定した経営をしている。
VRIOを活用して経営戦略を最適化しよう
VRIO戦略は、4つの要素をもとに自社の経営資源の価値を分析できるフレームワークです。VRIO分析により自社の強みや弱みを可視化し、競争優位性を把握できます。VRIO分析を行う際には、目的を明確化し分析対象の競合を適切に選定することが大切です。
VRIO分析で自社の持続的に優位な経営資源や弱みを理解したうえで、経営戦略を最適化しましょう。