ワークフロー図とは、業務の流れを視覚的に整理し、表した図のことです。目的に応じた適切なワークフロー図を作成できれば、作業の抜け漏れや無駄を防げるため、効率化につながります。

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本記事では、ワークフロー図の基本的な種類や作成手順、運用のポイントについて解説します。
ワークフロー図とは
ワークフロー図とは、作業プロセスやタスクの処理手順といった一連の流れを視覚的に表現した図のことです。業務の各プロセスや関係性を整理し、誰が・いつ・何をするのかを明確に示した図です。
ワークフロー図を活用すれば、業務の流れを直感的に理解できるようになり、関係者間の認識を統一できます。業務の標準化や効率化、改善、部門間の円滑なコミュニケーションにも役立ちます。
ワークフロー図を作成するメリット
ワークフロー図を作成する主なメリットは、次の4つです。
- 業務プロセスの可視化
業務の流れを視覚的に把握しやすくなり、全体像も理解しやすくなるため、不要な工程の発見や改善につながる。 - 業務の属人化防止
業務を図式化することで手順を明確にして標準化できるため、各担当者に依存しない仕組みを構築できる。従業員の教育にも活用でき、スムーズな引き継ぎにつながる。 - 業務の効率化
業務の無駄や非効率なプロセスを特定しやすくなる。また、手順を標準化するとミスを抑制できるため、業務品質の向上も期待できる。 - コミュニケーションの円滑化
関係者間での業務フローの共有により、認識を統一できる。部門をまたぐ業務であっても情報をスムーズに共有できるため、連携の強化に役立てられる。
業務プロセスの流れを整理し、共通の理解を持てれば作業の円滑化や業務改善が期待できるでしょう。
フローチャートとの違い
ワークフロー図とフローチャートは、どちらも作業プロセスを可視化するための図です。
フローチャートとは、作業手順やプログラムの処理などを四角形や矢印などの記号を使ってわかりやすく図示したものです。流れ図とも呼ばれ、業務の具体的な手順を示す用途にも適しています。
一方、ワークフロー図は、フローチャートの一種で、誰が何をいつ行うかといった一連の作業の流れを視覚化したものです。業務全体の流れを把握し、部門間の役割を整理する際に役立ちます。
このように、ワークフロー図は具体的な業務の流れを示すのに対し、フローチャートはワークフロー図を含めた、さまざまな手順の論理的な流れを示す点で違います。
ワークフロー図で使用される代表的な記号
ワークフロー図の記述方法にはさまざまな種類があります。ここでは、一般的に利用されている日本工業規格(JIS)で定義される記号のうち、使用頻度の高い4つの記号を解説します。
- 開始/終了 ワークフロー図の開始と終了を示す
- 処理 業務処理を示す。1つの記号に対して1つの処理を記載
- 判断 業務プロセスにおいてフローが複数に分岐することを示す。記号のなかに条件を記載
- 線/矢印 フローの流れを示す
ワークフロー図では、これらの図形と矢印を組み合わせて、業務の流れを示します。ワークフローについて詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
ワークフロー図の種類と活用例
ワークフロー図にはさまざまな種類があるため、目的に応じた適切な形式を選ぶことが大切です。ここでは、代表的なワークフロー図の種類を5つご紹介します。
- ANSIフローチャート
- UMLアクティビティ
- BPMN(ビジネスプロセスモデリング表記法)
- スイムレーン図
- SIPOCダイアグラム
ANSIフローチャート
ANSIフローチャートは、米国国家規格協会(ANSI)が開発した標準的なフローチャートです。業務プロセスやシステムの流れを視覚的に示す基本的な形式であり、多くの場面で活用可能です。
前述した記号の多くは、ANSIフローチャートによって用いられはじめ、現在ではさまざまなフローチャートで用いられています。
【活用に適した業務の例】
- データ入力や承認フローなどの単純な事務処理
- 会計処理や勤怠申請などの手順が明確な処理
- 製造業などでの検査・出荷手順
UMLアクティビティ図
UMLアクティビティ図は、統一モデリング言語(UML)を活用し、作られたワークフロー図です。主にソフトウェア開発の分野で使われ、ネットショップのシステムなどで用いられます。
UMLアクティビティ図では、業務に関係するタスクが実行手順にならって図式化されています。時系列に沿って手順を明確に示すことで複雑な業務プロセスを整理できるため、業務全体を理解するのに役立つでしょう。
【活用に適した業務の例】
- ソフトウェア開発における「ユーザー操作」や「画面遷移」
- サービス業における「顧客対応フロー」
BPMN(ビジネスプロセスモデリング表記法)
BPMNは、UMLアクティビティ図と似たワークフロー図です。繰り返し発生する定型的なプロセスの可視化に用いられ、業務の標準化や管理に役立ちます。
複数部門にまたがる複雑な業務フローに最適です。左側に関わる部門や担当者などを記載し、各レーンで担当範囲の業務の流れを記載します。
【活用に適した業務の例】
- 経費精算など、複数部門が関与する業務全体の可視化
- 顧客対応から請求までの業務プロセスの全体管理
スイムレーン図
スイムレーン図は、業務プロセスを1つのプールにたとえ、担当者や組織などのグループをそれぞれのレーンに仕切って可視化するワークフロー図です。
担当者や部門ごとにレーンを分け、各業務プロセスにおける責任の所在を明確にします。業務の担当範囲を明確にして、役割や責任の所在を明らかにできるため、業務効率化を進められます。
【活用に適した業務の例】
- カスタマーサポートにおけるエスカレーションプロセス
- 業務委託先との役割分担の可視化
SIPOCダイアグラム
SIPOCダイアグラムは、ビジネスプロセスの概要を簡潔に示すためのワークフロー図です。次の5つの要素から構成され、それぞれの頭文字を取って名付けられました。
- Supplier(サプライヤー):供給者
- Input(インプット):入力(プロセスの開始に必要なもの)
- Process(プロセス):業務の流れ
- Output(アウトプット):出力(プロセスが終了し、次工程に引き継ぐもの)
- Customer(カスタマー):顧客
業務プロセスを大まかに整理し、ボトルネックを発見する用途に適しています。業務プロセスの全体像を把握しやすいため、プロセスの管理や分析・改善に活用可能です。
なお、「供給者」は、自分の前工程の担当であり、「顧客」とは次工程の担当を指します。
【活用に適した業務の例】
- 業務改善プロジェクトの現状把握
- 製品・サービス提供フロー
ワークフロー図の作成手順
ワークフロー図を業務に用いると、効率化やプロセスの改善に役立ちます。ここでは、ワークフロー図を作成する4つの手順を解説します。
- 作成目的の明確化とテンプレートの決定
- 作成に必要な情報の収集
- 情報の整理・図の作成
- 図の確認と改善
1. 作成目的の明確化とテンプレートの決定
ワークフロー図の作成にあたっては、使用者や作成目的を明確にします。これらの情報が曖昧な状態で作成すると、現場で活用しきれない可能性があるためです。
例えば、「新入社員への業務説明」と「業務手順の改善」に使うワークフロー図では、重視すべきポイントが異なり、記載内容や構成も変わります。対象者や目的を明確化すると適切なテンプレートを選びやすくなり、実際の業務にも役立てられるでしょう。
2. 作成に必要な情報の収集
続いて、ワークフロー図に記載する情報を収集します。まずは、業務に関わる担当者や部門を洗い出しましょう。
さらに、関係者へのヒアリングや既存のプロセスをもとに、タスクをリストアップします。この段階では、情報の整理よりも、網羅的に収集して漏れをなくすことを重視しましょう。
3. 情報の整理・図の作成
次に、ワークフロー図に記載すべきタスクを整理し、選定していきます。残すべきタスクを見極めたうえでワークフロー図に記載しましょう。特に、次のタスクは重要です。
- 分岐点となるタスク(業務の流れが複数に分かれるポイント)
- 再合流するタスク(分岐後に統合されるプロセス)
部門をまたぐ直前のタスクは、ワークフローの重要な分岐点となるため、必ず図に含めます。図に記載するすべてのタスクを時系列順に整理し、理解しやすいワークフロー図を作成しましょう。
4. 図の確認と改善
最後に、完成したワークフロー図を関係者に共有して内容を確認します。タスクの漏れや不必要な情報が掲載されていないかを確認し、必要に応じて修正します。
確認時は、現場の業務担当者にワークフロー図を試用してもらい、使いやすさを検証すると良いでしょう。運用開始後も問題点や非効率な部分があればフィードバックをもらい、継続的に改善していくことが大切です。
ワークフロー図を作成する際のポイント
効果的に運用できるワークフロー図を作成するには、次の5つのポイントを理解しておきましょう。
- 時系列順に書く
- ワークフロー作成ツールを活用する
- 1つのワークフローは1ページにまとめる
- シンプルなデザインを心がける
- マニュアルと組み合わせる
時系列順に書く
基本的に、ワークフロー図は、時系列に沿って業務プロセスを整理して作成します。時系列が前後すると、業務の流れが理解しづらくなり、適切な判断ができなくなる可能性があるためです。業務の流れを意識したうえで、縦の図であれば上から下へ、横の図であれば左から右に作成しましょう。
ワークフロー作成ツールを活用する
専用の作図ツールを活用することで、ワークフロー図を効率的に作成できます。ワークフロー図の作成には、手書きやExcelを利用する方法もあります。一方、ツールにはテンプレートが用意されていることが多く、図の作成を容易に行えます。
【ワークフロー作成ツール例】
- Lucidchart
- Creately
- Microsoft Visio
クラウド型のツールを利用すれば、リアルタイムでの共有や編集が可能になり、業務効率の向上にも寄与します。
1つのフローは1ページにまとめる
ワークフロー図は1ページにまとめることで、業務の全体像を把握しやすくなります。
一方で、ページが分かれると、フローチャートのつながりを理解しづらくなります。掲載すべき情報量が多い場合は、詳細な分岐を別の図として作成したり、記号の大きさや配置を変更したりするなどの工夫をすると良いでしょう。
シンプルなデザインを心がける
ワークフロー図は、誰が見ても内容を理解できるよう、シンプルなデザインにすることが大切です。さまざまな色を使用したり、複雑な装飾を加えたりすると、情報を読み取りにくくなり、業務の流れを把握するという本来の目的から逸れてしまう可能性があるためです。
デザインをシンプルにするには、次のポイントを意識してください。
- 線の交差を避ける
- 図や記号の大きさを揃える
- 要素を重ねて使用しない
- 使用色を4色程度に抑える
- 図形内のテキストは端的な内容にして、文字数を抑える
矢印を用いる場合は、一定の方向に揃えると、プロセスの流れを理解しやすくなります。情報を詰め込みすぎず、余白を意識的に用いて可読性を高めましょう。
HubSpotのワークフローでは、シンプルな画面設計を採用しています。次のように、ノーコードで直感的に作成できる設計が特徴です。
出典:HubSpot ナレッジベース ワークフローを作成する
マニュアルと組み合わせる
詳細な業務マニュアルと組み合わせて活用することを念頭においてワークフロー図を作成すれば、より効果的に業務を進められます。ワークフロー図は業務全体の流れを視認しやすい一方で、プロセスの具体的な説明や注意点を詳細に記述できません。これらの情報を補完するためにマニュアルは有効です。
また、ワークフロー図に登場する業務やシステム名の表記をマニュアルや関連資料と統一すると、参照しやすくなります。ワークフロー図の各工程に番号を振り、対応するマニュアルの項目とリンクさせても良いでしょう。
ワークフロー図で業務プロセスを視覚化し作業効率を向上させよう
適切に作成されたワークフロー図を活用すると、業務プロセスの可視化や無駄を削減でき、効率化につながります。プロセスの整理や担当者間の認識の統一に役立つため、業務フローの改善を検討している企業にとって重要な役割を果たすでしょう。
ワークフロー図を作成する際は、作成目的を明確にすることが大切です。専用の作図ツールを活用すると効率的に作図できます。また、時系列順に書いたりシンプルなデザインを選択したりすることも重要です。ワークフロー図を業務に取り入れて、作業の効率化を進めましょう。
