YouTubeは幅広い視聴者層を持ち、企業にとって消費者との重要な接点のひとつとなっています。2022年5月に実施されたモバイル社会研究所の調査によると、YouTubeの認知率は96.2%を超え、利用率も全体で65.2%、70代でも半数を超えています。
YouTubeマーケティング完全ガイド
YouTubeマーケティングのチャネル拡大のための30日間の学習プラン。解説動画、事例、練習課題を交えて段階的に必要な知識をすべて解説します。
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- ロイヤルティーの高いチャンネル登録者を集める方法
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企業がYouTubeマーケティングに取り組むケースも増えていますが、自社チャンネルを開設しても思うように再生回数が増えない、動画広告を配信しても成果に結びつかないと悩んでいる方もいるのではないでしょうか。
そこで活用したいのが、YouTuberタイアップというマーケティング手法です。本記事ではYouTuberタイアップについて、プロモーションの効果や事例を徹底解説します。
YouTuberタイアップとは?
YouTubeを使ってマーケティングを行うには、主に3つの方法があります。
- 自社でチャンネルを立ち上げ動画コンテンツを配信する
- YouTube広告を出稿する
- YouTuberに商品やサービスを紹介する動画の制作を依頼する
YouTuberタイアップはこの3つ目の方法で、企業がYouTuberに依頼して、YouTuberの動画として自社商品やサービスを紹介してもらうプロモーション手法です。
タイアップ動画には、画面左上に「プロモーションを含みます」と注意書きが表示されます。概要欄にも「この動画は〇〇とのタイアップ動画です」と記載され、動画の中でYouTuberがそれぞれの表現方法で商品やサービスを紹介します。
タイアップ動画は、YouTuberがアップした動画とともにチャンネルのホーム画面に表示され、誰でも視聴できます。
YouTuberタイアップで得られる効果
ここでは、YouTuberタイアップ動画を活用することで期待できる4つの効果をご紹介します。
1. ブランド・商品・サービスの認知を拡大できる
次のグラフは、YouTuberのマネジメントを手がけるUUUM株式会社の調査によるものです。
出典:クリエイター・インフルエンサーによるタイアップ動画 およびTwitter動画広告コンテンツに関する、ブランドリフト効果を検証|uuum
「【ヒカキンVSセイキン】陸上競技場貸し切って2人だけで本気の陸上大会www」というタイアップ動画を調査対象者に視聴してもらったところ、動画を視聴した人の商品認知度が、非視聴者と比較してほぼ3倍に上昇しました。この動画が認知拡大に効果があったことがわかります。
同調査では、ご紹介した動画以外にも7種類の動画について調査が行われましたが、新商品などで認知度の低いものほど、動画を通して飛躍的に認知度が高まる結果となりました。
2. 広告色を薄め購買意欲を自然に喚起できる
動画の視聴前や視聴中に、強制的に割り込んでくる動画広告は、視聴者に忌避される傾向があります。一方で、YouTuberが制作する動画は親近感があり、広告に比べてユーザーの興味を引きやすいのがメリットです。
UUUM社の調査結果では、認知度が高まっただけでなく、興味・関心や購買意向の面でも、非視聴者に比べて視聴者の数値のほうが高くなっていました。
その理由として、視聴者がYouTube動画やInstagramのクリエイターに対して「信望性」(親しみや共感)を抱いていることがあげられます。
出典:UUUM、株式会社電通と共同で「生活者のインフルエンサー受容性調査」を実施 ~インフルエンサーは「信望性」に立脚し、新たな情報ポジションを形成~
上のグラフは、UUUM社と株式会社電通が共同で行った、インフルエンサーがどれだけ生活者に受け入れられているかを調査した結果です。縦軸が「信頼性」を、横軸が親しみや共感を意味する「信望性」を表しています。新聞や、テレビ・新聞などの公式サイトは社会的に広く認知されているのに対し、「信望性」は低いことが特徴的です。一方、動画やInstagramのクリエイターは、「信望性」が高いだけでなく、「信頼性」も高くなっています。
YouTuberは視聴者にとって親しみを感じ、共感できる存在であるだけでなく、「本音を聞かせてくれる」などの面で高い信頼性のある存在といえます。
3. ターゲットを絞った訴求ができる
人気YouTuberはターゲット層を絞り込んで動画配信を行っています。また、継続して動画を見てもらうために、一貫性のある投稿を続けています。
そのため、自社の商品やサービスのターゲット層と属性が一致する層をフォロワーに持つYouTuberを見つけて、動画の制作を依頼すれば、ターゲットに対して効果的に訴求できます。
4. 長期的に訴求できる
動画広告は、配信期間が過ぎると配信がストップします。一方で、タイアップ動画はYouTuberが動画を削除しない限り、チャンネルに残り続けます。配信後、時間が経過した動画であっても、フォロワーがさかのぼって視聴してくれる可能性があり、長期的な訴求が可能です。
YouTuberタイアップの方法
ここでは、YouTuberタイアップの動画制作の流れと、実際の依頼方法を紹介します。
YouTuberへの依頼方法
Google の発表では、日本で登録者10万人以上のYouTubeチャンネルは7,700以上もあります。多種多様なYouTuberの中から、自社に合ったYouTuberを探し、依頼する方法をご紹介します。
- YouTuberマッチングプラットフォームを利用する
マッチングプラットフォームは、登録しているYouTuberとタイアップを希望する企業を仲介するプラットフォームです。YouTuberのジャンル、チャンネル登録者数やフォロワーの傾向、予算などの条件をもとに、条件に合ったYouTuberを探せます。
【代表的なマッチングプラットフォーム】 - キャスティング会社・代理店を利用する
選定から依頼、スケジュール調整や料金交渉、著作権など諸権利の確認から配信後の効果検証までの業務を一貫して任せることができます。その分、タイアップ費用は他の方法に比べて高くなる傾向があります。
【代表的なキャスティング会社・代理店】 - YouTuber事務所を利用する 動画の概要欄に連絡先として所属事務所を記載しているYouTuberもいます。彼らはマネジメントを事務所に依頼しており、仕事の依頼や交渉は窓口である事務所を通して行います。YouTuberの事務所に連絡すると、所属するYouTuberの中から条件に合う人を選んでくれます。 【代表的なYouTuber事務所】
- YouTuber個人に連絡する
概要欄の連絡先が個人のメールアドレスやSNSなどのアカウントになっている場合は、事務所に所属していないYouTuberである可能性があります。このような場合は、直接YouTuberと交渉できるため、タイアップ費用を抑えられる可能性があります。ただし、YouTuberの選定から依頼、料金交渉から効果測定まですべて自社で行う必要があります。
YouTuberタイアップ動画制作の流れ
ターゲットの属性や興味・関心、行動様式を掘り下げ、言語化します。自社の商品やサービスは誰の、どのような課題を解決するのかを考え、動画を視聴してほしいターゲットを見極めることが重要です。
- 目標を設定する
まずは、プロモーションの目標を決めます。「商品認知を高める」などのあいまいな目標ではなく、インプレッションのクリック率や再生時間、ウェブサイトへのアクセス率など、目標達成のためにどのようなデータが必要なのかを考え、計測方法・期限とあわせて設定します。 - ターゲットを見極める
ターゲットの属性や興味・関心、行動様式を掘り下げ、言語化します。自社の商品やサービスは誰の、どのような課題を解決するのかを考え、動画を視聴してほしいターゲットを見極めることが重要です。 - ターゲットに合ったYouTuberを選定する
プロモーションしたい商品やサービスと世界観が一致し、自社のターゲットとフォロワー層が重なるYouTuberはどんな人かを検討します。人気YouTuberは料金も高額になるため、予算の関係で依頼が難しいこともありますが、ここでイメージを固めておくと、YouTuber事務所やキャスティング会社に依頼する際にも希望が伝えやすくなります。
具体的にYouTuberを選定・依頼する方法は後述します。 - YouTuberと協力して効果的なコンテンツを作成する
YouTuberにコンタクトを取り、希望を伝えます。商品やサービスを体験してもらい、商品開発の背景やブランドの理念などもYouTuberと共有しましょう。 - 結果を測定する
あらかじめ設定した期限になったら、目標を達成できたかどうか、結果を分析し、次に向けて改善策を検討します。
YouTuber・YouTubeチャンネル 企業タイアップ最新事例6選
YouTuberやYouTubeチャンネルと、さまざまな業界の企業タイアップの最新事例を紹介します。
1. Amazon
【対決】Amazonでメンバーが大暴走!?学校の社会科見学中に先生にバレずに遊んでみた!!
この動画は、AmazonがYouTubeチャンネルのボンボンTVとタイアップし、Amazonのデリバリーステーションを紹介したものです。公開後1か月で21万回視聴されています。
ボンボンTVは講談社がUUUM社と共同運営している、小中高生やファミリーをターゲットとするYouTubeチャンネル。チャンネル登録者は2023年1月現在232万人です。
動画では、普段は見ることができないAmazonのデリバリーセンターの内部や、どのような人が働いているかが楽しみながら伝えられています。
2. Adobe
iPadでのPDF編集|amity_senseiのAcrobat活用術【YouTuberタイアップ #1】 ー アドビ公式
AdobeはAdobe Document Cloud JPというチャンネルを運営しています。このチャンネルではYouTuberとタイアップして、Acrobatの機能を紹介する動画をシリーズで配信しています。
この動画は、iPad YouTuberのamity_senseiとのタイアップ動画です。iPadの利用法をさまざまな角度から紹介するamity_senseiのチャンネルは、登録者数が33.4万人(2023年1月現在)を超える人気チャンネルです。動画の中でiPadでのAcrobatの便利な使い方がわかりやすく紹介されています。
3. 戸板女子短期大学
【大食い】超十代メンバーが女子大の学食全メニュー制覇に挑戦!完食できたのか!?(超十代)
戸板女子短期大学は、YouTube公式チャンネルや学生が主体的に作成する「カフェテリア企画」など、YouTubeを活用して大学のリアルを10代に知ってもらおうと、積極的な発信を続けている大学です。その戸板女子短期大学が、超十代チャンネルとタイアップした動画です。
超十代チャンネルは、モデルやタレントなどさまざまな分野で活躍する10代が、人気の企画にチャレンジするYouTubeチャンネルで、29.4万人(2023年1月現在)の登録者がいます。
戸板女子短期大学は、2022年11月に開催されたTOITA FES2022に超十代メンバーを招き、「戸板女子短期大学と超十代チャンネルのコラボ企画」を行いました。学食の雰囲気や学食メニューが伝わる楽しい動画になっています。
4. UCC上島珈琲株式会社
UCC上島珈琲ではコーヒーを一杯ずつ抽出できるコーヒーマシンであるドリップポッドを、業務用・家庭用の両方で販売しています。おいしいコーヒーが飲めるドリップポッドの認知を広げるマーケティング活動の一環として、YouTuberとのタイアップを行ったひとつがこの動画です。
暮らし方研究家としてシンプルなライフスタイルを提案しているmuji seikatsuさんは、2023年1月現在の登録者が6万人のYouTuberです。
新生児と一緒に生活する中で、音が静かなUCC上島珈琲のドリップポッドを利用してリラックスできるひと時を、静かな音楽とともに紹介しています。
5. KDDI Digital Life株式会社(povo2.0)
衝撃の基本料金0円!povo2.0を使ってみてのメリット・デメリット
auの格安プランのpovo2.0は基本料金0円で、スマホ料金を安くしたいユーザーに向けてプロモーションを行っています。これは家電レビューで人気のYouTuber・ブロガーカズさんとのタイアップ動画です。
カズチャンネルは家電やアウトドア用品のレビューを中心に配信されており、2023年1月現在、登録者数186万人の人気チャンネルです。タイアップ案件も多く投稿されており、メリットだけでなくデメリットもきちんと伝えているのが特徴です。
この動画では「2台目のスマホとして使う」という観点からレビューされており、ターゲットを絞ることで効果的な訴求を実現しています。
6. スーパードライ(アサヒビール株式会社)
高級超巨大マグロさばいて海鮮丼と刺身の舟盛り作ったら美味すぎて気絶…【ヒカキン×きまぐれクック コラボ】
アサヒスーパードライは発売から36年目を迎えた2022年、フルリニューアルが行われました。それに合わせて、総勢50組のYouTuberとコラボレーションを実施。エンタメ系やトレーニング系など、幅広い動画を配信しています。
この動画は、チャンネル登録者数1,100万人に上るYouTuberのHIKAKINさんが、魚をさばく動画で人気の「きまぐれクック」さんとコラボした動画です。投稿から9か月間で745万回再生されました。
冒頭で商品の説明とタイアップ企画であることを説明し、番組中にもスーパードライを楽しむ場面があります。それ以外は広告色が薄く、HIKAKINさんが普段投稿している動画に近い演出法がとられており、タイアップ動画であることを意識させない作りになっています。
YouTuberタイアップの注意点
YouTuberとのタイアップを行う場合には、次の点に注意してください。
- 信頼できるYouTuberに依頼する
- YouTuberにクリエイティブの自由を与える
- キャンペーン時期から逆算して早めにスケジュールを立てる
- PDCAを回しながら改善を重ねる
信頼できるYouTuberに依頼する
YouTuberを選定する際に、ひとつの目安となるのがチャンネル登録者数や「いいね」の数です。しかし、なかには偽りのフォロワーや「いいね」をお金で買っているYouTuberも存在します。
フォロワーをお金で買うようなYouTuberとのタイアップは、企業にとって悪影響となるため、YouTuberの選定は慎重に行う必要があります。事務所に所属していないYouTuberへ直接依頼する場合は特に注意しましょう。
YouTuberにクリエイティブの自由を与える
企業がYouTuberに依頼する場合のよくある失敗例として、自社商品やサービスの紹介など、企業が実現したいことをYouTuberに押し付けてしまうことがあげられます。
YouTuberは独自の世界観や視点で動画を制作しているため、いつもYouTuberが制作している動画の雰囲気と異なる動画は、すぐにフォロワーに気付かれてしまい、離脱につながりやすくなります。
YouTuberを信頼し、自由に動画を制作してもらうことが、YouTuberとのより良い関係構築につながります。
キャンペーン時期から逆算して早めにスケジュールを立てる
自社でキャンペーンを企画する場合は、インフルエンサー探しや動画制作に想定より時間がかかるケースがあります。新商品の発売やクリスマスや入学などのイベント時期から逆算し、余裕を持ってスケジューリングしましょう。
はじめての依頼には、代理店の利用もおすすめです。
PDCAを回しながら改善を重ねる
1回だけの企画では、実際にどれだけ効果があったのか、評価は難しいものです。何度か企画を積み重ね、数字を比較することによって、評価すべき点や改善点が見えてきます。
YouTuberとのタイアップを行う際は、複数回の企画を立て、PDCAを回しながら進めていきましょう。
YouTuberタイアップでユーザーを惹きつける動画を配信しよう
YouTuberタイアップは、YouTuberの影響力を借りてプロモーションを行う手法です。YouTuberとフォロワーは深い信頼関係で結ばれており、フォロワーはYouTuberの動画をいつも見ています。そのため、YouTuberが普段と違うテイストの動画を投稿すると、フォロワーはすぐに気付くでしょう。
YouTuberタイアップでは広告色の強い動画を避け、YouTuberのクリエイティブセンスを信じて、一緒に動画作りに取り組むのがポイントです。自社にマッチするYouTuberが見つかったら、長期的にブランドアンバサダーとして活躍してもらうことでイメージが定着し、更なる成果が期待できるでしょう。