引き継ぎ書は、人事異動や配置転換によって引き継ぎが行われる際のガイドラインとなるものです。場合によっては、後任者が現在と全く異なる分野の業務に従事するケースもあるでしょう。前任者は、後任者がスムーズに業務を引き継げるように準備をしておく必要があります。

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時短実現のためのヒント!業務効率化チェックシートとツール選定のコツ

今回は、わかりやすい引き継ぎ書の書き方のコツや、作成方法の流れを解説します。引き継ぎ書のテンプレートも紹介しますので、ぜひご活用ください。

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引き継ぎ書とは?

引き継ぎ書とは、何らかの理由で業務担当が交代する際に、前任者が業務内容や手順などを後任者に伝えるために作成する文書のことです。

会話でのレクチャーだけでは曖昧になりがちなことも、文書化によって伝え漏れを防止することが可能で、スムーズに引き継ぎができます。担当業務全体を解説した引き継ぎ書があれば、後任者の不安も軽減され、組織の生産性を維持できるでしょう。

引き継ぎ書に似た文書に「マニュアル」がありますが、マニュアルには会社の経営方針や業務上のルールといった、組織の指針や企業姿勢が反映されているのが特徴です。マニュアルがあることによって、社員が同じ目標を持ちながら、より最適化されたフローで業務を遂行できるようになります。

 

引き継ぎ書に記載すべき7つの項目

引き継ぎ書に記載すべき項目は次のようなものがあります。

  • 業務全体の概要と目的
  • スケジュール
  • 業務の具体的な流れと手順
  • イレギュラーな事態への対応法
  • 資料の保管場所や参照先
  • 備考(未処理の業務・懸念事項など)

それぞれの内容と作成時のポイントを見ていきましょう。
 

業務全体の概要と目的

引き継ぎ書には、業務内容の全体像や、なぜその業務を行う必要があるのかなど、業務の概要と目的を記載します。業務の意義や社内での位置づけも記載しておくことで、後任者が業務の目的や全体像を把握しやすくなり、納得して業務に取り組めます。

業務の全体像をわかりやすく伝えるため、外部の関連部署や担当者の一覧をまとめておくことも重要です。そのなかで、後任者が担う役割や、組織内での業務の振り分けまで記載しておくと、後任者の不安軽減に役立つでしょう。
 

スケジュール

どのタイミングで業務を行うのか、スケジュールを記載します。月間、年間などのスパンごとに、業務を進行する流れをまとめます

毎日行う業務であれば、実施のタイミングや優先順位を踏まえて記載しましょう。報告が必要な業務の場合は、締切や承認プロセスの明記も必要です。

また、業務完了予定日はトラブルが発生した場合を想定しておけば、スケジュールに余裕をもって対応できます。
 

業務の具体的な流れと手順

担当する業務の具体的な流れに沿って、手順をまとめます。

各ステップごとにゴールを設定しておくと、どこで次に進めば良いかがわかりやすくなります。特定のシステムやツールなどを使用する場合は、操作手順をまとめるか、既存のマニュアルを提示しましょう。

また、ログインIDやパスワードなどの引き継ぎがあれば、忘れずに記載しましょう。ただし、情報漏えいのリスクもあるため、パスワードの管理方法には細心の注意が必要です。
 

イレギュラーな事態への対応法

トラブル発生時やイレギュラーな対応が求められた時の手段や方法を記載します。フローだけでなく、サポートしてくれる人材や部署の連絡先なども記載しておくと、後任者の不安解消につながります。

重大なミスやエラーが発生した場合に、スムーズに対応できるようトラブルシューティングの記載も大切です。万が一の事態の際に慌てないためにも、詳細までしっかり対処方法を記載しておきましょう。
 

資料の保管場所や参照先

参照できる過去のデータや資料の保管先を一覧表で記載します。保管先を1か所にまとめておけば、資料の場所や参照元がわからずに探す時間の発生を防ぐ効果もあります。

複数のマニュアルを参照する場合、どのフローで使用するのかを特定したうえで、設置場所やファイル名、具体的なページ数などを記載しておくことが大切です。

また、顧客情報や取引相手の情報なども一緒にまとめておくと、参照先が複雑になりません。加えて、後任者が相談しやすいように、前任者の連絡先を記載しておくと良いでしょう。
 

備考(未処理の業務・懸念事項など)

在職期間中に終了できなかった業務は、後任者に引き継がれます。後任者が知らないままだと、未処理の業務に対応しないまま業務を進めてしまい、トラブルの原因になる可能性があります。

引き継ぎ時点でどのフローまで業務が完了しているのか、いつまでに実施すべきかなど、ステータスまで詳しくまとめておきましょう

その他、懸念事項や組織内での関係性など、個人的に引き継ぎたい要素があれば、備考として記載しておくと良いでしょう。
 

引き継ぎ書の作り方

ここでは、引き継ぎ書の作り方をステップに沿って解説します。

  1. スケジュールを立てる
  2. 業務の棚卸を行う
  3. 概要とポイントをまとめる
  4. 上司や同僚に確認してもらう
  5. 引き継ぎ書を作成する
  6. 後任者に引き継ぐ

前任者の異動や退職後に不明点が生じないよう、ポイントを押さえたうえで作成することが大切です。
 

1. スケジュールを立てる

まず、引き継ぎ書が完成するまでのスケジュールを立てましょう。引き継ぐ業務の範囲を確認し、内容を整理するところから始めます。おおよその目安として、引き継ぎの1週間前までの完成を目指しましょう

出向や転勤で現場を離れる場合は、最終出社日の3日前に引き継ぎを完了できるようなスケジュールを組むのがおすすめです。引き継ぎ書の内容や今後の予定について、上司や管理者に相談し、情報共有しながら進めます。
 

2. 業務の棚卸を行う

引き継ぎ書を作成するには、前任者自身が業務の全体像を把握していることが不可欠です。業務の棚卸を行ったうえで、業務改善が必要なプロセスや懸念点を明確にし、引き継ぎ書に反映させましょう

棚卸しでは、業務同士のつながりや関連性もしっかりと記載します。その業務を行う理由や背景を伝えることで、後任者が的確な判断ができるようになります。
 

3. 概要とポイントをまとめる

引き継ぎ書を作り始める前に、記載する内容の概要とポイントをまとめます。このステップを踏むことで引き継ぎ書の構成が固まるだけでなく、それまでの業務を客観的に振り返ることで、業務の精査やプロセスの改善などが可能になるというメリットもあります

改善点を引き継ぎ内容に反映すれば、後任者はさらに効率よく業務を行えるため、業務効率化にもつながるでしょう。

記載内容が決まったら、どのような形式やフォーマットで作成するのかを決定します。

この段階で一度上司へチェックをしてもらうと、作成後の大きなブレを防げるでしょう。
 

4. 引き継ぎ書を作成する

まとめた資料を参考に、実際に引き継ぎ書を作成します。自分以外の人もわかるようにまとめられているかを考えながら、引き継ぎ書の各項目を作成しましょう。冒頭に目次を付けると、全体像が把握しやすくなります。

また、自分だけで資料を作成すると抜け漏れが発生する可能性があります。できれば、業務に少しでも携わっていた別の担当者などからも意見をもらうと、よりわかりやすい仕上がりになります。
 

5. 上司に確認してもらう

作成が完了したら、上司にチェックを依頼します。フィードバックをもらい、追加すべき点がないかなどを確認しましょう。

なお、100%の状態まで完成させて提出すると、根本的な間違いがあった場合に作り直しになり無駄な労力になってしまううえ、期限の余裕が無くなってしまうため、50%、80%程度の段階で確認を依頼すると良いでしょう。
 

6. 後任者に引き継ぐ

引き継ぎ書が完成したら後任者へ渡します。その際、必要に応じて会話で補足の説明を行いましょう

引き継ぎ時に受けた後任者から不明点や疑問点を反映すれば、よりブラッシュアップされた引き継ぎ書になります。
 

業務の引き継ぎ書をわかりやすく作るポイント

業務の引き継ぎ書をわかりやすく作るために、次のポイントを押さえておきましょう。

  • 後任者の経験値やリテラシーを把握する
  • 「簡潔さ」「わかりやすさ」を意識する
  • 複数人でチェックする
  • 業務の必要性を見直す
  • MECEになっているかを確認する
     

後任者の経験値やリテラシーを把握する

後任者のために作成するので、相手に正しく伝わるかどうかが重要です。後任者がどのような人物なのかをできるかぎり調査し、可能であれば直接話して経験値やリテラシーを把握しておきましょう

自分にとってはあたり前にできる業務も、後任者には難しい場合もあります。後任者のリテラシーがわからない場合は、まったく業務知識がない人でも理解できるような基本的な内容から記載しておくと良いでしょう。
 

「簡潔さ」「わかりやすさ」を意識する

業務フローをしっかり伝えようとするあまり、すべての手順を詰め込んでいくと、まとまりのない引き継ぎ書になってしまう可能性があります。

最低限おさえるべき要点はどこかを明示したうえで、見出しやカテゴリ分けを適宜使い分けて、わかりやすさを意識しましょう。専門用語はなるべく使用を避け、注釈を入れるかやさしい言葉に置き換えて解説することが大切です。可能であれば、フローチャートや図解も活用すると良いでしょう。

自分のレベルを基準として相手もわかるだろうと考えず、ささいなことでも「わからないのではないか」という観点から作成していきましょう。また、文章が大きくなりすぎないよう、短く簡潔にまとめることもポイントです。
 

第三者にフィードバックをもらう

引き継ぎ書は、前任者となる社員が作成するケースがほとんどです。自分だけで作成していると、項目の記載漏れやわかりにくい説明に気がつかない場合があります。業務改善を考えるうえでも、作成途中の段階で周囲からフィードバックしてもらう機会を設けることも大切です。

慣れている業務は何気なく行っているところもあるため、他の人が確認することでこのような作業の抜けも発見しやすくなります。そのため、できるだけ第三者にもチェックしてもらうようにしましょう。
 

業務の必要性を見直す

引き継ぎ書の作成はある程度の時間を要する作業が、効率化を意識することも重要な意味を持ちます。

慣例的に行ってはいるものの、実際は必要ない業務があれば、引き継ぎ書の作成をきっかけに削除しましょう。惰性で行っていた目的がない業務を取り除けば、本当にすべき仕事のみを後任者に伝えられます。

業務一つひとつを整理し、必要性を検討していくには、HubSpotが作成した業務効率化作成シートがおすすめです。

業務に慣れている自分では必要性のある業務かどうか見えにくい場合も、業務効率化作成シートを活用すれば客観的に業務整理できるため、スリムな引き継ぎ書を作成できるでしょう。
 

MECEになっているかを確認する

引き継ぎ書は、MECEを意識して作ることも大事なポイントです。MECEとは、「Mutually Exclusive and Collectively Exhaustive」の頭文字をとった言葉で、「漏れやダブりがない状態」のことです。

引き継ぎ書に漏れがあると正しく作業を進められなくなり、ダブりがあるとマニュアルが煩雑化して読みづらくなってしまいます。

MECEを防ぐためには、棚卸しの工程ですべての業務をきちんと洗い出す必要があります。日々の業務のなかでメモをとる習慣をつけておくことなども、漏れを防ぐコツです。
 

引き継ぎ書作成のメリット

引き継ぎ書は、後任者へ業務をスムーズに引き継ぐために欠かせないものですが、それ以外にも次のようなメリットがあります。
 

人材定着につながる可能性がある

総務省の労働力調査によると、2022年平均の転職等希望者数は前年から71万人増え、968万人でした。伸び率は約8%となり、転職者が増加しています。

このように人材の流動化が進んでいるため、引き継ぎの機会も増加しています。サイボウズ チームワーク総研が行った「「仕事の引継ぎ」に関する意識調査(2019年2月実施)」によると、「引き継ぎがスムーズだった」と回答した人の約8割が、「今の職場で働き続けたい」と考えているとわかりました。

また、同調査で引き継ぎの際に使用されたツールとして最も多かったのが、「印刷された紙文書」でした。ただし、印刷された紙文書の割合は、2019年の調査時点で2013年度から10.3%減少しています。一方、Excel・Word・PowerPointの使用は10%程度増加しました。引き継ぎ書のデジタル化が進んでいるといえるでしょう。

引き継ぎ書でやるべき仕事を正確に伝えることで、後任者が業務の概要を把握でき安心感を持てるようになるでしょう。後任者の精神面が安定しモチベーションがアップすれば、長く働き続けたいと考えるきかっけにもつながります。
 

効果的な活用により業務改善につながる

組織の中には、数年単位で同じ引き継ぎ書をそのまま使用しているケースもあります。長期間同じ人が担当している業務は属人化している場合も多いでしょう。引き継ぎ書の作成時に業務の棚卸しをして整理すれば、属人化の解消につながります。

また、引き継ぎ書の作成は、定期的に業務工程の課題を確認できる機会でもあり、細かいルールなどの漏れ伝えを防ぐ役割も担っています。企業規模で作成されるマニュアルと違い、個人単位で改善提案が可能なところも強みです。

さらに組織の指針に基づいていることが前提ですが、定期的な配置転換に合わせて業務改善に取り組めます。
 

引き継ぎ書のテンプレート10選

ここでは、引き継ぎ書のテンプレート10選を紹介します。テンプレートを活用して時間短縮を図り、効率よく引き継ぎ書の作成を進めましょう。
 

1. 楽しもうOffice

楽しもうOffice

出典:楽しもうoffice

楽しもうOfficeは、マイクロソフト社が提供するWord形式の引き継ぎ書テンプレートです。

フォーマットに入力するだけで、簡易的な引き継ぎ書が完成します。視覚的要素の強いデザインで、わかりやすく要点をまとめられるのが特徴です。図解を入れるスペースも設けてあり、シンプルにまとめたいときにおすすめです。
 

2. SILAND.JP

SILAND.JP

出典:SILAND.JP

SILAND.JPは引継ぎ書づくりで活用できるWordテンプレートを配布しています。操作マニュアル、運用マニュアルなどのドキュメントをWordで簡単・きれいに作成するためのテンプレートです。見出しを使うことによって目次の作成、ナビゲーションによる移動・編集を行えます。
 

3. 経費削減実行委員会

経費削減実行委員会

出典:経費削減実行委員会

経費削減実行委員会では、Excel形式のシンプルな文書型のテンプレートを提供しています。

メインとなる「業務引継書」をはじめ、「補足資料表」、スケジュール別に10日間、1か月、2か月でまとめられる「業務引き継ぎ書スケジュール表」、報告書や目次、スケジュール、補足資料がすべてそろった「業務引継セット」などがあります。書式を統一して作成したいときに便利です。
 

4. bizocean

bizocean

出典:bizocean

多くのビジネステンプレートを提供するbizoceanには、社内業務向け、取引先別に記載する引き継ぎシートなどがあります。業務分担表のテンプレートを使用すれば、より質の高い引継書が作成できるでしょう。

業務引継完了報告書は、引継プロセスの最後を締めくくるテンプレートとして活用できます。
 

5. ひな形の知りたい!

ひな形の知りたい!

出典:ひな形の知りたい!

ユーザーの投稿によりひな形素材が集まる「ひな形の知りたい!」には、さまざまな形式の引継書テンプレートがあります。

業務フローをまとめるだけのシンプルなものから、引継ぎ完了報告用のテンプレートもあり、多くの種類から選べます。好みのフォーマットを探したいときにおすすめです。
 

6. bizroute

bizroute

出典:bizroute

bizrouteでは、Word形式で、業務マニュアルや手順書のテンプレートが提供されています。縦型と横型があり、承認印スペースの有無や項目数の違いなどによる6種類から、好みのテンプレートを選べます。
 

7. Career Sign

Career Sign

出典:Career Sign

Career Signでは、細やかな業務手順書というよりも、全体把握のために役立つスケジュール型の引き継ぎ書テンプレートを提供しています。年間と月間の2種類があり、カテゴリごとに作成できるフォーマットです。

Excel形式の「保管場所一覧表」もあり、シンプルながらも効果的な引継書が作成できます。
 

8. テンプレートNAVI

テンプレートNAVI

出典:テンプレートNAVI

テンプレートNAVIは、業務引き継ぎ書をはじめ、さまざまなビジネステンプレートを提供しています。引き継ぎ項目だけでなく、詳細を書く欄も設けられているのが特徴です。ただし、画像を入れる場所はないので注意しましょう。
 

9. テンプレルン

テンプレルン

出典:テンプレルン

テンプレルンは、「業務内容引継書」の無料テンプレートを無料で提供しています。テンプレートはExcelとWordで編集が可能で、PDFにもダウンロードできます。画像を入れられないので、文字のみのシンプルな引き継ぎ書の作成をしたいときに向いています。
 

10. 無料のビジネス書式テンプレート

無料のビジネス書式テンプレート

出典:無料のビジネス書式テンプレート

無料のビジネス書式テンプレートでは、「業務引継書のテンプレート」を配布しています。引き継ぎ内容のボリュームによって2種類のテンプレートが用意されているので、用途に合わせてダウンロードしてみましょう。
 

効果的な引き継ぎ書は社内の業務効率改善につながる

引き継ぎ書は、後任者の業務効率に大きく影響します。スムーズに引き継ぎを行えるよう、本記事で紹介した作成のポイントを踏まえて早めに着手することを心がけましょう。

業務の棚卸しを行い、必要度を確認したうえで作成した引き継ぎ書を使用すれば、おのずと業務効率化が進むでしょう。作成時間の時短のために、テンプレートを積極的に活用していきましょう。

引き継ぎ書によって業務フローの最適化が進めば、業務が効率化してサービスの質の向上が期待でき、顧客に提供できる価値の向上も期待できます。本記事を参考に、ぜひわかりやすい引き継ぎ書作りを行ってみましょう。

HubSpotではこの他にもマーケティングやセールスに役立つ資料を無料で公開していますので、ぜひこちらからご覧ください。

 

時短実現のためのヒント!業務効率化チェックシートとツール選定のコツ

 時短実現のためのヒント!業務効率化チェックシートとツール選定のコツ

元記事発行日: 2023年7月20日、最終更新日: 2024年2月16日

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