既存顧客との取引を拡大しようとしている場合でも、 見込み客からのRFP(Request For Proposal, 提案依頼書)への回答を送ろうとしている場合でも、提案書の提出は心が躍るものです。

既存顧客や見込み客(以下 クライアント)から提案を依頼された場合は、提案書の内容を真剣に考える必要があります。顧客は何社ものベンダーから同時に提案を受けているため、提案書の内容は顧客の注意を引くものでなければなりません。

どれだけ時間をかけてストレスを募らせながら提案書を作成しても、自社を選んでもらえず失望に終わることも決して少なくありません。では、他社よりも目立つ提案書を作成するにはどうすればよいのでしょうか? チームが創造性を発揮して、自社の成長につながる成果を達成するには何が必要なのでしょうか?

先日、起業家で元代理店オーナーのJason Swenk氏から提案書作成の秘訣を教えてもらいました。Swenk氏はこの秘訣を活用して成約率80%を達成すると共に、Partner Day(パートナーデイ)というHubSpotのパートナー企業が一堂に会するイベントで、米国のメディア企業AT&Tや、法務システムの開発を手がけるLegal Zoom、そして日立製作所などの企業と契約を締結したそうです。この記事では、Swenk氏から教えていただいた優れた提案書を作成するための方法をご紹介します。

提案書の作成を始める前に

ありがちな話ですが、クライアントとの雑談の中で「提案書を送ってください」と言われると、代理店のオーナーは「これはクライアントが本気になっている証拠だな」と思い込みます。ところが実際は、クライアントの多くは「またご連絡ください」といった社交辞令と同じようなものとしか考えていません。

それにもかかわらず、代理店のスタッフは何時間もかけて手の込んだプレゼンテーションを作成し、48時間以内にEメールで送信します。

その結果は、お察しのとおりです。何の返事もありません。

提案書の作成に取りかかる前に必要なことは、そのクライアントに費やす時間が無駄にならないか見極めることです。そもそも提案書の作成にコストを費やすべきか考え直し、クライアントの「NBAT」を把握することで、むやみに提案書を送りつける事態を簡単に回避できます。なお、「NBAT」とは、次の4つの頭文字を取ったものです。

  • Need(ニーズ):クライアントは何を求めているか
  • Budget(予算):そのニーズを満たすためにクライアントが用意できる金額はいくらなのか
  • Authority(権限):提案書を読む人は意思決定プロセスに参加しているのか
  • Timing(タイミング):クライアントの意思決定に必要な時間はどの程度か

Swenk氏は「費用や売上のことだけを考えてクライアントから業務を引き受けていると、後になって問題が生じる」と忠告します。

それでは、クライアントの反応を引き出しやすくなる提案書のテンプレートを作成するために、Swenk氏が提唱する6つの項目を見ていきましょう。

成約率の向上につながる提案書のテンプレートに必要な6つの項目

Swenk氏によると、「電話番号と同じように、提案書の項目は一定の順番に並べる必要があり、そうしなければ適切な相手にアプローチできなくなる」そうです。

ここからは、回答提案書を完璧なものにするために必要な6つの項目と、各項目のサンプルを紹介していきます。[ ]の中身を具体的な内容で置き換えて、実際に提案書を作成する際にご活用ください。

1. 送付状

いきなり本題の戦略や戦術を書き始めるのではなく、まず相手に期待を持たせて、中身を読みたい気持ちにさせましょう。

回答提案書の1ページ目は、履歴書の送付状と同じものと考えましょう。実際のところ、提案書はクライアントに自社を「採用」してもらうための書類です。ただし、自社が提供するサービスの内容や、自社との取引を通じてクライアントが得られるメリットについて、履歴書の送付状以上にわかりやすくまとめる必要があります。

送付状を添えることで、自社がどのような会社なのかを理解してもらってから提供するサービスの説明に移ることができます。また、これから読んでもらう提案書はクライアント側の要求で作成されたものであるということを思い出してもらうことができます。

送付状の例

[クライアント側の担当者名]様

このたびは、貴社の提案依頼書を頂戴し、[依頼されたサービスの種類]をご提案する機会をいただきましたこと、御礼申し上げます。当社はこれまでに[過去のクライアントの短いリスト]とお取引をさせていただいており、貴社との提携を通じて貴社の顧客満足度や最終収益を大きく改善できるものと確信しております。

……という導入部分だけで手を止めずに、自社の紹介、今回のプロジェクトに自社が適任である理由、期待される最終的な成果などを続けて書きましょう。

2. 提案書の概要

提案書の概要では、本文の内容を要約するだけではなくクライアントのニーズや達成したい目標、そしてその目標の達成に必要なものを説明します。また、これまでに実施した調査や聞き取りを行った相手など、提案書をまとめるために行ったことについても言及し、クライアントが自社を選ぶべき理由を明確にしましょう。

提案書の概要について、Swenk氏からいただいた重要なアドバイスがあります。それは「依頼してきた相手やそのニーズについて、明らかな事実を2つ挙げるようにする」というものです。ここで挙げる2つの事実は、クライアントが真偽を判断できるものでなければなりません。最初にこうしておくことで、その後の本文の内容を読み手が身構えずに受け入れやすくなります。

提案書の概要の例

[クライアントの業界]の第一人者として[クライアントの主要サービス]を提供する貴社におかれましては、今が貴社の顧客にとってどれだけ重要な時期か、ご存じのことと思います。商品の納品コストは平均で[具体的な金額]円であり、貴社は「[クライアントのミッションステートメント]」というミッションに従事しておられます。

これらの課題が一般的なものになりつつある今、[自社の業界]の最新の知識と技術を活用したソリューションを顧客に提供することが、ますます重要になってきております。こうした状況を踏まえて、当社は貴社に以下のようなメリットを提供したいと考えております。

  • [クライアントのメリット1]
  • [クライアントのメリット2]
  • [クライアントのメリット3]

3. 成果物と戦略

ここが提案書の核心部分です。

提案の内容は、クリエイティブやテクノロジーなど複数のセクションに分けて書きましょう。こうすることで、提案の個々の内容や、提案に含まれるさまざまな対策について、クライアントが理解しやすくなります。また、各セクションに具体的な成果物の一覧だけでなく、サービスに含まれない業務も明示しておくことで、作業範囲がずるずると拡大してしまうのを防ぐと共に、クライアントが他に必要なサービスを思い付くためのヒントになります。

そしてもう1つ重要なのは、このセクションでは料金について言及しないことです。料金の話をしてしまうと、相手は他の情報に目が向ず、これから達成する成果への期待感を持たなくなり、必要な金額と減っていく予算のことだけで頭がいっぱいになってしまいます。加えて、料金の提示が早すぎると、クライアントは他社の料金との比較を始めてしまい、自社が提案するソリューションの内容は二の次になります。

成果物と戦略の例

本提案書の概要でもお伝えしたように、当社は貴社が[概要で取り上げたクライアントにとってのメリットを簡潔にまとめる]を達成できるように支援させていただきたいと考えています。そのためのご提案として、成果物、提供する順番、担当者、完了予定日を以下にまとめました。これに沿って貴社との提携を成功に導けるよう努めてまいります。

成果物 担当者 開始日 完了日
(具体的な成果) (担当者名) ○○年○月○日 ○○年○月○日
(具体的な成果) (担当者名) ○○年○月○日 ○○年○月○日
(具体的な成果) (担当者名) ○○年○月○日 ○○年○月○日

このプロジェクト通じて、[プロジェクトまたは契約の期間]にわたり、貴社の組織全体の業務効率が改善し、顧客満足度が徐々に向上していくのを実感していただけると考えております。なお、以下の項目は本プロジェクトに含まれないのでご注意ください。

  • [プロジェクトに含まれない成果物やサービス]
  • [プロジェクトに含まれない成果物やサービス]
  • [プロジェクトに含まれない成果物やサービス]

4. プロジェクトの内容のまとめ

成果物と戦略を説明した後に、すべての成果物とそれぞれの料金を箇条書きでまとめるという手があります。

これはクライアントに選択肢を提示して、必要なものを選んでもらうということではありません。クライアントが必要としているのはこちらからの提案であり、複数の選択肢を提示して、どれがよいか決めてもらうようにクライアントに強制することはできません。プロジェクトに含まれる成果物とそのコストについて、はっきりとした計画を提示し、その後に議論を重ねながら内容を調整していきましょう。

プロジェクトの内容のまとめの例

貴社が[概要で触れたクライアントの課題]を解決できるように、ぜひご協力させていただきたいと考えております。本提案に含まれるサービスの概要を以下にまとめておりますので、ご確認ください。

サービス 含まれる成果物 サービスの総費用
(具体的な成果) (担当者名) (金額)
(具体的な成果) (担当者名) (金額)
(具体的な成果) (具体的な成果) (金額)

5. 自社の概要

このセクションは最後に回しましょう。クライアントが自社に対して興味を持つのは、自社がクライアントのために何できることを理解した後のことです。

この「自社の概要」のセクションは、事業立ち上げの際に作成していると思われる会社概要と同じ内容で差し支えありません。ただし、これは提案書に限った話ではありませんが、自社の概要は必ず社名から書き始めるようにしましょう。というのも、見込み顧客は多数の回答提案書を同時に受け取っているからです。売り込みに来たすべての会社を覚えておけるとは限りません。

6. 契約書面

最後に、契約用の書面を提案書に添付して、クライアントがすぐに署名できるようにしておきます。署名欄がどこにあるのか、クライアントがわからなくならないように注意しましょう。

また、クライアントが提案書の本文を飛ばして契約書面をすぐに開いてしまうこともよくあるので、契約書のタイトルを明確に表示して、ページ下部の署名欄がはっきりとわかるようにしましょう。有り体に言えば、クライアントの署名によって多額の金銭が動くことになるので、その支払い能力の有無は、自社が提供するサービスと同じように明確にしておきたいところです。

契約を勝ち取るために欠かせない2つのポイント

最後に、成約率を向上させるための2つの重要なポイントをご紹介します。

見込み顧客と一緒に提案書を確認する:提案書を送付した後、ただ返事を待つのではなく、内容を必ず確認するように伝えましょう。クライアントから提案書の送付を依頼されたときは、内容を確認するための打ち合わせのスケジュールを設定してください。クライアントが打ち合わせに応じてくれない場合は、手の込んだ回答書を作成するために時間を費やすべきではありません。

Swenk氏は次のように釘を刺しています。「辞退を躊躇してはいけません。「ただ情報を集めて回っているだけのクライアントに時間をかけるのは無駄です」

提案書のテンプレートを作成する:提案書の理想的な構成が完成したら、他のクライアントにも転用できるようにテンプレートを作成しましょう。提案書を毎回ゼロから作る必要はありません。テンプレートがあれば時間の節約になるだけでなく、提案書の依頼を撤回する暇をクライアントに与えないので、コンバージョン率の向上につながります。

提案書は見込み顧客と議論を重ねたうえで作成するものです。提案する料金にしろ戦略にしろ、クライアントを驚かせるようなものではなく、クライアントと話し合いの内容をまとめて書面にしたものと捉えましょう。

ウェブ制作会社とマーケティング代理店の組織作りガイド

元記事発行日: 2019年5月28日、最終更新日: 2019年5月28日