セールスフォース・ドットコムが提供する、SFA・CRMツールを中心としたプラットフォーム「 Salesforce」。世界各国で20万社以上の企業が導入し、日本国内でも導入事例が増えています。
Salesforceは、提供しているツールが多数あり、各ツールの機能も豊富であらゆるシーンで活用できる幅の広さが魅力です。ただ、Salesforceに限らず、CRMやSFAを本格的に活用するためには、目的を明確にし、社内の体制を整えて日々データを蓄積していく運用が必要です。また、経営層がどれだけコミットできるかも重要です。Salesforceへの入力を社内で義務付けるレベルで徹底させる覚悟を持つことも重要で、日々の入力が徹底されている会社ほど成功しています。
今回はSalesforceの基本的な情報からSalesforceの戦略、活用事例、失敗パターンに触れ、これからSalesforce導入を考えている企業様に参考となる情報をご紹介します。
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Salesforceとは何か?
本章ではSalesforceとCRMとは何かについてお伝えします。SalesforceのCRMは2021年時点で、BIツールのTableauやコラボレーションツールSlackも傘下に収めています。ビジネス創業時にスタートした営業支援ツールにとどまらず、CRMとしての機能も拡張させ、ますます進化を遂げています。
まず、CRMの定義をおさえよう
ここで改めて、CRMの定義を確認しておきましょう。 CRMとは「Customer Relationship Management」の略で、日本では「顧客関係管理」と呼ばれます。 時代と共に顧客との関係は日々変わっており、顧客とのコミュニケーションを円滑に行い、CRMを通じて自社の社員と顧客とのやり取りを一元管理できます。
参考:CRMとは?顧客関係管理ツールの導入メリットや成功法則を徹底解説
たとえば、顧客の連絡先や過去の購買履歴の確認、メール、電話やSNSを通じたコミュニケーション履歴、社内の業務管理、営業の商談状況のチェックなどをCRMの業務アプリケーションの中で行います。
このように情報を一元化することで、顧客を深く理解し、営業活動の向上のみならず、サービス向上、マーケティングの高度化、経営戦略の策定などに活かせるのです。
CRMは、企業が日々の事業活動の中で行っている顧客とのエンゲージメントを高め、顧客の生涯価値(LTV)や収益の改善に貢献します。現在では概念だけでなく、日々ユーザーに利用されているシステムやツールも含め、総称してCRMと呼ぶのが一般的です。
Salesforceでは、実際どのようなCRMを提供しているのでしょうか。一言で表現すると、Slaesforceはあらゆる角度から「企業と顧客エンゲージメントを高める」ことを強力に支援しています。
例えば、 個々の顧客が求める体験を、Salesforceの「Customer 360」というコンセプトに基づいて、様々なサービスが内包された統合型のCRMプラットフォームで提供しています。このプラットフォームに統合された強力な製品群(後述)が、顧客の営業活動やマーケティング業務、Eコマース、コンタクトソリューションやその他ITに関わる業務など、ビジネス全般を強化しているのです。
実際、SalesforceのCRMは全世界で20万社近くの導入実績があります。導入している企業規模も、グローバル企業から数人のスタートアップまでさまざまです。
また、豊富な実績に裏打ちされた万全のカスタマーサポート体制を整えています。CRMは契約してからがスタートです。継続的に活用して、顧客のビジネスの成功を実現するために、カスタマーサポート体制の充実にいち早く注力してきました。
実はあの「Slack」も。Salesforceの幅広い製品ラインナップ
セールスフォース・ドットコムのサービスは、全てクラウドサービスとして提供されています。クラウドサービスとはサーバなどの初期費用は不要、インターネットに接続できる環境があれば、場所を問わず利用可能です。
セールスフォース・ドットコムはSaaS(Software as a Service)と呼ばれるビジネスモデルのパイオニアです。SaaSビジネスの中で、営業支援やコールセンターソリューション、コマース領域をはじめとした、CRMというサービスを展開する企業としては世界有数の規模を誇ります。
Salesforceの「Appexchange 」で、必要なツールを必要に応じて導入できる
Salesforceの製品は以下の製品があり、それぞれ特徴を備えています。
製品名 |
概要 |
Sales Cloud |
営業活動を行うことに特化した機能を備えており、組織全体の営業力を向上するための機能 |
Service Cloud |
カスタマーサービスに特化、顧客へ質の高いサービスを提供するための機能 |
Marketing Cloud (2013年ExactTarget買収) |
マーケティングに特化したサービスで、主にBtoC向けのOne to Oneマーケティングを実現するための機能を提供 |
Pardot (旧ExactTarget) |
BtoB向けマーケティングオートメーションツール |
Commerce Cloud (2016年Demandware買収) |
BtoC、BtoBに向けのECサイトの機能を提供 |
Heroku(2010年買収) |
社外の情報と連携させたアプリケーションの開発 |
Salesforce Platform |
社内向けの独自アプリケーションの開発 |
MuleSoft Platform (2018年買収) |
Salesforceをはじめとしたあらゆるシステムを接続して1つに統合するソリューション |
Einstein Analytics |
CRMと連携したデータ分析やAIによる予測分析機能 |
Community Cloud |
顧客・代理店・パートナー企業とのコミュニティの構築機能を提供 |
Salesforce Anywhere (2016年Quip買収) |
文書やスプレッドシート、スライドなどのドキュメントの共同管理できるコラボレーションツール |
Chatter |
社内SNSのチャットツール |
Slack(2020年買収) |
ビジネスコラボレーションツール |
Tableau (2019年買収) |
BIツール |
その他の特徴として「AppExchange」の存在があげられます。これはiPhoneのApp Storeのイメージで、自社に必要なアプリケーションをビジネスマーケットプレイスのAppExchangeの場でダウンロードでき、Salesforceと連携できる機能です。
例えば名刺管理や勤怠管理、エクセルのようにSalesforceを利用したいという顧客ごとのニーズに合わせ、さまざまなアプリケーションが用意されています。
Salesforce自身で顧客データを管理し、数多くのソリューションを展開していますが、そのソリューションを提供するマーケットプレイスを通じて、ユーザーが自社のニーズに合わせて導入できるのです。
M&AでSalesforceの製品ラインナップを強化する
SalesforceはこれまでExactTarget(マーケティングクラウド)、Demandware(eコマースクラウド)、Tableau(BI)、Mulesoft(統合プラットフォーム)、Slack(ビジネスチャットツール)など、数年に一度のペースで大規模なM&Aを行っています。MAのPardotも元々ExactTarget社が買収しており、SFAなどのコア製品以外はM&Aによって強化しています。
Salesforceは、SFAであるSales CloudやコールセンターソリューションであるService Cloudに加え、買収した製品を自社サービスに統合して顧客データをSalesforce内に集約することで、顧客理解を深めようとしているのです。
さらにマーケティングやコマースといったそれぞれのツール間のデータ連携を強化し、顧客の幅広い業務に対応しています。これはCustomer 360とも呼ばれ、360度あらゆる角度から顧客を理解して、顧客のニーズを踏まえた提案を実施できるような機能を持ち合わせています。
Salesforceは買収を繰り返しながら、買収製品と既存の製品との高いシナジーを発揮しています。それぞれのツールが有機的に結びつき、顧客にとってベストなソリューションとして融合する点もSalesforceの特徴であり強みと言えます。
SalesforceのAI機能「Einstein」とは?
Salesforceは他社のCRMソリューションと異なり、いち早くCRMにAI機能を取り入れています。
例えば、過去の成約した商談データを参考に、現在取り組んでいる商談の成約確度がスコアとして表示されるようになっているのです。
顧客データや活動記録、商談メモの情報、そして過去の成約および失注した商談データなどを総合し、予測成約率が算出されます。これらの成約予測に関する情報は、マネージャー以上の役職の方が、売上の見込みなどを算出するために使っていると言われています。
Salesforceの活用事例に学ぶ導入メリット
Salesforceはトヨタや損保ジャパン、日本郵政など、超大手企業から中小企業まで日本国内で1万社近くに導入されています。ここでは3つの導入事例を紹介し、成功パターンを学んで導入検討の材料にしていきましょう。
1. トヨタ自動車株式会社 - 豊田章男社長も使うSalesforce
Salesforceはトヨタ自動車の豊田章男社長も積極的に使っています。SalesforceにはChatterと呼ばれるチャット機能があり、全社員に社長が定期的に情報を発信しています。30万人を超える社員に対し、社長自らがメッセージを送るプラットフォームとして利用されているのです。
どこにいても、ビジネスにつながるアイディアや些細なことが浮かんだときに、忘れないうちにChatterを通し全社員に発信できます。また、社長だけでなく、社員同士のコミュニケーションがオープンに活発に行われるようになったそうです。
豊田社長も一社員のつぶやきを目にすることができ、数十万人の社員が会社を良くするために行っているコミュニケーションをSalesforce上で行っています。
2. RIZAPグループ株式会社 - ダイエット管理システムはSalesforceで稼働
RIZAPはお客様の理想の身体を実現する手助けをしています。顧客の「変わりたい」という本気の思いや情熱に日々向き合っていますが、その情熱に応え寄り添うためのツールとしてSalesforceが利用されています。
ダイエットを行っている間あらゆるデータが生まれていますが、顧客に関するデータをSalesforceにインプットしています。例えば食事の内容、睡眠時間、体型の変化、体重の変化が溜まっていき、トレーナーも過去のデータを参照してお客様と最適なコミュニケーションが取れるのです。
顧客がRIZAPにいない時のコミュニケーションも、Salesforceを通じて行われています。2~3ヶ月で劇的な変化を遂げる顧客に対し、趣味・趣向を含め大きな変化を遂げる現状をRIZAPが認識し、最適な情報を届ける心地よいツールになっています。
3. 内海産業株式会社 - 全ての業務をSalesforceに完全入力
内海産業はセールスプロモーションを行う100名ほどの中小企業です。同社はほぼ全ての業務をSalesforceに入力しています。営業、総務、システム、ロジスティクス、役職も社長から平社員、本社から各拠点のメンバーまでほぼ全ての社員が対象です。業務に関するあらゆる情報をSalesforceに入力することで、顧客に関するデータや売上情報が可視化でき、精度が高い施策も立てられます。まさに、Salesforceの最も理想的な利活用を実現しているのです。
また、同社は社員同士を褒め合うなどコミュニケーションの活性化にもSalesforceを活用しており、社員エンゲージメントをSalesforceを通して高めています。
CRMツールの導入に失敗するパターンとは?
多数の成功事例がある一方で、当然、全ての企業が100%導入に成功することはありません。想定したような成果があがらず、解約する企業もあります。ここでは、Salesforceに限らず、CRMツールの導入に失敗しがちなパターンをまとめました。
失敗パターン1:目的や担当者が不明瞭なまま導入した
導入するための準備が揃っていないにもかかわらず導入してしまい失敗するパターンがあります。何のために導入するのか、誰が推進するのか、決めるべきことを決めずに導入が進んでいる場合は要注意です。
SalesforceをはじめとしたCRMツールは、決して魔法の杖ではありません。導入するだけではビジネスは改善せず、事前準備を行った上で利用するメンバーが納得して導入するのが望ましいです。
社長など、リーダーとなる人が強力に導入を推し進めている場合、導入後に確実に日々の業務を入力させるような決め事を作っておくことも重要です。ルール化しないと、利用されずに終わる可能性があります。
また、データを入力する意義を見出せていない場合も注意が必要です。日々の入力作業の負荷ばかり多く、結果的にそれがビジネスにどう貢献しているかが感じられないと、利用は進まないでしょう。
売り上げや活動記録を入力し可視化できるようになったことで、ビジネスが改善した、部門間の連携が強化され業務が効率化されたなど、現場担当者が意義を感じられるような状態を目指すことが重要です。
失敗パターン2:導入前に「運用範囲」を明確にしていなかった
Salesforceは、多機能ゆえに広い業務に活用できます。その中でも、特に適した業務があります。営業支援、コールセンター、マーケティングなど、顧客と接点を持つ部門がその一例です。製品を理解し、効果が出やすい運用範囲を理解した上で導入することが欠かせません。
これもSalesforceに限ったことではありませんが、ツールの特徴を捉え、過去の成功事例を照らし合わせて、どの部門で、どのような方針で運用するのか要件を詰めておきましょう。
Salesforceを支える「ユーザーコミュニティ」と「社会貢献活動」
Salesforceは、ユーザーコミュニティの規模の大きさも特徴の1つで「ナレッジをシェアしてSalesforceユーザー皆で成功していきましょう」というカルチャーが根底にあります。ハワイ語で家族を意味する「Ohana」の精神を重んじており、Salesforceユーザー同士だけではなく、世界中のコミュニティに対しても継続的な投資やボランティアを行っています。
ユーザーコミュニティ「Trailblazer」でのナレッジ共有
Trailblazer(先駆者)とは、「道無き道を切り開いていく開拓者」という意味を持ちます。CRMのテクノロジーを最大限活用して顧客のビジネスを変革し、顧客が自社の業界の先頭を突き進む。そのようなビジョンを持った方々に対する敬意を表してTrailblazerという呼称が用いられています 。
このTrailblazerコニュニティでは、Salesfroceの操作サポートだけでなく、ユーザー同士が活用促進を支援する場が形成されています。利用方法がわからない場合でも、Trailblazerコミュニティで質問をすれば、利害関係なく誰かが回答してくれる可能性が高いです。
また、Salesforceでは、ユーザーがSalesforceの利活用を発表する場を設けています。「Salesforceを使ってこれだけ自社のビジネスが改善しました」ということを世界に発信し、それを見聞きしたユーザーなどへSalesforceが浸透する場となっているのです。
「1.1.1」モデルで社会貢献を実践
Salesforceは「1.1.1」モデルを採用しています。1.1.1モデルとは、営業で得た利益のうち、製品、株式、就業時間のそれぞれ3つのカテゴリーで得た収益の1%を非営利組織の活動支援に提供するというポリシーです。1999年の創業以来、この社会貢献活動は創始者マーク・ベニオフによって続けられており、経営戦略の一つになっています。
「1.1.1」モデルにより、Salesforceはただの営利企業ではなく「世の中を良くする」という奉仕の精神を尊んでいます。ユーザーにとってはビジネスが最優先ですが、こうしたSalesforceの世界観やカルチャー、世の中との関わり合いを重要視する姿勢まで含めると、Salesforceは単なるCRMツールの枠を超えた存在といえます。
創業以来、毎年20%前後の高い成長率を維持しているのも、営利活動を行うだけの会社でなく、社会貢献をする姿勢が多くの人々に支持されているのが一因だといえるでしょう。
Salesforceをはじめ、CRM導入を成功に導くには、日々の「地道な運用」が欠かせない
Salesforceを始めとしたCRMツールを活用するには、日々の入力作業など地道な活動が欠かせません。
そして成功するための重要なポイントは、なんのためにCRMが存在するのかを理解し、運用にのせるという強い意志を持ったリーダーがチームを先導することです。
同時に、ツールベンダー側の導入支援も欠かせません。カスタマーサクセス担当者はつくのか、どれだけの頻度・レベルで導入支援を受けられるのかもしっかり確認しましょう。
(当社HubSpotが提供するCRMツールの成功事例でも、強い意志を持った旗振り役が、当社のカスタマーサクセスチームと協力しながら社内を先導されているパターンが多い傾向にあります)
そもそもなぜCRMツールが必要なのか、導入するとどのようなメリットがあるのか。なかなか腹落ちしない場合は、ツールの営業担当者にとことん聞いてみるのも1つの手です。