見込み客の心をつかむ見積書を作成する3つのヒント【無料テンプレート付き】

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室橋 健(むろはし けん)
室橋 健(むろはし けん)

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数十年前までは、多くの企業は、高品質の製品を低価格で提供することにこだわっていました。

見込み客の心をつかむ見積書を作成する3つのヒント【無料テンプレート付き】
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その結果、市場には高コストパフォーマンスの製品があふれ、そこだけでは大きな競争力を持ちえない時代が到来しました。今日、多くの企業は顧客中心主義にシフトし、個々の顧客を熟知した上でニーズを満たす製品やサービスを提供しようとしています。

しかし、製品やサービスのカスタマイズは画一的な価格を提示できないことにもつながります。顧客のニーズにきめ細かな対応を行うためには、画一的な料金表ではなく、提供する製品やサービスの内訳を盛り込んだ見積書が必要になってきます。

見積書は従来、顧客と合意形成し、商談を前進させるために必ず提示しなければならないものでした。今日では顧客のニーズに応えるだけでなく、将来的なリスクを減らして強固な信頼関係を構築するための役割も担っています。

今回は、見込み客のニーズを汲み取り、期待を超える見積書を作成するヒントについて、汎用性の高いテンプレートとあわせてご紹介します。

劇的に効率化できる見積管理・見積書作成テンプレート

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    見積書とは何か?

    ビジネスで言う見積りとは、ある製品やサービスにかかる費用をあらかじめ計算することを指します。具体的にどのような役割があるのか見ていきましょう。
     

    見積書の3つの役割

    見積書には主に3つの役割があります。

    • 見込み客に対して「何をするか?」「いつ(までに)行うか?」「いくらかかるか?」を正式に提示
    • 価格の内訳を提示
    • 見積書を通じて合意形成を行い、正式な発注を促進

    営業担当者は見積書を通じ、見込み客に対して自社が何を提供できるのか価格を含めて正式に提示します。見込み客によっては複数の企業に対して見積りを依頼することもあります。そのため、見込み客のニーズに焦点を当て、質の高い見積書を用意することによって、競争力を増すことができます。

    価格の内訳では、人件費や固定費などのプロジェクトに関わる費用を正確に表示することによって透明度を高め、見込み客の不安を取り除く役割を果たします。

    見積書は通常、自社と見込み客との間で内容のすり合わせと合意形成がなされるたびに取り交わされます。そのため、見積書によって交渉の内容と進展度合いを視覚化することができます。確認事項を積み重ねることで、見込み客は発注の決断をしやすくなります。

    最終的に交わされた正式見積書で発注が正式に決まり、商談はひとまず完了です。
     

    見積書ができるまで

    見積書は業界によって、またプロジェクトの内容によって、作成までのプロセスや盛り込む内容が異なります。ここでは代表的なものをいくつか挙げます。
     

    サービスを提供するビジネスの場合

    旅行代理店による法人旅行や団体旅行などの造成や、家事代行サービスなど、サービスを提供するビジネスは、見込み客にサービスという目に見えないものの価格を明確にするために、見積書を作成します。

    サービス業での見積書は、主に営業担当者によって作成されます。ヒアリングによって見込み客の希望を正確に把握してプランを作成し、必要な情報をすべて盛り込んで見積書を作成します。
     

    受託開発の場合

    プロダクト開発やシステム開発を行う場合、見積書はおおまかには下図のような流れで作成されます。

    見積書を作成するのは、主に開発担当者です。営業担当者が行ったヒアリングの見込み客から寄せられた要望・要求を基に工数や各フェーズのスケジュールを検討し、開発コストを算出し、見積書を作成します。その内容を確認し、営業担当者が見込み客に提示します。
     

    建設業の場合

    建築業や電設業、土木業などの建設業では、プロジェクト遂行のために多くの事業者が関わります。そのため見積業務(積算業務)を専門に行う部署があります。見込み客には内部で作成されたいくつもの見積りを総合し、わかりやすくまとめた本見積書が提出されます。
     

    劇的に効率化できる見積管理・見積書作成テンプレート

    説得力ある見積書を作成するための3つのヒント

    営業担当者は事前の調査とヒアリングに基づいて、見込み客の抱える問題を理解し、問題解決につながる提案を行います。見積書はその提案を具体的に提示するものです。見込み客が提案を受け入れ、契約に至るために、見積書は顧客に対して説得力のあるものでなければなりません。ここでは説得力のある見積書を作成するためのポイントを挙げます。
     

    ヒント1: 適切な形式を守ること

    見積書は長期にわたって多くの企業が使用する中で、標準的なレイアウトが確立しています。そのレイアウトに従うことで見込み客の視認性も向上し、他社との比較もしやすくなります。

    標準的な見積書には、以下の要素が盛り込まれています。

    1. 見積書の宛先
      企業名と連絡先を書きます。交渉相手が購買担当者など決まっている場合には、担当者の名前を記入する場合もあります。
       
    2. 見積書が発行された日付
      どの段階での合意によるものかを示すために、日付が重要です。
       
    3. 価格
      提案した製品やサービス総体の価格情報を提示します。税額なども併せて記載します。
       
    4. 価格内訳
      建設業など価格内訳の多いものは、全体の合計見積りを表紙とし、別紙で詳細に記載します。
       
    5. 納期
      製品の納期や工事の施行期限、サービスを提供する日付など、見込み客が製品やサービスを受け取ることのできる日を提示します。
       
    6. 事業者名
      見積りを発行した企業名と連絡先を記載します。

    正式な見積書には、この6つの要素が盛り込まれていることが必要です。
     

    ヒント2 :提案内容や合意事項を視覚化すること

    金額の提示、価格内訳や納期の数字は、提案のボリューム感を伝え、提案内容を具体化させる役割を果たします。しかし、市場ではめずらしい機能を備えたものや、言葉では十分説明できない特質、合意過程で新たに加わった機能などは、価格内訳に写真などを添付することで、見積書の内容の視認性を高めることができます。
     

    ヒント3 :いつでも発行できるようにテンプレートを活用すること

    見積書は企業が最も頻繁に利用する書類のひとつです。商談の早い段階で見込み客から急に求められる場合もあります。出先で急に見積書を求められても、テンプレートがあれば短時間で形式の整った見積書を発行することが可能です。モバイルで出先からもアクセスできるように、クラウドツールを使うことも効果的です。

    見積書の書き方

    テンプレートを元に、具体的な書き方を説明します。

    1. タイトル
      この文書が「見積書」であることを確認します。
    2. 発行日
      見積書が発行された日を記入します。
    3. 見積書番号
      見積書ごとに付与される個別番号を記入します。この番号で見積書を管理します。
    4. 宛名
      見積書を受け取る相手企業名を記載します。
    5. 発信者
      この見積書を提出した企業名と住所、連絡先を記載します。
    6. 見積金額
      見積金額の合計を記載します。
    7. 押印
      ここに印鑑を押します。
    8. 見積明細
      品名、数量、単価、金額を記載します。
    9. 小計
      明細で記した金額の合計を記載します。
    10. 消費税
      小計に対する消費税を記載します。
    11. 合計
      小計と消費税の合算を記載します。見積金額と同一です。
    12. 備考
      支払方法や振込先、見積書の有効期限などを記載します。
       

    印鑑は必要?

    見積書それ自体には法的拘束力などはなく、単に見積金額を示しただけのものです。そのため、押印の必要はありません。しかし、押印してあることで権威が増し、信用度が高まると考える人もいます。
     

    見積書作成で注意すべきこと

    見積書は、見込み客が自社を信頼し、顧客へと転換する最後の関門です。見込み客が安心できる見積書を作成するために注意すべき点を解説します。
     

    見積書はわかりやすいか?

    大切な部分が一瞬でわかるようになっているかどうかを確かめます。見積金額が最初に目に飛び込んできますが、その根拠がはっきり分かるように明細をわかりやすく書くことが必要です。

    確認事項と齟齬があると、後々のトラブルの原因になります。商談のステップを進むごとにわかりやすい見積書を作成することで、トラブルを避けることができます。
     

    納期・価格の見積りには根拠があるか?

    見積書に記載した納期や価格が現実とずれてしまうことは、起こりがちなトラブルです。営業担当者は受注を取るために無理をしないようにしてください。見積書の納期や価格の決定は、開発担当者やプロジェクト全体の責任者と話し合いながら決めていきます。

    それでもなお工程の途中に見積りで設定した納期や価格では仕上げられないことがわかったら、その段階で改めて顧客と相談し、納期の変更や請求金額の変更の了承を取ります。
     

    求められればすぐに提供できるか?

    見込み客によっては、すでにWebサイトなどで情報収集し、具体的に購入を検討している場合があります。また、検討の第一歩として、どのくらいコストがかかるものなのかを知りたいという見込み客もいます。そのため、営業担当者は商談に入った段階でいつでも提供できるように用意をしておいた方が良いでしょう。
     

    見積書送付後のフォローアップを行うには?

    見込み客から見積書の提示を求められて見積書を送信したが、それっきり商談が途絶えてしまったということは営業担当者にとって珍しい経験ではありません。契約につなげるために見積書送信後にフォローアップメールを送信することは重要です。見込み客との関係を途切れさせず、商談を進展させるためのフォローアップメールについて説明します。
     

    フォローアップを行う前に確認すべきこと

    これまでの商談や顧客情報、Webサイトのアクセス履歴などを基に、見込み客がバイヤージャーニーのどの段階にいるかを確認します。見込み客が製品やサービスの購入に同意しており、最後の手続きとして見積書を送信したのであれば、単に返信が遅れているだけかもしれません。しかし、見込み客が初期段階で提案の一部として見積書を求めていたのだとしたら、フォローアップすることで関係を深めることができるかもしれません。

    早い段階で見積書を要求する見込み客の中には、競合他社と契約するつもりで価格交渉のために見積価格を知りたがる場合もあります。今後、商談を続ける対象かどうかを見極めるためにも、フォローアップメールを送付することは重要です。

    また、交渉相手が購買の最終決定を行う責任者ではない場合もあります。ヒアリングの段階で組織の意思決定者は誰かを確認してください。見積書を送付した相手が意思決定者でない場合には、意思決定者にCCをつけてフォローアップメールを送り、見積書を送付したことを知らせるのも効果的です。
     

    フォローアップメールで効果を上げるためには?

    件名は簡潔でわかりやすいものにします。内容は簡潔で短く、しかし一般的な内容にならないように注意してください。過去の商談を踏まえ、見込み客が修正を求め、それを受けて変更した点について取り上げることで、返信をうながすことができます。

    見込み客が希望すれば電話をかけられるように、いつでもアクセスできる電話番号も記載しておきます。フォローアップメールは見積書を送付後、5日間返信がなければ送信します。
     

    業界別の見積項目

    業界によって見積書には必要項目が異なってきます。ここでは業界別に見積書の基本的な要件を見ていきましょう。
     

    Webエンジニアの見積書の例

    Webエンジニアの場合は、⑧の見積明細の欄に工程ごとに項目分けしてタスクを記載していきます。数量の部分に各工程にかかる工数を記入し、単価を掛けて計上します。
     

    建築業の見積書の例

    ①~⑫までは通常の見積書と同様ですが、黄枠の⑬に工事概要を入れます。
    工事概要の内容は

    1. 件名
    2. 工事場所
    3. 見積有効期限
    4. 工事期間
    5. 支払条件
    6. 工事種別

    の6点を盛り込みます。

    ⑧の明細には

    • 建築工事費

    として、さらにその内訳を

    • 足場工事
    • 建設工事
    • 防水工事

    などのように、工程別に行う工事を書いていきます。
     

    システム開発の見積書の例

    システム開発も、⑧の見積明細の項目に

    1. 要件定義費用
      要件定義を行った際にかかった費用
    2. 設計費用
      システムの設計にかかった費用
    3. 開発費用
      プログラミングにかかった人件費および技術料
    4. テスト費用
      プロダクトが予定通り作動したかどうか確認のためにかかった費用
    5. 導入費用
      導入時の初期設定にかかった費用
    6. 導入支援費用
      操作マニュアルの作成や、エンドユーザーに対するチュートリアルなどにかかった費用
    7. 保守費用
      メンテナンスにかかった費用

    などを記載します。
     

    見積書を作成できるフリーソフト

    フリーソフトを使うことによって見積書作成業務を簡素化することが可能です。商談を順調に進めるためには見積や商談の準備を入念に行うべきで、見積書の作成のなどはフリーソフトの活用を検討してください。

    ここでは見積書作成を容易にするツールを紹介します。
     

    MISOCA

    見積書・納品書・請求書を作成できるツールです。無料プランを利用すると利用できるのは1名だけですが、取引先は無制限に登録でき、見積書および納品書作成に制限はありません。ただし、請求書のみが月に5通までという制限があります。そのほかの有償プランも初年度のみ無料で利用できます。こちらを選択すると、プランによって利用できる人数が2名または5名となります。
     

    Freee

    法人向け会計ソフトのなかに、見積書の作成・管理項目が含まれています。必要事項を入力するだけですぐに見積書が作成可能です。モバイルにも対応しています。また、見積書を作成すると自動的に売掛金が登録されるため、入金管理などもやりやすくなっています。

    上限3名までのミニマムプランは月額2,380円で、30日間の無料お試しが可能です。
     

    Money Forward クラウド

    見積書を作成し、受注が決まれば「納品書」や「請求書」に自動で変換できます。そのほかにも、決算書や銀行・クレジットカードなどの無料取り込みが可能です。月額3,980円のスモールビジネスプランであれば3人まで利用できます。1カ月お試し無料期間があります。
     

    見積書を通じて見込み客を顧客に転換しよう

    顧客へとコンバージョンする見込み客の最終的な判断は、多くの場合見積書によって下されます。見込み客は見積書を通じて、あなたの会社が信頼でき、問題の解決を提供してくれる、と判断するのです。その意味で、見積書の役割は非常に重いと言えます。

    同時に見積書は、ここまでなら合意できた、ここからは再検討してほしい…と確認しながら進む商談の指標でもあります。見積書は開発担当者ばかりでなく、営業担当者や経営陣にとっても重要です。

    しかし、受注が決まってからプロダクト開発に取り掛かるビジネスにおいては、いくつもの不確定要素に対処しなければならないため、正確な見積りは非常に困難でもあります。見積りの段階が早ければ早いほど、見積りと実際の進行の間にブレが生じるのは、仕方がないことでもあります。ブレが生じた場合は、見積りの根拠を振り返り、根拠があいまいなものではなかったかを再確認しなければなりません。

    見積りとスケジュールやコストの間にブレが生じていないかモニタリングし続け、必要があれば柔軟に再見積りを行ってください。

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