かつて営業といえば外回りの仕事が中心でしたが、近年ではメールやチャット、ビデオ通話といった多種多様なコミュニケーション手段が確立されたことにより、内勤営業を取り入れる企業も増えています。内勤営業・外勤営業の役割分担をどのように考えるべきか、悩みや課題を抱えている事業者様も多いのではないでしょうか。
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今回は、内勤営業・外勤営業のそれぞれの強みや最適なバランスについて解説します。解決したい課題に応じた営業モデルの例も挙げていますので、ぜひ参考にしてください。
内勤営業と外勤営業の違い
営業には大きく分けて「内勤営業」と「外勤営業」の2種類があります。それぞれの特徴や違いを押さえておきましょう。
内勤営業とは
内勤営業とは、メールや電話など非対面での活動を通じて見込み客を創出する営業手法のことです。インサイドセールスやカウンターセールスと呼ばれることもありますが、基本的には内勤営業とほぼ同じ意味と捉えてください。
内勤営業の手法には、SDR(Sales Development Representative)とBDR(Business Development Representative)があります。SDRとは、見込み客からの問い合わせに対応する反響型営業のことです。これに対して、BDRは新規の見込み客を発掘するために自社からアプローチします。一般的にSDRは中小企業、BDRは中堅〜大手企業が対象のビジネスに適しているといわれていますが、実際には両者を組み合わせて営業活動を進めるケースも少なくありません。
外勤営業とは
外勤営業とは、見込み客との商談やクロージングを経て成約を目指す営業手法のことです。フィールドセールスと呼ばれることもあります。従来、営業といえば外勤営業が中心でしたが、離れた場所でもコミュニケーションが可能なツールが進歩・普及したことにより、内勤営業・外勤営業で営業活動を分担することが可能になりました。
内勤営業・外勤営業の現状
内勤営業・外勤営業の現状として、売り手・買い手の双方に意識の変化が見られます。下図はハブスポット が実施した「理想とする営業スタイル」に関する調査結果です。売り手・買い手がそれぞれ好ましいと感じる営業スタイルの推移を示しています。
(出典:HubSpot「日本の営業に関する意識・実態調査2024の結果をHubSpotが発表」)
売り手側に関しては、従来「訪問営業の方が好ましい」と考える人が最多だったものの、2023年の調査結果では2020年以来初となる微減傾向が見られました。また、買い手側についても訪問営業が理想的とする回答の割合が年々減少しており、リモート営業(内勤営業)を受け入れる方向へと転換しつつあることが見て取れます。
さらに、買い手側が「自社を訪問してほしいと思う理由」を詳細に見ていくと、「営業担当者の顔を見ると安心感がある」(44.1%)との回答が最も高い割合を占めていました。一方で、「ビデオ会議や電話で説明を受けるには複雑すぎる商材だと感じる」(26.6%)と回答した人の割合は年々減少傾向にあることから、必ずしも訪問営業がマストというわけではなく、ビデオ会議ツールを活用した営業手法にも慣れつつあることがうかがえます。
(出典:HubSpot「日本の営業に関する意識・実態調査2024の結果をHubSpotが発表」)
ただし、外勤営業の利点が失われているわけではありません。売り手側に訪問営業が好ましいと思う理由を尋ねた結果では、「訪問することで商談の相手から信頼を得られると思うから」(61.0%)との回答が過去最高水準となりました。顧客との信頼関係を構築する重要性が増していることがうかがえる結果といえるでしょう。
(出典:HubSpot「日本の営業に関する意識・実態調査2024の結果をHubSpotが発表」)
以上のことから、内勤営業・外勤営業のいずれかの手法に絞るというよりは、それぞれの営業手法の強みを活かしつつ、顧客の信頼を獲得していくことが今後ますます重要になっていくと考えられます。
内勤営業と外勤営業の強み
内勤営業と外勤営業の強みはどのような点にあるのでしょうか。それぞれ具体的に見ていきましょう。
内勤営業の強み
外勤営業と比較した場合の内勤営業の強みとして、下記の3点が挙げられます。
営業効率が高まる
内勤営業の担当者には移動時間が必要ないため、業務時間を営業活動に最大限費やせます。時間を有効活用できるため、担当者一人あたりの担当顧客数が外勤営業よりも多く確保できる点が大きな強みです。
営業プロセスの短縮
営業活動に必要な資料の確認や上長による決裁をその場で行えるため、営業プロセスが簡素化・短縮化できます。相手から「すぐにでも回答が欲しい」といった要望があった際にも、素早く対応できるでしょう。
営業手法の標準化
マニュアルやツールを駆使することによって、どの担当者も同じ営業力のレベルで商談を進められます。外勤営業によく見られるように、担当者によって成果が大きく異なるといった事態を回避しやすい点が強みです。
外勤営業の強み
では、外勤営業にはどのような強みがあるのでしょうか。内勤営業と比較した場合の主な強みとして、下記の2点が挙げられます。
顧客に安心感を提供できる
外勤営業は顧客と対面で直接対話をするため、相手に安心感を与えられる点が大きな強みです。クロージングに際しても、相手の反応を確認しながら成約を阻害する要因を探り、切り返しなどの対処をきめ細かく行えます。
納品と代金の回収を同時に行える
顧客と直接対面する外勤営業の手法であれば、担当者が直接顧客先へ納品に訪れたり、納品と同時に代金を回収したりする対応も可能です。納品を急ぐ顧客に対しては、とくに大きなアドバンテージとなる可能性があります。
内勤営業と外勤営業の最適なバランスとは
ここまでに見てきたとおり、内勤営業と外勤営業にはそれぞれ異なる強みがあります。したがって、内勤営業のみ/外勤営業のみの体制にするのではなく、それぞれの強みをバランスよく生かしていくことが重要です。両者の現状と、最適なバランスについて解説します。
小規模企業では内勤営業担当者の割合が高い
InsideSales.comの調査によると、収益が5億ドル以上の大規模企業においては外勤営業の担当者が多勢を占めていました(71.2%)。一方で、内勤営業モデルや内勤/外勤を組み合わせたハイブリッドモデルを採用する企業が増えつつあるのが実情です。
内勤営業の担当者の割合が最も高いのは、収益が5,000万ドル以下の小規模企業です(47%)。前述のとおり、大規模企業においても内勤営業の存在感が増していることから、今後は外勤営業が営業の中心とは言い切れない状況になっていくことが想定されます。
実際のところ、内勤営業と外勤営業の適切な割合は「状況によって異なる」と言うよりほかありません。企業の成長段階や事業モデルによって状況は異なるため、同じ企業であっても最適なバランスを見極めていく必要があります。
データから読み解く最適なバランス
内勤営業と外勤営業の構成比率について、前掲のInsideSales.comでは年々内勤営業の割合が高まっていくと予測しています。この予測から、多くの企業が「内勤/外勤営業の割合は半々が理想」と考えている傾向が見て取れます。
(出典:HubSpot「日本の営業組織に対する意識・実態調査」)
ただし、内勤営業:外勤営業=50:50のバランスがどの企業においても最適とは限りません。実際、同調査では外勤営業チームと営業開発チームが協力体制を築けている企業において、関係志向の営業モデルを当初から効率的に導入できていることがわかっています。また、収益の高い企業ほどアカウント対応を役割分担し、顧客サポートを強化する必要があることから、内勤営業チームと営業開発チームが存在感を発揮していると推察されます。
このように、事業規模や営業モデル、顧客対応において重視すべきポイントなど、複数の要素によって内勤営業と外勤営業の最適なバランスは異なります。一方で、内勤営業の存在感は年々高まっており、今後さらに重要な役割を担っていくことは想像に難くありません。内勤営業:外勤営業=50:50のバランスにより近づいていくイメージで捉えて差し支えないでしょう。
内勤営業と外勤営業の役割分担が重要
内勤営業/外勤営業のどちらに重きを置くかよりも、両者の連携を重視していくことの方が重要です。両者にはそれぞれ異なる強みがあり、担うべき役割も異なります。双方の強みを活かせる役割分担を行い、内勤営業と外勤営業がスムーズに連携できる仕組みを整えていく必要があるでしょう。
一例として、営業効率が高い内勤営業が多数の見込み客と接点を創出し、購買意欲が高まった見込み客から優先的に商談を設定するといった仕組みが想定されます。商談に向けて内勤営業がヒアリングした情報を外勤営業の担当者に引き継ぎ、それらの情報にもとづいて外勤営業がクロージングを担当するという流れです。こうした戦略を採用することにより、営業効率の向上と営業成績の伸長を両立可能な体制を構築できます。
取引志向と関係志向の営業モデル
内勤営業/外勤営業を組み合わせた組織体制は、自社の課題に応じて構築していくことが大切です。ここではその一例として、「取引志向」「関係志向」の2つのパターンのモデルを紹介します。
取引志向の営業モデル
取引志向の営業モデルとは、見込み客との関係をじっくりと時間をかけて築くことを重視するのではなく、比較的短期間で取引をまとめようとする営業スタイルを指します。たとえば、下記のような条件に当てはまる企業においては、取引志向の営業モデルが適している可能性が高いでしょう。
- 意思決定者の人数が少ない(1〜3人)
- セールスサイクルが短い(90日以内)
- 取引規模が小さい(35,000ドル未満)
こうした営業モデルにおいては、できるだけ多くの見込み客との接点をつくり、セールスの機会を創出していくことが重要です。したがって、担当者一人あたりが対応できる見込み客数を、より多く確保しやすい内勤営業に重きを置いた組織体制が適しています。
関係志向の営業モデル
関係志向の営業モデルとは、見込み客との関係をじっくりと時間をかけて構築し、意思決定者との信頼関係を築いていくことを重視する営業スタイルを指します。たとえば、多数の意思決定者(4人以上)との信頼関係を構築することが求められるようなケースでは、関係志向の営業モデルが適しているでしょう。具体的には、下記のような条件の企業が想定されます。
- 従業員数が多い企業(100人以上)
- セールスサイクルが長い(90日超)
- 取引規模が大きい(35,000ドル以上)
こうした営業モデルにおいては、見込み客と直接対話ができ、顔が見えるやり取りの中で信頼関係を醸成しやすい外勤営業が適しています。一方で、企業やブランド、商品に知名度があれば、見込み客側から問い合わせが入る場合もあるはずです。SDR型の内勤営業が見込み客のニーズをヒアリングした上で、外勤営業に引き継ぐ仕組みを構築することにより、商談の成約率を高める効果が期待できます。
内勤営業と外勤営業の連携を意識したチーム構成が重要
内勤営業・外勤営業にはそれぞれ強みがあり、担うべき役割も異なります。両者を分けて捉えたり、どちらか片方のみに絞った体制構築を目指したりするのではなく、相互の連携を図っていくことが重要です。内勤営業・外勤営業を分業化する目的は、あくまでも顧客体験の向上を図り、売上伸長を目指すことにあります。本来の目的を見失うことなく、内勤/外勤営業の連携を意識したチーム構成を目指しましょう。