HubSpotが法人営業担当者を対象に行った調査「 日本の営業に関する意識・実態調査2021 」によると、営業担当者は「働く時間の20.2%はムダ」と感じていることがわかりました。ムダと感じられる時間を金額換算すると、年間約6,650億円にも上ります。企業の生産性の向上が求められるなか、ムダな時間をいかに削減し、付加価値を高めていくかが問われています。

それでは、どのようにムダを削減すれば良いのか。その答えの1つに「インサイドセールス」があります。内勤型営業、また「訪問しない営業」とも言われるインサイドセールスの効果は、単に訪問時間を削減するだけではありません。属人化しやすい営業活動を複数部門が連携し、分業を進めることで、営業チームの最適化が進められます。
そして、インサイドセールスを中心とした協働体制を支えるのが「インサイドセールスツール」です。本記事ではインサイドセールスツールを導入しつつ、いかにインサイドセールス体制を構築するかを説明します。
インサイドセールスとは?
インサイドセールスとは「電話やメール、Web会議ツールなどを利用して、見込み客を訪問せずに行う営業活動のこと」です。 インサイドセールスだけで成約まで行く場合と、見込み客のヒアリングやニーズの深掘りを行った段階で案件化し、以降はフィールドセールスが引き継ぐ場合があります。
ここで、あらためて見込み客を集客するところから受注までの営業活動の流れを見ておきましょう。
営業の流れは以下の6ステップに整理できます。
- 集客…見込み客が求める情報を、ブログなどWebコンテンツを通じて発信します
- リード転換…ブログよりもくわしい情報や最新情報、テンプレート、独自調査などのホワイトペーパーやeBookを提供し、見込み客に名前やメールアドレス、会社名などの個人情報を提供してもらいます
- 購買意欲の醸成…メルマガや見込み客が関心を持ちそうなオファー、ウェビナーなどに招待し、見込み客の現状の課題を深掘りします。その課題の解決となる提案を行いつつ、見込み客の購買意欲の醸成を図ります
- 案件化…購買意欲が一定のしきい値を超えた見込み客に対して、ヒアリングを行いながら案件化します
- 商談…提案を行い、クロージングします
- 受注…商談成立後、受注・契約までのプロセスを先方の購買担当者とともに行います
従来のBtoBビジネスでは、営業のプロセスをほぼ1人で担うのが一般的でした。しかし、新しいBtoBビジネスは、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスの3部門による分業体制で行われます。
インサイドセールスは、上記の6つのプロセスの「3. 購買意欲の情勢」「4. 案件化」を行い、以降はフィールドセールスにパスする場合と、インサイドセールスで受注まで行う場合があります。

そして、各プロセスでインサイドセールスをサポートするのが、以下5種類のツールです。
- CRM(顧客関係管理)ツール
- SFA(営業支援)ツール
- クラウド電話システム
- Web会議ツール
- スケジュール管理ツール
ここから、5種類のツールに焦点を当てながら、インサイドセールスについて詳しく見ていきましょう。
インサイドセールスを支える5つのツール

こちらでは、インサイドセールスを支える5種のツールを、役割とともに紹介します。
1. CRM(顧客関係管理)ツール
CRMツールは、見込み客や顧客の情報を管理するデータベースです。CRMツールは長期的な信頼関係を構築し、適切なコミュニケーションを継続するための基盤となります。
特に見込み客とメールや電話、Web会議など、見込み客とさまざまな接点を持つインサイドセールス部門では、CRMにストックされた情報をもとにコミュニケーション戦略を立てます。 同時に、CRMツールにコミュニケーションの経過・結果をストックすることで、顧客情報をつねに最新のものに保てます。
CRMの導入を検討している方は「 営業チームを成功に導くためのCRMテンプレート 」でCRMについてくわしく解説しています。
これからインサイドセールスを立ち上げる場合は、最初にCRMツールを導入し、インサイドセールスが動き始めた段階で、次で紹介するSFAツールの導入を検討してください。
2. SFA(営業支援)ツール
営業活動を行う上で、見込み客と案件の管理を行うシステムがSFAツールです。
属人的な営業は、個人の営業スキルに依存し、最適なアプローチができないケースが起こります。また成果が上がったとしても、何が良かったのかを分析して共有することができません。
SFAツールは、営業担当者のスケジュールや行動履歴を見える化し、案件や顧客情報を共有する役割を担います。インサイドセールスでは、ヒアリングやメール、Web会議などを通じて得られた情報をSFAツールを通じて共有化します。
3. クラウド電話システム
インサイドセールスの実践の中心となるのが、電話を通じての見込み客との対話です。見込み客とのコミュニケーションを重ね、ヒアリングを通してニーズを深掘りします。
その活動を支えるのが、クラウド電話システムです。 クラウド電話とは、PCやスマホにアプリをインストールした上でクラウドにアクセスすると、そのPCやスマホを端末として利用できるものです。
従来、企業に電話を引く場合は、ビジネスフォンの主装置を設置し、そこから複数の電話機や内線電話に分岐させていました。そのため主装置を購入し、そのための工事も必要でした。その必要のないクラウド電話は、契約後にすぐ利用できます。
4. Web会議ツール
インサイドセールスでは、ヒアリング見込み客とのコミュニケーションツールとして、電話だけでなく、メールやWeb会議ツールを利用します。見込み客との信頼関係の構築度合いや見込み客の購買意欲によって、メール、電話、Web会議などを使い分けます。
Web会議ツールは双方の顔を見ながら、同じ画面や資料を共有しつつ対話を重ねることで、距離を感じさせないコミュニケーションが可能です。
ただ、Web会議ツールは通信環境やアプリのダウンロードなどが必要な場合があります。さまざまなWeb会議ツールがあるので、先方と事前にすり合わせを行いながら進めます。
5. スケジュール管理ツール
インサイドセールスでは、マーケティング部門やフィールドセールス部門との緊密な連携が不可欠です。そのためには他部門の動きや進捗度合いを「見える化」する必要があります。
分業体制を敷く場合、「マーケティングが創出した見込み客をインサイドセールスが案件化してくれない」「インサイドセールスからフィールドセールスにパスした案件は、今どうなっているのか?」などの齟齬はどうしても起こりがちです。部門間のコミュニケーションが十分でないと、協働体制も崩壊しかねません。
スケジュール管理ツールを導入することで、会議での報告を待たなくても異なる部門の動きが把握できます。また、自部門の工程を多部門に連動させるのも可能です。
インサイドセールスツール導入による3つのメリットと注意点
インサイドセールスツールを導入することでどのようなメリットが得られるのか、ツールを導入する際の注意点と合わせて説明します。
インサイドセールスツール導入で得られる3つのメリット
ツールを導入することで得られるメリットは、以下の3点にまとめられます。
- 営業活動の生産性向上
- 営業活動の脱属人化、仕組み化
- 在宅勤務を始めとする多様な働き方の導入
メリット1:営業活動の生産性向上
分業体制を敷くことで営業活動の効率化が図れますが、それを円滑に進めるには部門間の情報共有が不可欠 です。マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールスと異なる部門で情報を共有するために、顧客情報を集約したデータベース(CRM)が必要です。
部門間で情報共有を行いつつ分業体制を敷くことで、営業の効率化が可能になります。
メリット2:営業活動の脱属人化、仕組み化
従来の営業では、1人の営業担当者がヒアリングから受注まですべての工程を受け持っていました。その結果、顧客情報を把握しているのは営業担当者だけ、営業担当者が離職すれば、顧客との関係が切れるという事態も起こりました。
しかし、営業体制を変革しようとしても、従来のやり方になじんだベテラン営業担当者によって抵抗を受ける可能性があります。
属人的な営業方法が主流の組織の体制を変える場合には、ツール導入を機に組織体制の変革を図ることができます。
メリット3:在宅勤務を始めとする多様な働き方の導入
非対面のインサイドセールスでは、働く場所を選びません。 多様な働き方として、リモートワーク(テレワーク)を検討する際に、インサイドセールスとインサイドセールスツールの導入を、リモートワーク導入の足がかりにできます。
インサイドセールスツール導入前に考慮すべき2つの注意点
インサイドセールスツールの導入を検討する際は、以下の2つの点を注意する必要があります。
- 顧客情報の管理/共有がうまくできないと仕組みが破綻
- 組織変革も含めた体制づくりとノウハウの蓄積が必要
注意点1:顧客情報の管理/共有がうまくできないと仕組みが破綻
せっかくツールを導入しても、利用しなければ意味がありません。営業担当者の中には、慣れないツールへの入力を面倒くさがる人が出てくる場合があります。
しかし、営業活動の内容や、新しく得た見込み客の情報が共有できなければ、フィールドセールスとインサイドセールス、マーケティングの連携が取れなくなり、仕組みそのものが破綻してしまいます。
入力しない、またツールを利用しないという事態を防ぐためにも、インサイドセールスツールの導入は、経営陣がトップダウン型で推進することが求められます。
注意点2:組織変革も含めた体制づくりとノウハウの蓄積が必要
「 【2021年版】インサイドセールスに関するデータ集 」には、日本企業の1/3以上の企業が、「顧客情報の管理方法は明確ではない/わからない」と答えたという調査結果が報告されています。
現状は各部門が独自にエクセルなどで集計している顧客情報を、新しくCRMツールなどを導入して一元管理する場合は、システム面の整備を担当する部署を設置した方がスムーズに行くかもしれません。 情報システム部門があることで、その部署がマーケティング部門やインサイドセールス、フィールドセールス部門の意見をとりまとめながらツールベンダーと交渉できるからです。
ツールベンダーはツール導入前だけでなく、社内でノウハウが蓄積できるように導入後のサポートを継続してくれるところを選びましょう。
インサイドセールス導入までの5ステップ

インサイドセールスをこれから立ち上げようと考える企業は、以下の5ステップで導入を進めましょう。
- ステップ1:インサイドセールス導入の目的を明確化する
- ステップ2:全部門横断的なデータベースを構築する
- ステップ3:インサイドセールスを担う組織体制を確立する
- ステップ4:インサイドセールスのKPIを設定する
- ステップ5:インサイドセールスで使用するトークスクリプトを作成する
ステップ1:インサイドセールス導入の目的を明確化する
インサイドセールスを自社は何のために導入するのか、自社は何を達成したいのかを明確化します。
その目的を踏まえ、他の部門とどのように関連させるのか、インサイドセールス部門の役割を定めます。
ステップ2:全部門横断的なデータベースを構築する
CRMツールを活用することで、見込み客や顧客の情報を集約し、リアルタイムでアップデートできる顧客データベースが構築されます。
CRMに蓄積する主なデータは3つです。
- 属性データ…見込み客や顧客の氏名、メールアドレス、企業、役職、居住地など
- 購買データ…これまでの購買履歴
- 定性データ…メールや電話、チャットボット、アンケート、問い合わせなど、見込み客と行ったコミュニケーションの内容
SFAも同様ですが、各担当者が入力する場合の名寄せに関するルールなども定めておく必要があります。
ステップ3:インサイドセールスを担う組織体制を確立する
インサイドセールスを担う人材を配置します。
インサイドセールスはマーケティング部門とフィールドセールス部門をつなぐ役割が求められることから、自社の業務全体に広く興味を持つ人材が求められるのです。
また、 見込み客との接点も多いことから、業務と顧客対応の両方を学ぶ場として、新人の教育・研修の場として位置づけられているケースも多く見られます。この場合は、トークスクリプト(電話での営業台本)の作成も含め、全体を監修する役割を担う人員を配置する必要があります 。
ステップ4:インサイドセールスのKPIを設定する
インサイドセールスとして、「架電数」「有効会話数」「アポイント件数」など、全体の目標を達成するための中間指標として、KPI(重要業績評価指標)を設定します。
以下の図は、簡単なKPIの設定例です。

インサイドセールスが担うのは、この工程の「架電数」~「アポイント件数」(インサイドセールスが契約まで行う場合は「契約数」)までですが、全体でKPIを設定することで、部署間の連携も取りやすくなります。
例えば、マーケティング部門が保有する見込み客に対して、700件の購買意欲の高い見込み客を醸成できたと判断し、インサイドセールス部門にパスしたとします。
KPIを設定する段階では、有効会話数が300件達成可能だと考えていたのに、実際には200件しか有効な会話ができず、想定した結果が出ませんでした。
このようにKPIが未達に終わった場合は、マーケティング部門が「見込み客に対する購買意欲の醸成が不十分だったのではないか」など、インサイドセールス部門の担当者と連携して振り返り、改善策を検討します。
ステップ5:インサイドセールスで使用するトークスクリプトを作成する
インサイドセールスを効率よく実践するには、トークスクリプトを作成することが重要です。見込み客に適切なヒアリングを行い、関係性を深めるためのトークスクリプトを作成します。
トークスクリプトの具体的な作成方法は「 電話営業がつらい」は解消できる。案件を創出するトークスクリプト&話し方のコツとは? 」で紹介していますので、参考にしてください。
インサイドセールスを成功に導くツール9選
これまでインサイドセールスを運用するためには、5種類のツールの導入が必要であることを説明しました。
- CRM
- SFA
- クラウド電話システム
- Web会議システム
- スケジュール管理ツール
こちらでは、これら5種類のツールの中で選りすぐりのツールを紹介します。
CRM
顧客情報の一元管理ができるCRMは、顧客起点のビジネスを考える上での最重要ツールです。
その中で、今回は無料で導入できるCRMをご紹介します。
・ HubSpot CRM(無料)
HubSpot CRMは、SFA、クラウド電話システムなど上記で紹介した他の4種類のツールとも接続可能なCRMです。また別途有料にはなりますが、同じくHubSpotで提供しているマーケティング・オートメーションとも連携ができます。これにより、顧客とのエンゲージメントを高める施策を円滑に遂行できるでしょう。
SFA
SFAは 営業の動きをシステム上で見える化するツールです。情報共有によって営業担当者の業務が最適化できます。
・ HubSpot営業支援ソフトウェア

HubSpot営業支援ソフトウェアは、先ほど紹介したCRMと連携して、見込み客に対するアプローチの進捗状況や、商談内容が可視化できるツールです。さらに自動メール配信機能も装備されており、あらかじめ設定することで、顧客1人ひとりに対して、最適なメールを自動配信できます。
プラン
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Starter
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Professional
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Enterprise
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月額料金
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5,400円
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54,000円
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144,000円
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主な機能
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受信したメールやチャットを、チーム内の適切なメンバーに自動で割り当てます
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ワークフローを使用して、時間のかかるタスクが効率化できます
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ほぼ全てのデータが保存可能で、関連付けなどカスタマイズも可能です
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クラウド電話システム
PCやスマホを営業用の端末にするためのツールです。こちらでは、2つのツールをご紹介します。
・ CallConnect(コールコネクト)
導入工事の必要がないため、申し込みを行ってから5分ですぐにコールセンターを開設することも可能です。ブラウザ上で電話の受発信ができるため、顧客情報やスクリプトを確認しながら通話ができます。録音機能やテキスト化機能も搭載されており、HubSpotなど他のツールとの連携も可能です。
プラン
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Starter
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Basic
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Pro
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1ライセンス/月額料金
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2,400円
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4,600円
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8,800円
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通話履歴の保存件数
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1,000件
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30,000件
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100,000件
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・ Dialpad(ダイアルパッド)
通常はクラウドを使用するために、企業の通常の電話番号を使うことはできません。しかしDialpadであれば、GateWay機器を使って従来の電話番号を引き継いで発着信も可能です。G suiteと連携することもできます。
プラン
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Standard
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Pro
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Enterprise
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1ユーザー/月額料金
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800円~
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1,300円~
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1,800円~
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ユーザー数
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1~100名
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3名以上
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100名以上
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Web会議システム
リモートワークの普及とともに、急速にユーザーが拡大したWeb会議システムは、Web上で商談や会議を行えるシステムです。こちらでは、4つのツールをご紹介します。
・ ベルフェイス

オンライン営業に特化したWeb会議システムです。見込み客の側はアプリをダウンロードする必要がなく、見込み客がメールなどで案内された接続番号へ電話をかけるだけで、アクセスが完了します。多くの人にとって使いやすく、システム上で見込み客との資料共有も簡単に行えます。
料金プラン:ダウンロードして問い合わせ
・ Zoom(ズーム)

無料版で使いやすく、100名までの同時接続が可能のWeb会議システムです。Google カレンダーなどのツールと連携することで、スマホでもPCでも簡単に接続できます。
プラン
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基本
パーソナル ミーティング
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プロ
小規模チーム 向け
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ビジネス
中小企業向け
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企業
大企業向け
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1ライセンス/ 年額料金
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無料
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20,100円
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26,900円
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32,300 円
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主な機能
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1対1 ミーティング 無制限
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グループ ミーティング 無制限
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クラウド録画トランスクリプション作成
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18か国までの無制限通話
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・ Whereby

ダウンロードの必要がなく、URLをクリックするだけで会議に参加できます。ルーム制のシステムを取っており、つねに同じURLを利用できます。テキストチャットの利用もできます。Webサイトは英語のみですが、直感的なインターフェースで利用する際に気になることはないでしょう。
プラン
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Free
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Pro
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Business
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ライセンス/月額料金
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無料
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$ 6.99
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$9.99~
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使用可能ルーム数
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1ルーム
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3ルーム
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10ルーム~
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・ V-CUBEセールスプラス

V-CUBEは高画質・高音質のWeb会議・Webセミナーシステムです。低価格で導入しやすいオンライン営業専用のV-CUBEセールスプラスのほかにも、Web会議のスタンダードプランであるV-CUBEミーティングやオンラインイベントなど、さまざまなプランが用意されています。
プラン
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V-CUBEセールスプラス(オンライン営業専用)
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1ID/月額料金(税別)
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7,000円(このほかに初期費用45,000円)
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スケジュール管理ツール
インサイドセールスを進める上で、社内で利用するスケジュール管理ツールとは別に、Web会議や商談の日程を設定するための見込み客と共有できるツールがあると便利です。こちらでは、無料で使えるスケジュール管理ツールをご紹介します。
・ HubSpot 無料のミーティング設定ソフトウェア

見込み客とのWeb会議の設定を、簡単に設定できるツールです。日程を決定するために、何度もメールのやり取りをする必要がありません。Google カレンダーやOffice365カレンダーに同期されているため、空いている日時を見込み客に選んでもらうだけでミーティングの設定が完了します。
インサイドセールス導入に必要な4つの条件
インサイドセールスは効果的な営業手法ですが、そもそも導入に向いていない企業もあります。インサイドセールスを導入するには、4つの条件を満たしている必要があります。
- 前提条件1.:充分なインバウンドリードがあること
- 前提条件2.:フィールドセールスとインサイドセールスで明確な部門間KPIを設定していること
- 前提条件3.:フィールドセールスにパスする見込み客の情報が明確化されていること
- 前提条件4.:中立的な意思決定者が存在していること
前提条件1. :充分なインバウンドリードがあること
インバウンドリードとは、見込み客の側からWebコンテンツのダウンロードや問い合わせなどを通じてリードになった見込み客を指します。
アメリカの The Global Inside Sales Association の調査によると、インサイドセールスで年間20%を超える成長を遂げる企業は、インサイドセールス担当者1名に対して、1日約14件のインバウンドリードが供給されていることが明らかになっています。5%~20%の成長を遂げている企業でも約8件、7件では現状維持か収益を減少させていることが報告されています。
インサイドセールスが普及しているアメリカの統計であるため、一概に日本に当てはめることはできません。しかし、インサイドセールスが機能するには、毎日リードが一定数補充される必要があり、アメリカの統計は数値目標になりうるでしょう。
インサイドセールスを導入するためには、電話で話ができる程度に自社ビジネスや製品に関心を持ち、購買意欲を持っている見込み客の存在が不可欠です。それだけの新規見込み客が安定して得られない場合は、まずWebコンテンツを充実させるなどして、見込み客の創出に集中しましょう。
前提条件2. :フィールドセールスとインサイドセールスで明確な部門間KPIを設定していること
分業体制を敷くには、部門間を貫く営業戦略全体の明確化とゴールの設定が必要です。その上で、マーケティング部門、インサイドセールス部門、フィールドセールス部門で、それぞれKPIを設定します。
インサイドセールス部門のゴールは、SQL(フィールドセールス担当者が営業活動をする価値があると判定された見込み客)をフィールドサービス部門にパスすることです。そのために明確なKPIを設定する必要があります。
その際に気をつけるポイントは、部門間KPIを設定する場合に、前工程を実施する担当者が後工程のKPIを一部担うことです。こうしてつなぎ目をしっかりと連携させることで、連携しつつ分業が可能な体制が構築できます。
前提条件3. :フィールドセールスにパスする見込み客の情報が明確化されていること
インサイドセールス部門は、SQLをフィールドセールス部門に引き継ぐ際に、以下の点を明確にして伝えることが重要です。
- SQLは「誰」で「どこの企業に所属」し、「どの役職に就いている」などの属性情報
- 「リードになったのは〇月×日」「コンタクト期間は〇か月」などの時間的な情報
- どのように購買意欲の醸成を行い、どのような反応が見られたか、などの定性的な情報
またフィールドセールス部門も、インサイドセールス部門に「いつまでに」「どのような」アクションを行うかを明確化する必要があります。
前提条件4. :中立的な意思決定者の存在が存在していること
インサイドセールス部門の設立やCRMなどのツールの導入、入力ルールなどはトップダウンで行う必要があります。
また、従来は1人の営業担当者が行っていた業務を「インサイドセールス部門」「フィールドセールス部門」に分けるため、責任の分断がなされやすくなり、結果的に誰も責任を負わないという事態に陥ることがあります。そのようなことを防ぐために、全体を俯瞰する中立的な意思決定者の存在が必要です。
インサイドセールスが「営業戦略の要」になるために
営業の生産性を上げるためには、ムダをなくすことと、付加価値を高めることの両方が必要です。
不要な会議や営業先の移動時間などのムダな時間を削減すると同時に、見込み客が知りたい情報を、知りたいタイミングで提供することを両立する必要があります。そして、その課題を解決する方法の1つがインサイドセールスです。
インサイドセールスは、Web広告やブログ、SNSを通じて接点を持った見込み客と、最初は電話でコンタクトを取ります。対話を重ね、信頼関係を深めながら、メールやウェビナー、ホワイトペーパーなどを活用しながら、見込み客の購買意欲を高めます。そして商談を設定したところでフィールドセールスにつなぎます。
HubSpotの統計 では、日本でのインサイドセールスの導入は2020年時点で37.4%ですが、今後増えることが予想されます。その上で、インサイドセールスの実行にはツールの存在が不可欠です。
CRM/SFAやマーケティングオートメーション、クラウド電話システムやWeb会議システムと段階を踏んでツールを導入することにつれ、マーケティングとフィールドセールスを橋渡しするインサイドセールスが、営業戦略の要になるでしょう。

