価格交渉要請に対応する6つの術

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戸栗 頌平(とぐり しょうへい)
戸栗 頌平(とぐり しょうへい)

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価格交渉には、商談をまとめたり、顧客との信頼関係を作り出したり、相手からの譲歩を引き出したりする効果があるとされています。

価格交渉要請に対応する6つの術

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しかし、このような効果を上げるためには、顧客の言いなりになって価格交渉に応じるのではなく、きちんとした戦略に基づいて価格を見直すことが必要です。

実質的な交渉を行う前に価格交渉を約束してしまうことには、多くのマイナス効果があります。まず、顧客が貴社や製品に対して感じている価値が損なわれること。購入のROIを強調していたはずなのに、自ら主張していた価値を下げてしまっては意味がありません。

時期尚早な価格交渉のもうひとつの問題は、交渉のポイントを取引の価値ではなく価格にすり替えてしまうことです。貴社の製品を導入することで顧客のビジネスにどんなインパクトがあるかを考えるより、コストの側面ばかりが意識されてしまうのです。

そして、価格交渉を約束してしまえばそこからの交渉に使えるカードが失われます。交渉を効果的に進めるにはギブ・アンド・テイクが欠かせませんが、営業プロセスが始まったばかりの段階で価格を下げると、顧客の意向を把握しながら価格交渉への見返りを求めるチャンスをみすみす逃してしまうだけでなく、「この会社は要求が簡単に通る」という悪しき前例を作ってしまいます。

とは言うものの、現実の交渉場面で、顧客に納得してもらいながら自社の収益を守ることは簡単ではありません。

対応に迷ったら、次の6つの応答例を参考にしてください。

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    商談の入口段階

    (1)「価格についてのご相談ですね。承知いたしました。ではまず、今回お客様がご希望の製品(サービス)について詳しくお聞かせいただけますか。できるだけ正確にお見積りさせていただいた上で、ご相談させていただければと存じます。」

    販売する製品やサービスの値段が顧客のニーズや目的、状況などによって大きく異なる場合、最初から価格交渉の交渉に入るのは時期尚早です。提供する製品やサービスの総額もわからないうちから、顧客の満足と貴社の安定経営を両立させる価格交渉幅を割り出すことは不可能だからです。

    とはいえ、顧客の打診を無視する態度は、「こちらの要望より自分の商売の方が大事なのか」という印象につながりかねません。顧客の声を受けとめた上で、ひとまず商談を進めて価格交渉についての相談を後回しにする方が顧客にとってもメリットになると説明しましょう。

    (2)「お尋ねありがとうございます。価格がお買上げへの大きなネックになっているということでしょうか?」

    価格を知ったとたんに価格交渉を打診する顧客の場合、定価での購入には手が届かない可能性があります。最初から探りを入れてくる顧客は、難しいとわかれば引き下がることが多いものです。

    一方、定価での購入もできるが、優待もあるのか聞いておきたいという場合もあるでしょう。

    上の質問で顧客の真意を確認しましょう。「ネックというわけではない」という顧客なら、1) の応答につなげましょう。「価格が問題」と言われたら、顧客の資金事情についてもう少し詳しく確認してみる必要があります。十分な資金がない顧客は、見込み客のリストから外すことも検討しましょう。

    営業プレゼンテーションや製品デモの段階

    (1)「具体的な金額についてもご相談させていただきますが、まず、お客様のニーズに最適なソリューションはこちらということで間違いございませんか。」

    営業プロセスがこの段階まで進んでから価格交渉を求められる場合は、顧客が買う気に傾いていると見ていいでしょう。デモやプレゼンの機会を与えられたことで、製品(サービス)に対する顧客の関心は明らかですが、ここでさらに購入についての具体的な検討が始まっていると考えられます。

    ただ、価格交渉の約束はもう少し待ってください。顧客の求めにあっさり応じてしまうと、とにかく契約を取りたい一心で焦っているかのように思われ、交渉を有利に進められません。それどころか、「ひょっとしてこの製品にはそれほど価値はないのか」などと勘ぐられてしまう恐れもあります。

    上の例のような返答で、価格交渉からいったん話題をそらしましょう。価格交渉に応じないわけではなく、提供される製品(サービス)の内容についての双方の認識をすり合わせてからでなければ交渉には入れないということを理解してもらいます。

    交渉の段階

    (1)「理由をお聞かせいただけますか?」

    何でも値切ってくるタイプの顧客にはこのように尋ねるのが効果的と語るのは、ネットでの講演活動などで著名な経営評論家のヨーガン・アペロ氏です(英文記事)。

    このような顧客は、売り手が最初から不当な高値を設定しているという前提で、値切れば適正な価格になるという認識でいる場合が多いようです。

    同氏の経験では、このような顧客に改めて理由を尋ねてみると、「ちょっと聞いてみただけ」と定価で買ってもらえることが多いといいます。

    理由をお聞きするのは、お断りではありません。顧客の側にそれなりの事情があって負けてほしいと言われていることも十分に考えられます。必要なのは、売り手と買い手の事情に応じて価値の交換をカスタマイズすることです。

    たとえば、顧客の予算時期や一時的なキャッシュフローの問題などがある場合、価格交渉を検討してもよいでしょう。ただし、交換条件を必ず提示するようにします。

    (2)「このような条件に同意をいただけるなら、価格交渉を提示させていただきます。」(条件の例:契約期間の延長、支払い条件の変更、特定のパッケージやティアの契約、ユーザー数の上乗せなど)

    歩み寄りはほとんどの交渉場面に不可欠です。交換条件として価格交渉を提示することで、双方に実のある取引とすることができます。

    商談を進めるにあたり、顧客に提示できる価格以外の取引条件のパターンをいくつか考えておけば、交渉の幅を広げることにつながります。

    (3)「お客様にとって妥当と思われる価格交渉幅は?」

    営業技法の専門家によると、顧客の意向から先に尋ねる方法も効果的です(英文記事)。

    たとえば100万円の製品について、顧客から15%の価格交渉幅が提案された場合には、続いてこのように質問します。「それは、この製品に100万円という値段が高すぎるということでしょうか?それともお客様の方で85万円以上は出せないということでしょうか?」

    この質問で、顧客が製品の価値を認めていないのか、あるいは単にその額が用意できないだけなのかがわかります。後者の場合、予算に合わせて製品やサービス内容の調整を提案できます。

    たとえば、「前回お客様は、~という目的(例:所要時間の短縮、コストを削減して費用対効果を最大にすること、カバレッジの拡大など)に合わせてAというオプションをお選びになりましたが、ご予算に合わないということであれば、Bというオプションを76万円で提供させていただくことも可能です。」

    このような対応なら、顧客に価値のある取引を通じて貴社の収益も守ることができます。

    本来高い製品を安値で売ってほしいと要請された場合は、製品の価値について改めて説明しましょう。

    次はその一例です。

    「お客様が現在ご利用になっている製品は、年間におよそ10回の修理やメンテナンスが必要です。これには人件費その他の費用で約33万円、交換パーツの費用として約7万円かかります。弊社のデータによれば、この機種は3年目以降に故障頻度が約2倍になるとされているので、来年は少なくとも80万円のコストがかかると予想されます。これに加えて、故障のたびに社内の生産性が大きく影響されますから、その分の損失が今年で20万円、来年は40万円となります。弊社の製品を導入していただくことで、ここからの1年間だけでも120万円のコスト削減効果が見込めます。」

    貴社の製品に長期的なコスト削減効果があることを顧客に納得してもらえれば、それまでの価格交渉要請も考え直してもらいやすくなるでしょう。

    今回ご紹介した6つの応答術を効果的に活用して、顧客からの価格交渉要請をビジネスチャンスに転換しましょう!

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