AI技術への注目が集まっている昨今、「自社の営業部門でもAIを活用できないか」と関心を向けている担当者の方も多いのではないでしょうか。営業活動にAIを活用することで、見込み客の創出や顧客管理の一元化、機会損失の防止、業務効率化といった数々のメリットを得られます。
営業部門でのAI活用実態調査&導入ガイド
営業リーダー175名以上に伺ったAIツールの利用状況とこれまでの成果についてご紹介します。
- 米国の営業とビジネスリーダーを対象としたアンケート調査のデータ
- 営業チームでのAIツールの利用状況に関する分析情報
- G2で人気のAIツールとカテゴリーに関する詳細な考察
- 営業プロセスへのAI導入のヒント
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全てのフィールドが必須です。
そこで本記事では、営業活動でAIを活用した際の営業担当者への影響、活用するメリット、活用する際の課題などを解説します。AIの活用で営業部門の業務改革を目指したい方は、ぜひ参考にしてください。
営業の仕事はAIに奪われてしまう?
AIは、今やビジネスの多くの側面で活用されています。「営業の仕事はAIに奪われるのではないか」と不安を抱いている方もいるかもしれません。しかし、営業の仕事をすべてAIが奪うことは困難といえるでしょう。
オックスフォード大学の教授が2013年に、「10~20年内に米国における雇用の47%がAIに奪われる」と発表し、世界に衝撃を与えました。しかし、AIは営業の仕事を奪うのではなく、顧客との関係構築や業務効率化を支えるツールとして営業部門に定着しつつあります。
また、営業の仕事は、顧客のニーズに合わせた臨機応変な対応が求められますが、現段階におけるAIはデータ学習がもとになっているため、未知の出来事に対応する力がありません。
AIを活用して定型業務を効率化し、それによって創出された時間で人にしかできない業務に営業担当者が取り組みましょう。AIと人がそれぞれの得意分野を活かしながら共存する状態を目指すのが理想です。
営業部門でAIを活用するメリット
AIを活用するメリットを理解することで、AIの効果的な活用方法を見出せるでしょう。営業部門でAIを活用するメリットは、主に次の3点があります。
- 作業時間の短縮・労働力不足の解消
- 大量データの活用による顧客理解の促進
- 属人化の防止・サービス品質の安定化
作業時間の短縮・労働力不足の解消
AIの活用は、営業部門の業務効率を大幅に向上させる手段となります。営業資料の作成やスケジューリング、顧客データの分析など、手順が決まっている業務の効率化はAIの得意分野です。業務の一部をAIが担うことで、営業担当者は顧客との対話や新規顧客の開拓といったコア業務に集中できるでしょう。
また、労働力不足の解消にもつながります。24時間365日稼働でき、人がいなくても仕事ができる環境を作り出すことが可能です。担当者の負担が減ることで、離職率の低下も期待できます。顧客にとっても、いつでもサービスを受けることができ、満足度の向上につながるでしょう。
大量データの活用による顧客理解の促進
AIは大量のデータを処理して顧客の購入履歴や行動パターンを学習し、それらの情報から顧客の好みやニーズを把握することが可能です。得られたデータをもとに、顧客一人ひとりに合わせた提案を提供することで、満足度の向上につながります。
また、過去の取引データを解析して成功のパターンを見つけ出したり、未来のビジネスの傾向を予測したりといった活用も考えられます。AIのデータを顧客理解に役立てることは、最適なターゲティングや顧客体験の提供につながり、企業と顧客の双方にとってメリットがあります。
属人化の防止・サービス品質の安定化
営業の現場にとって、情報やノウハウの属人化は大きな課題です。AIを活用することで学習した知識を蓄積し、新たな営業担当者に引き継ぐことが可能です。異動や離職などによって営業の担当者に変更があった場合でも、情報やノウハウが失われることがなくなります。
AIは大量のデータを高速に処理し、分析する能力を持っています。営業戦略の策定や意思決定を、直感や経験に頼るのではなく、具体的なデータに基づいて行うことが可能となるでしょう。そのため、一貫したパフォーマンスを発揮でき、顧客へのサービスの質を一定に保ちます。
営業部門でAIを活用する際の課題
AIには次のようなデメリットがあるため、活用する際は注意が必要です。
- AIを活用するスキルの不足
- データの品質と整合性
- 情報セキュリティ
AIを活用するスキルの不足
昨今はAI搭載のツールも増え、誰でも手軽にAI技術を活用できる時代になりましたが、AIを使いこなすためには、ユーザー側にも一定のスキルが必要です。企業側が従業員に対してAIの知識を深めるための教育機会を提供し、AIを適切に活用できるように促しましょう。
一方で、「生成AI」が作成したコンテンツが、既存のコンテンツと酷似しているなど、AIに関連した課題も数多くあげられています。学習データやプロンプト(AIへの指示)の質次第では、事実と異なる内容が出力されることも珍しくありません。AIの進化は著しく、特に最新の技術に関しては情報が限られており、未知のリスクが潜んでいることを認識したうえで活用することが大切です。
データの品質管理
AIの活用は営業部門にとって大きな可能性を秘めていますが、AIは既存のデータをもとに機能するため、生成されたコンテンツの質は元となるデータの量と質に依存します。AIの活用には、目的に合わせて必要なデータをすぐに活用できる状態にする「データマネジメント」の方法を学ぶ必要があるでしょう。
また、AIにデータを読み込ませるには、まず必要なデータを収集し、わかりやすく整理したうえで、フォーマットの統一などの加工を行う必要があります。AI活動の前段階で労力がかかることを認識し、システムの本格稼働までに準備に十分な期間を設けることが大切です。
情報セキュリティ
AIの活用においては、情報セキュリティに関する課題もあります。適切なセキュリティ対策が行われないことで、ハッキングや内部からの情報漏洩のリスクが高まる可能性があるでしょう。
情報漏洩の発生は、企業の信用問題に直結します。クラウドサービスを利用する場合は、セキュリティ体制がサービス提供元に依存するため、どのようなセキュリティ対策が行われているかを必ず確認しましょう。
営業部門でのAI活用方法の例
ここでは、営業部門でのAI活用方法の例を紹介します。
- AIを搭載したCRMツール
- 売上の予測
- チャットボットによる自動化
- 顧客の調査
- 提案資料の作成
AIを搭載したCRMツール
営業部門でのAI活用方法の一つとして、AIを搭載したCRM(顧客関係管理)ツールの導入があります。CRMツールとは、部門を越えて顧客の情報を一元管理するためのもので、最新の顧客情報をもとに営業やマーケティング、カスタマーサポートなどを行えるのがメリットです。
AIが搭載されたCRMツールは、顧客の行動パターンや購買履歴を自動で分析し、個々の顧客に合わせたマーケティング施策の提案を行うことが可能です。情報管理と解析を得意とするAIにCRMデータの解析を任せることで、人間が行う分析に比べて時間とコストを大幅に削減できます。
売上の予測
AIは大量のデータを学習することで、ビジネスの未来の動向を、より正確に予測できます。
精度の高い売上予測が可能になることで、人員の采配や予算の配分といった戦略の最適化が可能です。さらに、過去の取引データを分析することで、営業の成功パターンを見つけることもできるでしょう。
チャットボットによる自動化
商品やサービスを購入後のサポートは、カスタマーサクセス部門やカスタマーサービス部門が担当する場合と、営業部門が引き続き担当する場合に分かれます。既存顧客とのコミュニケーションも営業にとっては大切な仕事ですが、定型的な問い合わせについては、チャットボットを導入することで業務効率化につながります。
AIが搭載されているチャットボットであれば、人と会話しているような自然な会話が可能です。想定外の質問にも対応しやすく、顧客満足度の向上にも寄与します。
顧客の調査
AIは顧客への提案内容をまとめる際の事前調査にも活用可能です。業界分析や競合調査、業界特有の課題感などのリサーチに役立つでしょう。専門家に調査を依頼する手間が省け、瞬時に調査結果が返ってくるのは大きなメリットです。
AIにどのような指示を出すかによって返ってくる結果が変わるため、AIの出力内容を見ながら質問内容を精査します。また、使用するAIツールによって、調査や分析結果の詳細度に差があるため、複数のツールを試してみるのも良いでしょう。
提案資料の作成
AIは、提案資料のストーリー設計やマーケティング施策を考える際の壁打ち相手としても利用できます。
場所や時間を問わずにアイデア出しが行えるため、人と予定を合わせる必要がありません。アイデアが思い浮かばずに資料作成が止まってしまう時間を減らすことも可能です。
商談のロールプレイング
会話型の生成AIは、商談のシミュレーション相手としても優秀です。生成AIを見込み客役として商品・サービスの説明をすることで、質問や商談の流れを事前に予測できます。逆に、生成AIを営業役として提案資料の説明をしてもらい、資料をブラッシュアップする使い方もできるでしょう。
生成AIに練習相手を務めてもらうことで、同僚や上司の時間をとることなく、何度でも練習ができる点もメリットです。
営業部門でAIを活用する際のポイント
ここでは、営業部門でAIを活用する際のポイントを紹介します。目的を明確にしたうえで、試行錯誤することが重要です。
- AIを活用する目的や目標を明確にする
- 適切なデータを収集する
- 導入後にPDCAを回す
- 情報の正確性は自身で担保する
AIを活用する目的や目標を明確にする
まずは、AIを活用する目的を明確にします。その際に、「AIに任せたほうが早い業務」と「人でないと対応できない業務」を分けて考えると目的を絞り込みやすくなります。AIを活用する目的を関係者に共有し、協力を得ることも欠かせません。
また、目標を立てる際は、「業務効率化を図りたい」という大まかな目標は割けたほうが良いでしょう。「業務効率化によって日々の報告業務にかける時間を30分短縮する」など、目標を具体的な数値に落とし込むと、成果が判断しやすくなります。
適切なデータを収集する
データを収集し、整理・加工するプロセスは、AIを活用するうえで欠かせないものです。しかし、社内のデータベースや個人のパソコン、メモリーカードなど、情報の保存先は多岐にわたります。
すべてのデータを収集すると膨大な時間がかかってしまうため、目的に合わせて必要なデータを収集するところから始めましょう。AI活動のチームを立ち上げ、期限を決めてデータを収集・整理することが大切です。
導入後にPDCAを回す
AIの導入後は、PDCAサイクルを回して改善を続けましょう。AIの活用状況や課題などについて社内から定期的にフィードバックを収集し、システムの拡張や設定の変更などを実施します。
導入の際は、用途や機能を絞ったスモールスタートを心がけ、実際に運用しながら必要な機能を拡張したり、使用範囲を広げたりすることで、システムが定着しやすくなります。
情報の正確性は自身で担保する
AIを活用する際には、情報の正確性に気をつけましょう。AIの出力結果は、参照する情報の量と質に大きく依存します。参照する情報が古かったり、間違った情報を参照していたりすることで、出力結果が偏ることも考えられます。
正確な情報ではないにもかかわらず、その情報があたかも正確な情報であるかのように出力されることも考えられます。AIが出力した情報について正確性が疑われる場合は、必ず自身で調査を行うことが大切です。
また、特に会話型の生成AIにおいては、一度で求める答えが出力されることは稀です。何度も会話のラリーを重ね、プロンプトを改善していくことで精度を上げましょう。
営業部門でのAI導入の事例
AIの導入によって、業務効率化や業績改善に成功している企業は数多く存在します。ここでは、大塚商会と富士通株式会社のAI導入の事例を紹介します。
大塚商会
大塚商会は、日立製作所のAIを活用して、営業支援の強化を計画しました。具体的には、営業効率と顧客満足度の向上を目指して、SPRという独自の顧客管理・営業システムを導入しています。
このシステムには、顧客のさまざまなデータが20年以上にわたって蓄積されています。顧客数が増加し、ビジネス戦略や業務内容が複雑化するなかで、顧客のニーズをタイムリーに把握し、価値ある提案を行うためには、データの分析精度、量、速度を向上させる必要がありました。
大塚商会が日立製作所のAIに注目した大きな理由は、AIが生成した結果を人間が理解できる形で出力する方向性が示されていたことでした。それによって、営業担当者がAIの分析結果に納得感を持ち、営業活動を行うことができるようになったといいます。
AIが効率的な営業活動を提示することにより、「どの顧客を訪問すべきか」など、個々のニーズに合わせた提案を実現しています。
富士通株式会社
「富士通」は、SalesforceのAI生成ツール「Einstein for Service」を用いて、製品に対する問い合わせ処理時間を80%以上短縮しました。会話要約機能と自動応答機能を活用し、オペレーターの作業時間を削減しています。これら2つの特性の利用により、顧客対応時間が約89%短縮、対応後の記録作成時間が約86%削減されました。
これほどの効果を得るためには、企業内の情報をAIに学習させることが重要です。富士通は回答の精度を向上させるために、知識の修正や追加を行い、何度も検証を行って運用しています。こうして得られた知識を活用し、顧客企業の支援サービスも提供しています。
営業部門のAIの活用は課題の洗い出し始めよう
営業部門でAIを活用するには、導入前に明確な目標を設定して計画を立てることが重要です。そのためには、既存業務の課題を洗い出し、どの部分にAIを導入するのかを決定する必要があります。導入後はPDCAのサイクルを回して、継続的に改善を続けましょう。
HubSpotが提供する営業支援システム「Sales Hub」にもAIが搭載されており、営業メールの自動生成や高精度な売上予測、AIスコアリング機能によるアプローチの優先順位の提案などが可能です。
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