セールスイネーブルメントとは、ITツールの活用やデータ分析、トレーニングなどの多角的な視点から営業活動を最適化する取り組みです。単なる個別最適化ではなく、営業組織全体の生産性と成果の向上に寄与します。
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ただし、営業活動は範囲が広いことから、具体的な取り組み方や始め方がわからない方も多いのではないでしょうか。このような場合は、すでにセールスイネーブルメントに取り組んでいる他社の成功事例を参考にするのがおすすめです。
本記事では、セールスイネーブルメントの8つの成功事例と事例から読み解く成功のポイントを解説します。自社の業種や目的に合った事例をもとに、導入時の参考としてお役立てください。
セールスイネーブルメントの成功事例
セールスイネーブルメントを成功に導くには、他社の成功事例が参考になります。さまざまな事例を読み解くことで、成功のコツが得られるでしょう。
1. 日本通運株式会社
出典:NXグループ 日本通運
【成果】
- セールスイネーブルメントツールの利用による商談準備時間・リードタイムの短縮
- 営業担当者における提案の幅の広がり
企業概要
日本通運株式会社は、トラックや鉄道、航空、ITなどを駆使してグローバルに輸送・物流事業を行う会社です。国内・国際輸送、重量品輸送をはじめとする専門輸送や倉庫保管など、幅広い事業を展開しています。
導入前の課題
物流業界はIT技術の進化や運送スタイルの変容など市場変化が激しいため、営業スタイルを変えていく必要がありました。また、営業組織内では属人化が慢性化し、社内に資料が点在していたことから、組織知化する手段を探していました。
導入後の成果
課題を解消するため、4つの領域に沿ってセールスイネーブルメントを推進します。4つの領域とは、「ナレッジ:コンテンツ作成とノウハウの共有」「ラーニング:トレーニング・コーチング」「ピープル:組織や役割分担の見直し」「ワーク:ツールの導入とデータ活用」を指します。
同社では、成果が出やすく営業担当者が受け入れやすいナレッジ領域の改善に優先的に取り組み、社内に散在する資料やパフォーマンスの高い営業担当者の経験則を集約し、組織で活用できる体制を整えました。
セールスイネーブルメントツールの導入により、社内では資料の共有にとどまらず、ツールを起点としたコミュニケーションが生じました。営業担当者の提案の幅や話し方の広がりなど、期待以上の成果が得られています。また、資料作成の工数削減や商談のリードタイムの短縮にもつながっています。
2. 日清食品株式会社
出典:日清食品グループ
【成果】
- セールスイネーブルメントツールの導入にともなう資料整理により、商談準備時間の30分短縮に成功
- 全国の拠点をまたいだ営業担当者同士の自主的なナレッジ共有の創出
企業概要
日清食品株式会社は、日本を代表する食品メーカーです。世界初のインスタントラーメン「チキンラーメン」をはじめ、即席?やチルド食品、冷凍食品など、多様な商品の製造・販売を行っています。
導入前の課題
全国に拠点がある同社では、新商品が発表される頻度が高い一方で、拠点ごとのナレッジが個別管理されている点に課題がありました。また、成熟期を迎えた食品業界で中長期的な成長を実現するには、全拠点を包括的に捉える情報共有の仕組みが求められ、営業組織の変革も必要でした。
導入後の成果
当初は、ファイル共有システムを導入したものの、商談資料や顧客の声などを共有できず、資料を探す時間がかかるなど、課題解消にはつながりませんでした。
そこで、効率の良いナレッジ共有の仕組みを構築するために、セールスイネーブルメントツールを導入します。運用後は、拠点を問わずにナレッジを一括管理でき、資料の内容を容易に確認できるようになったため、よりスムーズに情報を共有できるようになりました。結果的に、商談準備にかける時間を30分短縮することに成功しました。
また、直接の関わりのない拠点から資料に関する問い合わせが来るなど、拠点をまたいだコミュニケーションも生まれています。
3. CCCMKホールディングス株式会社
【成果】
- 分業体制やオンライン商談などの仕組みを構築し、2020年度は前年度比25%増の営業成果を実現
- セールスイネーブルメントの社内認知の広がりと体制整備による営業組織の拡大
企業概要
CCCMKホールディングス株式会社(旧CCCマーケティング株式会社)は、VポイントやモバイルVカードなどから取得した消費者データを活かし、企業のオペレーション改善や商品企画などのコンサルティングサービスを提供する企業です。
導入前の課題
同社では、3年間で3倍の売上を実現するための営業改革を推進していました。一方で、営業スキルや成果が属人化により体系化されていなかったこと、商材が複雑で売り方を確立できていないことが課題でした。
導入後の成果
「人の成長が組織全体の成長につながる」との考えをもとにした営業改革を実現するために、セールスイネーブルメントを導入します。
そのうえで、マーケティングやインサイドセールス、フィールドセールスを分業体制に変更し、オンライン商談の仕組みも構築しました。
施策実施後は営業成果が前年度比で25%増加し、セールスイネーブルメントの社内認知の広がりにより、営業組織の拡大にも成功しています。
4. 株式会社Speee
【成果】
セールスイネーブルメントツールの導入により、職能育成やパイプライン管理における仮説検証精度が向上し、精度の高い戦略策定が実現した。
企業概要
株式会社Speeeは、データ活用コンサルティングやDXコンサルティングを提供する企業です。中古不動産の仲介サイト「イエウール」や、リフォームの一括見積もりサイト「ヌリカエ」、介護におけるDX事業などを展開しています。
導入前の課題
従来はマーケティング支援事業を事業の柱としていた同社は、事業領域の拡張とともに、連続的なイノベーションで事業創造をするために、既存事業の安定化に加え、新規事業開発をあわせて進める必要がありました。
そこで課題となっていたのが、優秀な営業担当者のスキルやノウハウを体系化して再現性を持たせること、また経験の浅い担当者の成長機会の創出でした。
導入後の成果
パフォーマンスの高い担当者の要因特定やKPIの進捗確認、営業プロセス分析などの機能が搭載されたセールスイネーブルツールを導入することで、営業の採用から成果創出までのプロセスが明確になりました。その結果、職能育成やパイプライン管理などの仮説検証精度が向上し、精度の高い戦略策定が実現しています。
5. 株式会社ダイアログ
出典:「ロジスティクス」×「IT」をベースに総合物流ソリューションを|株式会社ダイアログ
【成果】
- セールスイネーブルメントツールに組み込まれた営業プログラムを活用し、担当者によっては案件数と商談数が最大3倍に増加
企業概要
株式会社ダイアログは、物流とIT技術を組み合わせた、総合物流ソリューションを展開する企業です。代表的なサービスに、クラウド型の倉庫在庫管理システム「W3」があげられます。
導入前の課題
同社が抱えていた課題は、理想の営業組織体制の実現です。同社には営業組織が存在せず、役員が営業活動、納品担当者が既存顧客への案件ヒアリングをすることが多い一方で、案件数が不足していたので、外部認知を高める必要があったからです。また、導入済みのSFA(営業支援システム)・CRM(顧客関係管理システム)ツールを商談管理にしか活かしておらず、行動記録の不記録やKPIの属人化も課題でした。
導入後の成果
既に導入していたSFA・CRMに関連するセールスイネーブルメントツールを導入することで予実管理や行動管理をチーム内で共有して、自身の業務状況をリアルタイムでチームメンバーと比較したり、目標を設定したりできるようになりました。また、月別推移や見込み客の属性別の商談件数など、さまざまな観点から営業データを分析できます。
その結果、担当者によっては案件数と商談数が最大3倍に増加、新規の商談アポイントメント数も同様に向上しました。数字の進捗の確認を習慣化し朝会・夕会で数値を議論する文化も根付いています。
6. ソニービズネットワークス株式会社
【成果】
- 成果起点で育成プログラムを構築して営業担当者をスキルアップさせることで、生産性の向上、受注率の改善に成功
企業概要
ソニービズネットワークス株式会社は、ソニーグループ株式会社のなかで、法人向けのICTソリューション提供に特化した企業です。インターネット回線NUROの法人向けサービス「NURO Biz」や、クラウド勤怠管理システム「AKASHI」などのサービスを提供しています。
導入前の課題
同社が抱えていた課題は、営業データの整備と、営業担当者の育成成果の可視化です。
当時、SFAを導入していたものの、案件管理にとどまりデータを正しく取得・活用できていなかったこと、全国14か所に及ぶ営業グループの膨大なデータが整備されていないことが課題でした。
また、拠点ごとに実施している営業人材育成の事業への貢献度も把握できていなかったため、育成成果の可視化も取り組むべきテーマでした。
導入後の成果
営業データの整備にあたり、前提となるKPIを「主力製品の受注率」と定め、営業フローの見直しやSFA活用法のインプットを実施しました。その結果、正確な受注率の取得やダッシュボードを活用した分析が可能となり、営業フェーズにおける課題の可視化が1年で実現しました。
また、半期に1度、営業担当者のスキルやナレッジに関するアセスメントを実施して、その評価を育成プログラムに反映させるなど、営業人材の育成方法を見直したのもポイントです。提供されるワークショップやトレーニングに納得感が生まれ、チーム全体が前向きに取り組むことで生産性が向上し、受注率の改善にも成功しました。
7. 株式会社ドリーム・アーツ
出典:株式会社ドリーム・アーツ|デジタルの民主化で大企業が変わるニッポンが変わる
【成果】
- セールスイネーブルメントツールとSFA・MAの連携により、顧客にとって最適なタイミング・内容でのインサイドセールスの実施に成功
企業概要
株式会社ドリーム・アーツは、スマートデバイスを用いた営業改革・業務改革用クラウドサービスを展開する企業です。大企業の業務デジタル化を支援する「SmartDB ®」や、多店舗経営をサポートする「Shopらん ®」などのサービスを提供しています。
導入前の課題
同社は「顧客ニーズに対して最適なタイミングや内容で対応する」との意味を持つ「GR(Great Response)」の考え方を大切にしています。その実現のために、インサイドセールスチームを立ち上げたものの、商材の特性や社内における情報共有の仕組みにおいて課題を抱えていました。
同社が扱う商材は顧客によってニーズが異なるため、多様な資料を用意しなければなりませんでした。また、セキュリティ上、メールへのファイル添付を禁止しており、資料送信に手間や時間がかかっていました。
導入後の成果
SFA・MA(マーケティングオートメーション)ツールと連携できるセールスイネーブルメントツールを導入し、顧客への資料送付作業を自動化しました。また、資料送付から商談、サポートに至るまでのやり取りで用いたデータを一元管理し、明確なデータにもとづいて資料を刷新するなど、さまざまな施策を実施します。
その結果、同社のポリシーである、最適なタイミングと内容を見極めたうえでインサイドセールスを実施できる、適切な環境構築の実現につながっています。
8. 株式会社ROBOT PAYMENT
出典:株式会社ROBOT PAYMENT(ロボットペイメント)
【成果】
- セールスイネーブルメントツールの導入により、見込み客の行動やニーズを可視化し、最適な営業戦略の立案に成功
- 迅速かつ的確な資料の刷新を実現
- 従業員間でのノウハウ共有の活性化・モチベーションの向上
企業概要
株式会社ROBOT PAYMENTは、ペイメント事業やファイナンシャルクラウド事業を展開する企業です。インターネットペイメント「サブスクペイ」や、請求・集金作業を自動化できる「請求管理ロボ」などのサービスを提供しています。
導入前の課題
MAツールを導入していたものの、資料やメール送信後の資料の閲覧箇所 か所や閲覧時間などの定量データを取得しておらず、顧客の行動を追跡できていませんでした。そのため、顧客の正確な行動やニーズの把握が課題でした。
また、資料をアップデートするための根拠となるデータが不足していたのも課題となっていました。
導入後の成果
セールスイネーブルメントツールを導入したことで、メールやPDF、動画などコンテンツごとの資料の閲覧状況や営業成果を可視化できました。Webからの問い合わせに対しては、資料URLを自動返信し、その後の動向確認を行える仕組みも構築しています。
また、セールスイネーブルメントツールで取得データとCRMに蓄積された顧客データを連携させて、顧客ごとに最適な戦略でアプローチできるようになりました。その結果、確度の高い顧客から優先的にアプローチするなど、営業スタイルの変革につながっています。
さらに、閲覧データをもとにした迅速な資料の刷新や、従業員の成果を分析したマトリックスの活用によるモチベーション向上やノウハウ共有の促進も実現できています。
事例から学ぶセールスイネーブルメント成功のポイント
ここからは、ご紹介した導入事例の共通点をもとに、セールスイネーブルメント成功のポイントを解説します。
包括的な視点で取り組む
営業活動を改善する際は、人材育成やシステムの刷新などの個別最適化に終始するケースが珍しくありません。これでは営業組織における個別の課題は解消できても、組織全体の生産性を向上させるセールスイネーブルメントのゴールには至りません。
セールスイネーブルメントの導入は、狭い範囲の課題に絞り込むのではなく、より包括的な視点で取り組むことが大切です。セールスイネーブルメントの活動内容は次の4つの領域に分かれています。
前述した事例のなかでも、営業トレーニングを実行するとともにナレッジベースを構築するなど、多角的な取り組みが目立ちます。それぞれの領域で課題を特定して、包括的に取り組むことで、大きな相乗効果が期待できるでしょう。
社内に蓄積されたデータを活用する
セールスイネーブルメントのアクションプランやトレーニングプログラムを策定するには、課題解決の根拠となるデータが欠かせません。明確なデータではなく勘や経験で施策を実行すれば想定した成果を得られない可能性があるからです。
セールスイネーブルメントの実施には、基幹システムに蓄積された顧客情報や業務データ、あるいは案件情報やパイプライン管理のデータなど、社内に蓄積されたデータを最大限に活用することが大切です。また、マーケティング部門が保有する見込み客の情報やカスタマーサポート部門の問い合わせデータなど、他部門と連携してデータを活用することも重要です。
データを活用することで、顧客ニーズを特定したり各担当者のスキルを把握したりできるため、セールスイネーブルメントを実施する土台を形成できます。
目的に合ったツールを導入する
セールスイネーブルメントに用いるデータを収集・分析するには、ツールを導入するのがおすすめです。
初めて導入する際は、トラッキングや分析、営業資料管理、営業ツールとの連携機能が搭載されたセールスイネーブルメントツールを検討すると良いでしょう。多くのセールスイネーブルメントツールでは、自動追客や資料動画作成など、営業力向上につながる機能も利用可能です。
ただし、セールスイネーブルメントツールのみで必要なデータを収集・管理できるわけではないことに注意が必要です。例えば、案件情報や商談情報の管理にはSFA、顧客情報管理はCRM、分析機能に特化したBIツールなどを検討し、組み合わせて用いることで、セールスイネーブルメントの成果向上につながります。
HubSpotには、CRMやSFA、MAなど、セールスイネーブルメントに必要な幅広い機能が搭載されています。
顧客情報を一元管理できる標準機能に加え、プランをアップグレードすることでSFAやMAなどの機能を拡充できます。営業活動やマーケティング、カスタマーサポートなど、さまざまな領域のデータをひとつのシステムに集約できるため、より効率的なセールスイネーブルメントの実行が可能です。
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事例を紐解いてセールスイネーブルメントを成功に導こう
セールスイネーブルメントで実施すべき取り組みは、営業活動の改善にとどまらず、ITツールやデータの活用、トレーニング、営業組織体制の見直しなど多岐にわたります。さまざまな事例を参考にすることで、組織全体の課題を抽出でき、適切な優先順位を設定して解決を図ることが可能です。
セールスイネーブルメントが実現すれば、営業活動の個別最適化に加えて、営業組織全体の生産性を向上できます。まずは自社の環境と類似する事例を探すことから始めましょう。