同じ営業チームで、同じマネジメントをしているけれど、担当者によって業績に大きく差が出てしまう。このような課題を抱えている組織では、顧客とのファーストコンタクトから成約に至るまでの一連の営業プロセスがブラックボックス化しているケースが多いようです。
一連の営業プロセスを可視化することで、成果を出している営業担当者の成功の秘訣が見えてきます。そして、その秘訣をもとにプロセスを標準化しチームに浸透させることで、チーム全体の成果を底上げすることが可能です。
今回は営業プロセスの標準化の重要性から、実際にどのようしていくのか、具体的な方法を解説します。
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営業プロセスとは?
営業プロセスとは、見込み客へのアプローチから成約までの一連の流れを指します。
一般的な営業プロセスでいうと、マーケティングからトスアップされてきた見込み客に対し架電やメール送信でコミュニケーションをとり、アポイントが取れたら商談を重ね、クロージングして成約へ、という流れで進められていると思います。(もちろん企業によっては、営業担当者がテレアポをしていたりする場合もあるでしょう)
営業は属人的なものであり、個人のスキルレベルによって成果が変わるものという考えが強い企業だと、営業プロセスは個人によって異なってきます。営業プロセスが個人で異なると、その分営業担当者ごとの成績にばらつきが出てしまっていました。
そこで、各営業担当者の成績を均一に底上げするために、「営業プロセスの標準化」が近年叫ばれるようになってきました。
営業プロセスを標準化する重要性
なぜ、営業プロセスの標準化が重要なのでしょうか?
それは成果の出やすい営業プロセスを組織全体に浸透させることで、組織全体の営業力を底上げできるからです。
まず、営業プロセスが標準化されていない場合どういった弊害が出てきてしまうか考えてみましょう。
営業プロセスが標準化されていないということは、営業担当者ごとに異なった営業活動をしてしまう状態ということです。営業プロセスが属人化したままでは、個人のポテンシャルに左右される部分が多く、一部の優秀な営業担当者に依存しがちに。これは組織としてはリスクが高く、もしその営業担当者が異動や退職などをした場合の対処が難しくなってしまいます。
また、営業担当者全員が顧客に対して最適なアプローチをできていない可能性も高くなります。
このような状態を避けるためにも、まず営業プロセスの標準化に取り組みましょう。
営業プロセスを標準化する目的
営業プロセスの標準化の目的は、大きくは2つあります。
1. 営業担当者全員の、顧客への提供価値を最大化する
営業プロセスを標準化する際は、継続的に成果を上げており、且つ顧客と良好な関係を構築できている営業担当者が実践している内容を参考にするべきでしょう。トップセールスの営業活動の記録から、LTV(顧客生涯価値)の高い顧客を獲得するためにはどのような営業をすればいいのか、以下のような観点を持って分析していきます。
- 平均的な営業担当者とトップセールスの営業プロセスの違いは何か?
- LTVが高い顧客はどのような顧客か?
- トップセールスはその顧客に対してどんなタイミングでどのようにアプローチし、どのように価値を提供しているのか?
重要なのは、顧客ごとにどのような価値を提供しているのか、再現性の高いノウハウになるまで分析することです。プロセスそのものだけでなく、なぜそのようなプロセスがうまくいくのか、その背景にある部分もセットでチームに共有しましょう。
2. 営業人材育成の効率化
営業プロセスが固まっていれば、新メンバーが配属された際の人材育成を効率化できます。マニュアルが固まっておらず、指導者によって伝える内容がバラバラで新メンバーが困惑する、というのはよくあることでしょう。指導内容にばらつきがあるせいで理解があまり進まず、成果を出せるようになるまで時間がかかってしまう場合もあります。
新メンバーのオンボーディングをスムーズに進めるためにも、営業プロセスはしっかり固めておいた方がいいでしょう。
営業プロセス標準化の方法
1. 現在の営業プロセスを見える化し分析する
営業プロセス標準化の第一歩として、まずは現在実施されている営業プロセスを可視化しましょう。営業プロセスの標準化は、各営業担当者が普段どのようなプロセスで営業しているのか把握することから始まります。
もし営業プロセスがブラックボックス化していてマネージャーが可視化できていない場合はまず、CRM(顧客管理システム)等を導入するところから始めましょう。Excel管理でもできないことはないですが、営業担当者の組織が大きくなればなるほど手間が増えてしまいます。
営業プロセスが可視化されるようになったら、次に営業プロセスの分析に移ります。成約に繋がった案件はどのような営業プロセスを経ていたのか、また逆に失注した案件の営業プロセスに傾向はないのか分析していきます。
また、定性調査として各プロセスのどこが重要であったか、または重要ではなかったのかを営業担当者にヒアリングしていきます。
上記の分析を通じて、成約につながった案件がどのようなプロセスを経ていたのかを明らかにしていきます。
2. カスタマージャーニーを定義する
1のプロセスは「営業をする」側からの分析でした。次に「営業される側」、つまり顧客の立場となって、ファーストタッチから成約までのプロセスを分析していきます。
できれば良好な関係を築いている顧客に、なぜ契約に至ったのか、決め手は何だったのかヒアリングしましょう。
営業する側、される側の両方向の分析結果から理想的なカスタマージャーニーを定義し作成します。理想的なカスタマージャーニーとはペルソナが製品やサービスをきちんと理解し、納得して成約するという流れです。
3. 営業プロセスを構築する
カスタマージャーニーを定義できたら、いよいよプロセスの構築に入ります。どのような条件を満たせば(見込み客がどのような状態になれば)次のステップに進んだと判断できるかという基準を設定します。また同時に、そのために営業担当者はどのようなプロセスを踏めばいいのか定義していきます。
具体的には、以下の例が判断基準となります。
- 担当者はどのようなアプローチをするべきか?メールと電話どちらがいいのか?
- 担当者は何を聞くべきか?
- BANT条件は満たしているのか?
- 見込み顧客は決裁権を持っているのか?
これらはあくまでも一つの例にすぎません。商材や会社の組織体系によっても変わってくるかと思います。自社のビジネスモデルに合わせて、営業プロセスを定義していきましょう。
営業プロセスを定義する際は具体的な基準が必要ですが、細かく細分化しすぎるとそれを実行する営業担当者の裁量が少なくなってしまうのでバランスが重要です。
4. 営業プロセスの効果測定
一度定義した営業プロセスが必ずしも、最適解とは限りません。
実際に営業担当者が営業プロセスを実践していく中で、重要な指標を定点観測し、改善が見られない場合は対策を講じましょう。重要指標は、例えば以下のようなポイントです。
- 見込み顧客がカスタマージャーニーの次のフェーズに進むまでにかかる時間
- 商談成約率
- チャネル別の成約率・LTV
- 解約率
構築した営業プロセスのどこに問題があるのか、どこを改善したら売上の向上に繋がるのかPDCAを回していきましょう。
顧客への価値提供を最大化できる組織へ
営業プロセスを標準化し浸透させていくことで、営業チームのスキルの底上げに繋がります。それはつまり、顧客への提供価値を最大化することとイコールになります。
繰り返しになりますが営業プロセスを構築する際、参考にするべきは顧客と良好な関係を構築できていて、且つ継続的に成果を上げている営業担当者の実践内容です。顧客に価値を提供しその結果成果を上げられる営業担当者は本質的な営業を実践できており、その部分をプロセスに落とし込むことができれば、組織全体で顧客ファーストの本質的な営業を実践できるようになるはずです。
もちろんプロセスに絶対解はなく、企業の状況や市場の変化によっても変動するでしょう。どのような状況になっても、顧客に対していかに価値を提供できるかを念頭に置いて最適解を模索しましょう。