検索エンジンを利用するユーザーは、何かしら解決したい課題や疑問を抱えています。
コンテンツの制作者は、該当キーワードで検索した読者のニーズをくみ取り、それに応えられるような情報を届ける必要があります。そのためには、ユーザーの検索意図を理解することが不可欠です。
しかし、すべてのユーザーが自身の課題や疑問をそのまま検索キーワードとして入力するわけではありません。たとえユーザーが的確な検索キーワードを選べなかったとしても、コンテンツを制作する側が検索意図を理解するためのアプローチ方法を把握していれば、ユーザーを正しい方向へと導くことが可能です。
本記事では、検索意図の概要や重要性と、検索意図の種類・考え方・調べ方・分析方法、検索意図にもとづいたコンテンツ制作のポイントを解説します。
検索意図とは
Webマーケティングの領域で使われる機会の多い「検索意図」とは、「ユーザーが検索する目的」であり、「検索結果を何に役立てようとしているか」を言語化したものです。「検索インテント(intent)」や「ユーザーニーズ」とも呼ばれます。
ユーザーは検索エンジンを利用する際に知りたいことをキーワードとして入力しますが、必ずしも適切なキーワードを用いるとは限りません。
例えば、「食事 体に良い」というキーワードで検索したユーザーは、次のようなニーズを持っている可能性があります。
- 栄養バランスの取れた献立や健康的な食品が知りたい
- 栄養バランスの取れた食品を購入したい
- 自分や家族など周囲の人の体調に不安があって解決策を探している
このように、キーワードを深掘りしていくと、その背景にある「なぜ・何のために知りたいのか」という深層心理が見えてきます。ユーザー自身も気付いていないニーズに応えられるコンテンツには高い価値があり、検索エンジンからの評価を向上させる効果も期待できます。
検索意図の重要性
Webサイトのコンテンツ制作で検索意図が重視されるのは、コンテンツの品質向上やSEO効果が期待できるためです。ここでは、検索意図の重要性を具体的に解説します。
良質なコンテンツづくりに役立つ
良質なコンテンツとは、ユーザーの疑問や課題解決につながるコンテンツです。検索意図を理解することで、ユーザーニーズをくみ取ったコンテンツづくりに役立ちます。
検索意図を正しく理解しないままコンテンツ制作を進めると、ユーザーにとって本当に必要な情報が不足したり、余分な情報を詰め込み過ぎたりします。また、そもそもユーザーが知りたかった情報とズレた内容を掲載してしまい、ユーザーの疑問や課題の参考にならない可能性もあります。
結果的にSEOにも良い影響を与える
良質なコンテンツによって、ユーザーに優れた検索体験を提供できると、コンテンツやWebサイト自体の評価が高まり、結果的にSEOにも良い影響を与えると考えられます。
実際に、Googleは検索に対する方針として「最も関連性と信頼性の高い情報を届けること」を掲げており、ユーザーニーズにマッチした質の高い情報を検索結果に掲載する姿勢を示しています。
SEOの基本はユーザーの役に立つ良質なコンテンツの制作を目指すことであり、そのために検索意図の理解は欠かせない要素といえます。
参考:Our Approach - How Google Search Works(英語)
検索意図の考え方
検索意図の考え方には、2つのアプローチ方法があります。それぞれひとつずつ確認していきましょう。
キーワードから顕在ニーズを想定する
まずは、キーワードをもとに、ターゲットユーザーの顕在ニーズを想像して考える方法です。顕在ニーズとは、ユーザー自身が認識しているニーズであり、言語化されているニーズです。キーワードから直接想定できるものであり、一番知りたい情報であると考えられます。
例えば、「iPhone 修理」というキーワードであれば、次のような顕在ニーズが想定できます。
- iPhoneを修理する方法を知りたい
- iPhoneは修理できるのかどうかを知りたい
キーワードに紐づく潜在ニーズを推測する
検索意図には、検索クエリでは直接表現されていない潜在的なニーズもあります。潜在ニーズは、ターゲットユーザーが「次に知りたい・実は知りたい」と感じている情報です。
ユーザー自身も認識しておらず、言語化できていない可能性があるため、考えられるニーズを先回りして示し、回答することで、よりユーザーの利便性をより高められます。
例えば、「iPhone 修理」というキーワードからは、次のような潜在ニーズが推測できます。
- iPhoneを修理できる近くの店舗を見つけたい
- iPhoneを修理する際の料金が知りたい
- iPhone修理の予約をしたい
検索意図の種類・分類
ユーザーが検索エンジンに入力した単語や単語の組み合わせを「クエリ」と呼び、検索意図は、目的ごとに大きく4種類のクエリに分類できます。
クエリに沿ったコンテンツの内容を意識することで、ユーザーの課題解決につながりやすくなります。ここでは、検索意図を4つのクエリに分類して解説します。
Doクエリ
Doクエリは、「何かをしたい」という検索意図を含む検索クエリです。検索結果で得た「やり方」や「コツ」などを実行してみたいと思っているときに使用されます。
例えば、次のような検索キーワードはDoクエリに分類できます。
「iPhone 修理」
「LINE ダウンロード」
「マカロン 作り方」
Knowクエリ
Knowクエリは、「検索キーワードについて知りたい」という検索意図が想定できる検索クエリです。言葉の意味や概要、または人物や場所などの情報を知りたいときや、問題の解決方法を知りたいときなどに用いられます。
Knowクエリの例として、次のようなものがあげられます。
「富士山 高さ」
「サマータイム 時差」
「アパート マンション 違い」
Goクエリ
Goクエリは、「特定の場所へ行きたい」「Webサイト・Webページなどへアクセスしたい」という検索意図を含む検索クエリです。次の例のように、店名・地域名・サービス名・企業名などのキーワードを含むケースが多く見られます。
「渋谷 美容室」
「Yahooニュース」
「Twitter ログイン」
Buyクエリ
Buyクエリは、検索した商品やサービスを「購入・導入したい」という検索意図があるときに使用される検索クエリです。特定の欲しい商品やサービスが決まっている場合や、商品の選定のために検索している場合などが想定されます。
「bluetoothイヤホン ランキング」
「maツール 比較」
「母の日 ギフト お菓子」
検索意図の調べ方・分析方法
ユーザーの検索意図を知る方法には、自身の想像力を働かせて考える以外に、リサーチ・分析もあります。ここでは、具体的な検索意図の調べ方・分析方法を4つご紹介します。
上位表示コンテンツの傾向を分析する
Googleなどの検索エンジンで上位表示されているコンテンツを参考にする方法です。特定のキーワードでコンテンツを制作する場合、実際にそのキーワードで検索し、トップページに表示された10記事ほどを分析すると良いでしょう。
上位コンテンツに共通して含まれている要素は、ユーザーが求めている内容、つまり検索意図である可能性が高いため、まずはこの分析方法から実践することをおすすめします。
サジェストキーワード・共起語を参考にする
Googleなどの検索エンジンで、検索窓にキーワードを入力すると自動で提案される「サジェストキーワード」も、検索意図を調べるのに役立ちます。
サジェストキーワードは、指定したキーワードとセットで検索されることが多いキーワードであり、ユーザー本人が過去に検索したキーワードなどをもとに、検索エンジンのアルゴリズムで自動表示されます。
サジェストキーワードは、ユーザーが潜在的に知りたいと思っている可能性がある要素です。コンテンツですべての情報を網羅する必要はありませんが、少し内容に触れるなどすると、ユーザーの疑問の解決につながるでしょう。
また、指定したキーワードに関連するキーワードである「共起語」からも、検索意図を読み解くことが可能です。
サジェストキーワード・共起語は、こちらのツールで調べられます。
ラッコキーワードは、Googleサジェストキーワードや共起語を一覧で確認できる無料ツールです。
検索エンジンの結果では、サジェストキーワードは10件ほどしか表示されませんが、同ツールを使うと、多い場合は1,000件前後のサジェストキーワードが表示されるため、ヒントが容易に見つけられます。
関連キーワードを参考にする
検索結果画面下部の「関連キーワード」や、画面中盤に表示される「他の人はこちらも検索」は、メインのキーワードと組みあわせて検索されているキーワード候補です。
関連キーワードも潜在的な検索意図に通じるため、参考にすると良いでしょう。
ただし、関連キーワードを深掘りしすぎてしまうと、メインのキーワードに関する情報が少なくなったり、メインキーワードの内容や検索ニーズからズレてしまったりと、ユーザーの利便性を低下させる可能性もある点には注意が必要です。
Q&Aサイトを参考にする
Q&Aサイトは、利用者が投稿した悩みや質問に対し、ほかの人が回答やアドバイスをするコミュニケーションサイト(ナレッジコミュニティ)です。
そのキーワードに対してどのような質問が投稿されているかを調べると、検索意図の参考になることもあります。
バーティカル検索・ユニバーサル検索を参考にする
バーティカル検索・ユニバーサル検索も、検索意図の把握に役立ちます。
バーティカル検索とは、検索結果を特定の分野・カテゴリーなどに限定して参照できる検索機能のことで、検索窓の下に一覧が表示されます。バーティカル検索にどのような分野が優先的に表示されているかを確認することで、検索意図を想定できます。
ユニバーサル検索は、Webページ以外のコンテンツ(地図・画像・動画など)も表示する機能です。
例えば、「富士山」と検索すると、富士山に関するツイート・口コミ・画像・ほかの山の情報などが表示され、これらが検索意図を反映していると想定できます。
検索意図にもとづいたコンテンツ制作のポイント
検索意図を想定できたら、コンテンツ制作に活かしていきましょう。検索意図にもとづいたコンテンツ制作のポイントは、次の4つです。
1. 検索意図を反映したペルソナを設定する
リサーチした検索意図をもとに、実際のユーザー層に近いと思われるペルソナを設定しましょう。ペルソナとは、ターゲットユーザーを架空の人物像に落とし込んだものです。
ペルソナを設定することで、次のようなメリットがあります。
- ユーザーが抱えるニーズの想定とコンテンツへの反映が行いやすくなる
- 主観的な内容を記事に盛り込んでしまうことを防げる
- コンテンツ制作に関わるメンバーが複数いる場合でも、共通の認識を持てる
なお、当社HubSpotが運営するブログの場合、キーワードリサーチを実施したうえでペルソナを設定し、どのような方が、どのような課題を持ってこのキーワードで検索することになったのか、検索意図をできる限り具体的にイメージしたうえで記事を作成しています。
(例)
2. 検索意図を反映したタイトル・見出しを設定する
コンテンツのタイトルに検索キーワードを含めることはもちろん、検索意図を反映したタイトル・見出しを設定することを意識しましょう。
特にタイトルでは、検索意図に沿った内容がコンテンツに書かれていることを伝え、ユーザーに「この記事を読みたい」と思ってもらう必要があります。
タイトル・見出しにそのままキーワードを並べるだけでなく、検索意図を深く理解したうえで、より魅力的な表現になるよう工夫しましょう。
3. ユーザーが一番知りたいであろう情報をコンテンツの冒頭に掲載する
ひとつの検索クエリに含まれる検索意図は、ひとつではなく複数あることが多いです。そのため、検索意図の優先順位を考慮し、ユーザーが知りたい内容の順に構成することで、より利便性を高められます。
ユーザーが最も知りたいであろう情報をコンテンツの冒頭に掲載し、徐々に湧いてくる疑問に答える形で構成を考えると良いでしょう。
4. 上位表示サイトとの差異化を図る
検索意図を調べる際に、上位表示サイトの内容を参考にすることは必要ですが、上位表示サイトの内容をそのまま掲載するだけでは、もちろん優良なコンテンツとはいえません。
上位サイトで未掲載の情報を盛り込むことや、より分かりやすい説明にすること、また表や図解などで見やすさを工夫することなど、検索意図を反映したオリジナルの要素を加えてコンテンツの差異化を図ることが重要です。
具体的には、自社やその執筆者だからこそ伝えられる、研究・調査結果や知見といったオリジナル情報や一次情報を含められると、ユーザーの満足度向上につながります。
ただし、差異化を意識し過ぎてメインのキーワードから内容がブレないようにしましょう。また、関連性が低い内容を盛り込むとユーザーの利便性が下がり、検索エンジンからの評価が下がる要因になるので注意が必要です。
検索意図をとらえたコンテンツでユーザー満足度向上を目指そう
検索意図を的確にとらえた良質なコンテンツは、ユーザーの疑問や課題の解決につながり、結果としてSEOにも良い影響を与えます。
本記事で紹介した検索意図の考え方やアプローチ方法を参考に、該当キーワードで検索したユーザーの本質的な疑問や課題をくみ取るのに役立ててください。
正しく読み解いた検索意図をコンテンツへ反映し、ユーザー満足度向上につなげましょう。